スケジュールを考える

TEDの動画

仕事の失敗でいちいち落ち込まない方法。親切で、優しい成功哲学(TED)

ちょっと仕事に失敗しただけでどーんと落ち込む。ついつい自分と他人を比較して、強い劣等感を持ったり、妬んだり、見栄を張ってしまう。

その結果、ほしくもない物を買ってしまい、部屋はくしゃくしゃで貯金はない。

そんな人が見ると楽になれそうなTED動画を紹介します。

タイトルは A kinder, gentler philosophy of success(直訳:より親切で優しい成功哲学)。邦題は「親切で、優しい成功哲学」プレゼンターは哲学者のAlain de Botton(アラン・ド・ボトン)さんです。



「親切で、優しい成功哲学」の説明

Alain de Botton examines our ideas of success and failure — and questions the assumptions underlying these two judgments. Is success always earned? Is failure? He makes an eloquent, witty case to move beyond snobbery to find true pleasure in our work.

アラン・ド・ボトンは成功と失敗について考え、何がそれを決めるのか問題視しています。

成功や失敗は勝ち得るものでしょうか?

俗物精神を乗り越え、自分の仕事に真の歓びを見つけようと、彼は雄弁にウィットに富んだプレゼンを展開します。

収録は2009年。16分47秒。設定のところから日本語の字幕を選んでください。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Alain de Botton: A kinder, gentler philosophy of success | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

理想と現実が違いすぎて涙する

日曜の夕方、仕事に関して、自分の望みと現実が大きく違うので、涙を流してしまいます。

これは私だけのことではないでしょう。世界的な問題だと思います。

暮らしはとても楽になりましたが、仕事に関して何の不安ももたず、落ち着いた気分でいるのはひじょうに難しい時代です。

なぜこんな仕事の危機(キャリアクライシス)を感じてしまうのでしょうか。理由を見てみましょう。

理由1:俗物主義

俗物主義(snobbery スノバリー)は英国だけの問題だと思うかもしれませんが、違います。世界的な現象です。

俗物主義とは、ある人のほんの一面だけを見て、その人全体を判断してしまうことです。

とくに多いのが仕事に関する俗物主義(job snobbery ジョブ・スノバリー)です。

パーティに行けば必ず、「お仕事は何ですか?」と聞かれるでしょう。その答えによって相手は大きく態度を変えます。

俗物の反対は母親です。お母さんは業績なんか関係なく、あなたを受け入れてくれます。

ところがほとんどの人はあなたの母親ではなく、あなたの社会的地位によって、どれだけ自分の時間や敬意をあなたに向けるか決めています。

だから私たちは、自分の仕事をすごく大事に考えているし、物も大事にしています。

私たちは物質至上主義の世界に住んでいます。ですが、これは私たちが欲張りだからではないのです。気持ちの上で報酬を求めているだけなのです。

物がほしいのではなく、ご褒美がほしいのです。

フェラーリに乗っている人を見たら、とても感情が不安定で愛を求めている人なのだ、と考えてください。

理由2:平等主義(仕事に対する期待)

私たちは誰でも何でも達成できる、と教えられています。カースト制は終わり、今は誰もが望みのポジションにつけるシステムです。

美しい考えです。

私たちは基本的に平等だ、というわけです。

この平等主義には大きな問題が1つあります。

妬みです。

妬みは、平等精神に結びついています。

誰もエリザベス女王に嫉妬したりしないでしょう。女王は金持ちだし大きな家に住んでいますが。女王をうらやましいと思わないのは、あまりに自分と違いすぎるからです。

自分と違いすぎる、関係ない人に妬みは抱かないのです。

私たちが妬むのは、自分と年齢や境遇が似ている人です。

その意味で、私たちは同窓会なんか行っちゃだめなんです。ところが、今は社会全体が学校みたいなものです。みんなジーンズをはき似たような感じだけど、全く同じではない。

みんな平等だ、という考え方は、ひじょうに不平等である、という気持ちを生み出してしまいます。だから私たちは大きなストレスを感じています。

17世紀にフランスの貴族になれなかったように、今でもみんなが、ビル・ゲイツみたいに金持ちで有名になることはできません。

ところが、そういうふうに思えないのです。

雑誌などのメディアによって、誰でも彼のようになれる、と思わされてしまうのです。





自己啓発本には2種類ある

ストレスを感じた人は本屋に行って自己啓発の本を買います。

今出ている自己啓発本には2種類あります。

1.あなたならできる、どんなことでも可能だ、と唱える本。

2.セルフエスティームが低いときどうしたらいいのか教える本。

社会が、「あなたは何でもできる」というから、セルフエスティームの低い人が増えてしまうのです。

理由3:実力主義

どんな政治家も実力主義(meritocracy メリトクラシー)は良いことだ、といいます。

実力主義の社会とは何でしょうか?

実力主義社会は、才能、エネルギー、スキルがあればトップに立てる社会です。

美しい考えです。

しかし、実力のある人がトップになるんだ、と考えることは、下のほうにいるのがふさわしい人々がいる、ということを認めることになります。ずっと下にいるべき人々がいるんだ、と。

自分の地位は偶然によるものではなく、実力のせいなんだ、ということになります。こういう考えは、失敗のダメージを大きくします。

中世のイギリスで貧乏だった人は、「不運な人」と呼ばれました。現代では、特にアメリカでは、社会の下のほうにいる人は、「敗者(ルーザー)」と呼ばれるのです。

運がない、というのと、敗者である、ということには大きな違いがあります。

400年のあいだに、誰が自分の人生の責任者なのか変わりました。もはや責任者は神ではなく自分自身なのです。

うまくいっているときはすごく幸せですが、うまくいかないときはひじょうに辛いのはこのせいです。最悪の場合、自殺率があがります。

先進国における自殺率はほかの国にくらべてずっと高いです。

人々が起こったことはすべて自分の責任だと感じてしまうからです。

このプレッシャーから逃れる方法はあるでしょうか?

あります。これから紹介します。

解決策1:実力主義を信じない

実力主義だけの社会を作ろうとすることは馬鹿げています。見果てぬ夢です。

全員に成績をつけるような社会など作れません。とういのも、あまりにも偶然が作用する要素が多いからです。事故や病気、予想もつかなかったできごとなど。

人に成績をつけるべきではありません。

私は「神の国(The City of God)」でアウグスティヌスが書いている言葉が好きです。

It’s a sin to judge any man by his post.(役職で人を判断するのは罪である)

アウグスティヌスによれば、人を判断できるのは神だけであり、それは裁きの日に行われます。

天使がやってきてトランペットが高鳴り空が開く。私のような非宗教的な人間には、馬鹿げた考えですが、それでもこの考えの中に1つの価値があります。

つまり、人を裁いてはいけないのです。その人の価値なんてわからないのです。

解決策2:失敗を悲劇と捉える

人が失敗を怖れる本当の理由は、収入が減ったり、仕事を失うからではありません。他人に嘲笑されることを怖れているのです。

実際、嘲笑されます。

新聞を見てください。人生で失敗した人たちがたくさんのっています。彼らは失敗し、「敗者」と説明されているのです。

この代わりになるものはあるでしょうか?

あります。悲劇です。

悲劇は5世紀にギリシャで芸術の1つとして生まれました。人がどのように失敗するかを表し、同情する芸術です。

同じ事件を起こしても、悲劇にもなれば、新聞の扇情的な見出しにもなります。

ハムレットを敗者と呼ぶべきではないです。彼はさまざまなものを失いましたが、敗者ではありません。

解決策3:人智を越えたものを崇拝する

今私たちは人間以外のものを崇拝していません。人間をずいぶん過大評価しています。これは歴史的にとても新しいことです。

ほとんどの文明で、人は何か超越したものをあがめていました。神や霊魂、自然の力、宇宙などです。私たちは、人智を越えたものを崇拝する習慣を少しばかり失いました。

だから今、人は自然に惹かれるのではないでしょうか。

人間が作った蟻塚から逃れるために自然に向かうのです。競争や劇的な事件から逃れるために。だから私たちは氷河や海を見るのを楽しんでいます。

人を越えたものにふれたいのです。

自分自身の成功をめざせ

私が話してきたことは、要するに成功と失敗についてです。

みんな成功の意味を知っています。成功者と聞けば、富を得て、ある分野で名を成した人だとイメージするでしょう。

わたし自身、成功にとても興味がありますが、自分なりの成功にたいして仮説を持っています。つまり、

「すべてのことで成功することはできない」です。

よくワークライフバランスの話題が出ますがナンセンスです。すべてを手にすることなんてできません。どんな成功も、その裏で何かが失われています。

賢く生きるためには、成功できない部分がある、と知るべきです。

成功に関して問題なのは、多くの場合、何が成功を意味するのか、その考えが自分自身のものでないことです。誰かほかの人の考えなのです。

男性なら父親の、女性なら母親の影響を受けています。

精神分析医は過去80年、これを指摘していますが、あまり気に留めている人はいません。ですが、わたしはその通りだと思います。

テレビ、広告、マーケティングの影響もあります。このようなメディアは、私たちが何を求めているか、どんなふうに自分自身を見ているか、その考えを決めてしまいます。

銀行業はよい仕事だと聞けば、多くの人が銀行で働きたいと思います。そんなにいい仕事じゃないと聞けば、興味を失います。

私たちは簡単に他人やメディアの指示を受けてしまうのです。

だから、成功について考えるとき、それが自分自身の考えである、と確認するべきです。自分自身の考えに意識を向けなければなりません。

その野望は自分の心から生まれたものであるべきです。

欲しいものが手に入らないのはそれだけで残念なことですが、手に入れられなかったとき、実はそんなものは自分は欲していなかったと気づくのはさらに残念なことです。

成功するのはいいことです。

ただ、その成功とは何なのかよく考え、それが本当に自分の求めている成功なのか明らかにしてください。

—- 抄訳ここまで —-

自己啓発書のワナ

読書中

自己啓発書の話、おもしろいですね。

ある自己啓発書は「がんばれは、きみは何でもできる、何者にでもなれる」とメッセージを送っています。

しかし、これを真に受けて、自分以外の者になろうとするとうまくいかないのでセルフエスティームがさがるのです。

そこで、もう1つ、下がりきったセルフエスティームをなんとかする自己啓発書が必要になります。

セルフエスティームとは?⇒セルフエスティーム(自分を愛する気持ち)が高い人の12の特徴

こう考えると自己啓発業界もマッチポンプ式のビジネスなのかもしれません。

マッチポンプとはマッチで火をつけたその当人が、ポンプを持ってきて火を消し、みんなに感謝されたり、お礼をもらうビジネスモデルです。

自作自演ということです。

今の世の中、必要でもない物を買わせて、それを解決するために収納グッズを買わせ、さらに片づけ本やセミナーを売りつける、というマッチポンプが行われています。

マッチとポンプを作っている人が違うので、厳密に言うとマッチポンプではないかもしれませんが。

最初からいらない物を買わなければ問題は発生しないのです。

マッチポンプのワナにはまらないためには、自分で考えながら、バランスをとっていくことが必要です。他人軸で動いていると、お金を吸い取られる一方です。

俗物的な考えを(できるだけ)捨ててみる

きのう、どんどん服を買ってしまうT子さんの相談にお答えしました⇒服が好きで買わずにいられない、どうしたらやめられますか、という質問の回答

そうしたらお返事をいただきました。

T子さんはひじょうにおしゃれな人の多い会社にお勤めで、会社の人に、「いつも同じ服だ」と言われたくない、ダサいと思われたくない、という感情があるそうです。

そこで今回、アラン・ド・ボトンさんの動画を紹介することにしました。

ちょっと考え方を変えれば人の目は気にならなくなります。まず自分が俗物的な考え方をしないようにすればいいのです。

人の価値を、着ている服や持っている物、仕事、年収、乗っている車、体重なんかで決めないでください。

「こうしなければ自分は人に笑われる」と感じてしまうのは、「女性は服を毎日着替えなければいけない」とか「女性はきれいにしていなければならない」といった他人の考えがベースになった「成功した女性像」があるからです。

俗物的な考えをしないようにすれば、そんな幻想も抱かなくなります。

制服を作って自己表現するすすめ

T子さんのような悩みのある人には、一度、毎日ほぼ同じ服で会社に通勤してみてほしいと思います。そして同僚の反応を見てください。何か聞かれるかもしれませんが、面と向かって笑われることはないでしょう。

以前、ニューヨークで名のしれた広告代理店のアートディレクターという職にある女性が、服選びその他に疲れて、制服を決めてしまった記事を読んだことがあります。

ある日、その人は、白い絹のブラウスを15着と、黒いパンツを数本買って、制服にしてしまいました。寒いシーズンはこの上に黒いブレザーを着るそうです。

ユニフォームで出勤を始めたら、親しい同僚は「どんしていつも同じなの?」と聞いたそうです。彼女は「考えることが1つ減って楽になるから」と答えました。

実際その通りなんです。

毎日の服選びに、貴重な時間とエネルギーとお金を注いでおり、しかもその理由が単に他人を喜ばせるためだけなら、ユニフォームを作ってしまったほうがよっぽどいいです。

制服がない職場は、制服のある会社より、ある意味、自由に自己表現できます。

人の目を気にして服を選ぶのは、自己表現という行動の対極にあります。本当に服やおしゃれが好きな人のやることではないでしょう。

服装選びは自己表現の1つ。逆説的ですが、制服を決めることで自己表現するのもありだと思います。

自分は本当は何を求めているのか。

時々、この質問を自分にしてみると、他人にふりまわされなくなるでしょう。





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