ベビー服に囲まれている赤ちゃん

TEDの動画

消費者文化:あなたの赤ちゃんの服があなたのものよりよくなった日(TED)

もっとサステイナブルな消費の仕方をしていきたい人の参考になるTEDトークを紹介します。

タイトルは Consumer Culture: The Day Your Baby’s Wardrobe Became Better Than Yours (消費者文化:あなたの赤ん坊の服が、あなたのものよりいいものになった日)。

サステイナブルなキッズファッションを提供している、Vigga Svensson(ヴィッガ・スヴェンソン)さんの講演。

買って使い捨てる消費モデルより、もっとサステイナブルな消費行動がある、と伝えるプレゼンです。



新しい消費モデル

収録は2016年の2月。動画の長さは17分27秒。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

解決策は意外とシンプルですね。





サステイナブルな子供服を追求してきた

10年間、私は環境にいいことをしていると思っていました。

2003年に、Katvigという子供むけのファッションブランドをデンマークで立ち上げました。

私は元テレビのプレゼンターなので、この業界に関する知識は皆無でした。

子供服のブランドを作ったのは、自分の子供だちに、安くていい服を着せてあげたいと思ったからです。

この仕事を始めて、華やかなファッション産業には闇があるわかりました。この世界では、労働者の権利はあまり守らず、貴重なリソースを搾取し、有毒な化学薬品を大量に放出することがふつうなのです。

だから、世界で一番サステイナブルなキッズファッションのブランドを作ることにしました。

10年間かけて、サプライチェーンの問題を改良してきました。オーガニックで再利用の生地を使い、ケミカルの使用を禁止し、労働者の権利が守られるように努めました。

とてもサステイナブルな商品を作り、世界でも名が知られるようになり、賞も取りました。

すべてがうまく行っていると思っていましたが、2013年のある日、自分が間違っていたことに気づいたのです。

お客さんの回答にショックを受ける

いつものように、Facebookで、お客さんに質問をしました。この日の質問は、「お子さんの衣類は何着ありますか?」「そのうちどのぐらい使っていますか?」です。

その回答に衝撃を受け、サステイナビリティについて、完全に誤解していたことに気づいたのです。

回答の話をする前に、私が変えようとしていた業界についてお話しします。

ファッション産業は150年間、ほぼ変わっていません。19世紀の半ばに、店や家庭での手作りから、工場での生産に変わりました。

現代も同じです。大きな部屋に機械をたくさん入れ、大勢の人を配置し、急がせます。

このやり方は、昔は革命的なことでした。より多くの人に衣類が行き渡るようになったので、大きな進歩です。

当時は、服は実用品です。必要な服を買い、着られなくなるまで使いました。着倒してしまったら、カーペットなどに作り変えて使いました。

消費者がずっと同じように服を使っていたら、今の大きな問題は生まれなかったでしょう。

でも消費者は大きく変わりました。

買って使い捨てる文化

英国の女性は、服をどこかにしまいこむか、捨てる前に、7回しか着用しません。

アメリカでは、去年、30%の服がクローゼットに入ったままでした。

デンマークの若者には、服が汚れたら洗って着るより、新しい服を買う傾向があります。

この産業に携わる人たちは、こういう事実を知っていて、ファッション産業は負のサイクルにはまってしまったのです。

メーカーは、とても質の悪い服を作ってもいいと思います。消費者がほんの数回しか着ないのなら、質の高い服を作る必要はありません。ビジネスの面から見れば、いい服を作るのはお金の無駄です。

一方、服をほんの数回しか着ない消費者はできるだけ安く服を調達したいと思っています。

その結果、消費のサイクルが早くなりました。

今のファッションブランドは、年に2回、夏と冬のコレクションをするのではなく、さまざまな名目で年に15回以上コレクションをします。常にコレクションをしているようなものです。

消費者に、服を欲しがる欲望を起こさせるために行うのです。

わざと欲望を作り出し、店に何度も足を運ばせています。

これが、今日の、「買って捨てる社会」の本質です。

大量の使い捨てが生み出す問題

その結果、さまざまな問題が起きています。

薬剤のせいで、土地や川、エコシステムが破壊されています。

メーカーが、職場として安全なビルを提供するのをけちるので、賃金の低い労働者たちが死んでいます。

さらに、大量の服がゴミ捨て場にたまっています。

そのうちのほとんどは、使用できるはずの寿命の75%以上も残したまま。

私たちが洋服やほかの商品を使い捨てるせいで、たくさんの敗者が生まれています。

このシステムの中に勝者はいません。最後には、地球がだめになってしまうのですから。

こんな状態は変えたいですよね?

私は変えたいと思って10年がんばりましたが、間違っていたんです。

子供服を買いすぎる親たち

フェイスブックのアンケートの話に戻りましょう。

子供服をどれだけ持っているか?

答えは100~200アイテムでした。

そのうちどれだけ使っているか?

平均、25着以下でした。

眠っている衣類のなんと多いことか。なんというリソースの無駄遣いでしょう。

突然、私は気づきました。私が社会のためにしてきたことは、もっともサステイナブルなキッズファッションブランドの提供ではなかったのです。

私が作っていたのは、100万着以上の服の山でした。

確かにその服はオーガニックでしたが、山には代わりありません。

サステイナブルにしようと、私たちがやっていることは、さして賢いやり方ではないのです。

たくさんの商品を製造し、それが必要だと消費者に思わせます。消費者はそれを買います。

さらに製品が作られ、必要だと思わされた消費者は、それも買います。この繰り返しです。

排気ガスや、有毒なケミカルが出ないように気をつけて作っていても、結果は同じです。

環境にいいものを使っていても、たくさん作って、たくさん買う行動は、サステイナブルではないのです。

お客さんの回答を読みながら、私たちはサステイナビリティを誤解していると思いました。

この数ヶ月後、私は会社をたたみました。私の人生でもよくなかった時期です。

新しいやり方を考えた

しばらくして新しい野望が芽生えました。

またやりたい。また、世界で一番サステイナブルなキッズファッションブランドを作りたいと思いました。

今度は正しいやり方で。

2014年の春、どうしたら、サステイナブルにできるかずっと考えていました。実際やってみたら、それはそんなに複雑なことではありませんでした。

意識を向ける先を変えればいいのです。

最初に、商品に意識を向けるのではなく、その商品がどんなふうに使われるかに意識を向け、それから服をデザインし、使ってもらえるシステムを提供します。

必要なのは全く新しい消費モデルです。古いシステムを使って、それは改良するのではありません。

服を循環させるサービス

どうすれば、子供服を活用できるか?

子供の成長は早いので、その服を着るのはたぶん数回です。事実、子供は2歳になるまでに、サイズが8回変わります。

新しい服を8回着るわけだから、親はいつも新しい服を買うことになりますね。

責任をもって行動し、オーガニックの服を買っても、問題は変わりません。

それは、親にとってみれは、無駄にお金を使うことであり、大きな規模で見れば、リソースの無駄遣いです。

家庭が古着を回しあう方法からヒントを得て、私たちは2つの製品を作りました。

まず、質のよいサステイナブルなキッズファッションブランド、そして、服を回して使うサブスクリプションサービスです。

登録して月48ユーロ(きょうのレートでおよそ6800円)払うと、いつも子供に合うサイズのサステイナブルなデザイナーズクローズを使用できます。

子供のサイズが変わったら、大きなサイズの服のコレクションを受け取り、小さくなったほうの服を返却します。

会社は返却された服を点検し、必要なら修繕し、プロ向けの洗濯サービスを利用して洗い、次の子供が使える準備をします。

我が社の服は、とても高品質なので、服の状態はずっとよく、どのお客さんにも素晴らしい体験を提供できます。

まるで素敵なホテルの部屋みたいなものです。

ホテルを利用するとき、そのベッドにこれまで何人が寝たかなんて考えませんよね。きれいで整っていますから。

私たちは新しい消費モデルになる可能性のあるシステムを考え出したと思います。

車、バイク、乳母車、家具、おもちゃ、ツールなどを作っている他のメーカーも、同じことができるんじゃないでしょうか?

最初に商品を見るのではなく、その商品がどのように使われるか考え、その後商品をデザインし、ちゃんと使ってもらえるサービスを提供します。

こんな消費のやり方なら、ずっと理にかなっています。

意識を向ける先を変えることは、魔法の杖のように働きます。

関わりのある人たち全員に、恩恵が生まれます。

消費者は、安い価格で、とても質のいい商品を使うことができます。便利だし、時間の節約もできます。しかも、我が社の場合で言えば、カーボンフットプリントを80%も減らせます。

メーカーにとっては、質のいい商品を作るモチベーションになります。質がよければよいほど、何度も使えるから、利益が増えます。

高品質とサステイナビリティを求めることが、その会社のビジネスモデルの中心になるでしょう。

賢い消費の仕方だと思います。敗者は出ないし、妥協もありません。

どんな人にもいいやり方

このやり方で、私がとっても気に入っているポイントは、信念に関係ないところです。

長年、よりサステイナブルなものを作るため、「オーガニックや持続可能なんて、ナンセンスだ」と考える人たちと、話し合いを重ねてきました。

「気候が変化しているなんて、大げさに騒ぎすぎている」と考える人たちと。

こういう話し合いは大嫌いです。

でも、この消費者のモデルなら筋が通ります。

エコ活動に熱心な人にも、エコロジーに疑いを持っている人にも有意義です。従来のやり方より、いいものを提供できますから。

買って使い捨てる社会に加担しないために

今回、私は正しいことができたと思っていますが、皆さんはどうでしょうか?

オーガニックやフェアトレード商品を利用しているから、環境に気を使っていると思っていますか?

ご自身の消費パターンを振り返ってください。「買って捨てる社会」の一員になってはいませんか?

たぶんそうだと思います。ほとんどの人がそうです。

アメリカで、近年急成長しているビジネスは、個人用の倉庫の提供です。

皆、買ったものをしまう場所がないんです。みなさんはどうですか?

もし、同じ問題を抱えているなら、やってみてほしい練習があります。

3つのルールに従ってください。

1)フォーカスする先を変える

まず製品のことを考えるのではなく、それをどんなふうに使うのか考えてください。

2)質のいいものを買い、商品の寿命を延ばす

これは、カーボンフットプリントを減らすとても効果的な方法です。

3)できるだけシェアする

4つめのルールを思いつきました。一番大事なルールです。

4)よりよい解決法を求める

「買って捨てる社会」に何の疑問も持たず、消費していると、よりよい解決法は見つかりません。

これらのルールを守れば、全く新しい消費者行動を実践できます。

それは、無意味で危険な「買って捨てる社会」に代わるものとして、とても可能性のある行動だと私は心から信じています。

世界が繁栄する余地を与えてくれる行動です。

//// 抄訳ここまで ////

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いかに使うか?

できるだけサステイナブルな商品を作るために、スヴェンソンさんは、買った人が自社の服をお客さんがどう使うかに意識を向けました。

使う方に意識を向けることは、すぐにガラクタになってしまうものを買わないことを防止するのに役立つと思います。

いかにその商品がすばらしいか、便利か、自分の生活をよくしてくれるか、こんなことにに目を向けると、「これは買ったほうがいい」という選択になるでしょう。

でも、買ってもあまり使わなかったら、その商品の価値を十分引き出すことはできません。

「ちゃん使うことができるか?「いつ、どこで、どんなふうに使うか?」「どのぐらいの時間使えるか?」。こんなふうに、実際に使うことに関連する質問を自分にしてから買うと、しっかり使えると思います。

私もこれを心がけます。





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