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定年退職が近づき、これからの生き方に不安を感じている人におすすめのTEDトークを紹介します。
タイトルは、The 4 Phases of Retirement(定年後の4つの段階)。
スピーカーは、カナダのリタイアメント(定年退職)の専門家、Dr. Riley Moynes(ライリー・モインズ)さんです。
退職後の生活というと、日本では両極端なイメージがある気がします。
毎日が日曜日で、旅行や趣味を思いきり楽しむ悠々自適な暮らしを思い浮かべる人がいる一方で、「お金は足りるのか」「健康や介護はどうなるのか」と不安にさいなまれている人もいます。
最近の意識調査を見ると、老後に楽しみを期待している人も多いのですが、それ以上にお金、健康、孤立の不安を強く感じている人が少なくありません。
そのせいか、定年を迎えても完全には仕事をやめず、細く長く働き続ける人も増えています。
リタイア後に対して、今はまだ夢を見ている人も、不安で考えたくない人も、退職後に起こりやすい心理的な変化を知っておくと、うまく準備ができます。
老後を怖がるのではなく、長い第3の人生の計画を考える手がかりとして、このトークを見てほしいと思います。
定年後の4つの段階
収録は2022年2月、長さは約13分。英語字幕あり。動画のリンクはこちらです。
◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ユーモアのある語り口で、親しみやすいトークです。
YouTubeの自動翻訳機能を使えば、日本語字幕付きで見ることができます。
以下に、トークに出てくる定年退職後の4つのフェーズを紹介します
フェーズ1:バケーション期~自由を満喫する
定年退職した直後は、まるで長い休暇のようだとモインズさんは言います。
朝、好きな時間に起きて、好きなことをして過ごす。決まったルーティンがないことが最高に気持ちいい。
多くの人がイメージする理想のリタイア生活です。
自由、開放感、気楽さ。やっと手に入れたと感じる時期です。
ところが、この時期はたいてい1年ほどで輝きを失いはじめます。
少しずつ退屈を感じるようになり、ルーティンがないので、かえって落ち着きません。
「退職後の生活って、これだけなのかな?」という疑問がわきはじめたら、次の段階に進んでいるサインです。
フェーズ2:喪失期~5つの喪失と3つのD
2番目の段階がいちばんつらい時期です。
というのも、退職にともなう大きな喪失が5つあるからです。
1:毎日のルーティンの喪失。朝起きてから夜寝るまでの流れが、仕事をしていたときとまるで変わってしまいます。
2:アイデンティティの喪失。「○○会社の部長」「○○の専門家」といった肩書きや役割が、退職と同時になくなります。
3:人間関係の喪失。職場で毎日顔を合わせていた人たちとの関係が、薄れていきます。
4:目的意識の喪失。何のために毎日を過ごしているのかわからなくなります。
5:影響力の喪失。仕事を通じて発揮していた力や存在感がなくなります。
こうした喪失は、退職するまで予想できないことが多く、しかも一度にやってきます。
さらにこの時期に直面しやすい「3つのD」があります。
離婚(Divorce)、うつ(Depression)、そして心身の衰え(Decline)です。
喪失や3つのDが一度にやってくる衝撃は、まるでバスにはねられたようなものだと、モインズさんは表現しています。
この話を聞くと暗い気持ちになるかもしれませんが、トークではこういう時期があると知っておくことが大事だと強調します。
心の準備があるかないかで、受け止め方がかなり違うからです。
フェーズ3:試行錯誤期~新しいことを試す
フェーズ2にいるとき、多くの人はこのままではいけないと気づきます。
残りの人生、もしかしたら30年もあるのに、こんな気持ちで過ごしたくない。
そう思えたとき、フェーズ3に入ります。
このフェーズは、人生にもう一度意味を見つけるために、いろいろなことを試す時期です。
「自分が好きなこと、得意なことは何だろう?」と問い直し、新しい活動に手を出してみる段階です。
ただし、この時期は失敗もつきものです。
モインズさん自身も、マンションの管理組合の役員を数年やって疲れ果てたり、法律の勉強を始めてみたけれど続かなかったり、回顧録の書き方講座を作っても思うような成果が出なかったりした経験を語っています。
うまくいかないこともありますが、大事なのは試し続けることです。
試すのをやめてしまうと、フェーズ2に逆戻りする可能性があるからです。
フェーズ4:再構築期~人のために動く
フェーズ3の試行錯誤を経て、フェーズ4にたどり着いた人たちは、もっとも幸せな人たちだそうです。
このフェーズは、自分を再構築する時期です。
自分にとって意味のある活動を見つけ、達成感を感じられるようになります。
フェーズ4で充実している人たちの活動には、ほぼ必ず人のために何かをすることが含まれています。
トークでは、友人のビルさんが、55歳以上のグループ内で得意なことを教え合う仕組みを作った話が紹介されていました。
参加者とプログラム数は年々増え、内容もゲームや趣味、修理、学習支援など幅広い活動に広がったそうです。
フェーズ2で失われた5つのもの、つまりルーティン、アイデンティティ、人間関係、目的意識、影響力が、フェーズ4ではすべて取り戻せます。

※ここからは、このトークを見た私の個人的な感想です。
退職後はおまけや余生じゃない
このトークを見て最初に思ったのは、退職後の時間は、思った以上に長いということでした。
たいていの人は、退職後の時間をおまけや余生として軽く考えがちです。
でも実際には、人生の3分の1近くを占める場合もあります。
私の母は今年の4月で93歳になりますが、まだまだ元気です。
もし私自身も母と同じように長生きするとしたら、あと20年ほどはリタイア生活を生きる可能性があります。
健康寿命はそんなに長くないという不安もよく耳にしますが、それでも相当な年月を過ごすことになるでしょう。
だから「老後はなんとなくのんびり暮らせればいいや」とぼんやり考えるのではなく、リタイア後の時間を自分の人生の大きな一章として捉え直す必要があると感じました。
長い時間なのだから、計画を考えるべきだと思います。
ゼロからのスタートを避ける
フェーズ2の喪失期はいちばんつらい時期です。
長年続けてきた仕事を手放すため、毎日のルーティンや肩書き、人間関係、役割、影響力などを一度に失ってしまいます。
この話を聞いて、仕事を辞めてから慌てて新しいことを探すのでは遅いかもしれないと感じました。
フェーズ2のどん底に落ちてしまう前に、まだ働いているうちから少しずつフェーズ3(試行錯誤の段階)を先取りしておくほうが、スムーズに移行できます。
私はまだ完全にリタイアしているとはいえません。
平日は1日6時間働きながら、毎日ブログを書くことを続けています。
ただし、仕事時間は少しずつ減らす試みをしています。
これは完全にリタイアする前から始めている小さな実験のようなもので、本業とは別の楽しみを、今の生活に少しずつ混ぜている状態です。
たとえば、語学や塗り絵などです。
退職したら何か始めようと先送りするのではなく、今の生活の中に、この先ずっとやってみたいことや、やれそうなことを試しに1つか2つ入れてみるといいかもしれません。
そうすれば、仕事を辞める日が来ても、ゼロからのスタートではなく、すでに始まっていることを少し広げればいいだけなので、ラクに移行できます。
人のためになることをする
このトークでは、リタイア後の幸せは、お金の多い少ないだけでは決まらないと強調されています。
自分なりの役割や貢献の場を持てるかどうかが、充実感につながります。
人のために何かすることも、今のうちから自分の生活に入れておくといいかもしれません。
大きなことでなくてもいいでしょう。身近な人の話を聞く、自分の経験や知識を誰かに伝える、地域の活動に少しだけ関わってみるなど。
小さな行動が、自分の人生にも意味や張り合いを生んでくれます。
私の場合は、ブログを通じて暮らしのヒントを発信したり、読者のみなさんからいただくメールやコメントに返事を書いたりすることが、それにあたるのかなと思っています。
退職や老後に関するほかのプレゼン
リタイア後の生活に関心がある方は、以下の記事もごらんください。
60歳以降は可能性に満ちている「人生の第3幕」ジェーン・フォンダ(TED)
年をとるほど幸せになる理由とは?:ローラ・カーステンセン(TED)
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定年後の4つの段階について語るTEDトークを紹介しました。
バケーション期、喪失期、試行錯誤期、再構築期。
この流れを知っておくだけでも、退職後の心理的な変化に対する備えになります。
まだ働いている方も、すでにリタイアした方も、今いる段階を意識してみてください。
次のステップに進むために何ができるか、考えるきっかけになるでしょう














































