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こんまり流の片付けがうまく行かない、ある理由とその対策をお伝えします。たぶん誰も指摘していない意外な落とし穴です。
近藤麻理恵の「人生がときめく片付けの魔法」を読んで、どんどん物を捨てられた、という人は大勢います。
私も、同じカテゴリーのもの(洋服や小物など)を全部出して捨てるのは画期的だと思い、実際に何度かやってみました。
私の場合、彼女の本を読む前から、捨て慣れていたので、ちゃんと捨てることができました。
しかし、物を捨て慣れていない人、ミニマリストのようにもっと物をそぎ落としたい人にとっては、こんまりメソッドは時に断捨離をはばむことがあります。
なぜでしょうか?
いちいち物にさわらなければならないからです。さわって、「ときめくか、ときめかないか」判断するのですが、この「さわる行為」が、人をその物に執着させ、捨てづらくしてしまうのです。
きょうはこの点について説明し、できるだけさわらずに捨てる方法をお伝えします。
人は「さわること」でコミュニケーションできる
さわること、触覚というのは、想像以上にパワフルな感覚です。
触覚は人間が1番最初に知る感覚です。赤ちゃんが子宮の中にいるときに、1番始めに覚える感覚が触覚です。
皮膚には触覚受容体というセンサーがあり、人は誰かに触れることで、さまざまな感情を伝えたり、また受け取ることができます。
誰かが悲しみのふちにいるとき、なぐさめる言葉が出てこなくても、私たちは、そっと手を握ったり、肩にふれるだけで、自分の気持ちを伝えることができますし、また相手もわかってくれます。
ほんの数秒ふれるだけで、人はコミュニケーションできるのです。
人は人にさわることである種の感情を伝えているという実験結果もあります。たとえば、怒り、恐怖、嫌悪感、愛、感謝、共感、幸福、悲しみといった感情です。
触覚が活躍するのは、人にさわるときだけではありません。物にさわっても、私たちは、いろいろな感情を持ちます。
まだ言葉をあまり知らない赤ん坊や子供はいろいろな物をさわって、それがなんであるか理解しようとします。大人でも、この服はスムーズでさわりごこちがいい、とか、この石はひんやりして気持ちいい、とか、このぬいぐるみはふわふわしてるなど、対象にさわるだけで、さまざまな感情を持ちます。
物にさわることは人の感情を揺り動かすのです。
このことはこんまり先生自身も本に書いています。気持ちをこめて洋服をたたむとき、手からエネルギーを送ることができる、と。
初めてこれを読んだとき、「そんな馬鹿な」と思ったのですが、触覚のもつパワーを考えると、充分ありえる話です。
人は物にさわるだけでそれに執着してしまう
人は何かにさわって、それが何であるか理解しようとするだけでなく、さわっているうちにその対象に、感情的なつながり、つまり執着を持つようになります。
「見たこともさわったこともない」という表現があります。自分には全く関係のなかったものが、それを見てさわるだけで、「自分はそれを知っている」と思い、対象との距離がぐんと近くなるのです。
この心理をマーケティングにうまく利用しているのがアップル社です。アップルの小売店には、商品がずらりと外に出ていて実際にさわって、試すことができるようになっています。
ノートパソコンのモニターの角度はわざと斜めにして、お客さんがさわって調節したくなるように置いているのだそうです。
消費者は、店で、商品をかまっているうちに、だんだんその商品に感情的なつながりを持つのです。まるでそれが自分のものであるかのような。そして、本当に自分の物にしたくなり購入に至ります。
スーパーなどでも、手に取ってしまったら、ただ見ていただけのときより、その商品を買わずに棚に戻すのが難しくなりますよね?
また、人は何かを自分のものにしたあと、さわっている時間が長ければ長いほど、より価値を感じます。
☆いったん物を手に入れたら、手放しにくくなる心理はこちらにも書いています⇒物を捨てられないのは恐怖のせい~損失回避と、授かり効果の心理をさぐる
捨てるつもりがさわっているうちに気が変わる
こんな経験はありませんか?断捨離をしている最中、「これはもういらないかな」と思って、それを手にしたとたんに気が変わることが。
たとえばたんすの引き出しをあけて、もうずいぶん長いことかぶっていないしましまのニット帽を見つけたとします。こんなもの、もういらないや、と思って引っ張りだして手にしたとたん、捨てるのが惜しくなってしまうことが。
あまりに派手なので、もう5年ぐらいかぶっていないけど、もしかしたら、いつかかぶるときがあるかもしれない、と思ったりすることが。
私は、捨てようと思って手にしたとたん、「いや、待てよ」と捨てるのをやめたものがいくつもあります。
最近でいえば、さまざまなクッキー型。ムーミンパパの形をしたクッキー型を手に取り、これは全然使っていないから、もう使わないと思うけど、でも、もしかしたら来年あたり使うかもしれない、と思って袋に戻したことがあります。
ムーミンパパだけではありません。スナフキンもスティンキーも戻したことがあります。さわっているうちに気が変わってしまうんですね。
この時、自分がそれをさわったから執着心が芽生えたとは思っていませんでした。捨てないもっともらしい理由がありました。1番多い理由が、「もしかしたら、いつかまた使うかも」です。
でも、実はさわったために、変に執着して捨てるのが惜しくなり、自分に都合のいい理由をたくさん作り出していたのです。
捨てない理由いろいろ⇒【保存版】あなたがモノを捨てられないよくある理由ランキング
こんまりメソッドがうまく行かない理由
近藤麻理恵さんは、物を片付けるとき、1つ1つさわって「ときめくか、ときめかないか」自分に聞いて、ときめくものだけ残せ、と書いています。
これは直感的にしなければならないのですが、私はさわったら、多かれ少なかれ、執着が出ると思います。特にまだあまり捨てることに慣れておらず、一度で捨てるかどうか決められない人の場合。
いったんものをひっぱりだして、「これは絶対もう使わない」とわかっているのにもかかわらず、「でもとりあえず取っておきましょう。あまり無理して捨てるのもよくないし」とまたしまうことが多い人は要注意です。
片付けるためにさわっているのに、執着が出てしまうのです。
☆こんまりを知らない方はこちらをどうぞ⇒近藤麻理恵の「人生がときめく片づけの魔法」の英語版の感想~ベストセラーの秘密は東洋の神秘にある?
さわらずに捨てる方法?
私はこれに気づいてから、なるべく物にさわらないで捨てることにしました。もちろん、物をそこからどけて、ゴミ箱なり寄付箱に入れるのに、さわらないわけには行きません。足でつまめるほど私は器用ではありません。
足にも触覚受容体がついているので、足でさわっても同じかもしれませんが、足は手ほど、いろいろなものにさわっていないので、受容体がそこまで発達していないと思います(単に私の予想です)。
口でつまんで捨てるのも難しいです。
そこで、私はこんな方法を編み出しました。
●「あ、これ捨てよう」と思ったら、さっとつかんで、すぐにゴミ箱に入れる。つまりさわる時間をできるだけ短くします。つかむ、捨てる、ワン、ツーと2アクションで捨てるのです。これをやるためには、ゴミ袋か箱を片手に持っているか、足元に置いておかなければなりません。
●「あ、これ捨てよう」と思って、持ったとたんにで、「でも…」と思ったら、それを捨てる合図にする。
●「あ、これ捨てよう」と思ったら、再検討はいっさいしないで捨てる。
●断捨離をしているとき、物を手にとって、しげしげと見ない。
●物をさわる前に、捨てるかどうか決めて、捨てると決めたら、その後はいっさい感情を入れず、きわめて事務的に捨てる。
私はやったことはないのですが、もしかしたら手袋をして捨てると、多少は違うかもしれません。直接さわらないのですから。それに手袋していると、いかにも「片付け業者」みたいで、捨てる気分が盛り上がります。
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今は、こういう断捨離の記事を書いていると、「あ、そういえばあれ、捨てられるな」と捨てたい物がよく頭の中に思い浮かびます。
私の物はもう家の中の散らばっておらず、どこに何があるのかだいだいわかるので、そのような物が思い浮かんだら、すぐにその場所に取りに行き捨ててしまいます。
いちいち手に取らず、先に捨てることを決めて、捨てる。こんまりメソッドでなかなか捨てられない人は1度お試しください。