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4月から新しい生活が始まる人も多いのではないでしょうか。進学、転職、引っ越し、新しい習慣を始める——環境が変わるとき、不安や緊張を感じます。
「新しい環境に馴染めるだろうか?」
「みんなに好かれるだろうか?」
「うまくやれるかな?」
こうした不安に押しつぶされそうになることもあるかもしれません。
今回紹介するTEDトーク、Getting Comfortable with the Uncomfortable(居心地の悪さに慣れること)では、ハーラン・コーエン(Harlan Cohen)氏が不快なことに慣れることの大切さを語っています。
彼は、作家、講演家、アドバイスコラムニストとして、20年以上にわたり、大学生や若者向けにアドバイスしてきました。
環境が変わったときに限らず、居心地悪さを感じるのはよくあること。そんなときどう対処したらいいのか教えてくれる講演です。
居心地悪さになれる
収録は2014年11月、動画の長さは15分。動画のあとに抄訳を書きます。
トークの中に出てくるエピソードは、すべて大学生のものですが、彼の気づきはどんな年代の人にも当てはまるでしょう。
誰もが居心地悪い状態を経験する
私は社会的・感情的にとても不安を感じやすいタイプで、人からどう思われているか過剰に気にします。そして、人に好かれたいと思っています。
独身だったとき、とてもつらい思いをしました。今でも拒絶されるのが怖いです。
これまで400以上の大学を訪れ、何十万人もの学生と話してきたので、こう感じるのは私だけではないことを知っています。
アドバイスコラムの執筆も20年以上して、多くの人の悩みや秘密を聞いてきたので、皆が、不快な状況を感じていると実感しています。
世界には2種類の人がいます。
・不快なことと戦う人
・不快なことと向き合う人
不快なことと戦う人は、憎み、隠れ、誰かのせいにします。
一方、向き合う人は、私が「不快なことに慣れる」と呼んでいる行動をとります。
今日は、この不快なことに慣れる方法をお話しします。誰でも、今すぐ使える方法です。
孤独だった大学時代
私自身の不快な状況との戦いがピークに達したのは、大学に入ったときでした。
ウィスコンシン大学マディソン校に進学し、素晴らしい大学でしたが、入学早々みじめな気分になりました。
友達がいなかったのです。
ルームメイトと友人になりそこなう
入学したばかりだから当たり前なのですが、当時の私はすぐに友人が欲しくて、まずルームメイトと仲良くなろうとしました。
でも彼が、マリファナを吸い始め、私に勧めたとき、どうしていいかわからず、とっさに「お腹いっぱいだから」と断りました。
その結果、ルームメイトは私に距離を置き、友達を1人失いました。
フラタニティに入れず彼女にも振られる
寮を出て、フラタニティで友達を作ろうとしましたが、私1人だけ選考で落ちてしまい、さらに孤立しました。
友人はマイナス8になり、状況は悪化する一方でした。
そんな私ですが、なぜか高校生の彼女がいました。
とは言え、私の恋愛は決して順調ではありませんでした。
昔、ダンスに誘った女の子に「太った人とは付き合わない」と拒絶された苦い思い出があります。
この体験から「私は欠陥がある」と思い込み、誰にも愛されないと感じるようになりました。
しかし、その後、高校で恋に落ち、彼女と付き合うことができたんです。
大学に入ると孤独とうつ状態に陥り、彼女だけが心の支えだったのですが、彼女の父親が私と別れるよう促し、彼女は父親に従い、私は唯一の愛を失って絶望しました。
新しい大学で問題を乗り越えた
その後、逃げるようにインディアナ大学へ転校しました。
兄たちが通っており、友達もいる環境だったため、うまくやれると思っていました。
ところが、新しい環境でも困難と不快感がつきまといました。でも今回は忍耐強く過ごし、最終的には乗り越えることができました。
4年生になって、学生向けのアドバイスコラムを書き始めたので、多くの学生が自身の悩みを打ち明けてくるようになりました。
そのとき、重要な事実に気づきました。
「人生は不快なものだ。とても痛みを伴うものだ。 しかし、それを誰も高校生や大学生に教えてくれない」。
その結果、多くの学生が環境に適応できず、約4人に1人が転校し、3分の2がホームシックや孤独を経験し、さらに3分の1は深刻なうつに苦しみます。
中には他人を傷つけたり、最悪の場合、自ら命を絶ってしまう人もいるんです。
不快なことに慣れる方法を発見した
しかし、人生はそこまで不快なものである必要はありません。
私は不快なことに慣れる方法を見つけました。人生を変えるほどの大きな気づきでした。
この方法を見つけたおかげで、私は前に進むことができるようになり、本当に好きなことを見つけ、健全な人間関係を築けるようになりました。
今日はこの方法を皆さんにお伝えします。ぜひあなたも誰かに伝えてください。
拒絶の法則
不快な状況の根底には普遍的な拒絶の法則という真実があります。この法則にはさまざまな形があります。
・友情における普遍的な拒絶の法則:出会う人すべてが友達になってくれるわけではない。友達になる人もいれば、ならない人もいる。
・ビジネスにおける普遍的な拒絶の法則:自分の商品やサービスを気に入る人もいれば、気に入らない人もいる。
・恋愛における普遍的な拒絶の法則:私のことを好きになる女性もいれば、「うーん…ちょっと違うな」と思う人もいる。あなたのことを見て「うーん…』」と思う人もいる。でも、間違いなく「最高!」と言ってくれる人もいる。
これが普遍的な拒絶の法則です。
世界には2種類の人がいます。
一つは、真実と戦う人たち。
彼らは憎んで、隠れ、避け、言い訳をします。もしかすると、あなたもそうかもしれません。
もう一つは、真実に向き合える人たち。
この2つの違いは、真実を乗り越えられるかどうかです。
真実を受け入れ、乗り越えられる人たちは、ある秘密を知っています。
それが 「人・場所・忍耐」です。
5人の人
不快な状況に直面したとき、それを乗り越えられる人には支えてくれる人がいます。
あなたの人生で、常に味方でいてくれる5人は誰ですか?
状況によって、あなたを支えてくれる人は異なります。
助けを求められる人、手を差し伸べてくれる人、お金を払えばサポートしてくれる人など。
3つの場所
誰にでも自分の居場所が必要です。
居場所がないと、人は行き場を失い、絶望しパニックになります。
でも、私たちには愛され、受け入れられ、支えてもらえる場所があります。
あなたの3つの居場所はどこですか?
忍耐
私たちは、忍耐力がまるでありません。
SNS、メール、即時返信が当たり前の時代です。
ためしに「忍耐」という言葉をGoogle検索してみたら、0.45秒で4200万件の結果が出ました。
でも、私はこう思ったんです。「0.25秒で出てほしかった!」って。
私たちは待つことが本当に苦手なのです。
鍵は、人・場所・忍耐です。
ここで、人・場所・忍耐がなかったために困難を乗り越えられなかった例を紹介しましょう。
逃げ出した女子学生
ある保守的な女子学生が、自由奔放なルームメイトと同じ部屋で暮らしていました。
ある夜、ルームメイトが彼氏を部屋に連れ込み、二段ベッドの下のベッドで一緒に過ごし始めました。
彼女はどうしていいかわからず、ただその場にとどまり、事態が収まるのを待ちましたがいっこうに改善しません。
耐えきれなくなった彼女は、母親に電話をかけて相談しました。母親は「すぐに行くわ!」と答えました。
それから3時間後、母親が駆けつけ、彼女を部屋から連れ出しました。その結果、彼女は1人部屋(シングルルーム)に移されました。
これは不快な状況と向き合うのではなく、ただ避けるだけの解決策です。
なぜ、彼女はそこに3時間もいたんでしょう?
彼女はこれからも、不快なことに直面するたびに逃げ続けるのでしょうか?
次に、人・場所・忍耐を見つけることができた人たちの話を紹介します。
傷を乗り越えた女子学生
数週間前、ペンシルベニアの大学で、2人の女性学生と話をしました。最近よく話題にのぼる性的暴行について尋ねると、1人の女性が「はい」と答えました。
彼女は1年以上もの間、酔って眠っている間に友人の知人から暴行を受けたことを誰にも話せずにいました。
罪悪感や恥ずかしさを感じ、ひとりで抱え込んでいたのです。しかし、先週ついにこのことを打ち明けました。
「同じ経験をした人に何かアドバイスをするとしたら?」と尋ねると、彼女はこう答えました。
「誰か一人に話してほしい。」
彼女は、最初にある友人に話したことで気持ちが楽になり、その友人のルームメイト2人も加わり、3人に支えられたと言いました。
さらに2日後、「Take Back the Night」という性的暴行の被害者や支援者が集まるイベントに参加し、何百人もの人々に囲まれていると感じたそうです。
最初は1人だった。でも、それが3人になり、やがて何百人になりました。
大切なのは「人」なんです。
居場所を見つけた女子学生
別の大学では、前年のイベントに参加した女子学生が駆け寄ってきました。
「ハーラン!また会えて嬉しいです。私のこと覚えていますか?」
僕は「もちろん!」と答えましたが、正直なところ思い出せませんでした。
彼女はこう話しました。
「去年、あなたと話したとき、私はとても落ち込んでいました。でも、寮の活動に関わり、聖書の勉強会に通い、ボランティア活動を始めたんです。そのおかげで、やっと自分の居場所を見つけることができました。だから、お礼を言いたくて」
私は「僕の方こそ感謝したい」と言いました。
彼女が自分の居場所を見つけたことが、本当に嬉しかったんです。
新しい恋人を見つけた男子学生
次は大学院生向けのイベントでの話です。
前年にも参加したという男性が僕のもとにやってきました。
「昨年、イベントの後に考えました。6年間続いた最悪の恋愛関係を終わらせるべきだと」
彼は自分を支えてくれる人と居場所を見つけることを心がけ、恋人と別れる決断をしました。
「とてもつらかったけれど、耐えれば状況は良くなると信じていました」
そして3か月後、大学院のプログラムで新しい女性と出会い、交際を始めました。
「今、9か月が経ちましたが、人生で最も健全で幸せな関係です」
これは忍耐のおかげです
真実と向き合って乗り越えよう
私たちは苦しんでいるとき、痛みの中にいるとき、不快な状況に直面しているとき、つい忘れてしまいます。
でも、人がいて、居場所があって、忍耐強くいれば、必ず状況は良くなります。
難しいのは最初の段階です。
13歳から18歳になるまで、社会は、人を少しでも劣っていると感じさせることで他の人を優位に立たせようとします。そして、その感覚は大人になってもずっと続きます。
でも、もし「人・場所・忍耐」を覚えていれば、どんな状況でも前に進むことができます。
人生は、ときにひどく不快なものです。
でも、世界には2種類の人がいます。
真実と戦う人と真実と向き合う人。
もしあなたが向き合うことを選ぶなら、そして友人が向き合うのを手助けしたいなら、次の3つの質問を自分に問いかけてください。
・私の「人」は誰か?
・私の「場所」はどこか?
・そこにたどり着くまで、私は十分に忍耐強くいられるか?
//// 抄訳ここまで ////
ハーラン・コーエンさんの著書です。
居心地悪さと向き合う・ほかのプレゼン
あなたは十分ではないと言うこの世界で、いかに自分を愛するか(TED)
内なる自信を解き放つ方法~困難を成長に変えるには?(TED)
異論を言うことを恐れない~心地悪いことを心地よいと思いなさい(TED)
つらいのは最初のうちだけ
居心地悪さに慣れることをすすめるトークを紹介しました。
新しい環境に飛び込むとき、不安を感じるのは自然なことです。知らない人ばかりの職場や学校、地域に移ると、「自分は受け入れてもらえるのだろうか?」「ちゃんと評価してもらえるだろうか?」と心細くなりますよね。
このトークの登場人物は若い大学生ですが、大人になっても状況はそこまで変わらないでしょう。
大人でも、不安や孤独にさいなまれている人はたくさんいます。
ただ、新しい環境で不安になるのは、ただ単にまだ慣れていないだけです。そして、期待が大きすぎるのかもしれません。
トークの中で紹介されていた「普遍的な拒絶の法則」は、人間関係を築くうえでとても重要な考え方です。
すべての人が自分を受け入れてくれるわけではありません。それは自然なことだから、気にしすぎなくてもいいのです。
合わない人がいて、距離を置かれたとしても、それはあなたの価値とは関係のないことです。
「合わない人もいるのが当たり前」と考えれば、必要以上に落ち込むことはなくなります。
コーエンさんは、「5人の人間を見つけろ」と言ってますが、5人も必要ないと思います。
自分のことを信じている人が1人いれば十分でしょう。
そして、その人は、自分自身ではないでしょうか?