物忘れした人

TEDの動画

ワーキングメモリ(作業記憶)をうまく使って目の前のゴールを達成する(TED)

片付けたい、捨てたいと思っているのに、実際の行動に出られない人、手が止まってしまう人は、その場に関係ないことに、ワーキングメモリを使いすぎているのかもしれません。

ワーキングメモリの重要性をわかりやすく説明しているTEDのプレゼンを紹介します。

タイトルは How your “working memory” makes sense of the world(ワーキングメモリはいかにこの世界を認識しているか?)

邦題は「脳の作業記憶野による認識とは?」 プレゼンターは教育心理学者のPeter Doolittle(ピーター・ドゥーリトル)さんです。



脳のワーキングメモリによる認識とは?:TEDの説明

“Life comes at us very quickly, and what we need to do is take that amorphous flow of experience and somehow extract meaning from it.”

In this funny, enlightening talk, educational psychologist Peter Doolittle details the importance — and limitations — of your “working memory,” that part of the brain that allows us to make sense of what’s happening right now.

「人生は目まぐるしく展開します。私たちは押し寄せてくる経験の流れを受け取り、何らかの意味のあるものを抽出しなければなりません」。

このおもしろい、気付きの多いトークにおいて、教育心理学者のピーター・ドゥーリトルはワーキングメモリの重要性と限界を教えてくれます。

脳のワーキングメモリがあるから、私たちは、いま何が起こっているのかわかるのです。

収録は2013年。動画は9分30秒です。日本語字幕あり。字幕なし、英語やその他の言語の字幕がいい方はプレイヤーで調節してください。

動画のあとに抄訳を書きます。

脳のワーキングメモリは作業記憶、作動記憶とも呼ばれます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Peter Doolittle: How your “working memory” makes sense of the world | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

歩きながらテキストは打てない

きのうのことです。

このビルの前の歩道を歩いていました。

連れがいて、みな交通ルールを守り、話をせず前を見て歩いていました。

前にいた人の動きがだんだん遅くなり、彼は立ち止まりました。

私は合図をし、彼の横を通りすぎました。彼はスマホでテキストメッセージを打っていました。

テキストを打つのと歩くのと同時にできなかったのですね。

このできごとはワーキングメモリ、あるいはマルチタスクの観点から論じることができます。

きょうはワーキングメモリの話をしましょう。





ワーキングメモリとは?

ワーキングメモリは、いつも私たちが感じているもの(意識)の一部です。

いま、皆さんも使っています。止めることはできません。止まったら、昏睡状態(coma)にある、ということです。

ワーキングメモリには4つの基本的な構成要素/働きがあります。

その瞬間に得た経験や知識を記憶したり、長期記憶にアクセスして、必要な情報を引きだし、いま得ている情報と混ぜ合わせ、処理して、その時のゴールを達成します。

この場合のゴールとは、大統領や世界一のサーファーになるというものではなく、もっと日常的なことです。

たとえば、クッキーを食べるとか、ホテルの部屋に入るといったような。

ワーキングメモリのキャパシティとは、それを活用し、すでに知っていることを引き出し、何を記憶すべきか認識し、そのときのゴールを達成することです。

作業記憶の研究には歴史があり、このメモリが多ければ、いろいろな恩恵があります。

ワーキングメモリのキャパシティが大きい人は、話をするのがうまく、統一テストの結果もよく、物を書く力や、高い思考力を備えています。

ワーキングメモリの実験

ここでちょっとテストをしてみましょう。

いくつかやってほしいタスクがあります。みなさんのワーキングメモリを使ってみてください。

5つの言葉を言いますから、覚えてくださいね。メモしてはいけませんよ。

単語を覚えてもらった後、別の質問を3つします。最初に覚えた単語はどうなるかみてみましょう。

では、5つの言葉です。

木(tree)

ハイウエー(highway)

鏡(mirror)

土星(Saturn)

電極(electrode)

覚えましたか?

では、次の計算をしてください。23かける8はいくつですか?

答えを大声で言ってください。

次に、左手の指をおりながら1から10まで数えてください。

これは、じつは神経のテストです。

次に、アルファベットの文字を最後から順番に5つ言ってください。Zから始まりますよ。

さて、最初に覚えた5つの言葉を言える人は、どのぐらいいますか?

通常、半分以下しか覚えていられません。人によって違います。

5つ覚えられる人、10覚えられる人、2つか3つの人。

いずれにしろ、ワーキングメモリは人間にとってとても大事なのです。

TEDでは特に重要ですね。たくさんのアイデアにふれるのですから。

生きていると、目の前でいろいろなできごとがどんどん起こります。人は情報のすべて受け取り、自分にとって意味のあるものを抽出しなければなりません。

豆のサイズのワーキングメモリをつかって。

小さくてもワーキングメモリってすごいんですよ。これがあるから、いま起きているできごとを調べ、前に進んだり、周囲の状況を理解することができます。

作業記憶があるから、会話ができます。話を組み立てて、会話に貢献できます。

問題を説いたり、批判的に考えることができます。

会議で人のプレゼンを聞き、評価し、その意見が好きかどうか決めたり、より深く知るために質問したりできます。

店に行って牛乳、卵、チーズを買ったり、探しているものをちゃんと見つけたりするのも作業記憶のおかげです。

ワーキングメモリには限界がある

ワーキングメモリには限界があります。

キャパシティ(容量)、記憶を維持できる時間、フォーカスできるものに限界があるのですね。

人は通常4つのことを覚えていられます。昔は、7つと言われていましたが、MRI(磁気共鳴映像法)によれば、明らかに4つです。

その4つを覚えていられるのは10秒から20秒です。何か特別なことを、つまり、処理したり、応用したり、人に話したりしなければ。

作業記憶に限界があるせいで、生活にいろいろな影響があります。

ある部屋から別の部屋にいき、「何でこの部屋にいるんだろう?」と思ったことはありませんか?

こういうときは、元の部屋に戻ればいいのですが。

鍵を忘れたことはないですか? 車や子どもを忘れたことは?

誰かと会話をしているとき、左側で話されていることのほうがおもしろい、と感じたことは?

うなづき微笑みながらも、よその会話に気を取られ、相手に質問されてびっくりしたりします。

こうしたこともワーキングメモリのせいで起きます。できることとできないことがあるのです。

ワーキングメモリのキャパシティには限界があるし、ワーキングメモリを使うとは、その限界とうまくつきあっていくことなのです。

作業記憶をうまく使うには?

そこで、ワーキングメモリをうまく使う戦略をいくつかお話します。

みなさんは、数日間、たくさんの情報にふれる環境にいますから、この戦略はとても大切ですね。

1.いまこの瞬間に処理する

まず大事なのは、私たちは、自分の存在と人生で起こるできごとに関する情報を、すぐに、繰り返し処理していると考えることです。

その場で起こっていることをその時に処理しなければなりません。

10分後でもなければ、1週間後でもなく、いまこの瞬間に、です。

たとえば、私はこの人と同意見なのか、何か足りない点はないか、自分が知りたいことは何だろう、この仮定に自分は同意できるのか、自分の生活にどうやって応用できるだろうか?

こんなふうに、いま起きていることをいま、処理してあとで使えるようにするのです。

2.繰り返す・練習する

繰り返したり、練習する必要もあります。

処理した情報を人に話したり、紙に書いてみます。家に帰ったら、メモした紙を読み直し、それについて考え、何回も見直します。

繰り返すことは、ときにはネガティブな行為になりますが、ふつうはとてもよい結果をもたらします。

3.古い知識と関連付ける

新しく得た知識を古い知識と関連付ける必要があります。すると、より意味のあるものになります。

4.ビジュアライズする

イメージを使う必要もあります。ものごとをイメージで捉え、描いてみます。

本を読んだらイメージにする練習ができますよ。

私は、「華麗なるギャツビー」を読んだところですが、ギャツビーがどんな姿なのか、しっかりと自分の頭の中にあります。

5.体系づける

人は身の回りで起きていることに意味を見出そうとします。このとき、整理して体系づけるとうまくいきます。

知識や経験を手にしたら、体系づけるべきです。

6.サポートする(支える)

最初はみな初心者です。私たちは、時間をかけて、より洗練したものにしようと努力しています。

私たちはそれをサポートすべきです。

人に質問してみたり、思考の助けになるチャートの描いてある紙を渡したりすることがサポートにつながるかもしれません。

最後に、ワーキングメモリに関してもっともお伝えしたいことをお話します。

処理したものを、私たちは学びます。

人生をこの時に処理しなければ、生きているとは言えません。

いまこの時の命を生きましょう。

//// 抄訳ここまで ////

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ワーキングメモリを最大限に使うことを意識する

ワーキングメモリは、いま自分がやろうとしている動作や作業に関する情報を一時的に記憶し、うまく統合、処理して、目的の行動をもたらすためのプロセス、と言えます。

ワーキングメモリを使わないと、人の生活は成り立ちません。

直前のできごとを忘れると、次にすべきことにうまくつながらないからです。

カレーを作る場合

カレーを作るときワーキングメモリをどんなふうに使っているでしょうか?

カレーを作るには、肉や野菜を切って、コンロに鍋を置き、鍋の中に油をひいて、コンロに火をつけて、素材を入れて炒める、という手順を取ります。

ワーキングメモリのキャパシティが落ちていると、自分がどこまでやったかわからなくなり、鍋に何を入れたか調べたりすることになるでしょう。そもそも、店で肉や玉ねぎを買うのを忘れるかもしれません。

長期記憶にあるはずのレシピ(カレーの作り方)が思い出せず、インターネットで検索する、なんてこともおこるかもしれないですね。

うまくカレーを作ることができる人は、ドゥーリトルさんがあげたワーキングメモリをうまく使う戦略のうち、どれかを使っているはずです。

すなわち

◯目の前の鍋の様子をしっかり認識している(ほかごとを考えず、いまこの瞬間の情報を処理している)

◯これまで繰り返し、カレーを作ったことがある

◯前にカレーを作ってうまくいった経験、失敗した経験と照らし合わせながら調理している

◯カレーができあがったさまをイメージできている

これらのことを、状況に応じて瞬時にやっています。

片付けをする場合

片付けや捨てることがうまくいかない人も、ワーキングメモリを活かす戦略を使ってみるといいのではないでしょうか?

つまり

◯いま、この瞬間の情報を処理する
「捨てたら、あとで困るかも」なんて先の心配をしない。

「これ、どこかに売ろうかなあ」などと余計なことを考えない。

◯何度も繰り返す
1日15分でいいので、捨てることを繰り返し、捨てる体験にまつわる情報を処理する練習を何度も、何度もする。

◯古い知識・経験との関連づけ
きのう1つか2つ片付けてスッキリした気持ちを思い出してみる。

野望ガラクタを片付けずに放置して、その後味わった罪悪感を思い出してみる。

テレビで見たゴミ屋敷と行く末を思い出してみる。

◯ビジュアライズ
きれいな空気が流れている部屋や、何ものっていないきれいな机をイメージしながら片付ける。

◯組織だてる
片付けるまえに、片付け手順を箇条書きにしたり、マインドマップに描いたりする。

◯サポートする
友達と片付けプロジェクトを一緒にやり情報交換する。

SNSで片付け宣言をしたり、捨てたものを投稿に書く。

ほかにも方法はいろいろあるでしょう。

「捨てられません」「片付けられません」というメールをいただくことが多いのですが、そこで止まっているから片付かないのです。

「捨てられない・・・じゃあ、どうしたら捨ててスッキリできるだろうか」と考えてみてください。

「片付かない」とうじうじ悩む時間とエネルギーを、実際に片付けるにはどうしたらいいのか、その方法を考えること、そしてそれを実践するほうに使えばいいのです。

余計なものは排除する

ワーキングメモリをフルに活かすには、気を散らせない、ということがとても重要です。

脳は、そのとき必要な情報を長期記憶から引っ張ってきたり、目の前にある出来事から、引き出しています。

つまり、それは余計な情報を捨てていることでもあります。

余計なものがそばにありすぎると、この取捨選択がうまくいきません。

英検などの試験中、隣の人が気になって、問題をしっかり解くことができず、不合格になった経験、ありませんか?

隣の人のひどい貧乏ゆすりのせいで椅子のカタカタする音が聞こえてくるとか、ぶつぶつ長文問題を読み上げるその声がうるさいとか、やたら頭をかきむしる手が視界のはしに入るとか。

こういう刺激・情報は、すべて問題を解くというゴールの達成を妨害します。

試験のときは仕方がありませんが、自宅で片付けをするときは、極力こうした妨害を排除した環境で行うべきです。

スマホやテレビを切って、邪魔の入らない時間帯、かつ自分の気力・体力が充実しているタイミングに集中して片付けるのです。

*****

動画にでてきた5つの言葉。意識的に覚えれば、かなり覚えていられます。

木のそばに高速道路があり、そこを走っている車の後部座席に子ども(姉と弟)が乗っており、姉は鏡を見ていて、弟は土星や電極のついている理科の図鑑を見ている、という物語を作り上げ、その様子をイメージするのです。

すると、半日ぐらいは覚えていられるでしょう。しかし、「これは大事な情報だから覚えよう」と意識的に策を講じるから覚えられるのです。

ふだんの生活では、特になんの意識もしていないところに、どんどん刺激や情報がふりかかってきます。

そんな状況において、その時、その時のゴールを達成するには、最初からできるだけ余計なものを排除しておく、捨てる、ということが重要ではないでしょうか?





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