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幸せな人生を送る参考になるTEDの動画を紹介しています。今回は、マーティ・スタノ(Marty Stano )という映像作家のプレゼンです。彼はミニマリストです。
ミニマリズムの冒険と幸せ
動画のタイトルは Adventures with Minimalism and Happiness 「ミニマリズムの冒険と幸せ」
ミニマリズムの何がそんなにいいのか、自分の体験をシェアしながら率直に話している、シンプルなプレゼンです。
彼は、自分はミニマリズムを通して、人生の幸せを見つけてきたし、これからもそうする、と語っています。
動画は20分。日本語字幕はないので、抄訳を詳しめにつけました。
※TEDについてはこちらをどうぞ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
5歳のときから風来坊
初めての家出は5歳のとき、妹と喧嘩して、家を飛び出しました。身の周りのものだけを小さな赤いバッグにつめて。
その家出は、通りの角で終わったけれど、大きくなってからも何度も家出をしています。
今は、荷物はバックパックに詰めています。本当に必要なものだけを詰めて肩に背負い、自分の足で歩く。そうすることが、とても私を自由な気持ちにさせてくれるのです。少しのものだけでシンプルに暮らすのがとても幸せなのです。
ミニマリズムが自分を幸せにしてくれる
自分がどんなふうに暮してきたか振り返ってみるとパターンがあることに気づきました。
ミニマリズムです。
ミニマリズムの精神は「レス・イズ・モア (Less is more)」。ミニマリズムの目的の1つは、気を散らす物(distractions)をすべて捨てること。
幸せになるために、必要のないものは取り除くのです。
この考え方は、人生のいろいろな面にあてはめることができます。物理的な物にも、健康や食事、仕事、思考のような物ではないものにも。
生き方にミニマリズムを取り入れると、時間、エネルギー、お金、自由が増えて、結局、より幸せになります。
大学生のとき、物を減らしてみた
大学時代のある学期、ホームレスとして暮らしてみました。勉強に必要なものだけをバックパックに詰めて、レクリエーションセンターのロッカーに、服と歯ブラシなどをしまっておきました。
ほとんど図書館や友だちの家で寝てました。このとき、物がないほうが、勉強に集中できることを発見しました。お金も節約できましたし。
卒業後は食べ物でミニマリズムを実践
その後、ミシガンとプエルトリコにある、ナチュラル・ヘルス・アンド・ウエルネスセンターでインターンをしました。
キッチンとグリーンハウスで働きました。無給でしたが、からだにいい食べ物と寝るところ、運動する時間がありました。
このとき栄養についてしっかり学びました。平均的アメリカ人が食べているものが、どれほど人生をだめにするかわかったのです。
加工食品、肉、乳製品が多く、果物や野菜が少ない食事。これはミニマリズムとは逆の生き方です。こういう食事は脂質、塩、化学製品、精製した砂糖、食品添加物を取り過ぎてしまうので、よくありません。
そこで私は自分の食べるものをプラントベース(plant base 植物主体)にしました。加工食品、肉、乳製品をぐんと減らしてみたところ、4週間で大きな変化が。
ものすごく気分がよくなったのです。すごくエネルギーが湧いてきました。そこでランニングを始めました。
高校のときサッカーをしていたことがあったものの、私は決してスポーツをするタイプではなかったのに。
でも、あまりにエネルギーがあったので毎日ランニングし、4ヶ月後にはフルマラソンを4時間未満で走りました。
チリではミニマリズムを思考に応用した
その後、チリに英語を教えに行きました。スペイン語を全く知らなかったので、言葉を使わずにコミュニケーションしました。
ジェスチャーを使ったり、ごく限られたシンプルな言葉を使ったり。
ホストファミリーの人をはじめ、チリの人たちはすごく親切で、歓迎してくれました。感謝の気持ちを伝えたかったけれど、言葉ができなかったので、とにかくいつも笑顔でいました。
言葉がわからなかったので、自分の国にいるときより、ずっと1人でいる時間が持てました。
そこで心のミニマリズム(minimalism of mind)を実践しました。
周囲の人の言うことも、ニュースやメディアの発信していることもわかりませんでした。「人はこういうふうに生きるべきだ」というノイズをすべてシャットアウトできたのです。
だから自分の心に耳を傾けることができました。自分の考えに、より意識的になれました。自分にはどんな思考が必要なのか、どんな思考が自分にとってよく作用するのか、どんな考えが健全なのか。
ネガティブな考え、恐怖などはみんな捨てなければ、と思ったのです。自分が幸せになるためには、バックパックに詰める物より、思考のほうが大事だと気づきました。
いらない考えを頭の外に出しました。頭がよりクリアになり、いったい何が人生には必要なのか、どうやって生きるべきか、どうしたら幸せになれるのか、考えました。
一度に1つだけ取り去ってみよう
ミニマリズムはどうやって実践したらいいのでしょうか?
まずはこの1番大切な質問、「自分が幸せになるためには、いったい何が必要なのか」、自分に聞く必要があります。
この質問に答えるのは時間がかかりますが。私もまだ考えています。
それから、自分の人生にとって、いらない物を1つずつ手放してください。一度に1つです。
毎日やっていることの中から試しに1つ取り去ってみて、かえって幸せになったら、それがミニマリズムの成功です。
例として、私の友だちのチャーリーのことをお話します。チャーリーはお金の面でミニマリズムを実践しました。何にお金を使って、何に使わないか、ということです。
チャーリーは外食をやめてみました。もともとそんなに外食していたわけでもありませんが、外食も度重なればけこうお金が出ていきます。
数カ月後、収入は変わらないのに、チャーリーの口座にはすごくお金が残るようになりました。
チャーリーは小売店で働いていますが、実はミュージシャン。音楽が好きなので、浮いたお金をレコードやミュージックビデオに使いました。
これもミニマリズムの1つの成功です。チャーリーはその後も、いらない物にお金を使うのをやめました。
そのうち彼は自分を幸せにしてくれるものはお金より時間だということに気づきました。時間のほうが大事だと思ったのです。
そこで今度は労働時間を減らしました。週5日働いていたのを4日にしたのです。これまで働いていた時間を音楽活動にあてたり、何かべつのもっと自分を幸せな気分にしてくれることに使っています。
チャーリーは古い携帯を使っているし、ランチはいつもお弁当。彼の同僚が「気の毒に。新しい物が買えないんだね」とチャーリーに言いました。
チャーリーは反対に、「そういうきみこそ気の毒だよ。僕は君より、年間52日分余計に休みがあるけど、きみは金曜日に働かなきゃならないから」と言い返しました。
ミニマリズムのもたらすものは2つの結果だけ
ミニマリズムの実験をすると結果は2つしかありません。ここが私の好きなところです。
1つめの結果は、何か1つだけ人生から取り除いた後、「ああ、やはりないほうが幸せだ」と気づけること。
もう1つの結果は、何か人生から取り去ったとき、「ああ、やっぱりあれは必要だ。自分の暮しにはあれがないとね。あれが幸せにしてくれていた」と気づくこと。
こんなとき、どうすべきでしょうか?
また、自分の暮しに戻せばいいのです。ミニマリズムは実験です。オール・オア・ナッシングではありません。
人があなたの持ち物を決めるわけじゃない。自分自身で、何が自分の暮しに必要か発見しようとするのです。
「やっぱり必要だ」と気づいて捨てたものを戻したとき、前より、それを大事にするものです。
「失ったあとにその大切さがわかる」と言いますが、ミニマリズムの実験をすれば、完全に失う前に、それが大事だということがわかるのです。
大事なものを知り、それに感謝すると、より幸せになれます。
私がもっとも幸せを感じた場所とは?
パタゴニアで3ヶ月半、バックパックを背負って旅をしました。キャンプして、毎日美しい光景を堪能しました。
お金がなくなったので、家に帰ることにし、ヒッチハイクしました。数日間、食事もあまりとっていませんでした。
大学の先生の車に少し乗せてもらい、サンドイッチももらって、車から下りました。
陽が沈もうとしており、風が出てきました。2週間前に、この風が私のテントをこわしていました。
またヒッチハイクしようとして、道端に立っていたら、そばに排水路(drainage ditch)があるのに気づきました。排水路は乾いていました。
私は興奮しました。「やった!今夜はここに寝ればいい」と。実際そこに寝ました。
翌朝、自分が汚い排水路に寝たことが、とても幸せだったと思いました。
このとき気づいたことは、本当の家(home)は、アパートとか両親の家とかコミューンやテントではない、ということ。
私たちの本当の家はこころの中にあるのです。
過去2年、自分の興味のあること、情熱を持てること、夢見ていたこと、好きなことを追求し、すばらしい体験をいっぱいしました。幸せや感謝の気持ちもいっぱい持てました。
そうした体験は、私自身の家、つまり心の中にあります。
排水路に寝て、翌朝元気でまた起きられたことに本当に幸せと感謝の気持ちでいっぱいでした。きたない排水路に寝て、あんなに幸せになれたのです。もう自分は世界のどこにいても幸せでいられると思いました。
このようにミニマリズムの旅は、私をずいぶん遠いところまで連れて来ました。
昔はそんなことは想像もしていませんでしたが。
排水路に寝て幸せを感じたことが、私が、もっとも大きな、ミニマリズムの成功を感じた瞬間でした。
これからも幸せになるために成長を続けたい
このとき、未来の自分に絵葉書を書きました。ミニマリズムが自分の本当の幸せを見つける助けをしてくれるのがわかっていても、私たちは簡単に道からそれてしまいます。
忙しい日常生活を送っていたり、メディアからいろいろなノイズを聞いていると忘れてしまうんですね。
そこで未来の自分がちゃんと大事なことにフォーカスしていられるようにこの絵葉書を書きました。
未来のマーティへ:
世界の果てまで行った自分の旅を忘れるな。そこで見つけた喜びと力強さと真実、単純さ、明晰さを忘れるな。
ほんの少しの物とお金だけで、できるだけ自然のそばでシンプルに生きる願いを忘れるな。自分の中にあった喜びを忘れるな。その喜びをシェアし、喜びを与えられたら受け取れ。
肉体、心、感情、精神、すべてにおいて成長を続けろ。価値ある少しのことを学び続けろ。きみは何でもできる。
愛をこめて
26歳のマーティより
私がミニマリズムの極端な例だということはわかっています。みんなに幸せになるためにバックパックをかついで、世界を旅行して、排水路に寝ろとは言いません。
ですが、もし幸せになりたいなら、ミニマリズムを実践するために努力すべきです。
自分の人生には必要のないものの存在に気づくために。何が自分を本当に幸せにしてくれるのか発見するために、自分の持っているものに感謝するために。
皆さんの健康と幸せを祈ります。
・・・ 抄訳ここまで ・・・
想いがあふれている人
マーティのプレゼンは、構成を練れば、もっとよくなると思います。ちょっと単調ですね。
彼はあまりにもミニマリズムが気に入っていて、どうしてもみんなに伝えたい気持ちが強いのだと思います。
この点、ジェイミー・オリバーのプレゼンに似ています。
ジェイミー・オリバーのプレゼン⇒子供たちに食育をして肥満と戦おう~ジェイミー・オリヴァーに学ぶ(TED)
つまり想いがあふれているのです。その点で私は、プレゼンのプロが語るトークとは違う魅力を感じます。
自分の想いがあふれすぎているとき、しばしば周りが見えなくなります。たとえば、図書館で寝泊まりするとか。これはミニマリズムというより、居候というかパラサイト的な生き方です。
しかし、こういう人っていますよね。人の家で寝泊まりするのが得意な人が。きっと友だちには愛されるタイプなのでしょう。
ミニマリズムとは人生の混乱のもとを手放すこと
英語圏のミニマリストはよく、distraction ディストラクション という言葉を使います。この単語の直訳は、気を散らすこと、気を散らすもの、邪魔物。
自分の人生にとって必要のないものは、みんな distractions なのですが、この単語が訳しにくいです。文脈によって訳したり訳さなかったり、動詞表現にしています。
私は distractions は 「人生を混乱させる物」だと思います。持ちすぎている服や、部屋の中にいっぱいある置物、かかえすぎている仕事、頭の中でごちゃごちゃになっている思考、すべて distractions です。
これまでずっと More is better モア・イズ・ベター で来たので、現代人はディストラクションを抱えすぎています。これを捨てないと、自分のやりたいことが見えてこないのです。
というわけで、マーティの言うように、一度に1つずつ自分の人生から何かを手放してみるのはいいアイデアだと思います。
一生捨てる必要はなく、まずは1週間とか10日間だけ、何かをやめてみてはどうでしょうか?
何かをプラスするより、取り去るほうが大きな威力を発揮します。