恐怖

TEDの動画

100日間、怖いと思うことにチャレンジしてわかったこと(TED)

これを捨てるとあとで後悔するんじゃないかしら、いつかいるかもしれない。

そんな恐怖のせいで、断捨離が進まない人、なかなか自分のコンフォートゾーンを出られない人に勇気を与えてくれるTEDのプレゼンを紹介します。

タイトルは 100 Days Without Fear(恐れなしの100日間)。プレゼンターはミシェル・ポラー(Michelle Poler)という若い女性です。

彼女は、もともと怖がりで、安全な道を行くタイプ。しかし、ビジュアルアートの修士号を取る過程で行ったプロジェクトで、100日間、自分が恐ろしいと思っていることをやり続けるチャレンジをしてみました。

もっと勇気のある人になりたかったからです。この挑戦は意外な展開を見せました。



100日間、恐怖を克服するチャレンジ、TEDの説明

Fear prevents us from living life to the fullest. Through her experience facing 100 fears, Michelle learned how we deal with fear, the types of fears we face in life, and the process through which we are able to manage the anxieties and accomplish great things.

恐怖のせいで、人は思う存分人生を生きられません。100日間、恐怖と向き合う体験を通して、ミシェルは、恐怖とのつきあい方、人生にある恐怖の種類、不安を超えて、素晴らしいことを成し遂げられるプロセスを学びました。

動画は15分です。最初の1分40秒は彼女が恐いと思っていたことに挑戦している様子が見られます。

字幕は英語のみ。動画のあとに抄訳を書きます。ミシェルさんはベネズエラの人です。

夢の実現をはばむ最大の障害

きょう、いまこの場で、私は100個めの恐怖に立ち向かっています。

すべては、ニューヨーク市のスクールオブヴィジュアルアーツ(School of Visual Arts)で、ブランディングの修士課程を取っていたときに始まりました。

あるとき、エッセイを書く課題が出ました。心の奥底までおりて、10年後の自分の最良の結果を書きます。この課題は、とても恐ろしい反面、自由な気分にさせてくれるものでもありました。

まず自分の大きな夢を見つけ、次に、その夢を達成するために障害となるものを考え、その中から最も大きな障害を見つけるように言われました。

自分の人生を振り返ってみたとき、私は、恐怖のせいで、いろいろ体験するチャンスを逃してきたことに気づきました。

私が夢を達成することを阻む最大の障害は恐怖なのです。

恐ろしいと思うことを100回やるチャレンジを開始

このとき、自分でテーマを選んで、100日間のプロジェクトをやるように言われました。私は自分が感じている恐怖と1つずつ向き合うことにしました。

私は小さなときから怖がりで、恐怖のせいで、台無しになったことがたくさんありました。

小さいとき、おじが大きな犬を飼ったので、親戚が集まって楽しくとるはずの食事が悪夢になりました。友だちとヨーロッパにバックパック背負って旅行したとき、ホステルや駅に泊まることを考えただけで震えそうに怖かったし、どんな薬物も、恐ろしくて試せませんでした。

ずっとそれでいいと思っていました。

かなりの怖がりだったから、自分が怖いものは100個ぐらい簡単に見つかるだろうと思いました。だから、このチャレンジを始めることを、1つめの恐怖として、開始しました。

それから、初めて猫を抱いてみたり、あらゆる食べ物を食べてみたり、1日間、まったくスマホを持たずに過ごしたりして、39日まで来た時、注目すべきことが起きました。

初めて献血をする恐怖に向き合っていたときです。40個の違う恐怖を体験してみて、実は、自分はいつも同じような恐怖に立ち向かっていたことに気づきました。

針が怖いのではなく、痛みを感じるのが怖かったのです。

カラオケで歌うのが怖いんじゃなくて、恥ずかしい思いをするのが怖かったのです。

ニューヨークの通りで物乞いするのが怖いのではなくて、拒絶されるのが怖かったのです。

このとき、怖いことが100個あるのではなく、自分は7つのことが怖いとわかりました。痛み、危険、嫌悪感を感じること、恥ずかしいと思うこと、拒絶されること、孤独でいること、そして制限されること。

痛みと向き合うためにあらゆることをやりました。ピアスの穴を開けたり、ブラジリアンワックスをしたり、スパイシーな食べ物を食べたり、針療法をしたり、絶壁から飛び降りたり。

こんなことをやったら、自分は痛みを感じるのが怖いと再確認できました。

でも、ピアスは大好きだし、夫はブラジリアンワックスを気に入ってました。

恐怖を感じる理由

それぞれの恐怖の違いや原因を理解するために、カテゴリー分けをしました。私たちが誰なのか、なぜ私たちは特定の行動をとるのか、その理由となる価値観をもとに分けます。

これは学校のトム・モレロ教授から学んだことです。

私たちは、みな、普遍的な価値観をもって生まれていて、成長するに従って、文化的価値観、個人的な価値観を持つようになります。

危険、痛み、嫌悪感への恐怖は普遍的な恐怖に入ります。

恥や拒絶への恐怖は文化的な恐怖です。立派な大人になれるように、社会が私たちにガイドラインを示します。

孤独や制限に関する恐怖は、私の個人的な価値観によるものでした。

私は、第2次世界大戦で生き残った家系の出なのです。一族の半分がナチの強制収容所で亡くなりました。祖父母は運がよく、なんとか生き延びて、何もないところから生活を始めたのです。

でも彼らの恐怖はいつまでも残りました。世代から世代へ伝わったのです。母はたくさんの恐怖を感じながら育ったし、私もそうだったのです。

さらに、私は、自然がとても美しく、食べ物がおいしく、素晴らしい人がいる素敵な国、ベネズエラで育ちました。しかし、一方でベネズエラは、世界でももっとも治安の悪い国です。

誘拐や強盗、殺人がひんぱんに起きています。車を取られても命が残っていたらラッキーです。ベネズエラの人々は、日常的に恐怖を感じているのです。

ですが、自分がこわがるのを、過去や状況のせいにしたままにしていてはだめです。そんなことをしていても、未来は変わりませんから。

私たちがすべきなのは、恐怖に向き合って、恐怖との関係を変える努力をすることです。





恐怖を克服するプロセス

数々の恐怖を体験して、恐怖と向き合うごく自然なプロセスを学びました。

1.見つける段階(discovery stage ディスカバリーステージ)
自分が何かを怖がっていることに気づく段階。

2.拒否する段階(denial stage ディナイアルステージ)
それを怖がっていることを無視する段階。この段階にとどまると人生は快適です。次の段階へ行く人はあまりいません。

3.決意の段階(ディターミネーションステージ
恐怖と向き合うことに決め、準備をする段階。

4.いったい自分は何やってるの段階(WTF am I doing stage)
恐怖と向きあう決断の是非について考えすぎたり、起こりうる最悪の事態を考える段階。

5.実践段階(action stage アクションステージ)
信仰をもっていようとなかろうと、神のご加護を祈りながら、恐ろしいと思っていることをやっている段階。

6.お祝いの段階(celebratory stage セレブラトリーステージ)
「やった!I did it」と自分のやったことをお祝いし、世界中にシェアしたり、自分のことを誇らしく思う段階。

このあと、ちょっと自分のやったことを恥ずかしく思ったりする段階もあります。100個の恐怖に向き合った私の体験では、実際に行うことが、やる前の恐怖より恐ろしかったことは一度もありません。

恐怖に向き合うたびに、何度もこのプロセスが起きます。何度怖い目にあったかは関係ありません。

疑念ステージから実践ステージへ行くコツ

自分のやっていることを疑う段階から、実践段階に移るために、こんなツールを生み出しました。

1.認知ツール(cognitive tools)
「これは10秒で終わる」「最悪の結果になったとして何が起こるのか?」「運命は避けられない」など、自分に言い聞かせる。

2.行動ツール(behavioral tools)
向き合う恐怖によって違うことをします。絶壁から飛び降りた時は「1,2,3,ジャンプ!」と数えました。

3.感情ツール(emotional tools)
ステージにあがる前に、ベストの気分でいられるように努力し、ポジティブなエネルギーを持ち込む。

この3つのツールを使ったからといって、恐怖がなくなるわけではありませんが、より恐怖になじむことができます。

恐怖を取り去ろうとするべきではありません。恐れは、私たちを危険から守ってくれる仲間です。

恐怖としっかり向き合うと、ほかの感情が登場します。このチャレンジをする前には予想もしなかった感情です。

大事なのは、恐怖は恐怖の場所に置いておいて、ほかの感情にまざらないようにすることです。

恐怖との関係性を見直すと、人生そのものへのアプローチが変わります。私の場合、「いいえ、けっこうです」と言っていたのが、「よし、やってみよう」と変わりました。

100回恐怖を乗り越えないと変わらない人もいるかもしれませんが、人によっては10回です。たった1回のチャレンジで人生が変わる人もいます。

恐怖を完全に手放すことはできませんが、恐怖と交渉することはできます。すると、自分の夢の実現に向かって歩き続け、考えてもいなかった体験ができるようになるのです。

恐怖と向き合う体験をシェアしたら起きたこと

40日目を迎えるころ、メディアが私のプロジェクトを発見し、私は自分の体験をシェアするパワーに気づきました。

世界中のたくさんの人から、お礼のメッセージが届くようになったのです。私が、彼らをやる気にさせたからです。

このとき、私のプロジェクトのゴールは、勇敢な人になる、という個人的なものから、望む人生を手に入れるために、コンフォートゾーンを出たいと願っている人々を力づけることに変わりました。

恐怖と向き合うことが伝染するだなんて、誰に想像できたでしょうか?

[13:30~14:13 ミシェルに送られたビデオが映し出されます。]

最後にみなさんに宿題を出します。来週向き合う恐怖を1つだけ考えてみてください。

昇給を頼むこと、プロポーズすること、飛行機から飛び降りるような馬鹿げたことをすること、など。

恐ろしさに向き合って、やってみてほしいのです。そしてその体験をシェアして、別の人を勇気づけてください。

/// 抄訳ここまで ///

単語の説明

hostel   ホステル、若者用の簡易な宿泊所。たいてい相部屋です。

Brazilian wax  ブラジリアンワックス;主にアンダーヘアーを取る脱毛。

WTF = What the fuck ! 驚いたときや、怒っているときに使うスラング。「いったい全体、どうなってるの」といった感情を表します。

文脈によって訳し方はいろいろですが、この動画の場合は、「こんなバカげたことをやろうとしている自分っていったい、何考えてんの? バカじゃないの?」という感じでしょうか。

ネイティブはよく使いますが、品のいい表現ではありませんので、ノンネイティブは使わないほうがいいです。使いどころを間違える可能性大です。私は絶対使いません。

ミシェルさんも、「ダブリューティーエフ」とアルファベット読みしています。

恐怖とのつきあい方に関するほかのTEDのプレゼン

「恐怖」が教えてくれること:カレン・トンプソン・ウォーカー(TED)

心配性は自分で克服できる。恐怖と向き合うことを学ぶ(TED)

恐怖に打ち勝つ方法。3つの質問を投げかければいい(TED)

恐怖と向き合う初日のチャレンジ

ミシェルさんは、100日のチャレンジを毎日動画にとって、YouTubeにアップしていました。ビジュアルアートの学校に行っていたのですからYouTubeを利用するのは自然な流れです。

そのうち「おもしろいことをやっている人がいる」と話題になったようです。

この40秒の動画は初日のチャレンジです。動画でも語っていたように、1日目のチャレンジは、このチャレンジをすると決めたことです。

40秒

2日目は初めて生牡蠣を食べること、3日めは猫を抱き上げること。ミシェルさんは動物が怖かったようで、犬とふれあう日もあります。

YouTubeですべての動画を見られます。「初めて値切る」とか「街をパジャマで歩く」「一人旅をする」なんてのもあります。

何を怖がっているのかわかればできるかもしれない

「捨てると後悔しそうなので、後悔しない捨て方を教えてほしい」というメールをいただくことがあります。

ですが、物を捨てることなんて、ミシェルさんがやってきたことに比べると、恐ろしくもなんともありません。

自分一人で完結できることですから、恥ずかしくもないし、誰かに拒絶されることもないです。もちろん命の危険もありません。

みんな必要以上に捨てることを恐れています。あるいは、「捨てると後悔する」という根拠のない思い込みがあるのでしょう。

以前、雑誌の取材を受けたときも、「筆子さんが捨てて後悔したものを教えてほしい」と言われました。ですが、捨てて後悔したものは1つもありません。

物がなくなっても、替わりの物を手にいれることができます。

「でも、これは唯一の思い出の物だから捨てられない(だけど、ほかにも思い出の品物はどっさりある)」と思うとき、自分が本当は何を恐れているのか、じっくり考えてみてください。

「怖い」と思うときが、コンフォートゾーンを出るチャンスです。

コンフォートゾーンを出ないかぎり、新しい世界に入ることができません。

*****

私も小さいときからけっこう怖がりです。子供のときは、とにかく知らない大人と対面するのが恐ろしかったですね。

それと、ホラー漫画や怪談のドラマもすごく怖がっていました(いまも苦手です)。私が小学校低学年のころ、楳図かずお先生の怖い漫画がとても流行っていました。

読みたいけれど、一人では読めなかったので、いつも友だちと一緒に読んでいました。お母さんがヘビ女の話とか。

着物のすその柄がヘビのうろこ状に変わっているところなど、今も覚えています。これは嫌悪を感じることを恐れていたのでしょうね。





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