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洋服がたまってしょうがないけど、買うのを止められないあなた。そんなあなたに、おすすめのドキュメンタリー映画をご紹介します。
タイトルは”The True Cost“ 真のコスト、真の代償
2015年5月29日にアメリカで公開されたのを皮切りに、順次世界で公開され話題を呼んでいます。
ザ・トゥルー・コストとは?
この映画のテーマはずばり、ファストファッションの問題。ファストファッションとは最新流行のデザインの服を低価格、かつ短いサイクルで販売するビジネスモデル、またはそうやって売られる服のことです。
代表的なブランドはH&M、Zara、Forever 21、ユニクロなど。
近年、欧米ではこのファストファッションに人気が集まっています。日本でも激安服を通販で買って楽しんでいる人が多いでしょうね。ですが、楽しんでいる人がいる影でたいへんな代償が支払われているのです。
予告編だけで充分インパクトがありますのでご紹介しますね。
2013年の4月に、バングラデシュでラナ・プラザ(Rana Plaza)という縫製工場が倒壊して1100人以上が亡くなり、3000人以上の人が怪我をしました。予告編に出てくるのはこの事件を伝えるニュースクリップです。
バングラデシュでは、この事件より前から、たびたび縫製工場で、建物が崩れてきたり、火災が起こっていました。この事故のあとも火災はめずらしくありません。
現在、バングラデシュは世界中の洋服のメーカーの縫製の下請けをしています。
またカンボジアの縫製工場で賃上げ要求のデモをする人々に、警官が発砲しているニュースもでてきます。
縫製業はカンボジアの主力産業です。労働者たちは、低賃金と劣悪な労働環境に苦しみ、賃上げ要求のデモやストライキ、暴動を繰り返し、そのたびに治安部隊と衝突しています。
はなやかなファッション業界を支える裏に、こうした貧しい国の人々の犠牲があるのですね。工場からでた産業廃棄物が川を汚している現実も見逃せません。
日本でも公開されます。こちらの記事で、日本語字幕版の予告編を紹介しています⇒『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』が11月日本で公開。服を買い過ぎる人は必見です
The True Costが生まれた背景
きっかけはラナ・プラザの事件
この映画を作ったのは、28歳のアンドリュー・モーガンという人。
アンドリューは、ラナ・プラザの事件の直後に、2人の少年が肉親を探すため「尋ね人」のプラカードを持って、倒壊した建物の前にいる写真を見てショックを受けたそうです。
彼は、それまでこうした安い服はきれいなオートメーションの工場で生産されていると思いこんでいました。「まさかこんなふうに洋服が作られているなんて」とびっくりしたのです。
そこでもっとこの件について詳しく調べて映画を作ることにしました。
彼は、製作資金として、キックスターター(Kickstarter)でまず7万6千ドルほど集めました。
キックスターターは、自主制作の映画や、音楽などの資金を集めることができるクラウドファンディングのサイトです。
クラウドファンディング(crowdfunding)とは、何かビジネスアイデアやプロジェクトのある人がインターネットを通してアピールし、賛同した人から資金を援助してもらうこと。通常、そのビジネスが成功すれば、賛同者は売上の一部を受取ります。
アンドリューはさらに個人投資家たちから、お金を集め、全部で50万ドル調達して映画を制作しました。
内容に関してどんな企業や団体からも口出しされたくなかったので、企業やNGOからの資金援助は受けていないそうです。
ファストファッションについてはこちらの記事でもふれています⇒激安衣料品(ファストファッション)を求める心がガラクタを生む~実録・親の家を片付ける(3)
こちらでも説明しています⇒⇒ファストファッションとは?その仕組みと問題点を2分で学ぶ
リヴィア・ファースも制作に協力
リヴィア・ファース(Livia Firth)も共同制作者として制作費を援助。
リヴィア・ファースはイギリスの2枚目俳優、コリン・ファースの奥さんですが、環境保護活動家で、ECO-AGEというエコロジーとビジネスを結びつけるコンサルティング会社のクリエイティブディレクターという地位にいます。
彼女はもともと「もっとみんなサステイナブルなドレス(sustainable dress)を着ましょう」と呼びかけていました。
sustainable は「持続可能」と訳されていますが、ずっと続くことができること。よくビジネスの形態について使われます。発展途上国の人々に犠牲を強いたり、環境を破壊して天然資源を枯渇させ、未来の人々の生活をおびやかすようなビジネスの仕方はサステイナブルではありません。
サステイナブルな服は、環境にダメージを与えない服です。生産されるときに環境に負荷をかけない服、すぐに捨てられない服、ゴミの山になってしまわない服です。
すぐにガラクタになってしまう服はunsustainable(アンサステイナブル)、持続不可能な服なのです。
予告編の1分30秒ぐらいに出てくるのがリヴィアです。
リヴィアの言葉:
The actual business model is completely unsustainable unless you change the model, you can’t change anything.
実際のビジネスモデルは全くもって環境によくありません。このビジネスモデルを変えなければ、何も変わりません。
その前の1分17秒ぐらいに出てくる女性はジャーナリストのLucy Siegle(ルーシー・シーグル)というジャーナリストです。
ルーシーの言葉:
This enormous rapacious industry,that is generating so much profit, Why is it that it is unnable to support millions of its workers properly?
(ファストファッションを手がけている)巨大で強欲な企業は、巨額の富を得ているのに、どうして、自分のところの労働者をまともにサポートできないのでしょうか?
ルーシーさんのTEDのプレゼンをこちらで紹介しています⇒死ぬほど素敵なファッション(TED)おしゃれで安い服の大きな代償。
行き過ぎたマテリアリズム
予告編の1分57秒と2分17秒あたりのシーンはブラックフライデー(Black Friday)に、人々が衣料品店に押し寄せているところです。
ブラック・フライデーはアメリカのサンクスギビングデーの翌日の大々的な安売り。
アメリカのサンクスギビングデーは11月の第4木曜日で、翌日のブラック・フライデーとも祝日です。土日と合わせれば4連休になります。11月の終わりで、クリスマスを控えた、ホリデー商戦の幕が切って落とされる日です。
ちなみに、カナダのサンクスギビングデーはアメリカとは違い10月の第2月曜日です。翌日、アメリカのようなセールはありません。しかし、カナダでも、アメリカと同じ日にブラック・フライデーのセールが行われています。
ふだんでも安いファストファッションの服。セールの日はさらに安くなるので、人々は未明から並んで開店とともに売り場に突撃します。
アメリカの人は、バングラデシュやカンボジアの労働者と違って、たぶん服はもう充分すぎるほど持っています。
何がここまで人を買い物に走らせるのでしょうか?
予告編で誰かが話しているように materialism (マテリアリズム、物質至上主義)のせいなのでしょうね。
マテリアリズムは人を幸せにしないのに、「物さえあれば幸せになれる」と信じている人はまだまだ多いのです。
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The True Costの日本での公開はまだ決まっていないようですが、アメリカのiTunesやamazonでストリーミングで見ることができます。
詳細はThe True Costのサイトでどうぞ⇒The True Cost | A Fashion Documentary Movie
この映画では、特定のブランドの非難はしていないそうです。
監督は、ファッション業界やファストファッションのビジネスを否定しているわけではなく、「もう少し、人間的なサステイナブルな方法にできたら」と願っているそう。
消費者である私たちにできることは、1つ1つの洋服をもっと大事に着ることです。洋服を毎年使い捨てするような着方はもうやめるべきではないでしょうか?メディアもやたらと「今シーズンの最新ファッション」「激安です」「これを買わずにどうする?」とあおる広告を出すのを慎むべきですね。
ティーンエイジャーは雑誌や、テレビの影響を受け、どんどん買ってしまいますから。予告編で語られているように「利益を生むこと」だけを目的にしない生き方が求められています。