ガラクタを手放せないのはなぜ?3つのドアを開けて片づける(TED)

ミニマルな日常

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なかなか断捨離できない人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは Why is it so hard to let go of clutter?(なぜガラクタを手放すのはこんなに難しいのか)。

スピーカーは Deirdre Greaney(ディアドラ・グリーニー)さん。アイルランドのホリスティックコーチで、不用品の片づけ講座を行っている人です。

彼女自身、かつてはものがあふれた暮らしをしていました。

ものに執着してしまう心理と、そこから抜け出すコツがわかるプレゼンです。

ガラクタを手放すのがなぜ難しいのか

収録は2025年。アイルランドのトラリーで行われた TEDxTraleeWomen でのトークで、長さは約13分。英語字幕あり。

◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

以下に、トークのポイントを紹介します。

ガラクタは部屋も心も重くする

グリーニーさんがガラクタについて講演していると聞いて、家族は大笑いしました。

家庭では、片づけが苦手な人として知られていたからです。

でも、部屋が散らかっていることと、ガラクタがたまっていることは別の話です。

カップや服が出しっぱなしなのは、表面的に散らかっているだけです。ガラクタは静かに積み重なって、空間だけでなく頭の中まで重くしていきます。

グリーニーさんはかつて、アイルランドの3つの違う都市に自分の衣類をためこんでいました。しかし、カレン・キングストンの風水の本(『新 ガラクタ捨てれば自分が見える』)を読み、考え方が変わりました。

タグのついたままのドレス。痩せたら着ようと買った服は、場所を取るだけでなく、まだ痩せていない自分を思い知らせます。

屋根裏も同じです。もはや関係ない仕事用のノートや、子ども時代のぬいぐるみの袋。念のために取っておいたものが、重荷になっていました。

ものを減らし始めて、彼女は気持ちが軽くなりました。

他人のものを片付けるには許可と思いやりが必要

片づけに勢いがついたグリーニーさんは、次に母親の家に手を出しました。

リビングとキッチンを徹底的に片づけたのです。

帰宅した母親は、まるで泥棒に入られたかのような顔をして、「頭の中まで空っぽになったみたい」と言いました。

それが狙いだったのですが、1週間後、部屋は元通りになりました。

母親にとって、部屋にあったものは不用品ではなく安心そのものだったのです。

この状態を心理学では場所への愛着(place attachment)と呼びます。空間やものと感情的な絆を結ぶ心理です。

この経験が教えてくれたのは、他人のものに触れるには許可が必要であること、そして何より思いやりが大事だということです。

片づける伝統と逆行する現象

ものを定期的に整理する習慣は、世界各地に昔からあります。

スウェーデンには 死のお片づけという考え方があります。年齢を重ねたら少しずつ持ちものを減らし、遺された人に負担をかけないようにする文化です。

日本には年末の大掃除があり、中国では旧正月前に家を清めて悪い運を払います。

アイルランドでも、伝統的に掃除をする日があり、近所同士で手伝い合うこともあったそうです。

しかし現代は逆の方向に進んでいます。

2024年の業界レポートによると、ヨーロッパには1万店舗以上の貸し倉庫があり、面積は合計1650万平方メートルにもなります。所持品を別の場所に収納するビジネスが成り立っているのです。

買い物をすると手軽にドーパミンが出ますが、あとに残るのは、満杯のクローゼットと積まれたままの本です。

手放すための3つのドア

では、どうすれば手放しやすくなるのでしょうか。

トークでは、ものを手放すプロセスが3つのドアを開けることにたとえられています。どのドアを開けるかは自分で選べます。

ただし1つ注意点として、不用品は一度片づけても、生活しているうちに形を変えてまた戻ってきます。

ですが、戻ってくるたびにドアを開く練習ができるのです。

ドア1:気分をよくするために手放す

気分をよくするために開けるドアです。

寝室を掃除し、シーツを替え、クローゼットを整えたあと、すっきりした気分になりますね

これは、脳の報酬系が反応しているからです。

買い物で得られる一瞬の高揚とは違い、片づけの満足感は穏やかで長続きします。

グリーニーさんの車の中はいつも散らかりがちだそうです。

ただ、それは自分のバロメーターになっています。車の中がぐちゃぐちゃなときは、たいてい頭の中も混乱しています。片づければ整理できます。

ドア2:成長するために手放す

新しいことを始めたり、すでにあったものを再発見するドアです。

ものがあふれた部屋に入ったとき、重い感じがするのは気のせいではありません。

UCLAの研究では、散らかった家に住む人はストレスホルモンが高いことがわかっています。とくに女性への影響が大きいそうです。

プリンストン大学の研究でも、視覚的なノイズが集中力を下げることが確認されています。

脳には注意を選び取るフィルターがあり、不要なものが多いと働きが鈍ります。

片づけてフィルターがきれいになると、忘れていたノートや中断していたプロジェクト、埋もれていた目標が出てくることがあります。

ドア3:癒すために手放す

自分の感情を回復するドアです。

手放すのがもっとも難しいのは、ものと感情が結びついているときです。

グリーニーさんにとって手放しがたかったのは、母親とオーストラリアを旅行したとき、おそろいで買ったジャケットです。母親は紫色を選びました。

旅行のあと、母親にがんが見つかりました。治療を経て回復し、大学に通っていましたが、やがて再発します。

闘病しながら母親は卒業式までこぎつけ、おそろいのジャケットを着て出席しました。

ある夜、2人で中華レストランにいたとき、同じジャケットを着た女性が入ってきました。

その人もオーストラリアで買ったのだろうかとグリーニーさんが声をかけようとしたら、母親が慌てて言いました。待って、私がチャリティに出したやつかもしれない、と。2人で大笑いしたそうです。

母親はその1年後に亡くなりました。

そのジャケットはまだグリーニーさんの手元にあります。

最近になって、なぜ持ち続けているのかがわかったそうです。問題はジャケットではなく、そこに宿っている物語と感情です。

癒しのための手放しには期限がありません。なぜ持っているかを理解するだけでも、癒しは始まっています。

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捨てられない裏には感情がある(筆子の感想)

ものが捨てられない背景には、感情や物語がある。このトークを見て、あらためてそう感じました。

床や棚にただものが置きっぱなしになっているわけではありません。そこには思い出や後悔、期待や不安が、いっしょに積み重なっています。

ものの山は、自分が抱え込んでいることを教えてくれる

ものがたくさんあるとき、「私は片づけがヘタだから」と思ってしまうと、気持ちはどんどん重くなります。

ものの山は、今の自分が抱え込んでいる考えや感情のサインです。そう考えると片づけは単なる作業ではなく、自分との対話になります。

私も、昔は本を山のように持っていました。そのほとんどが積読でした。

今ふり返ると、本さえ持っていればいつか自分はもっと頭がよくなる、本棚がぎっしり埋まっている自分でありたい、こんな思い込みがあったようです。

読む時間も体力も限られているのに、お守りのように本を手放せずにいました。

私にとって本でいっぱいだった本棚は、知識への憧れや不安が積もった姿だったのです。

そうした自分の感情と向き合って、私は小さな本箱におさまるまで本を捨てました。

他人のものを片づけるときは

グリーニーさんは、人のものに触れるときには許可が必要で、何より思いやりが大事だと話していました。

この部分には、とても共感しました。私もいつも読者にお伝えしていることです。

片づけが好きな人ほど、家族のものを見てイライラしがちです。

ですが、持ち主からすると、持っている理由がちゃんとあります。本人にしかわからない記憶や安心感がやどっているものも多いのです。

私自身、元夫に、私の留守中にものを片づけられたことがあります。

たとえば、アイスクリームを作るときに使っていたボウル。冷凍庫に入れていたら、邪魔に思われたようでした。

毎日味噌汁を作るのに使っていたソースパンは、夫がうっかり落として底をへこませ、黙って別のものに取り替えていました。

どちらも、私はすぐに気づき、どうしたのか問いただしました。

夫はものは捨てない人なので、どれもガレージの奥深くに押し込まれていました。非常に不愉快なできごとでした。

家のスペースには限りがあるので、何もかも残しておくわけにはいきません。

ただ、人のものをいらないと決める前に、なぜ大事なのか聞いてみたり、一緒に見直す時間を取りましょう。

共感をもって進めるほうが片づけは前に進みます。

まずは気分をよくするために捨てる

癒しを得るために開けるドアの話はとても印象に残りました。

ただ、本当に癒しが必要なものはごく一部で、大半はそこまで深い感情はないけれど、なんとなく置いてあるものではないでしょうか。

だから、ドア1の気分がよくなる処分から始めるのがおすすめです。

小さな引き出しを1つ整理する。床が見えなかった場所を10分だけきれいにする。こんなすぐに終わる片づけを試してみてください。

小さな片づけをして気分がよくなれば、次もやりたくなります。そのうち2つ目、3つ目のドアを開ける気になるでしょう。

*****

グリーニーさんが捨てるきっかけになった風水の本は、カレン・キングストンの著書です。

Amazon.co.jp: 新 ガラクタ捨てれば自分が見える (小学館文庫) : カレン キングストン, 田村 明子

私も熱心に捨て活をしていたとき、よく読んでいました。風水の手法を使ってガラクタを捨てる本ですが、精神的なアプローチがとても参考になります。

『ガラクタ捨てれば自分が見える』で衝撃のスペースクリアリングに出会う~ミニマリストへの道(20)

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カナダ在住の60代。ミニマリストです。

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