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TEDの動画

最終更新日: 2024.11.9

時が傷を全部癒やしてくれない時(TED)~幼少期のトラウマを勇気に変える。

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子供の頃のトラウマに悩んでいる人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは、When time doesn’t heal all wounds(時がすべての傷を癒やしてくれない時)

公衆衛生やリーダーシップにの専門家、 Dr. Robert K. Ross(ロバート・K・ロス}博士の講演です。



時が癒やさない傷・TEDの説明

Robert K. Ross, MD, President and CEO of The California Endowment, gives a compelling overview of the role that exposure to childhood trauma plays in the lives of troubled and chronically ill Americans.

カリフォルニア基金の会長兼CEOであるロバート・K・ロス医学博士は、幼少期のトラウマを明らかにすることが、問題を抱え、慢性的に病気を患っているアメリカ人の生活にどんな役割を果たすか、説得力のある概略を述べます。

2014年の5月、カリフォルニアのアイアンウッド州立刑務所(Ironwood State Prison)で行われたプレゼンです。

動画の長さは13分、英語など数カ国語の字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

とても説得力のあるトークです。





子供のときのトラウマという疫病

カリフォリニア基金において、もっとも重要で、重大で、強力な病気、アメリカの病気でもあるこの病についてお話しします。

それは、子供時代のトラウマです。

ここ、アイアンウッド州立刑務所は、トラウマのある若者たちに何が起こり、それが今後の人生にどんな影響を与えるのか話すのにぴったりの場所です。

最初にクローディアの話をしますね。

クローディアのエピソード

彼女はLAで育ちました。この刑務所の皆さんが育ったのと似たような場所です。

若者が大学に入るより、ギャングの仲間になる可能性が高いところ。

そんな場所で生まれ育ったクローディアですが、いい生徒でした。

でも、12歳のときに、彼女の姉が無惨に殺されました。その数カ月後、もう1人の姉も、彼女の目の前で撃たれました。

その後、クローディアは優等生から問題児に変わりました。

頑固で、反抗的になり、成績は下がり、教室から追い出され、停学になり、最後には退学させられました。

クローディアは学校や教育への興味を失って、14、15歳のころ妊娠し、とても厳しい生活をすることになったのです。

彼女の物語がどんなふうに終わったかは、後ほど、お話します。

トラウマと健康の関係

クローディアの話は、トラウマが重要で、いかに影響力があるか物語っています。

カイザーパーマネンテ(アメリカの三大健康保険システムのひとつ)において、著名で優れた小児科の研究者、ヴィンス・フェリティ博士は、17000人の患者について、重要な研究を行いました。

博士は、幼少期にトラウマになる体験、困難な体験、害になるストレスを何度も感じることが、大人になってからの健康にどんな影響を与えるか調べました。

患者の医療記録を見て、彼は、子供のころのトラウマの数と健康に大きな関連があることを見つけました。

博士は被験者にこんな質問をしました。

子供のとき、肉体的に虐待されたか、性的に虐待されたか、家庭で暴力を目撃したか、母親が家庭内暴力の被害者か、親が収監されたことがあるか、近所やコミュニティで暴力を目撃したか?

幼少期のトラウマの長期的な影響

博士は、3つ以上のトラウマがある場合、子供のときだけでなく、大人になっても、健康状態がとても悪くなることを発見しました。

5つ以上のトラウマがある場合、喫煙率が大きく上がり、アルコールの濫用率は8倍、薬物の利用は4000倍にもなるのです。

「時がすべての傷を癒やしてくれる」という言葉は嘘っぱちだとわかりますよね。

トラウマに対する脳と身体の反応

トラウマが人に影響を与えることは、論理的に説明できます。

私達の脳はサバイバルするために設計されています。

大昔、人が洞窟で暮らしていた頃から、私達は「戦うか逃げるか反応」という生存するための反応をしました。

トラを見つけたら、逃げたし、別の民族からの攻撃に対しては戦わねばなりませんでした。

人の脳には前頭前皮質という部分があり、ここは、読書、学習、問題解決、ゲームで勝利するために使われます。

しかし、脳には本能的に動く部分もあり、ここは、生存するために動きます。

脳の後ろ側や内側にありますが、脅威を感じたときや、トラウマを感じたとき、「戦うか逃げるか反応」を起こすんです。

この反応が起きると、コルチゾール、ACTH、エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリンといったホルモンが放出されます。

筋肉に血液が送られ、筋肉は緊張し、瞳孔は広がり、汗が出て、緊張し、戦うか逃げる準備を整えます。

この反応は、トラやライバル一族をかわすときに有効です。

しかし、子供時代に、繰り返しトラウマを感じると、それは脳と身体によくない影響を与えます。

アメリカの死亡原因のトップテンは、心臓病、脳卒中、糖尿病、喫煙による肺疾患、飲酒による肝疾患、自殺、殺人といった病気や行動です。

子供時代にトラウマになる出来事をたくさん体験した人は、そのような行動で自分を傷つける可能性が上がります。

自分をトラウマから守るために薬物やアルコールを使うのです。

これはトラウマのよくない側面です。

トラウマを勇気とレジリアンスに変える

しかし、別のおもしろい側面もあります。それは、勇気とレジリアンス(立ち直る力)です。

勇気やレジリアンスは、科学的には、まだトラウマほどは理解されていません。

トラウマが、脳の一部である扁桃体や海馬に影響を与えます。思考を行動に変える部分に影響があるわけです。

でも、医学用語は気にしないでください。

子供時代に繰り返しトラウマの残るできごとを体験すると、精神を打ち砕かれます。

すると、人は希望を失います。

勇気とレジリアンスは、トラウマや逆境を、ポジティブで変革的なものに変える能力です。

トラウマをリーダーシップに変える

たとえば、飲酒運転に反対している母親たちの運動(Mothers Against Drunk Driving)があります。

子供を事故で失うという悲惨な体験をした母親たちの運動のおかげで、飲酒運転に対する態度やそれを規制する法律が変わりました。

親にとって子供を失うほど悲しい体験はありません。

しかし、この運動をしている母親たちは、団結して議会に対して法律を変えるよう迫りました。

トラウマを利用して、個人的に変わり、社会的なリーダーシップを取るようになったんです。

ギャングのメンバーとして暴力にまみれて生活していた多くの人々が、その経験を通じて変わり、今は、コミュニティの平和を守る存在になっています。

ネルソン・マンデラは、南アフリカで27年間、自分の信念を貫くために、拷問とトラウマに耐えました。

そして、その後、平和を推進するリーダーとして、南アフリカに、史上、もっとも平和的で民主的な変革をもたらしました。

どうしたらそんなことができるのか?

どうしたら、勇気とレジリアンスが生まれるのか?

自分に何が起きたのか、その真実に直面し、受け入れ、自分の行動の責任を引き受け、他者とつながり、つらかった体験を使って変化を起こすリーダーになれば、勇気とレジリアンスが生まれます。

リーダーになったクローディア

クローディアの話に戻りましょう。

クローディアは補習学校へ行きました。そこで、やさしい大人が、彼女がトラウマと真実を結びつける手助けをしました。

その人は、クローディアが自分の人生を見つめ、その人生に無限の可能性があると気づくのを手伝ってくれました。

今、クローディアは、南中央ロサンゼルスのユース・ジャスティス・コアリッション(直訳:青少年正義連合)のリーダーとして活躍しています。

彼女がどんな活動をしているかお話ししますね。

私のように、アイアンウッド州立刑務所に訪れる重要な役職についている人達に言いますが、子供たちは助けを求めて叫んでいるんですが、私達はその声に気付きません。

教室では、反抗的な子供と見られ、授業をさぼる問題児、悪い子供として扱われます。

でも、その子供にどんなことが起きているのか、私達は時間をとって調べないんです。その子とつながり、希望や可能性があることを教え、彼らが求めているある種の手当をしないんです。

だからクローディアは、ほかの若者と一緒に、子供たちの声を聞いて、むやみに退学させるな、と言っています。

そういう子供たちを教室から締め出し、道端に追いやるのではなく、助けてあげるシステムを作るにはどうしたらいいのでしょうか?

この連合とクローディアが率いる若者たちは、ロサンゼルス統一学区の政策を変更し、2年以内に停学率を50%削減しました。これがリーダーシップです。

私達の責任

アイアンウッド州立刑務所に訪れている皆さん、私たちには責任があります。

この強力な疫病について理解し、学校、少年院、養護施設、医療システムなどあらゆる場面で、子供たちがトラウマを受けていることを認識しなければなりません。

そして、彼らとつながり、関わって希望を与えなければなりません。

ここにいる囚人の皆さんにも責任があります。

私達は互いに協力しあい、それぞれの役割を果たしましょう。

皆さんの仕事は、自分に起きたことを利用して、変わること。その体験をリーダーシップに変えて、ここにいる間も、コミュニティに戻ったときも、リーダーになることです。

すでに皆さんの多くが、その道を歩み始めていますよね。

最後に、13世紀のペルシャの詩人の言葉で締めくくります。

「あなたの傷は、光があなたに入る場所だ(Your wound is where your light enters you)」

囚人の皆さん、皆さんが傷を負っていることはわかっています。その事実は否定しないでください。

見つけて、自分が変わるために使ってください。世界を変えてください。皆さんにはできます。無限の可能性があるんです。

//// 抄訳ここまで ////

トラウマや逆境に関するほかのプレゼン

子供のころのトラウマがいかに生涯の健康に影響を与えるか(TED)

逆境はチャンス。最高の人材の履歴書が必ずしも理想的でない理由(TED)

障害を乗り越えてゴールに到達する方法(TED)

なぜストレスは身体によくないのか、どうやってストレスに強くなるか(TED)

困難な時期がくれる贈り物(TED)

立ち直る力(レジリアンス)を養う方法(TED)

危機を乗り越える人(レジリアントな人)の3つの秘密(TED)

トラウマをポジティブに使う

幼少期のトラウマは大人になっても深刻な影響を与える。でも、適切な支援があれば、トラウマから解放され、自分を変え、社会を変えるリーダーになれる。

そう伝えるプレゼンを紹介しました。

この記事を読んでいる皆さんは、クローディアほど過酷な状況で育ってはいないと思います。

でも、「親になる資格のない親」に関するプレゼンを紹介したとき

すべての親が「いい親」ではない(TED)

「私もそういう体験をしました」と教えてくれた読者が何人かいました。

そういう人はトラウマが残っているはずです。

そのトラウマは、自分や社会をよくするために使うこともできます。

まずは、つらかった出来事から逃げようとしないこと。

むしろその体験と向き合って、受け入れることで、変わるチャンスが得られます。

1人ではそういうことをできないかもしれません。

クローディアが、補習学校で出会った先生のような人の助けが必要だと思います。

自分の中にずっと押し込めるのではなく、時には人の助けを借りて、つらかった体験を糧にしてください。





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