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「もっと早く感謝の気持ちを伝えておけばよかった」と後悔した経験はありませんか?
多くの人が、大切な人に感謝や賛辞を伝えるタイミングを逃してしまいます。相手がいなくなってから初めて「ありがとう」と心の中でつぶやくのです。
今回ご紹介するTEDトーク、Why we should eulogize the living(なぜ生きている者に賛辞を送るべきか?)は、「感謝の言葉は生きているうちに伝えるべきだ」というメッセージを伝えるものです。
講演者は、Walter Green(ウォルター・グリーン)さん。彼は、米国最大のカンファレンスセンターマネジメント会社の会長兼CEOを25年勤め、現在はメンターとして活躍しています。
彼の最新の取り組みは、”Say It Now” という、生前に感謝の意を伝えることを広める活動。
彼がこの活動を始めたきっかけや、感謝を伝えることがどれほど人生を豊かにするか、ぜひ聞いてみてください。
相手が生きているあいだに感謝しよう
収録は2023年の6月、動画の長さは10分。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
シンプルな提案ですが、実践できたら人生が変わります。
今言うことを始めたきっかけ
周囲の人たちは自分にとってとても大切なのに、彼らに対して深い感謝の言葉を述べるのを、その人が死ぬまで待つなんて、私には信じられません。
なぜこうするのか、ずっと不思議に思ってきました。
最後まで待つせいで、大切な人間関係を深めるチャンスを逃していると思うのです。
そんな気持ちから、私は “Say It Now” (今、言おう)という活動を始めて、もう30年になります。
人間関係はとても重要で、深い関係は宝ものであると私は学びました。
だから、私が50歳の誕生日に、ニューヨークで1週間行ったお祝いに、5人の親しい友人を招き、彼らが自分の人生にどれほど大切か言葉で伝えました。
これが、”Say It Now” の始まりです。
その後、私はたくさんのメモリアルサービス(お葬式)やお別れの会に出席しました。
毎回、追悼の言葉の美しさに胸を打たれましたが、それ以上にその追悼を受けている人が、棺に入っていて、その言葉を一言も聞けないことに胸が痛みました。
私にとって大事な人たちにはそんな目にあわせたくありません。
だから、自分の70歳の誕生日とその翌年、44人の人に個人的に会い、その人が自分の人生にどれほど意味のある存在なのか伝えました。
これはとても深い体験で、私がはじめての本を書くきっかけになりました。
友人の誕生日パーティ
その直後、仲のよい友人であるデニーが、自分が死んだあと、素晴らしいお別れの会を開きたいと言ったんです。
彼は私が会った人の中でも、とりわけ楽天的で前向きな人です。私は彼に言いました。
「デニー、そのパーティに自分も出席したいと思わないのか?」
「ウォルター、それって普通じゃないよ」。こう彼は答えました。
「デニー、普通のやり方は全く意味がない。もうすぐ75歳になるんだし、葬式に呼びたい人を誕生日に招待したらどうだい? 呼んでくれたら、君のお別れの会は僕が取り仕切ってあげるから」
こうして、デニーの素晴らしい誕生日パーティが行われました。
デニーに対する賛辞の言葉は心温まるものばかりでした。
彼は自分の人生にとって重要な人々が、自分のことを大事に思っていることを聞きました。
これは生前に聞く追悼ですが、このような言葉を聞く人は本当にまれです。たいてい、追悼は死後に行われますから。
残念ながら、デニーは、このパーティの1年半後に亡くなり、約束どおり私は追悼の会を開き、誕生日パーティに呼んだ人たちの多くをまた呼びました。
最初のイベントは楽しかったのですが、このイベントは悲しいものでした。
「デニーはもういない」と皆、知っていましたから。でも、彼が死ぬ前に、彼に感謝の言葉を述べていたので、私たちは「言い残したことがある」といいう後悔はしませんでした。
今、感謝するのが重要な理由
“Say It Now” は、その人がまだ生きているあいだに感謝することです。
一対一で話そうと、手紙に書こうと、皆で集まって感謝しようと形は問いません。
やり方はどうでもいいのです。重要なのは、今伝えることです。
アメリカ心理学の創始者であるウィリアム・ジェームズは、「人間の本質における最も深い原則は、『感謝されたいという渇望』である」と言いました。
しかし、多くの場合、私たちは自分が他人に与えている影響を知ることはありません。相手がそれを伝えてくれなければ、知ることができないからです。
技術が進歩して、世界中の人々とつながるのが簡単になりました。
ほとんどお金をかけず、ただクリックするだけで、人々を集めて生前の追悼式を開くことができます。
ここで、私は皆さんに2つ質問があります。
まず、まだ生きている人の中で、あなたに深い影響を与えた人がいますか?
次に、その人に不慮のできごとが起こったとき、その人に言いたかったことを言えず後悔すると思いますか?
今、その人に自分の気持ちを伝えているところを想像してください。
その人が自分の人生に与えた影響について伝えることができたら、あなたは、話せなかったことを後悔することはもうありません。
相手はあなたから感謝され、自分があなたの人生にとって特別な存在だったことを知ります。
人生は予測不可能
最近、友人に “Say It Now” の長期的なビジョンを聞かれました。
実は、すでに私の思い描いたビジョンは現実になっています。
この活動はアメリカ全50州に広がり、67か国の15,000の教室で行われ、今も広がり続けています。
今年だけで、親や教師、コーチ、配偶者、友人、祖父母への感謝の言葉が100万件に達する見込みです。
そして、今、あなたの番です。
数分前に思い浮かべた人のことを覚えていますか?
もし明日その人がいなくなったらどう思うでしょう?
だから、今、伝えてください。遅すぎることはあっても、早すぎることはありません。
///// 抄訳ここまで ////
感謝に関するほかのプレゼン
なぜ人は自分が本当に求めている物を追求しないのか?(TED)
死を前にして何を思うか? ある救急救命士による臨終の告白(TED)
ウォルター・グリーンさんの著書です。
感謝が生む深い人間関係
私たちは誰かに感謝するのをその人が死んだあとまで待つ傾向があります。その理由は、たとえば以下のようなことでしょう。
・相手の存在や行動を当たり前に感じている(相手がいなくなってから初めてありがたみに気づく)
普段一緒にいる家族や同僚、友人に対しては、つい「感謝の言葉を言わなくてもわかってくれるだろう」と思いがちです。
・毎日忙しいので、改まってそんなことをする気にならない
忙しい日常の中で、感謝の言葉を口にする余裕を見つけるのは意外と難しいものです。
・照れくさい
日本人は、感謝や賛辞の言葉を直接口にするのが苦手な人が多いです。
・感謝を伝える重要性に気づいていない
相手に感謝を伝えれば、人間関係が深まることを意識していればもっと感謝できます。
・感謝する習慣がない
幼少期から感謝を言葉にする習慣がないと、大人になっても自然に感謝を表現するのが難しくなります。
こんな理由から、なかなか感謝の言葉を口にできない一方で、「私はこんなに頑張っているのに、誰も感謝してくれない」と不満に思うことがありませんか?
トークの中で言及があったように、人には「自分の存在を認められたい」「大事に思われたい」という深い渇望があります。
だからこそ、感謝されると誰でも嬉しく、幸せを感じます。ですが、この「感謝」は、言葉にしなければ相手には伝わりません。
もしあなたが人間関係をさらに充実させたいなら、まず自分から相手に感謝や賛辞の言葉を伝えてみてください。それもできるだけ早く。
「いつか」と思っていても、その「いつか」がなかなか来ないのは、不用品を使うタイミングを待っているときと同じです。
大切なことは早めにやっておきましょう。