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断捨離をしているときに、大きな障害となる、サンクコストバイアスという心理的傾向と、その心理を克服する方法をお伝えします。
人は損をするのが嫌いな動物です。部屋の片付けをしているときも、「これを捨てたら損だ」「いつか使うかもしれない。そのときまた買うなんてお金がもったいない」なんて思ってなかなか捨てられません。
実はこうした考え方のほとんどは錯覚にすぎません。
冷静に考えれば、使わないものを捨てずにしまっておくほうがもったいないですよね?
「いつか使うかもしれない」と思っても、それが実現する可能性はきわめて低いです。今まで何年も必要な状態にならなかったのですから。
それでもやはり大半の人が「損したくない」と思い込み、物にしがみつきます。
そんな捨てられない心理の1つが、サンクコストバイアスです。
サンクコストバイアス(sunk cost bias)とは?
サンクコストバイアスとは、サンクコストにとらわれて、損をする行動を続けてしまう心理です。
サンクコストは、日本語では「埋没費用」と言います。これは回収できない費用のことです。
sunk は sink (沈む)という動詞の過去分詞からできた形容詞。sunk cost は「沈んだ費用」というわけ。沈んでしまったので、もう取り戻せません。
何をやっても回収できない、過去に投じた費用にこだわって、新たに損になる行動や取引を続ける心的傾向ががサンクコストバイアスなのです。
具体例をあげます。
あなたは宝塚歌劇団のファン。次回の公演のSS席のチケットを1万2千円払って買っていたとします。
ところが、上演当日、すごい風邪をひいてしまいました。
鼻水はだらだら出るわ、喉は痛いわ、悪寒はするわ、頭痛はするわで、最悪です。できれば家でゆっくり眠りたい。
しかし支払った1万2千円がもったいないので、無理に劇場に出かけます。なんとか自分のシートにたどりついたものの、頭がぼーっとして、劇を楽しむどころではありません。
その夜から、あなたの風邪がひどくなり、2週間寝込んでしまいました。運の悪いことに、あなたは出来高制で仕事をしているフリーのWebデザイナー。
2週間、仕事が全くできなかったので、1万2千円以上の損失をこうむりました。
この1万2千円がサンクコストです。風邪をひいたとき、あきらめて家で寝ていれば、損失は1万2千円だけですんだのです。
サンクコストは日常のあらゆるところで発生しています。
それは何もお金だけではありません、時間やそれまでにかけた手間もサンクコストです。
上の例では、上演のあと寝込んだ2週間分の仕事の収益分だけの損でおさまりましたが、時には、えんえんと損になる行動をし続けてしまうことがあります。
たとえば、完全に赤字の建設事業。初期の段階で、これはもう赤字だ、とわかったとしても、最初に投じたお金が巨額なので、その事業をあきらめることができず、さらに資金を投じて、事業を完成させようとすることも、サンクコストバイアスのせいです。
離婚したくてもなかなか離婚できないとき、サンクコストバイアスが働いている場合があります。
サンクコストバイアスは、コンコルド効果(コンコルドの誤り)とも呼ばれます。コンコルドはイギリスとフランスが1960年代に開発した超音速旅客機です。
開発途中の段階で、この旅客機は、商業的には採算が取れないだろうということがわかっていました。開発や維持費に莫大なお金がかかるからです。
それでもイギリスとフランスは、それまでに投資したお金や手間暇がもったいなかったのか、国としてのプライドをかけて開発を続行。
結局、完成しても、予想どおり商業的には大失敗しました。
コンコルドの開発は巨大事業だったので、ほかにもいろいろやめたくてもやめられない事情があったのでしょうね。
断捨離中も、人はしばしば過去に投資したお金や時間にこだわるあまり、結局損をする行動に出てしまいます。
※断捨離できない心理はこちらにも書いています⇒【保存版】あなたがモノを捨てられないよくある理由ランキング
断捨離におけるサンクコストバイアスとは?
断捨離しているときに、この心理が働くのは、「これ捨てたいけど、捨てられない、だって高かったから」という品物をじっと見ているときです。
高価だったので、もったいなくて捨てられないのです。しかし、捨てずにそのまま持っていたら、はたして何が起きるでしょうか?
もちろん買ったときのお金は回収できません。
高かったから捨てられない物が大きなものなら、場所を取って邪魔になるでしょう。小さなものでも、「買ったのに、活用できなくてもったいない」と、それを見るたびに、胸がちくちくするでしょう。
1つや2つならいいのですが、こうしたものが大量にあると、相当なストレスを生みます。
もしそれが、何かのコレクションなら最悪です。見るたびに自分の馬鹿さ加減を思いださせる、ネガティブエネルギー発生装置と化します。
「捨てたいけど高くて捨てられないもの」をいつまでもしまっておいても、お金はもちろん、ポジティブなことは何も生まれないのです。
私がサンクコストバイアスのせいで捨てられなかった物
実は、私もサンクコストバイアスのせいで、長々と捨てられないものがありました。
それは指輪です。
この指輪、30年ぐらい前に、ある宝飾店が参加した展示会で買いました。その店は、当時私が勤めていた会計事務所の顧問先でした。
あるジュエリーデザイナーの作品でした。トパーズがついていて、確かに好きなデザインですが、「どうしてもほしい」と思ったわけではありません。
当時はミニマリストではなかったので、そこまで深く考えて買ったわけではないのです。たぶん、その宝飾店の営業のお姉さんのセールストークにのせられて、ついつい買ってしまったのだと思います。
断りきれずに買ってしまうということ、あなたにもありませんか?
買ってからも、このリングを指にはめることはほとんどありませんでした。ときどき、ケースを開いて、眺めることはあっても。
そのうち、私はだんだん年をとり、この指輪のデザインが似合う人からかけ離れて行きました。それでも、いつまでも持っていました。
というのも、この指輪、20万円ぐらいしたのです。分割払いで買ったと思います。私にしては高い買い物なので、もったいなくて捨てられませんでした。
カナダにまで持ってきて、ずーっとしまっていました。
去年、大々的に断捨離したとき、まず指輪のケースを捨てました。
そして、今年の5月に、とうとうこの指輪を、やはりめったにつけないネックレスと一緒に断捨離しました。
捨ててどうなったかというと、すっきりしました。もちろん後悔もしていません。だって全然使っていなかったのですから。これまでは、多かれ少なかれ指輪にとらわれているところがありました。
ところが、捨てたらそういう気持ちから解放されたのです。
※現在の私のアクセサリーはピアスだけです⇒アクセサリーはピアスだけ、3組持っています~カジュアル系主婦ミニマリストの持ち物公開(写真つき)
「高かったから捨てられない物」を捨てる方法
サンクコストにとらわれて捨てられないときは、次のような行動をとってみてはどうでしょうか?
まず、その物を使ってみましょう。実際にそれを活用すれば、払ったお金に対して、何がしかのものを手にすることができます。
それがバッグなら、会社に行くときに使ってみる。もしそれが英会話のCD教材なら、きょうから聞いて勉強をするのです。
「これ高かったし、売ればお金になるかもしれないし」と思っているのなら、売ったら本当にお金ができるのか、実際にヤフオクなどで調べてみましょう。
類似品にいくらぐらいの値段がついているのかチェックするのです。
そこそこいいお金で取引されているのなら、出品してみます。ただ、オークションでの販売は手間と時間がかかることを覚悟してください。
売りに出しても、二束三文なら、そのまま手放したほうがいいです。
使うことも、売りに出すこともできないのなら、もう捨てるしかありません。
サンクコストにとらわれてしまう理由の1つに、「自分の失敗を認めたくない」という気持ちがあります。
ですが、失敗は成功のために不可欠なプロセス。
失敗はいさぎよく認めて、つぎに行ったほうがいいです。
本当は失敗だと思っているものを、自分で認めようとせず、うじうじ迷っているのは、とても後ろ向きな行動です。
失敗しても、それを認めて、次に活かせば、それは失敗ではありません。
さっさと断捨離しましょう。
そうすれば、あなたは今よりもっと身軽に自由になるのです。
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人は、「コスト」と聞くと、それを買ったお金だけだと思いがち。しかし実のところ、人生における1番のコストは「時間」です。
というのも、ふつう、お金を稼ぐためには、時間の投資が必要だからです。
いらないものを持っていると、それを管理するために、どんどん時間を取られていることを忘れないでください。