ページに広告が含まれる場合があります。
去年大ベストセラーになったジェニファー・L・スコットの本の2冊めの翻訳が出ましたね。タイトルは「フランス人は10着しか服を持たない2」という、安直というか、2匹目のドジョウを感じさせます。
今回はこの本の全体的な感想を書きます。
原題は At Home with MADAME CHIC 直訳は「マダムシックと一緒の家」内容を考慮して訳すと、「マダムシックの家」「マダムシックのように過ごす家」といったところでしょうか?
この本、アメリカでは2014年の9月に出ています。すぐにAudibleで発売されたので、私も買って聞きました。この記事を書く前に再度聞き直しましたよ。
オーディオで5時間足らずなので、全部訳していたとしてもかなり短い本だと思います。
ジェニファーはミニマリストではありません
アマゾンの説明を読むと、
マダム・シックと離れてアメリカに戻った著者は、パリで学んだミニマムな暮らしを、カリフォルニアの自分の家で実践する。
どこに住んでも素敵な暮らしはできるし、何歳になってもミステリアスで魅力的な女性でいることはできる。
とあります。しかし、ジェニファーはミニマリストではないので、私に言わせれば、全然ミニマムな暮らしではありません。ですが、シンプルライフ系とは言えるでしょう。
今、物をたくさん持っている人にはミニマムに見えるかもしれませんね。
1冊めも2冊目も、「パリ流のシックな暮らし」を紹介するものと受け取られているようです。
しかし1冊めに書いてあることはわりと普通のことです。
オーガニックの食品を買い、料理は手作り。自分が着る服だけを持ち、手入れしながら大切に着る、食事中はテレビを見ず家族で会話を楽しむ、夕方はクラシック音楽を聞いて楽しむ、こんな暮らしが提唱されていました。
昔の人なら誰でもやっていそうなことです。
昔の食べ物はみんなオーガニックに近いものでしたからね。
現代は忙しく働く主婦が増え、スーパーに便利な加工食品があふれ、テレビもたいていの家のリビングルームに鎮座し、昔のように落ち着いて、じっくり暮らしを楽しむことがやりにくくなっただけのことです。
フランス人だって、毎日忙しいですから、パリジャン、パリジェンヌがこんなふうに日々の生活を楽しんでいるとは思いません。フランスはうつ病が多いことで有名です。
たまたまジェニファーがホームステイした、16区のアパートに住んでいた、貴族の血をひくご婦人がひじょうにシックな人であった、ということだと思います。
日本人の多くが、パリにおしゃれなイメージを持っているように、アメリカ人も似たようなイメージを持っているのでしょうね。
☆1冊めについてはこちらに書いています⇒『フランス人は10着しか服を持たない』から学んだ節約術
☆ジェニファーのしゃべる姿を見たい方はこちらをどうぞ⇒『フランス人は10着しか服を持たない』の著者、ジェニファー・L・スコットに学ぶ「10着のワードローブ」(TED)
そもそもシックって何?
ジェニファーの本のキー・ワードはまず「パリ」そして「シック」です。これは英語のchic で発音はシーク。この単語はもともとはドイツ語の Schick (礼儀、上品)という言葉から来ています。意味は、形容詞で「粋な、上品な、シックな」名詞で「粋、上品」
2冊めの冒頭で、「シックとは?」とジェニファーが書いています。彼女によれば、シックである、ということは服装だけにとどまらず、その人のあり方や、生き方をさす言葉です。
それは別にお金があるとか、ブランド物の服を着ているとか、いいクルマに乗っているとか、社会的地位があるとか、美人である、ということは関係ありません。
自分の暮らしに満足していて、何かに情熱を持って、美しく、生産的に生きることが「シック」である、とジェニファーは書いています。しかしここに1つジェニファーらしいポイントがあります。
それは そこそこよく見えなければならないことです。つまり、いくら家にずっといる専業主婦だからと言って、カジュアルすぎる服を着ていてはいけないのです。小奇麗にしてないとだめなのです。
これは近藤麻理恵さんも書いていましたね。
私のように365日トラックパンツをはいて、最近は穴もあいてきてズタボロだ、なんてのは全くシックではありません。
ノーメイクでもいけません。ジェニファーは化粧が好きなので、1冊めにもありましたが、この本にも、短い時間でさっとできる、素顔風に見えるいやみのないメイクの仕方などが紹介されてています。
しかし厚化粧でもだめです。朝のお手入れはシンプルでなくてはなりません。
そういうところが、どこにいても、何をしていても、いくつになってもきれいでいたい女心をくすぐって人気があるのかもしれませんね。
いわゆる「女子力」を高めつつ、シンプルに優雅に暮らし、なおかつ自分自身に自信を持って、人生を楽しんでいればかなりジェニファー流シックに近づきます。
でも、これって難しいですよね?
そう見せかけることもできますが、そんなのはジェニファーの言っているシックな生き方ではありません。
もちろん、家の中もきれいでなくてはいけないので、ガラクタやほこりがたまっていてもいけません。掃除が行き届いたいい匂いのする家にしておくべきです。
ときどきは親しい友だちを招いてプチパーティみたいなこともしなければなりません。
ただ、現在完璧にそうである必要はなく、そういう家にするために、毎日努力するところがシックなのです。
「プロセスを楽しむのよ」とジェニファーは書いています。
栗原はるみさんの素敵レシピと似てる
2冊目をはじめて聞いたとき、昔大人気だった栗原はるみさんの「素敵レシピ」というムックというか、カラー写真満載の大きな本がありましたが、あれとちょっと世界観が似ていると思いました。
「素敵レシピ」は素敵生活をコーディネートする本で、毎日の暮らしを楽しむための小さなアイディアが豊富にのっています。
栗原はるみさんは、料理研究家なので、レシピはもちろんのこと、食器やランチョンマットなどキッチン周りの話題が多かったのですが、インテリアや、縫い物、手芸の記事もけっこうありました。
ちょっとしたものを手作りして、おしゃれな部屋を作ります。詳細は忘れましたが、庭で育てているミントなどのハーブを食材にしたり、食卓に飾って楽しむといったことも書いてありました。
ズボラ主婦の私も、「ふむふむ、こういう生活っていいよね。できないけど…」と思っていました。
今は知りませんが、栗原はるみさんは昔は超売れっ子だったので、「本当にハーブを育てたり、こんなにいろいろ丁寧な暮らしをしてるのかしら」といぶかったものです。
ジェニファーの場合は、ファッション系の話題が多いです。それと彼女は音楽が好きみたいで、おすすめのレコード(CD)の紹介まであります。翻訳版にのっているかどうかはわからないのですが。今回はレシピもありました。
ジェニファーの本は、2冊めに限って言うと、自己の成長のための努力を促すところがあります。
毎日を前向きに暮らすために、朝ベッドで、いろいろなことに感謝したり、瞑想したり、時にはアファメーションもします。
アフォメーションとは短い前向きな言葉を声に出したり、心の中で言ったりすることです。こうしてなりたい自分に近づくようにします。
フライレディが、ネガティブな言葉をポジティブに置き換えろ、というのもアファメーションの一種です⇒家は1日では片付かない。汚家をきれいにする31の小さな習慣(1)
たとえば、「きっとすべてはうまく行く」「私はちゃんと片付けられる」「私はこの仕事を成し遂げられる」とか、まあ何でもいいのですが。
ジェニファーの場合は、
I am vibrant, healthy, and full of energy. 私は元気いっぱいで、健康で、エネルギーに満ち満ちている。
My beauty is radiant. 私の美しさは光り輝いている。
I am a calm and patient parent. 私は落ち着いた、忍耐強い親である。
など。
ほかのアファメーションは、こちらで、参照できます⇒At Home with Madame Chic: Becoming a Connoisseur of Daily Life – Jennifer L. Scott – Google Books 英語ですが、本の抜粋も読めます。
ジェニファーって、時々は落ち込んだり、混乱することがあるそうですが、全体的にすごく明るく、前向きなんですね。私はそういうところが好きです。
近藤麻理恵さんの「人生がときめく片付けの魔法」の英訳本も、本屋の自己啓発書の棚にありますが、ジェニファーの本も、単なるライフスタイル提案にとどまらず、自己啓発っぽいところがあるのですね。
きっとそれは「今日的である」ということだと思います。
栗原はるみさんの本は、こんなふうに家をきれいにして、おいしい料理を作って、インテリアも工夫して、家族のために居心地のいい家を作って毎日楽しみましょう、というものです。
もちろん、栗原さん自身は、自分の仕事をすごくがんばっていたと思いますが、本はあくまで「家の中のことをいろいろやって楽しもう」というふうで、わりと内向きです。
ジェニファーからは、日常の暮らしのディテール(タオルのたたみ方とか)にこだわりながら、日々を丁寧に暮らしつつ、なりたい自分になれるように前向きにがんばっていこう、というメッセージを感じることができます。
そんな彼女の世界観が好きな人にはおすすめです。
正直、私には特に目新しい情報はないし、1冊めに比べて、中身が薄いと思うし、「物、買い過ぎじゃない?」とか「フランス人はそうじゃないって」とか「シック、シックってうるさいよ」と思うときもあります。
ですが、私は彼女のポジティブ哲学みたいな物が好きなので、1冊めも2冊めも楽しく聞きました。
次回はもう少し具体的な内容をレビューしますね。
* * * *
2冊めのオーディオブックのナレーターは、まるで器械音声のように抑揚のない読み方をするのがちょっと不満です。今は慣れましたが。1冊目の人はもっと人間ぽかったので、2冊めも同じナレーターだったらよかったな、と思います。
時々、Je ne sais quoi などのフランス語が出てきますが、フランス語の発音やイントネーションがあまりにも違うのもちょっと違和感あります。
ナレーターの声や読み方はオーディオブックの良し悪しを決める重要なポイントですね。