「損したくない」が判断を狂わせる~非合理的な決断の心理学(TED)

TEDの動画

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私たちは毎日、たくさんの判断をしています。何を買うか、何を残すか、どちらを選ぶか。

自分では合理的に考えているつもりでも、実は脳のクセに振り回されていることが少なくありません。

今回は、なぜ人が合理的ではない決断をしてしまうのか、その心理メカニズムを解説するTED-Edの動画を紹介します。

タイトルは、The psychology behind irrational decisions(非合理的な決断の背後にある心理)。解説するのは、認知神経科学者・心理学研究者のSara Garofalo(サラ・ガロファロ)さんです。

損失回避やヒューリスティクス(経験則)といった行動経済学の基本概念を、わかりやすいアニメーションで説明しています。

買い物で余計なものを買ってしまう、捨てたほうがいいものなのに手放せない。そんな悩みがある人に気づきを与えてくれる内容です。

なぜ人は不合理な判断をするのか?

収録は2016年、長さは約5分。動画のあとに抄訳を書きます。日本語の字幕もあります。

◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

ヒューリスティクスという言葉が出てきます。

これは、経験や直感にもとづいて素早く判断する脳のショートカット機能のこと。

深く考えずに、経験や直感でサッと判断する方法で、日本語では「経験則」と訳されることもあります。

ゲームショーで考える損失回避

あなたがゲームショーに出ているとしましょう。

第1ラウンドで1000ドルを獲得し、ボーナスステージに進みました。

ここで選択肢があります。

確実に500ドルのボーナスをもらうか、コインを投げて表なら1000ドル、裏なら何ももらえないか。

第2ラウンドでは2000ドルを獲得し、今度はペナルティステージに止まりました。確実に500ドルを失うか、コインを投げて表なら何も失わず、裏なら1000ドル失うか。

多くの人は、第1ラウンドでは確実なボーナスを選び、第2ラウンドではコイン投げを選びます。

でも、よく考えてみてください。

どちらのラウンドも、確率と結果はまったく同じです。なのに、なぜ第2ラウンドのほうがずっと怖く感じるのでしょうか?

損失回避という心理

その答えは、損失回避(loss aversion)という現象にあります。

合理的な経済理論では、人は、リスクの大きさと金額を計算して判断するはずです。

しかし研究によると、多くの人にとって、何かを失うときの心理的なダメージは、同じものを得るときの喜びの約2倍も強いのです。

損失回避は、ヒューリスティクスから生まれる認知バイアスのひとつです。

ヒューリスティクスは、論理的な分析ではなく、過去の経験や直感にもとづいて問題を解決するアプローチのこと。

こうした思考のショートカットは、恋に落ちたりバンジージャンプをしたりするような非合理性ではなく、論理的に簡単に証明できる状況で、誤った判断をしてしまうことがあります。

確率の判断で起きる連言錯誤

確率が絡む場面は、ヒューリスティクスを使うのに向いていません。

たとえば、緑が4面、赤が2面のサイコロを20回振るとします。

次の3つの出目の並びから1つを選び、その通りに出たら25ドルもらえます。あなたならどれを選びますか?

赤と緑の目のサイコロ

A: 赤・緑・赤・赤・赤
B: 緑・赤・緑・赤・赤・赤
C: 緑・赤・赤・赤・赤・赤

ある研究では、大学生の65%がBを選びました。でも、AはBより短く、Bの中に含まれています。つまり、Aのほうが出やすいのです。

でも、緑が連続する並びが『それらしく』感じるため、脳は実際には出る確率の低いほうを選んでしまいます。

これは連言錯誤(conjunction fallacy)と呼ばれます。

数字に弱い脳とアンカリング効果

ヒューリスティクスは、数字を扱うことも苦手です。

ある実験で、学生を2つのグループに分けました。

一方のグループには「ガンジーは9歳より前に亡くなったと思いますか、後だと思いますか?」と質問し、もう一方には「140歳より前か後か?」と質問しました。

その後、両グループにガンジーが何歳で亡くなったか推測してもらいました。

すると、最初に「9歳」と聞いたグループの平均回答は50歳、「140歳」と聞いたグループは67歳でした。

最初に聞いた、無関係の数字が、その後の判断に影響を与えたのです。

これはアンカリング効果(anchoring effect)と呼ばれ、マーケティングや価格交渉でよく使われています。

ヒューリスティクスが役立つとき

ヒューリスティクスが間違った判断を招くなら、なぜ私たちはこの能力を持っているのでしょうか?

実は、ヒューリスティクスはとても役に立ちます。

人類の歴史の大半で、私たちは生き残るために、限られた情報で素早く判断する必要がありました。

すべての可能性を論理的に分析している時間がないとき、ヒューリスティクスが命を救うこともあったのです。

しかし、現代の環境では、もっと複雑な意思決定が求められます。

さらに、私たちの判断は、自分が思っている以上に無意識の要因に左右され、健康、教育、お金、司法など、あらゆる分野に影響が及びます。

立ち止まって考える習慣を

脳のヒューリスティクスを完全にオフにすることはできません。でも、その存在を意識することはできます。

数字や確率、複数の選択肢が絡む場面に出くわしたら、いったん立ち止まってください。

そして、直感的な答えが正しいとは限らないという、別のヒューリスティックを使って考えてください。

///// 抄訳ここまで /////

認知バイアスに関するほかのプレゼン

先延ばしをしてしまう本当の理由はこれだ(TEDの動画)。

直感をそのまま信じないほうがいい理由(TED)

よりよい決断をするには?シーナ・アイエンガーの選択術(TED)

我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)

バリー・シュワルツに学ぶ『選択のパラドックス』(TED)~所持品をミニマムにすると生きやすくなる理由とは?

直感を疑ってみる

脳には便利なショートカット機能(ヒューリスティクス)があるけれど、それが判断を誤らせることもあると伝える動画を紹介しました。

損失回避については、過去に何度か書いています。

⇒物を捨てられないのは恐怖のせい~損失回避と、授かり効果の心理をさぐる

この記事では、「捨てると損する気がして捨てられない」という心理に焦点を当てました。

今回の動画では、損失回避やアンカリング効果を「ヒューリスティクス」という大きな枠組みの中で説明しているところです。

ヒューリスティクスは、もともと人類の生存に役立ってきた脳の機能です。

限られた情報で素早く判断しなければならない場面では、論理的に考えている暇はありません。

でも、現代の複雑な判断には向いていないことも多いのです。

たとえば、セールで「50%オフ」という数字を見ると、それがアンカー(基準点)になって、本来の価値より高く感じてしまいます。

「定価1万円が5000円」と聞くと、5000円の価値があるかどうかを冷静に見極められないのです。

片づけでも同じことが起きます。「買ったときは高かった」という過去の金額がアンカーになっていて、今の自分にとっての価値を正しく判断できません。

お得が好きだった私は、生涯の半分ぐらいは、セール品、おまけ、付録につられて生きてきました。

その結果残ったのは、大量のガラクタと貯金ができない現実です。

動画の最後にあった、「直感的な答えが正しいとは限らない」というアドバイスは、買い物にも片づけにも使えます。

「これを買わないと損」「これを捨てると損」。

損することを嫌い、損に敏感な私たちは、すぐに「損する!」と感じてしまいます。

でも、その「私、損しちゃう!」という直感を元にすると、今のあなたの環境にとっては、かえってまずい決断をしてしまう可能性があります。

損得を意識したときほど、いったん立ち止まってください。

そして、「本当にそうかな?」と自問します。

そして、この動画で伝えている脳のクセを思い出しましょう。

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カナダ在住の60代。ミニマリストです。

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