シニア目前、主婦でミニマリストなブロガー筆子が、断捨離と節約をして「老い支度」に励む日々をつづっています。

いかに子どものころのトラウマが生涯の健康に影響を与えるか(TED)



より健康に生きるために参考になるTED動画を紹介しています。今回はストレスの極端な形、トラウマについて。

子どものころトラウマを受けると、それが生涯に渡って心身の健康をおびやかしてしまうという、ナディーヌ・バーク・ハリス先生のお話です。

タイトルは How childhood trauma affects health across a lifetime(子供の頃のトラウマが、どのように生涯の健康に影響を与えるか)

バーク先生は女医で小児科のお医者さんです。

『子供の頃のトラウマが、どのように生涯の健康に影響を与えるか』TEDの説明

Childhood trauma isn’t something you just get over as you grow up.

Pediatrician Nadine Burke Harris explains that the repeated stress of abuse, neglect and parents struggling with mental health or substance abuse issues has real, tangible effects on the development of the brain.

This unfolds across a lifetime, to the point where those who’ve experienced high levels of trauma are at triple the risk for heart disease and lung cancer.

An impassioned plea for pediatric medicine to confront the prevention and treatment of trauma, head-on.

子供の頃のトラウマは、成長するにつれて克服されるわけではありません。

小児科医のナディーヌ・バーク・ハリスは、繰り返される虐待やネグレクト、両親が心身の病気を持っていたり、薬物を濫用していることが子どもに与えるストレスは、子どもたちの脳の成長に明らかに影響を与えていると説明します。

強いトラウマを受けた影響は生涯続き、心臓病や肺がんにかかる率が通常の3倍になります。

このプレゼンは、トラウマの予防と治療に真っ向から立ち向かうべきである、と小児科医療関係者に強く嘆願するものです。

impassioned は 「熱のこもった」head-on は「真っ向から、正面に」という意味です。

バーク先生はとても雄弁です。また、ひじょうに論理的でわかりやすいプレゼン。英語も聞き取りやすいです。

プレゼンは15分58秒。日本語字幕です。英語や字幕なし、その他の言語はプレーヤーで選択可能です。動画のあとに語彙リストと抄訳をつけます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Nadine Burke Harris: How childhood trauma affects health across a lifetime | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

語彙リスト

CDC:Centers for Disease Control and Prevention アメリカ疾病予防管理センター

Kaiser Permanente カイザーパーマネンテ 健康維持機構(HMO)カイザー保険が使える病院

ADHD 注意欠陥多動性障害。詳しくは⇒汚部屋を片付けられないのはADHD(注意欠陥他動性障害)のせいだと言う娘

dose-response relationship 用量反応関係 問題にさらされる量(または薬の量)が多ければ多いほど、反応の量も増えること。

COPD chronic obstructive pulmonary disease 慢性閉塞性肺疾患 慢性的な肺の炎症の病気、たとえば、慢性気管支炎、肺気腫など

ischemic heart disease 虚血性心疾患 心筋への血流が阻害されたことによっておこる心臓病

nucleus accumbens 側坐核(そくざかく)前脳にある神経細胞の集まり。報酬、快感、恐怖などに多いに関係のある部位

prefrontal cortex 前頭皮質

amygdala 扁桃体(へんとうたい)

hypothalamic–pituitary–adrenal axis 視床下部、脳下垂体、副腎系


子どものころのトラウマが生涯に渡って健康をおびやかす

1990年代の半ばにCDCとカイザーパーマネンテが、人が「ある物」にさらされると、アメリカの死因の10のうち7つのリスクが劇的に増加すると発見しました。

それは脳の成長、免疫システム、ホルモンのシステム、遺伝子(DNA)の読み取りや転写にも影響があります。

ひどい時は、心臓病や肺がんにかかるリスクが3倍になり、平均寿命が20年縮まります。

ところが、医者はこれに対して、スクリーニングや治療するトレーニングを受けていません。

これは、殺虫剤や化学物質の話ではありません。

子どもたちのトラウマです。

ADHDのような症状の子どもたちのほとんどがトラウマをかかえていた

このトラウマは、とても深刻で執拗なもの。私たちの生理機能を変えてしまうものです。たとえば、虐待やネグレクト、精神疾患にかかっている親や、薬物に依存している親と暮らすことです。

私は、北カリフォルニアで最も優れた私立病院、カリフォルニアパシフィックメディカルセンターに勤務し、同時に、ベイビューハンターズポイントにクリニックを開きました。ここはサンフランシスコで最も貧しく、医療が充分でない地域です。

それまでは1万人の子どもに対して、小児科医は1人しかいませんでした。このクリニックで私たちは、患者が治療費を払えなくても、質のいい医療を提供しました。

受診率、ワクチンの接種率、ぜん息患者の入院率など、すべてにおいて、とてもいい数字を達成しました。

ところが気になることを見つけました。

多くの子どもたちが、ADHDではないかと、病院に紹介されて訪れるようになったのです。しかし実際に病歴などをきっちり調べてみると、ADHDと診断することはできません。

私が診察した子どもたちのほとんどが、深刻なトラウマをかかえていました。

研修医になる前、公衆衛生で修士号を取りました。このとき、学校でこんなことを教わったんです。

同じ井戸から水を飲んでいる100人の子どもたちのうち、98人が下痢になったら、次から次へと抗生物質の処方箋を書いてもいいが、その井戸に行って、「いったいこの中に何があるっていうの?」と言うこともできる、と。

そこで、私は不幸な出来事が子どもたちの脳と体に与える影響について書かれた本を手当たり次第読み始めました。

ACEスコアと健康には関係がある

ある日同僚が、Adverse Childhood Experience(ACE 小児期の逆境的体験)の研究書を持ってきました。

これを読み、わたしのキャリアは変わりました。

ACEスタディは、誰もが知るべき研究です。

カイザーのフェリティ博士とCDCのアンダ博士による研究です。2人は17,500人の成人に子供時代の逆境体験についてたずねました。

質問には、身体的、感情的、性的虐待、身体的、感情的ネグレクト、親の精神疾患や薬物依存、親の投獄、別居、離婚、家庭内暴力などが含まれています。

「はい」と答えるとACEスコアにポイントが加算されます。

2人はACEスコアと健康状況を関連付けました。

2つの点が際立っています。

1つ目は、ACEはきわめてよくあることだということ。

人口の67%が最低でも1つのACEを体験、12.6%、つまり8人に1人が、4つ以上のACEを持っています。

2つめは、ACEスコアと健康状態には、用量反応関係があるということ。つまり、ACEスコアが高ければ高いほど、あまり健康ではないということです。

ACEスコアが4つ以上ある人は、全くない人に比べて、COPD(慢性閉塞性肺疾患)にかかるリスクが2.5倍あがります。うつ病は4.5倍、自殺願望は12倍です。

7つ以上ACEスコアがある人は、肺がんリスクが3倍、虚血性心疾患は3.5倍。虚血性心疾患はアメリカ合衆国でもっとも多い死因です。

このデータを見て、こういう人もいるでしょう。

「不幸な子ども時代をおくれば、飲酒や喫煙をする率もあがるから、健康を害するのも当然だ。これは科学的発見ではなく、単なる悪い習慣だ」と。

ところが、これはまさに科学的知識が関係しています。子どものとき、とてもつらい体験をすると、脳や体にどんな影響があるのか、以前よりも、わかっているのです。
少女

トラウマによって脳が引き起こす反応

子どものころのトラウマは、側坐核(そくざかく)のような、脳の快感や報酬系に影響を与えます。

快感や報酬系は薬物依存に関係があります。

トラウマは、前頭皮質を抑制します。前頭皮質は、衝動のコントロールや情報を統合する場所で、学習にとってきわめて重要な場所です。

MRIスキャンで見ると、恐怖に対する反応をする場所である扁桃体に、はっきりとした違いが見られます。

幼少時代につらい体験をすると、リスクのある行動をしてしまう理由が、神経学的に明らかにされているわけです。これが重要なのです。

たとえ、リスクの多い行動をしなくても、心臓病やガンにかかりやすくなります。これは視床下部、脳下垂体、副腎の連携に関係があります。つまり脳と体がストレスに対して反応するシステムです。この3つは「闘争か逃走か反応」をおこす場所です。

森の中でクマに出会ったとしましょう。

すぐに視床下部から下垂体へ、下垂体から副腎にシグナルが送られます。「ストレスホルモンを出せ、アドレナリンだ、コルチゾールも」と。

すると心臓の鼓動が早まり、瞳孔は拡大、気道も広がり、そのクマと闘うか、その場所から逃げる準備ができます。

これはすばらしい反応です。

もし、森にいて、そこにクマがいるなら。

問題は、毎晩、家にクマが帰ってきたらどうなるか、ということ。ストレス反応が何度も何度も起こるのです。すると命を救う反応から、健康を損なうものに変わってしまいます。

脳や体がまだ成長段階にある子どもたちは、このストレス反応に、より敏感です。

辛いことがありすぎると、脳の構造や機能だけでなく、免疫システムやホルモンシステムの発達にも影響があり、その影響はDNAの読み取りや転写にも及ぶのです。

ACEと有害なストレスは治療できる

病気のメカニズムがわかったのだから、医師として、この科学的知識を病気の予防と治療に用いるべきだと思いました。

サンフランシスコにACEと有害なストレスを予防するCenter for Youth Wellnessを作りました。

子どもたちの健康診断にACEのスクリーニングを加えました。ACEが心身の病気の大きな原因だとわかったからです。

スクリーニングでACEスコアが高ければ、さまざまな治療をしています。家庭訪問、メンタルケア、ホリスティックなケア、栄養指導、必要なら薬も使っています。

同時に、親にもACEと有害なストレスについて情報を提供しています。

トラウマと病気の関係は、ベイビューの子どもたちだけの問題ではありません。

この科学的知識について知らせたら、ほかの医療機関でもいっせいに同様の取り組みをするのかと思ったら、そんなことは起きませんでした。

最初は、この取組みは個人的に、ベストな臨床的治療だと思っていましたが、今は、ムーブメントだと思っています。

アメリカの小児科学会の元学長である、ロバート・ブロック博士の言葉を借りれば、「ACEは今日、アメリカが直面している、まだ問題にされていない、公衆衛生最大の脅威なのです」。

これは恐ろしい可能性です。問題はとても大きいので、どこから手をつけていいのか、と考えると、困惑してしまいます。

ですが、私はそこに希望があると思います。ACEが公衆衛生の危機であると認識し、適正な取り組みをすれば、解決法を見出す、適正な手段を使うことができるからです。

ACEの問題に直面する勇気を持とう

タバコから鉛中毒、エイズまで、アメリカ合衆国は、公衆衛生の問題を明らかにし、改善させてきた実績があります。

ACEと有害なストレスの問題改善には、決意とコミットメントが必要です。ところが、これまでの反応を見ると、あまり真剣味が感じられません。

「自分ごとじゃないからなのかな」と私は思っていました。みんな、「ある地域の子どもたちだけの問題だ」と思っているのだろうと。

実際は違います。

ACEスタディを受けた人のうち、70%が白人で、70%が大学で教育を受けていました。

ところが、人々と話をしていくうちに、私は考え違いをしていたと気づきました。

この会場の中でも、精神病に苦しむ家族と育った人は、何人かいるでしょう。深酒をする親、子どもは鞭(むち)でしつけるべきだと思っている親と育った人はもっといるでしょう。

人々がこの問題を過小評価している理由は、自分の問題だからなのです。自分自身のことなど誰も知りたくもないのです。

むしろ、病気になるほうがましだと思っています。

幸運なことに、科学の進歩と、経済的な理由で、この事実から目をそらすことができなくなりました。

科学は明快です。幼い頃のトラウマが生涯に渡って健康に影響を与えるのです。

現在、小さい時つらい体験をしたことで、病気や早死してしまうのを阻止する方法がわかり始めています。

30年後には、「ACEスコアの高い子どもが、何の治療も受けないと、高血圧や心臓病になってしまう」ということは、「AIDSの患者の寿命が6ヶ月」というのと同じくらい、異例のことになるでしょう。

これは治療できます。打ち勝つことができます。

必要なのは、この問題に直面する勇気です。これは本当のことで、皆の問題なのだと認めることです。

私たち全員で違いを生み出すことができると信じています。
—-抄訳ここまで —–

虐待は必ずしも暴力を伴わない

青少年が犯罪を犯したり、誰かがとてつもなく大きな犯罪を犯すと、その原因究明のために、必ずその人の幼少時代について調べます。

昔は、子どものころ不幸だったから、貧乏で恵まれなかったから、こんな事件を起こしてしまったんだ、と言われるケースが多かったと思います。

ところが最近は、何の不自由もないごく普通の家の子たちや、あるいはむしろ親が裕福で、恵まれていた子どもたちであるということがわかり、なぜだろうと疑問に思うケースも多いですね。

このような子どもたちは、もしかしたら、暴力ではない別の形の強いストレスを受けていたのかもしれません。

たとえば、過度の親の期待、強制、あるいは無関心。度を越したしつけ、ほめてほしかったときにほめられない、冷たくされた、罵倒された、冷やかされた、など。

私自身も親なのでわかるのですが、親自身に余裕がないと、子どもに感情的に怒ったり冷たくして、子どもの自尊心を傷つけてしまいます。

たとえ親には全く悪気がなかったしても。

私は平和的な人間なので、手をあげたりはしません。ですが、昔は、気が短かったので、かんしゃくをおこして、娘の心にストレスを与えることがあったと思います。

一度、娘(当時10才ぐらい)とバレエに行くとき、娘がさっさと歩かないので、頭に来て、私は持っていたダンス用のスカートを地面に投げつけて、1人でさっさと前に歩きだしたことがあります。

これって相当ひどいですよね。こういうことがつもりつもると、子どもは健康を害してしまうのですね。

親が精神衛生を保つことは、もはや自分だけの問題にはとどまらないのです。子どもに健康で豊かな人生を歩んでほしかったら、自分が余裕をなくすような生活をしないことが第一だと思います。

心の余裕が持てるような、あまり忙しすぎない、無理をしすぎない暮らしを心がけるべきですね。
* * * *
なぜ、子どものトラウマの話題をとりあげたかというと、もともとストレスの影響に興味があるのが1つ。

もう1つは、メールをくださる「家の中を片付けられない」という読者の中に、うつや、心の病の治療をしている人が想像以上に多いからです。

脳内を調べる技術が発達したので、近年、脳神経学で新しいことがどんどんわかっています。心の病は自分のせいではないのです。心の問題で悩んでいる人は、前向きに治療をしてほしいと思います。


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