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「自分には特別な個性がない」「誰かの真似ばかりしている気がする」。こんなふうに悩んでいる人におすすめのTEDトークを紹介します。
タイトルは、Steal Like An Artist(アーティストのように盗め)。
スピーカーは、作家でありアーティストのAustin Kleon(オースティン・クレオン)さんです。
彼は、完全にオリジナルなものなど世の中には存在せず、すべての創作は過去のアイデアの組み合わせ(マッシュアップ)であると語ります。
何者かになろうと焦るのではなく、自分が好きなものを集めることから始めようと伝えます。
アーティストのように盗む
YouTubeへの投稿日は2012年4月、長さは約11分。英語字幕あり。
◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
クレオンさんはアメリカ出身のベストセラー作家です。
新聞の紙面をマーカーで塗りつぶし、残った言葉をつなげて詩を作るブラックアウト・ポエムという手法で知られています。
11分と短いトークですが、創作や人生に対する考え方がぎゅっと詰まっていて、とても見ごたえがあります。
以下に、私が重要だと思ったポイントを4つ紹介します。
1. 新聞から詩が生まれた
大学を出たばかりのクレオンさんは、ひどいライターズブロック(書けなくなる状態)に陥っていました。
パソコンの画面を見つめても、何も浮かんできません。
そんなとき、リサイクル用に出そうとまとめてあった新聞の山が目に入りました。
「自分には言葉がないのに、すぐそばに何千もの言葉がある」
そう思ったクレオンさんは、新聞の紙面からピンとくる単語を選び出し、残りをマーカーで塗りつぶしてみました。
すると、思いがけない言葉のつながりが生まれ、詩のようなものができたのです。
これがブラックアウト・ポエムの始まりでした。
クレオンさんはこの作品をブログに投稿し、やがてインターネットで広まり、本にもなりました。
ところが、あとになって調べてみると、同じような手法はすでに何人もの人が試みていたことがわかります。
1960年代のイギリスのアーティスト、トム・フィリップス。
その着想のもとになった作家、ウィリアム・バロウズ。
さらにさかのぼると、1920年代のダダイストの詩人、トリスタン・ツァラ。
そして1760年代には、ベンジャミン・フランクリンの隣人が、新聞のコラムを横に読んで面白い文章を見つける遊びをしていたそうです。
なんと、彼のアイデアには250年もの歴史があったのです。
2. すべてのアイデアは過去のリミックス
自分の手法がオリジナルでなかったと知って、がっかりしたのかと思いきや、クレオンさんはこう言います。
「完全にオリジナルなものは存在しない」と。
すべてのクリエイティブな仕事は、過去の作品の上に成り立っている。
どんな新しいアイデアも、1つか2つの先行するアイデアのリミックスやマッシュアップ(組み合わせ)にすぎない、というのです。
クレオンさんは、こんな例を出します。
線を1本引く。その隣にもう1本引く。線は2本だけど、2本の間に空間が生まれて、その空間自体がまるで3本目の線のように見える。
1+1=3になります。
さらに遺伝の話も出てきます。
人は両親から生まれますが、その合計以上の存在です。つまり、私たちも両親や先祖のリミックスなのです。
3. 自分は人生に招き入れたものでできている
クレオンさんは、アイデアの系譜も家族の系譜と同じだと言います。
家族は選べないけれど、友人は選べます。
読む本、聴く音楽、見る映画、住む街も、自分で選ぶことができます。
そして、こんな印象的な言葉を残します。
「You are a mash-up of what you let into your life(あなたは、自分の人生に取り入れたものの寄せ集めでできている)」
だから、自分が愛するものを意識的に選びとっていくことが大切です。
クレオンさんは、アーティストとホーダー(ためこむ人)の違いについても語っています。
ホーダーは無差別に集める。でもアーティストは選びながら集める。自分が本当に愛するものだけを選ぶコレクターなのだ、と。
この考え方は、創作だけでなく、暮らしのあり方そのものに通じますよね。
4. 模倣ではなく、変容させる
「盗む」と言っても、丸ごとコピーすることではありません。
クレオンさんは、T.S.エリオットの言葉を引用します。
未熟な詩人は模倣し、偉大な詩人は盗む。
そして、悪い詩人は盗んだものを台無しにするが、良い詩人はもっと良いもの、あるいはまったく別のものに変える、と。
つまり、盗んだ素材を自分なりに消化して、新しいものに作り変えることがアートです。
この変容(transformation)こそが、クリエイティブの核心だとクレオンさんは言います。
トークの冒頭で紹介される作曲家ストラヴィンスキーのエピソードも印象的です。
ストラヴィンスキーは過去の名作の楽譜を取り出し、赤ペンで手を加えて、新しいバレエ音楽を作りました。
批評家に「古典を汚すな」と非難されたとき、彼はこう答えたそうです。
「あなたたちは尊敬(respect)している。でも私は愛している(love)」
尊敬は距離を置くことですが、愛するとは深く関わることです。
そこまで入り込んで初めて、借りたものが自分のものに変わります。
※クレオンさんはこの考え方を著書にまとめています⇒Amazonへ⇒クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST "君がつくるべきもの"をつくれるようになるために | オースティン クレオン, Austin Kleon, 千葉 敏生
※ここからは、このトークを見た私の個人的な感想です。
「何者か」になるまで待たなくていい
このトークを見て、「自分にはオリジナリティがない」と悩んでいる人に見てほしいと思いました。
自分には特別な才能がない、得意なことが見つからない。
そんなふうに感じて、何かを始めることをためらっている人は多いと思います。
でも、クレオンさんの話を聞けば、こんな悩みは吹き飛びます。
すべてのアイデアは過去のリミックスなのだから、完全なオリジナルを目指す必要はないのです。
何者かになるまで待つのではなく、まず憧れの人の真似から始めてみるのはどうでしょうか。
そこから少しずつ、自分の声ややり方を見つけていきます。
暮らし方も同じだと思います。
SNSで見た「ミニマルライフ」や「シンプルライフ」をいきなり再現しようとする必要はありません。
素敵だなと思う人の暮らしをちょっと真似してみて、自分に合うものだけを残していきましょう。
そうやって自分らしい暮らしをデザインしていきます。
好きなものだけを選ぶ暮らし
クレオンさんが語った「アーティストは選択的なコレクター」という言葉が、強く心に残りました。
私たちの暮らしも、意図しているかどうかは別にして、自分が人生に入れたもので成り立っています。
家の中にあるもの、毎日触れる情報、時間を使う相手。
なんでもかんでも取り込むのではなく、自分の心が動くものだけを選び取ったほうが、暮らしは軽く、自分らしくなります。
ものを減らすと、不要なものに埋もれていた「本当に好きなもの」が見えてきます。
情報も同じです。
SNSやニュースを無制限に受け取るより、自分が本当に読みたいもの、学びたいものだけに絞ったほうが、望む暮らしに近づきます。
情報の断捨離のススメ。頭の中も片付けないと、何もできないまま人生が終わる。
アナログに立ち返る時間
このトークでもうひとつ面白いと思ったのは、クレオンさんの創作方法です。
パソコンの前では言葉が出てこなかったのに、新聞紙を手に取り、マーカーで塗りつぶすという身体的な作業を始めた途端、詩が生まれた。
画面を見つめるだけでは浮かばなかったものが、紙とペンを使ったら出てきたわけです。
この話を聞いて、やっぱり手を動かすことには特別な力があると感じました。
私自身は、ふだんの生活ではかなりデジタル派です。
ブログもパソコンで書いていますし、読書も電子書籍が圧倒的に多いです。
でも、モーニングページやブレインダンプ、10年日記はノートに手書きで続けています。タブレットを使っているときも、アップルペンシルで手書きです。
頭に浮かんだことをペンで書き出していると、ふっとアイデアが頭に浮かびます。
塗り絵もそうです。色鉛筆を持って、ただ色を塗っていると、頭がすっと静かになります。
クレオンさんがこのトークをしたのは今から10年以上前のことです。今は、スマホを常用している人がたくさんいて、世間全体がデジタル寄りになっています。
そんな時代にときどきアナログに立ち返る時間を持つと、気持ちに余裕が生まれるし、思いがけないひらめきにもつながります。
クレオンさんが新聞から詩を見つけたように、画面の外にも面白いものはたくさんあるのかもしれません。
アートに関するほかのプレゼン
アートに関するテーマに興味のある方は、以下の記事もごらんください。
頭の中に絵が思い浮かばない人がいる:心の多様性を知る(TED)
問題を解決するために、まずはトーストの作り方を描いてみる(TED)
制限があるからこそ素晴らしい物が生まれる:震えを受け入れる(TED)
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オースティン・クレオンさんの「アーティストのように盗め」というトークを紹介しました。
自分を誰かと比べるのではなく、好きなものを選び取って自分なりに組み合わせていく生活を試してください。
それがあなたのオリジナルになります。
















































