小さくなった征服

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人は変わり続ける。未来の自分に対する心理:ダン・ギルバート(TED)

人生を良い方に変える参考になるTED動画を紹介します。心理学者のダン・ギルバート(Dan Gilbert)先生の、The psychology of your future self(自分の未来像にかかわる心理)。邦題は「未来の自分に対する心理」です。

人は、今の自分がそのままスライドして将来の自分になると思っているため、しばしばまずい決断をしてしまう、という話です。



「未来の自分に対する心理」TEDの説明。

“Human beings are works in progress that mistakenly think they’re finished.” Dan Gilbert shares recent research on a phenomenon he calls the “end of history illusion,” where we somehow imagine that the person we are right now is the person we’ll be for the rest of time. Hint: that’s not the case.

「人は発展途上にあるのに、もう自分たちは完成したと勘違いします」。ダン・ギルバートは「歴史の終わり幻想」と呼ぶ、今の自分が今後もずっと変わらないと考えてしまう現象を紹介します。実はそうではないのです。

収録は2014年3月、6分49秒。日本語字幕版です。字幕なしや英語がよい方は設定で言語を変えることができます。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちらから⇒Dan Gilbert: The psychology of your future self | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

なぜあとになって後悔するような決断を私たちはするのか?

人生のあらゆるステージで、私たちは自分の将来に大きな影響がある決定をします。ところが、実際にその年令になったとき、過去の自分の決断に喜べないことがよくあります。

若者は、10代のとき大枚はたいて入れた入れ墨を、またお金を払って消します。若いころあせって結婚したのに、中年になってむしょうに離婚したくなったり。中年のときに必死になって手に入れたものを、年をとってから、減らそうとしたり。

なぜ私たちは、未来の自分が後悔する決定をしてしまうのでしょうか?

時間の力に関する勘違い

その理由の1つは、私たちが、時間の力に対して、根本的な思い違いをしているからです。

誰でも、人は次第にゆっくり変化するようになると思っています。子供はこの瞬間に変わるが、大人は1年かけて変わる、というように。

ですが、その変化のスピードが変わるのはいつか、と問われると、ほとんどの人は、「今である」と答えるのです。

これは人の歴史にかかわる幻想です。

人はみな、自分はごく最近、完成して、今後はずっとこのままだと考えがちなのです。

歴史の終わり幻想

この現象を裏付けるデータを紹介しましょう。

大勢の人に価値観の変化についてたずねました。

歓び、成功、正直、という3つの価値観。年齢を重ねるにつれてバランスが変わります。

被験者の半分に、今後10年、自分の価値観がどう変わると思うか聞きました。もう半分には、過去10年で、価値観がどんなふうに変わったか聞いたのです。

18歳の人の今後の予想と、28歳の人の過去の振り返りを比較するやり方を、あらゆる年代でやってみたらこうなりました。

1.年齢とともに変化する率はさがる(ゆるやかに変化する)

2.しかし、自分が思っているほどゆるやかな変化ではない。

18歳から68歳のどの年齢の人も、この先10年の変化を、とても少なく見積もっていました。私たちはこの現象を「歴史の終わり幻想(”end of history” illusion)と呼んでいます。

この幻想は、価値観だけにとどまりません。ほかのことでも同じです。たとえば、性格もそうです。

性格も自分の想像以上に変わる

現代の心理学者は性格を5つの面に分けています。神経症的傾向、経験への開放性、協調性、外向性、誠実性の5つです。

性格について今後の10年でどのように変わると思うか、過去10年でどう変わったか、大勢の人に聞いてみました。

結果は同じで、年齢とともに、変化はゆるやかになりますが、今後10年で自分の性格がどう変わるか、という点については、どの年代の人も、とても少なく見積もっています。

好き嫌いも同じです。一番好きな友だち、休暇で行きたいところ、やりたいこと、好みの音楽など。

人は、今の親友は10年後も同じように親友だろう、同じ音楽を好むだろうと思いがちなのです。





勘違いは意思決定に影響を与える

先の変化を少なく見積もることは、きょうの意思決定に影響を与えます。

今好きなミュージシャンと、10年前好きだったミュージシャンを思い浮かべてください。

人々に今好きなミュージシャンのパフォーマンスを10年後に見るのにいくらお金を払うかきいたところ平均129ドル。10年前に好きだったミュージシャンをきょう見るのにどのぐらい払うか聞いたところ、その平均は80ドル。

偏見のない世界なら、両者の金額は同じになるべきですが、この先も変わらないという思い込みがあるので、将来のコンサートにより多く払ってしまうのです。

なぜ自分は変わらないと思ってしまうのか?

なぜイルージョンを持ってしまうのか、はっきりとはわかっていません。

たぶん、思い出すのは簡単ですが、先のことを想像するのは難しいからでしょう。

「想像するのが難しい」ということを、誤って、「それは起きないことなのだ」と思ってしまうのです。

残念ながら、「想像できない」のは、その人の想像力が足りないだけで、「それが起きない」というわけではありません。

人は変わり続ける

要するに、時間はとても強力なのです。時がたつうちに自分の好み、価値観、性格は変わります。

これがわかるのは後になってから。

後になって、過去を振り返ったとき、10年でどれほど変わったのか気づきます。

ほとんどの人にとって、「今」は魔法の時。今、この時に本当の自分になったと感じてしまうのです。

まだ進行中なのに。

今の自分は過去の自分と同じように一時的な存在です。人生において変わらないことは1つだけ。それは「変わり続ける」ということです。

/// 抄訳ここまで///

ダン・ギルバート先生の別のTEDのプレゼン⇒私たちが幸せを感じる理由~制限がある方が幸せ?ダン・ギルバート(TED) おすすめです。

人の性格のビッグファイブ(特性5因子論)

動画の3分過ぎで出てきた、five fundamental dimensions of personality (パーソナリティの基本的な5つの要素)についてもう少し詳しく説明します。

これは 人の性格は以下の5つの要素から成り立っているというものです。Lewis R. Goldberg (ルイ・R・ゴールドバーグ)というアメリカの心理学者が提唱しました。

neuroticism 神経症的傾向
openness to experience 経験への開放性
agreeableness 協調性
extraversion 外向性
conscientiousness 誠実性

この5つはビッグファイブとも呼ばれます。N、O、A、E、Cです。また、特性5因子論とも呼ばれます。

神経症的傾向とは、ストレスに弱かったり、すぐに不安になったりする傾向。

経験への解放性は、新しいものにあまり抵抗がない傾向。つまり、新しいことにチャレンジしたり、知的好奇心が強い人は、Oの要素が強いと言えます。

Cは自制心が強い、まじめ、責任感が強い傾向です。

ギルバート先生の研究によれば、こうした性格は変わる、ということになります。

誰しもこの5つの要素を持っています。どんなバランスでそれが表出されるかは、年齢や、人生のステージ、その時の環境によって違うのです。

確かに1つの性格でも、良い面が出たり、悪い面が出たりするので、基本的な傾向はあるにせよ、それがどう出るかはバランスの問題でしょうね。

自分は変わらないという思い込み

動画で出てくるリサーチは10年以上かけて、19000人以上を対象に行われたそうです。

言われてみるとやはり、人は、今後10年間の自分の変化を少なく見積もる、つまり、自分はあんまり変わらないんじゃないか、と思っているようです。

自分が考えもしないこと、思いもよらないことは、起こらないと思ってしまうのです。

そもそも、必ず起こることでも、「起こりそうにない」と楽観的に見積もるのが人間です。

宿題や仕事の締め切りは必ずくるのに、ギリギリにならないと取り掛からない人がたくさんいます⇒先延ばしをする人としない人は何が違うのか?(TED)

65歳をすぎれは体力が衰えて、身体にガタが来るのはごく当たり前の事実。いつかは自分は老人になり、死んでしまうのに、なぜか、自分はそうならない、と思ってしまうのです。

ギルバート先生の言うように、自分が想像できないことは、「起こらないことにしよう」と脳が処理してしまうのかもしれません。

「人は錯覚を持ってしまうんだ」と気づけば、老後のために貯金をしよう、とか、早めに断捨離しておこう、とも思えます。

なりたい自分になるために捨てる

結局、人はいくつになっても変わり続けるのですから、その変化に合わせて、物を捨てて、所持品を新陳代謝していくのは理にかなっていますね。

「これを捨てるとあとで困るかも」「いつかいるかもしれない」と思って今、明らかに不要なものを捨てない人がいます。

そういう人はもしかしたら、今の自分はずっとバージョンアップせず、このままの生活を何年も続ける、と強く思い込んでいるのでしょう。

あるいは、ずっとこのままでいたい、変わりたくないと願っているのかもしれません。

変わる可能性があるのに、自分でその可能性の芽をつんでしまうのです。

ですが人も環境も変わります。

いらない物をどんどん捨てていくのは、その変化に主体的にかかわることではないでしょうか?

まわりの変化に押し流されるのではなく、自分で選びながら捨てることで、自分の望む未来像に近づくと思います。

「これは捨てない」と思ったとき、「でも、今の自分はまだまだ発展途上中。未完成なんだ」ということを思い出してください。





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