古い着物

ミニマルな日常

「いつか高く売れるかも」と思うものほど、家から出ていかない理由

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売ればお金になりそうなもの、いつかプレミアがつくかもしれないもの。

そういうものほど、なかなか家から出ていきません。

その裏にあるのは、損をしたくないという気持ちです。

そしてこの気持ちは、自分で思うよりずっとしぶといのです。

資産だと思った瞬間、手放せなくなる

ふだん、いらないものを見つけたら、捨てるか、寄付するか、誰かにあげるか。こんなことを考えますよね。

ところが、これは高く売れるかも、と思った瞬間、それは不用品から資産に変わります。

資産になったものを、タダ同然で手放すのは惜しい。

それなら売ればいいのに、そうした品物の多くは押し入れの奥で何年も眠っています。

損をしたくない、という気持ちが強すぎるからです。

買値を基準にすると、いつまでも売れない

売る・売らないを考えるとき、誰もが無意識に参照している数字があります。

買ったときの値段です。

たとえば、3万円で買ったブランドバッグを買い取り店に持っていったら、査定は500円だった。

こんなとき、売るのをやめて、バッグを家に持ち帰る人が多いでしょう。

500円という金額に、納得できないからです。

3万円のバッグに500円の値がつくと、それを選んだ自分のセンスまで否定されたような気がします。

中古品の値段は、支払った額ではなく、今それを欲しい人がどれだけいるかで決まります。

私が住むカナダには、スリフトショップ(寄付された中古品を売る店)がたくさんあります。

その値づけは、かなりあっさりしています。

ブランドものだからと特別扱いはせず、シャツはいくら、ワンピースはいくらと、需要だけを見てざっくり値段がつけられます。

考えてみると、このほうが中古品の実態に合っています。

買値を基準にしているかぎり、納得できる査定には、まず出会えません。

買った値段や手間にこだわって手放せなくなる心理は、こちらでくわしく書いています⇒せっかくこんなに集めたから:サンクコスト効果~捨てない言い訳その5

押し入れにしまっているのは、失敗を認めたくないだけ

損を認めたくない気持ちは、現状維持を正当化する道を用意します。

株の世界に、塩漬けという言葉があります。

値下がりした株を、売って損を確定させたくないばかりに、ずるずる持ち続けることです。

売らなければ、損はまだ紙の上の数字にすぎません。

ですが売った瞬間、損は現実のものになります。

家にある売るつもりの品も、これと同じです。

500円で手放せば、3万円出して買ったのは失敗だったと、自分で認めることになります。

持ち続けているあいだは、これは価値のあるものだ、という物語を保てます。

だから、売らないのです。

ただ、ものは株とちがって、待っていても値が戻ることはあまりありません。

使わないまましまい込まれたものは、少しずつ傷み、黄ばみ、型が古くなっていきます。

そうしているあいだに、欲しがる人も減っていきます。

つまり、たいていのものは、今この瞬間が一番高く売れます。

損をしたくない気持ちがどんなふうに判断を狂わせるのか、もっと知りたい方は、こちらもどうぞ⇒「損したくない」が判断を狂わせる~非合理的な決断の心理学(TED)

プレミアがつくのはほんの一部

いつか値上がりするかもしれない、という期待も、ものを家に縛りつけます。

古いゲームソフトに何十万円の値がついた、昔のフィギュアが海外で高騰している。

そんなニュースやSNSの話題を見ると、うちのあれもいつか、と思いたくなりますよね。

しかし、宝くじと同じように、話題にのぼるのは、当たったものだけ。

値上がりしないまま忘れられていく大多数の品は、ニュースになりません。

日本は、コレクター市場が発達した国です。

限定品、初回版、未開封品。

実際に高値がつく例を見聞きすると、自分の持ちものも値打ちが出るかも、と期待しやすい土壌があります。

ただ、プレミアがつくのは、保存状態や希少性といった条件がそろった、ごく一部の品だけです。

しかも、コレクター品の値段は、ブームに左右されます。

ブームが去れば需要も消えて、ふつうの中古価格か、それ以下に落ち着きます。

読者から、家族が「これはお宝だから、売れば高い」と言い張って、なかなか手放そうとしない、という悩みが寄せられます。

けれども、本当にお宝なら、とっくに相場を調べて、高いうちに売っているはずです。

調べもせずに持ち続けているのは、お宝かもしれない、と夢を見ている状態が心地いいからです。

値段を調べないかぎり、はずれだと知らずにすみます。

買った宝くじの当選番号を、わざと確認しない人と同じです。

限定という言葉に弱いなら、こちらの記事もどうぞ⇒限定品という言葉につられて買ってしまわないために:要注意のキャッチフレーズ、その2

期待しないほうが、ものは動く

では、止まっていたものを、どうやって動かすか。

答えは、期待値を下げることです。

満足とは、結果から期待を引いた残りです。

1万円で売れると見込んでいた品が3000円にしかならなければ、がっかりします。

値段がつけばもうけもの、と思っていた品が3000円で売れたら、うれしくなります。

同じ3000円なのに、気持ちはずいぶん違います。

期待が高いままだと、どんな査定額を見てもがっかりするので、いつまでたっても売れません。

私の母は、私が日本に残していったLPレコードとカセットテープを、リサイクルショップにまとめて売りました。

音楽に興味のない母は、こんな古いもの、値段がつけば御の字、くらいに考えていたようです。

ところが、思ったより高く売れました。

金額そのものは、人生が変わるほどのお金ではありません。

それでも、期待していなかったから、母は素直に喜び、しばらくご機嫌でした。

私はというと、売れたお金より、実家がすっきりしたことのほうがうれしかったです。

カナダのガレージセールも、利益を期待していない売り方です。

値札は1ドルや2ドルの、捨てるよりマシという価格。

売り手はもうけを当てにしておらず、誰かが使ってくれればそれでよし、と思っています。

だから、ものがどんどん動いていきます。

売るか手放すか、今日ここで決着をつけよう

すっきり暮らしたいなら、家でほこりをかぶっている「売る予定の品」を、今日どうするか決めましょう。

確認することは2つだけです。

まず、いつまでに売るのか、日付を言えますか?

今週末にフリマアプリに出す、来月の連休に買い取り査定に持ち込むなど、具体的な予定が出てこないなら、もう売らないと判断しましょう。

それは、「売るつもり」という名札がついた死蔵品です。

次に、見込みの売値が、置き場所と手間に見合っているか考えてください。

ものを置いておくだけでも、スペースや手間、心の負担といったコストがかかり続けます⇒売ればお金になるとわかっている物をどうしたら捨てられるか?

数百円にしかならない品に、押し入れの一角と頭の片隅を何年も貸し続けるのは、割に合いません。

期限を切れないもの、手間に見合わないものは、売らずに手放しましょう。

寄付する、人に譲る、処分する。

お金にならなくても、家から出ていけば、その日からスペースが使えます。

ちなみに私は、昔から、いらないものはさっさと寄付箱に入れるスタイルです。

売るためのリサーチや出品作業に時間を使いたくないし、収納と頭の中がすぐ空くほうが、いいと思うからです。

値上がりを待って寝かせている品は、わが家にはひとつもありません。

****

もう何年も動かない品を、高く売ろうとするのはやめましょう。

高く売れたらラッキー、くらいの気持ちでいれば、売っても売らなくても、満足して手放せます。

損を惜しむ気持ちは、誰の中にもあります。

私にも、ふと買ったときの値段が頭をよぎることがあります。

ただ、損得を数えるものさしは、お金だけではありません。

空いた収納、探しものが減った部屋、早く売らなければという宿題が消えた頭。

身軽さで測れば、手放した時点で、あなたはもう得をしています。

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