小麦畑

TEDの動画

最終更新日: 2019.07.28

物を捨てるとやりたいことができる人生になる(TED)

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物を捨てると何かいいことあるの?と疑問に思っている人に見てもらいたいTEDのプレゼンを紹介します。

2016年2月に収録された、Elizabeth Dulemba(エリザベス・ドゥレンバ)さんの Is your stuff stopping you? (直訳:あなたの物があなたを止めていませんか?)という講演です。

物があなたを止めている、とは、物がたくさんありすぎて、自分のしたいことがやれてないんじゃないですか? 物のせいで身動きできないんじゃないですか?という意味です。



物が多すぎて、行動に制限がかかる

エリザベスさんは絵本作家です。2年前、所持品をほとんど売り払ってしまいました。といっても、別にミニマリストではないそうです。

ミニマリストではないのに、なぜ物を手放したのか、その結果どんなことが起こったのか、わかりやすく話してくれています。

動画は17分ぐらい。2016年2月に収録。日本語の字幕がないので抄訳を書きます。

※TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

わざわざ物を自分で持つことはない(導入)

あなたは物のせいで身動きできないのではないですか?

コメディアンのスティーヴン・ライト(Steven Wright)はこんなふうに言ってます。

I have the world’s largest collection of seashells. I keep it scattered on the beaches around the world, perhaps you’ve seen it.

僕は世界で一番たくさん貝殻を集めてるんだ。で、世界中の海岸に置いてる。たぶん、きみも見たことあると思うけど。

何かが世界にあればそれで充分だ、という考えはすごく衝撃的でした。自分で持たなくても価値があるという考え方は私の人生を変えました。

2014年の11月、私と夫は所持品のほとんどを売り払い、別の大陸に引っ越しました。

スティーヴン・ライトのせいじゃないです。そうする理由がありました。

25歳のときにたてた目標の大部分を達成できずにいた

25歳のときに30歳までに達成したい目標を紙に書きました。

ある日、これを見てほとんど達成できていないことに驚いてしまいました。

私が書いた目標はこれです。

・Master of Fine Arts ファインアートの修士をとる
・Teacher 先生として教える
・Published 本を出版する
・Volunteer ボランティアをする
・Live overseas  外国に住む
・Bilingual 外国語をマスターする

30歳になるまでに、このリストで私がチェック印をつけることができたのは1つだけ。ボランティアです。

ボランティアをしたことはとても誇りに思っていますが、あとの5つができていません。

他のことで忙しかったんです。

2014年、私は夫とアメリカンドリームを生きていました。

大きな家に住み、複数の車、物でいっぱいのガレージ、家具でいっぱいの部屋を持っていました。腰を下ろす場所が50ぐらいありました。

言うまでもありませんが、私はミニマリストではありませんでした。今も違います。

では、なぜ物を手放したのか?

外から見たら、いい暮らしに見えたかもしれませんが、私たちは10年ほど不況にあえいでいました。

不況のせいで、旅行できなかったので、テレビを見ていました。House hunters international(ハウスハンターズインターナショナル)という番組です。

登場した人が住みたい国を選び、そこの不動産を買って引っ越しをする番組です。毎晩この番組を見ながら、夫と、「どこに行きたい?ロンドン、パリ、スペイン?」なんて話してました。

番組を見ながら、「でも、どうして、私たちは同じことができないのか?」と感じました。番組に出てくる人は、わりと簡単に不動産を購入し、引っ越しています。

「なぜ私たちじゃないの?」

そう考えながら周囲を見ると、物だらけ。アメリカンドリームを体現している物がいっぱい。

でも、こういうの、私のリストにはのってなかったんですよね。

外国で勉強することにした

ようやく不況が終わり、少し暮らしやすくなってから、夫がこんなふうに言いました。

夫は私のリストのことをよく知っています。

「外国で修士を取ったらどう?」

は、冗談でしょう?

でも夫は本気で、「今じゃなかったら、いつなんだ?」と言いました。

確かにそうです。不況が私たちに教えてくれたことは、いつもチャンスがあるわけではない、ということ。

ネットで調べてエディンバラ大学を見つけました。スコットランドは考えていなかったけれど、私がとりたいプログラムがあったのです。

博士号もとれそうだったし。この大学に願書を出しめでたく入学を認められました。

その後、問題に気づきました。私たちはたくさんの物を持っている、ということに。

夫も私も特に金持ちというわけでもないし、スポンサーもいなかったので、今の生活をそっくりそのまま向こうでやることはできません。

スコットランドに行くためには、物を売るしかなかったのです。

先ほども言いましたが、私はミニマリストではありません。物を手放すことをためらいました。

でも、そうしたほうがいいという兆しはあったのです。





人生はいつ終わるかわからない

数年前、私は健康上の問題に直面していました。2年間、杖なしでは歩けなかったのです。痛みはひどかったし、体重が増え、白髪も増えました。

このとき、パリなどヨーロッパの街角を歩くことなんてもうできないと思いました。自分の人生の可能性がどんどんなくなっていく恐怖を感じたのです。

私は食事の内容を変え、手術を受け、またふつうに歩けるようになりました。運良く、人生の第2章を始めることができたのです。

私はラッキーでしたが、若くしてがんで亡くなってしまった友人がいます。

この体験から2つのことに気づきました。

1.)健康でいることは当たり前のことではない。健康も人生も贈り物である。

2.)人生は有限である。

20歳のときは、自分の夢を叶えるために無限の時間があると感じますが、実は、デッドラインがあるのです。

マーベル映画で、トム・ヒドルストンが演じたロキのセリフにこんなのがあります。

We all have two lives. The second life starts when we realise that we only have one.

人は生涯2度生きる。2つめの人生は、「人生は1度だけ」と分かったあとに始まる。

物を選ぶのか、体験を選ぶのか?

人生は1度きりと考えると、結局、物を選ぶか体験を選ぶか、ということになります。

物をいっぱい持っている人になりたいのか、いろいろな体験をした人になりたいのか。

別に物をいっぱい持っている人が悪いわけではありません。私は他の人の物を見るのは好きです。

けれども、体験をしたいと思っている人が、物をたくさん持っているためにそれができないのは悲しいと思うのです。

それに物をいっぱい持っていても幸せになれない、と科学的に証明されています。

幸せについて20年以上研究している、コーネル大学のトーマス・ギロビッチ博士によれば、人はいつも物に囲まれているけれど、結局、物は人になり得ない。物は私たちの一部にはならないのです。

一方、体験は私たちの一部分になります。

We are the sum total of our experiences.
人はこれまでの経験からできている。

こうギロビッチ博士は言っています。

なぜ私たちはこんなに物を持っているのか?

物が人を幸せにしないのなら、なぜ私たちはこんなに物を持っているのでしょうか?

いろいろな理由がありますが、今日は3つだけ紹介します。

1)Stuff makes us feel safe 物があると安心できる。

これは爬虫類脳(lizard brain トカゲ脳)のせいです。太古の昔、一族のリーダーは、矢を持ってマンモスをしとめにいき、肉や毛皮を持ち帰りました。生命維持に必要なものです。

もっともたくさん物が入っている洞窟に住んでいる人が、生き残れる時代だったのです。

でも今はそんな時代ではありません。肉が食べたければ、スーパーに行って買うだけです。

2)Stuff gives the illusion of permanence 物があると、何もかも変わらないという幻想を抱くことができる。

私たちは自分の周りに物をたくさん置いています。物はどこにも行きません。だから自分たちもずっとここにいられると思うのです。

でも、これは幻想です。

洪水や火事、戦争が起きれば、一瞬で物を失ってしまいます。

3)The marketing machines tell us we should. マーケティング(広告)のせいで物を持ってしまう。

広告は、必要な物だけでなく、そうでない物もどんどん買うように私たちにすすめます。

物を買うと誰でも幸せな気分になります。ですが、しばらくすると、「それに満足してはだめ、新しい物を買いなさい」とすすめられるのです。

いつも、より新しいもの、よりよい物、より輝きのあるものが出てきます。

最初に買ったもので満足したまま何も買わないと経済が回りません。私たちはお金を使って買えば買うほどいいんだ、と思いこまされています。

店にはたくさんの選択肢があり、これは自由の象徴と言われます。実際はもっと買ってもらうための手にすぎないのです。

私たちは、本当にこんなにいろいろな物が欲しいのでしょうか?

ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、

The Price of anything is the amount of life you exchange for it.

価格は、人がそれと交換する人生の量である。

と言っています。

これまで、広告が「あなたにはこれが必要ですよ」というものを買うために、いったいどれだけ自分の人生を費やしましたか?

おすすめの物の捨て方

私はミニマリストではありませんし、何もかも捨てろとは言いません。無駄をなくして少し縮小してはどうでしょうか?

物を捨てる最初のステップは、自分がどれだけ持っているか意識的になることです。

何の役にもたっていないものは手放してください。

嫌な思い出のあるものや、奥の方にしまいこんで、持っていることすら忘れていたものは、捨てるべきです。

捨て方はいろいろあります。

・オンラインで売る
・リサイクルショップに売る
・ヤードセール(フリマ)
・寄付する

私が好きなやり方は寄付です。

不況のとき、地元の図書館の新しい本を買う予算はゼロでした。私も夫も作家ですし、読書好きなので、家には大量の本がありました。

そこで家中の本を図書館に寄付しました。

家に置いておいても、夫と私が1度に1冊ずつ読むだけ。でも図書館に置いてもらえば、1度に大勢の人が楽しめます。これはとても気分がいいこと。ぜひ皆さんもやってみてください。

多くの人は、物を倉庫にしまおうと思うかもしれません。私もそうしようとしたことがあり、倉庫に入れる分を別にしていました。

でも倉庫を使うのはお金がかかります。

しかも、古い物の山を見るたびに過去に引き戻されます。

おまけに、このテーブルをキープする代金は、アムステルダムで週末を過ごすお金と同じとか、ランプは夫と食事をするお金と同じ、と考えてしまいました。

だから倉庫に入れるのはやめ、すべて売りに出すことに。

車も売ることにして、サインを出しました。売る前はすごく後悔するんじゃないか、と心配でした。

ところが、実際に売ってみると、正直に言いますが、ものすごくほっとしたのです。身軽になり自由な気分でした。

物のない人生はとても自由

ほとんどの所持品を売ったあと、身の回りのものだけ持って、オランダに行き、そこの大学で夏の間、教鞭をとりました。

エジンバラ大学の宿舎が空く前に、昔ホームステイしていたパリのお宅に住まわせてもらいました。

こうしたことは、物を手放して移動しやすい状況だからできたことです。どこにだって行けます。

私の目標リストを見てください。ほとんどすべてにチェック印を入れることができました。

今、エディンバラ大学でファインアートの修士課程にいるし、オランダで教えたし、本を12冊出版したし、ヴォランティアもたくさんやっているし、外国に住んでいます。

あと1つ、外国語をマスターするという目標がありますが、今、がんばっているところです。

このプレゼンで伝えたかったことを一言で言うと、

The stuff we keep in our lives affects how we live our lives.

自分が持っているものが、自分の暮らしに影響を与える。

これです。

もしみなさんが持っているもののせいで、やりたかったことがやれていないのなら、捨てることを考えてください。

—— 抄訳ここまで ———

※ヘンリー・デイヴィッド・ソローについて、こちらで少し説明しています⇒ミニマリストブームの背後にあるものとは?なぜ今ミニマリズムなのか。

このプレゼンで、特に私が共感した考え方は3つあります。

物を集めてもしょうがない

まず、スティーブン・ライトの貝殻に関する話。

世界中にある貝殻は自分のものだから、わざわざ自分で集めなくてもいいんだ、という発想をすれば、本当に、よけいな物を買わなくてすみます。

私自身、何でも集めるタイプで、実際いろいろ集めていました⇒人はなぜ物を集めたがるのか?~私はこうして収集癖を断捨離しました

しかし、よくよく考えてみると、こういうコレクションのおかげで、自分の人生が豊かになっていたか、というと全然そうではないのです。

集めたものをディスプレイしていたわけでもないし、分類して研究していたわけでもありません。

ただ、ほしいからどんどん買って、箱や引き出しに入れていただけです。

物をコレクションする人の中には、実際にそのコレクションを何らかの形で生活に活かしている人もいます。

ですが、もしそういうことをしておらず、単に集めて、どこかに押し込んでいるだけなら、手放したほうが、暮らしの質があがります。

物は自分の一部にはなれない

もう1つは、トーマス・ギロビッチ博士の「物は人の部分になり得ない」という説。

いくらたくさん物を持っていても、自分自身が変わるわけではないのです。

確かに物の中には、見ていると心がなごむものがあります。人に勇気を与えてくれているかもしれません。

ただ、そういう物ってそんなにいくつもいらないですよね。

私が持っている物で、見ていると元気になれる、と思うものは1つだけ。

心に栄養を与えてくれる物は厳選して持ち、あとは捨ててしまっても大丈夫なのです。

人は人生を2度生きる

最後は「人生は1度しかない、とわかった日から人は第2の人生を生きる」というロキの言葉です。

確かにその通りですね。

人生は1度きりということがピンと来ず、やりたいことをやらないまま、終わってしまう人も多いと思いますが。

気づくことさえできれば、もっと自分の望む人生を生きられるのではないでしょうか。

そのために、余計な物を捨てるのは本当にいい方法です。

以前の私は、今の暮らしに対する不満を解消するために、物を買っていました。物を買って家にいれれば、もう少し幸せになれるのかな、と考えて。

しかし、実際はその逆でした。たくさん物を捨てたあとのほうが、楽しくなりました。

探し物も減ったし、以前よりポジティブになって快適です。

よければあなたも、少し物を捨てて自由になってください。





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