パソコンに向かう女性

TEDの動画

よりよい決断をする3つの方法、コンピュータのように考える(TED)

何をするにも、優柔不断で迷ってばかり。そんな人に決め方を教えてくれるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、3 Ways to Make Better Decisions – By Thinking Like a Computer(よりよい決断をする3つの方法-コンピュータのように考えることによって)。

邦題は『コンピュータのように考えることで良い決断をする3つの方法』。

プレゼンターは心理学者/認知科学者のトム・グリフィス(Tom Griffiths)さんです。

コンピュータが問題を解決する方法は、思ったより人間のやり方と似ているから、コンピュータのやり方を真似すれば、もっといい決断ができるよ、という内容です。



よりよい決断をする3つの方法:TEDの説明

If you ever struggle to make decisions, here’s a talk for you. Cognitive scientist Tom Griffiths shows how we can apply the logic of computers to untangle tricky human problems, sharing three practical strategies for making better decisions — on everything from finding a home to choosing which restaurant to go to tonight.

決めることに苦労しているのなら、この講演はあなたのためにあります。認知科学者のトム・グリフィスはコンピュータのロジックを使って、人間の複雑な問題を解決する方法を紹介します。よりよい決断をするために3つの方法があります。家を見つけることから、今晩出かけるレストランを決めることまで応用できます。

収録は2017年の6月。動画の長さは11分47秒。日本語の字幕もあります。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に





37%ルールとは?

家探しが難しい街といえばシドニーですね。オープンハウスに出向き、情報を仕入れ、その家から立ち去ろうとするとき、よい物件を手放すリスクに直面します。

見て回るのをやめ、実際に購入する時だと、いったいどうしたらわかるのでしょうか?

難しい問題だと思うでしょうが、シンプルな答えがあります。37%です。

最適な家を見つける可能性を最大限にしたいなら、市場に出ている家の37%を見て、次にこれまで見た物件よりいい、と思う家を見つけたら、それを買えばいいのです。

あるいは、1ヶ月家を見て回るなら、そのうちの37%、つまり11日をめどにして、それだけ見たら、実際に家を買います。

コンピュータは人と同じように問題を解決する

この数字はたしかです。なぜなら、家を見つけることは、数学者や計算機科学者(コンピュータ・サイエンティスト)が、熱心に研究している最適停止問題(optimal stopping problem)のひとつですから。

私は計算論を取り入れている認知科学者です。日夜、人のこころがどんなふうに機能するのか研究しています。

日常生活の問題を、計算論の体系に見立て、どのように行動したら、解決できるか考えているうちに、コンピュータ・サイエンスを利用すると、人の意思決定をもっと簡単なものにできるとわかりました。

レストラン選びのようなシンプルな決めごとから、生涯の伴侶を決める重要な決断まで、人の生活には、たくさんの計算論的な問題に満ちています。

がんばって考えるには難しすぎますね。

こうした問題の解決法は、専門家である、コンピュータ・サイエンティストに聞くべきです。

とはいえ、人生に関するアドバイスがほしいとき、コンピュータ・サイエンティストに相談しようと思う人はあまりいないでしょう。

コンピュータのように暮らすなんて、ガチガチの生活みたいで楽しそうに思えません。

ですが、日常生活に生じる難しい問題を、コンピュータに解かせてみると、人が行動するのと同じように解くのです。

どのレストランに行くか決めるには?

例としてどのレストランに行くか決める問題をとりあげましょう。

この問題は、特に、計算機的な構造をしています。複数の選択肢があり、その選択肢から1つ選びます。そして、明日も同じ問題を解きます。

このような状況を、計算機科学者は、「探検と活用のトレードオフ(explore-exploit trade-off)」と呼びます。

何か新しいことをしてみるか、つまり、調査をして、将来使えるかもしれない情報を集めるか、すでに馴染みのあることをするか、つまり、すでに集めてある情報を活用するか。

「探検と活用のトレードオフ」とは、新しいことと、すでによく知っていることのどちらかを選ぶときにに生じる問題です。

音楽を聞くときも、誰と時間を過ごすか決めるときにも生じます。

コンピュータ科学者は、過去60年にわたって、「探検と活用のトレードオフ」について理解を深めてきたので、計算論的な解決法はとても参考になります。

どのレストランに行くか決めるとき、最初に考えるべきことは、自分がその街にどのぐらいの時間いるか、ということです。

短時間しかいないのなら、すでに知っている場所(おいしいとわかっているレストラン)へ行くべきです(exploit 活用)。情報を集める意味がありません。

しかし、長期の滞在なら、探検(explore)してください。新しいものを試せば、その情報を、将来する選択に活かすことができます。

使う機会があればあるほど、その情報の価値はあがります

この考え方は、人生にも応用できます。赤ん坊はあまり分別がなく、いつも新しいことを試します。なんでも口に入れますね。しかし、これは赤ん坊がすべきことなのです。

赤ん坊は人生の探検段階にいますから。口に入れたものの中にはとてもおいしいものもあるでしょう。

逆に、年をとった人が、いつも同じレストランへ行き、同じものを食べるのは退屈なことではありません。これは最適化の結果です。彼は生涯をかけて集めた情報を活用しているのです。

「探検と活用のトレードオフ」を知っていると、もっと気楽に意思決定をすることができます。

毎晩、ベストのレストランに行く必要はないのです。試しに、新しい場所に行ってみてください。すると何かを学ぶでしょう。そこで得た情報は、1回のおいしい夕食より、将来役立つかもしれません。

捨てる服を決める方法

コンピュータ・サイエンスは家庭やオフィスでの問題解決にも役立ちます。

衣類の片付けをしたことがあるなら、どの服を残し、どの服を捨てるのかという悩ましい問題に直面したことがあるでしょう。

マーサ・スチュワートのアドバイス

マーサ・スチュワートはこの問題について深く考え、いいアドバイスをしています。

■マーサ・スチュワートの4つの質問

1.これをどのぐらい持っているのか?

2.これはいまも機能しているか?

3.すでに同じものを持ってはいないか?

4.最後にこれを着たとき/使ったときはいつか?

しかし、この問題について、もっと深く考えている専門家たちがいて、4つの質問のうち、1つだけが、ほかの質問より重要だと言うでしょう。

コンピュータのメモリのシステムをデザインした人たちです。

コンピュータの2つのメモリシステム

たいていのコンピュータには2種類のメモリのシステムがあります。速いメモリ(fast memory system)と遅いメモリ(slow memory system)です。

速いメモリのメモリチップは高価なので、容量は限られています。遅いメモリの容量はもっと大きいです。

コンピュータをできるだけ効率的に作動させるには、アクセスしたい情報を、速いメモリに置いておくべきです。すぐに引き出せますから。

情報にアクセスするたびに、速いメモリには情報がたまっていきますが、キャパシティに限界があるため、コンピュータは、そこにある情報のうちどれかを取り除かなければなりません。

どの情報をファストメモリから取り出すべきか決めさせるために、計算機科学者は、いろいろな方法ををためしてきました。ランダムに取り除いたり、先入れ先出しの原則(first-in, first-out prinnciple)を使ったり。

これは、メモリにもっとも長く入っている情報から出していくやり方です。

しかし、一番、効果的な方法は、最近、もっとも使われていない情報を出すやり方です。つまり、もっとも前にアクセスされた情報を取り除くのです。

このやり方は、ある意味、理屈に合っています。その情報にアクセスしてから、長い時間がたっているのなら、再びその情報にアクセスする必要が生じるまでに、やはり長い時間がかかるでしょうから。

みなさんのクローゼットはコンピュータのメモリと一緒です。キャパシティに限界があります。だから、自分がもっともよく着る服をそこに入れるべきなのです。そうすれば、最速で取り出せます。

こう考えれば、衣類の整理をするときは、最近、もっとも着ていない服から捨てていくのがいい、といえるでしょう。

マーサ・スチュワートの4つの質問に戻ると、計算機科学者なら、最後の質問がもっとも重要だと言うのです。

野口悠紀雄のファイリングシステム(「超」整理法)

自分がもっとも使いそうな物をもっともアクセスしやすい場所に置いておく考え方は、オフィスでも使えます。

日本の経済学者の野口悠紀雄は、この方法を体現したファイリングシステムを考案しました。

段ボール箱を用意し、左側から書類を入れていきます。書類を取り出して使ったら一番左に戻します。

こうすると、最近使った順番で、左側から書類が並びます。左側から探せば、使いたい書類が速く見つかると、彼は言っています。

机の上に書類を積み上げておいても、上から下にむけて、最近使った順に書類が並んでいます。上から見ていけば、見たい書類を速く見つけることができるでしょう。

洋服やデスクの片付けは、人生においてそんなに切迫した問題ではないでしょう。もっと難しい問題についても、計算機科学を使うことができます。

難しい問題の解決法

最強のアルゴリズムとは、もっとも意味のあることを、もっとも短時間で行うためのものです。

コンピュータが難しい問題に直面したときは、より簡単な問題に変えて解決しようとします。無作為に抽出したり、障害となっているものを取り除いたり、近似値を用いたりして。

簡単な問題を解決すると、難しい問題を解決するヒントを得られるし、ときには、そのやり方で解決できたりします。

合理的な決断とは?

こうした知識のおかげで、決断するとき、気が楽になります。

家を見つけるさい37%ルールを使うことができます。すべての選択肢を検討するなんて不可能ですから。それに、もっとも最適な戦略を使ったからといって成功する保障はありません。

37%ルールを用いて、家をさがした時、ベストの家を見つける可能性は、おもしろいことに、37%なのです。たいてい、失敗するわけですが、これがみなさんにできる最善のことです。

コンピュータ科学は、私たちに限界を受け入れることを教えてくれます。私たちは、結果をコントロールすることはできません。コントロールできるのはプロセスなのです。

最良のプロセスをふんでいる限り、最善の行動をしています。最良のプロセスを行くなら、ときには、一か八かやってみなければなりません。

すべての選択肢を検討するのではなく、そこそこいいと思えるところで手を打つのです。

それは、人が合理的に行動できないときにする妥協ではありません。そうすることこそ、合理的だと言えるのです。

///// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

Optimal stopping problem  最適停止問題 
もっとも効果的な結果を出すには、どのタイミングで行動にでるべきかを数学的に解く問題。

たとえば、秘書を雇うときや結婚相手を決めるとき、どの時点で探すのをやめ、行動に移るか、その最適なタイミングを決める問題です。

explore-exploit trade-off  探索と活用のトレードオフ。

新しいことをするか、よく知っていることをするか、どちらかを決める問題。

たとえば、片付けブログを見る場合、新しいブログにアクセスし、将来使えそうな情報を集めることを選ぶか(なんの情報も得られない可能性もあります)、いつも読んでいて、だいたい望む結果が得られるとわかっているブログにアクセスするか、どちらかを選ぶことです。

トム・グリフィスさんの共著は翻訳版が出ています。

マーサ・スチュワートさんの本は、たくさん出ていますが、片付け本にリンクしておきます。

この本の翻訳本(グッドシングス・フォー・オーガナイジング)もありますが、中古でしか手にはいらないので、図書館で探してください。

マーサ・スチュワートは、ミニマリストではないので、物はあんまり減らないかもしれませんが(どちらかというと収納系)、このとおりできれば世間的に見て、美しいインテリアになるでしょう。

野口悠紀雄さんの有名な著書。

選択と決断に関するほかのTEDトーク

決断する力をアップする。自分で決められない理由とうまく決める方法(TED)

よりよい決断をするには?シーナ・アイエンガーの選択術(TED)

決断に悩むときこそ大きなチャンス。重要な選択をする方法(TED)

我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)

選択をしやすくするには~シーナ・アイエンガー(TED)。選択肢の海の中で生きる技術。

バリー・シュワルツに学ぶ『選択のパラドックス』(TED)~所持品をミニマムにすると生きやすくなる理由とは?

感情的な反応から賢明な思考にシフトさせ、最良の決断をうながす方法。

結果はコントロールできない

グリフィスさんのプレゼンには、服の断捨離に使える具体的なアドバイスがあります。

しかし、このプレゼンから私が学んだのは、

・すべての選択肢を検討するのは不可能。

・やめどきが肝心(探すのをやめて一か八か行動を起こすべし)

・コントロールできるのはプロセスだけ

この3つです。人が決断できないのは、最善の結果を出すことにこだわりすぎるからです。

断捨離でいえば、「後悔しない片付け」「あとで必要になったり、困ったりしない片付け」「最短の時間でできる断捨離」「もっとも効率的な捨て方」にこだわる人がたくさんいます。

そういう片付けをするための情報を集めることに時間とエネルギーを使いすぎているから、いつまでたっても家が片付かないのです。

私たちには、結果をコントロールすることはできません。最適化することはできても、失敗する確率は高いと計算が得意なパソコンが、はじきだしています。

コントロールできるのは、それを行うプロセスと、結果に対する考え方(解釈)です。

解釈を変えれば、失敗も学びに変わります。どちらにころんでも、自分の考え方次第で、ポジティブにとらえることができます。

ポジティブに考えられる自分になるために必要なのは、物理的なガラクタも心の中にあるゴミのような思考も、なるべく捨てて、心の余裕を持つことではないでしょうか?





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