ページに広告が含まれる場合があります。
ここ数年、先進国ではミニマルなライフスタイルが人気を集めています。
なぜでしょうか?
私の思う理由を5つ紹介します。まず、この記事を書くきっかけになったお便りをシェアしますね。ぽぽさんからいただきました。
物欲がなくなった
件名:価値観の変容
お気に入りに登録し毎日拝読しております。
今年、50歳になります。平均寿命が延長しております。
将来を俯瞰したとき、今私の持っているモノは、80歳になったときも私にとって価値を持つのか、と意識するようになったこと。
あわせて、出張用に20Lのトランクを手に入れ、このトランクだけに収まるモノがあるだけでいいとも思えるようにもなったこと。
加えて子どもが居ない夫婦なので、モノがあるだけ、先々自分の首を絞める。
私にとって大事なのは、人間性と健康、働き続けられる環境(生活の糧)があればいい、と考えるようになりました(もちろん、衣食住が整ったうえです)。
さて、ここからが大変です。所有する雑貨の多さに。
昭和時分の雑貨が好きで、また希少性もあるため(骨董品ではありませんが)見つけては買う。持っているだけで幸せと思えたのは48歳まで。
いま、49歳。手放す過渡期と化しております。最近の口癖は「これ、要らない」です。
ひとことで言うなら、物欲がなくなった、です。
断捨離をする、ミニマリストを目指したくなることは、自分自身の年齢(加齢)や人生経験も影響するものでしょうか。
自分自身のことでありながら、以前の価値観に「なんでこんなものを大事にしてた?」と呆れるようになったからです。
ぽぽさん、お便りありがとうございます。
お気に入りに登録してくださってうれしいです。
「返信希望します」とあったので、ここで返信しますね。
価値観が変わる理由
「年をとったり、さまざまな人生経験をすると、断捨離をしたくなったり、ミニマリストを目指したくなったりするのか?」
ぽぽさんの質問はこれですね?
自分の暮らし方を決めるのは、自分の価値観であり、その価値観は年齢とともに変わるから、答えはイエスです。
年をとってくると、終わりを意識するので、それが、ミニマリズム追求のきっかけになる、ということはよくあります。
親しかった人が突然亡くなったり、若い頃、よくテレビで見ていた役者さんの訃報を見たりすると、ああ、自分はまだ元気だけど、そのうち死ぬんだ、と自覚します。
そうやって終わりを意識すると、物を買い集めて終わる人生でいいのか、なんて考えると思います。
すると、たいていは、物集めよりもっと大事なことがあると思うから、それが断捨離や生前整理のきっかけになるでしょう。
若いうちは、自分が死ぬなんて、あまり実感わかないですよね。
若い頃は、昇進やキャリアで成功するのが目標だった人も、家庭を持つと、家族や子供のほうが大事だと思うようになります。これも、年齢による価値観の変化の1つです。
家族や子供との時間を大事にしようと思ったら、よけいな物をたくさんためこみ、大事じゃない仕事をかかえこむのは、かえって邪魔になります。そうした余分な物を整理する生き方を志向するのはごく自然なことです。
とはいえ、年齢が高い人だけにミニマルライフが人気、とは言えません。
自分が体験したことや、考えたことが自分の価値観に影響を与えるから、体験から学ぶ意欲のある人は、年齢関係なく、価値観を変えていくと思います。
その体験は、リストラされた、病気になった、被災した、離婚したといったヘビーなものから、友人にシンプルライフをすすめられた、ミニマリズムに関する本を読んで知識を得た、というライトなものまでさまざまです。
どんな人も、日々、いろいろな体験をして考えながら生きているから、若い人でも、ミニマルライフに転換する人は増えています。
これで、ぽぽさんの質問の答えになっているでしょうか?
いま、ミニマルなライフスタイルが人気を集めている理由を4つ書きます。このような外的な事情と本人の体験が合わさって、考え方が変わります。
1.消費主義・物質主義社会の反動
ミニマルライフは、現代的なライフスタイルの反動と言えます。
現代の、忙しい、大量消費をよしとする社会の反動で、物はなくてもいいから、もっとゆっくりと大事なものを大事にしながら暮らしたい、と思う人が増えました。
これまでは、モア・イズ・モア(More is More)と考える人が多かったのです。お金や物がたくさんあればあるほど、人生がより豊かになる、という考え方です。
ところが、物はすごくたくさんあるし、昔に比べると生活も豊かになっているのに、それと同じくらい、ストレスをかかえて、心の病気になる人も多いし、競争が激しくて、疲れている人もたくさんいます。
「物がたくさんあっても、幸せじゃないのかも?」と気づいた人が、レス・イズ・モアのほうに転換しても不思議はありません。
レス・イズ・モア⇒レス・イズ・モア(Less is more)の真の意味とは?何もない部屋に住むことがミニマリストの目的ではない
2.環境問題
環境問題がクローズアップされることが多くなり、よけいな物を買わない、ゴミをあまり出さないミニマルライフは、多くの人の賛同を得ていると思います。
持続可能な社会を作るのに貢献するライフスタイルですからね。
ごみゼロの暮らし⇒ベア・ジョンソンに学ぶゼロ・ウェイスト・ホームを作る5つのルール(TED)
これまで、皆が消費主義を追求した結果、環境が大きなダメージを受けました。
化石燃料を使って、工場でばんばん商品を作り、作った商品を車や飛行機で輸送したら、二酸化炭素が大量に排出されました。しかも、作った商品が多すぎて、大量のゴミになり、それを燃やしたら、さらに二酸化炭素がたくさん出ました。
そのせいで(二酸化炭素だけではありませんが)、地球温暖化がすすみました。
きれいだった山や川も、工場やプランテーションを作るために、汚されてしまい、生態系が乱れつつあります。
このままじゃいけない、と危機感を持っている人はたくさんいます。
3.世界的な経済不安
経済不安があるから、物をどんどん買う暮らし方より、必要な物だけを買って、小さく暮らし、老後資金をためよう、と考える人のほうが増えています。
2009年にアメリカでリーマン・ショックがあって、世界規模の金融危機が発生したあと、景気は少しずつ回復しているらしいです(全体としてみれば、ニューヨーク市場のダウ平均株価は値上がりしているから)。
ですが、一般庶民はあまりそう感じてないと思います。手持ちのお金が足りない、と感じる人が多いんじゃないでしょうか?
しかも、今年になってから、世界経済に大きな影響を与えそうな問題が連日ニュースになっています。
アメリカと中国は貿易をめぐって険悪な雰囲気になっているし、イギリス政府はEUと離脱案をまとめましたが、国会が反対して、ごちゃごちゃやっているし、
フランスでは、マクロン大統領が提示した燃料税値上げに対して国民がすごく反発し、今後、フランスの財政支出が増えそうな雰囲気です。
こうしたことはすべて日本経済に影響しますから、ここに不安を感じている人も多いでしょう。
4.パソコンとインターネットの発達
技術の進歩のおかげで、物をたくさん所有しなくても暮らせるようになったことも、ミニマリズムを後押ししています。
ミニマリストの中には、財布も手帳も持たず、たいていのことを、マホですましてしまう人もいるようです。
ふつうの人が、パソコンやインターネットを使うことができるようになったので、持たなくてもよくなった物がたくさんあります。
写真はデジタル画像としてネット上に保存できるようになったから、アナログのアルバムに保存しなくてすむし、
電子書籍を利用すれば、紙本の数を減らせるし、CDやDVDを所有しなくても、ストリーミング配信サービスを利用すれば、今まで以上にたくさんの作品を鑑賞できます。
物を貸し借りするライフスタイルが、注目を集めていることは、先日、記事にしたばかりです⇒シェアリングエコノミーがシンプルライフにもたらすもの(前編)
….このような社会的な事情のせいで、ミニマリストに興味を持つ人が増えていると思います。
さらに、日本人特有の理由もあると思うので、番外として付け加えておきます。
番外.開運したいと思う気持ち
日本では、「断捨離したり、ミニマルライフにすると、開運する」と思っている人がたくさんおり、開運したさゆえに、持たない暮らしを始める人が多いような気がします。
本気でそう信じてはいないでしょうが、「なんとなくいいことありそうかも」と思って始める人は多いんじゃないでしょうか?
断捨離やミニマルライフの、開運効果を気にしてこのブログにアクセスする人が少なからずいます。
海外メディアでは、ミニマルライフと開運が結びつけて語られることはありません。
物を減らしたら、こんないいことがあったよ、という話はありますが、現実に起きたことを語っているだけです。
風水を紹介する記事では、風水とはどんなものか説明してから(3000年前に中国で生まれたアートだとか)、環境と自分を調和させると、運がよくなると書いてあることはあります。
けれども、多くのミニマリストは、風水なんて知らないか、知っていても、知識として知っているだけで、自分には関係ないものだと考えています。
日本人は、スピリチュアルな理由から、物を減らそうと考える人が多いという印象です。
ほかに日本特有の理由としては、地震大国であることと、その事実を改めて国民に認識させた東日本大震災の発生があります。
以上、ぽぽさんの参考になれば幸いです。
******
いまはミニマルライフが人気ですが、そのうちまた、逆のライフスタイルが流行るかもしれませんね。
社会は、振り子のように、左に振れ切ったら、こんどは右に振れていきます。右に振れ切ったら、また左に戻ります。
ただ、その振り子の位置はだんだん上昇しているから、左に戻っても前と同じではありません。
マキシマリスト的な生活が流行っても、以前のようにやみくもに物をためこんだり、消費したりする生活にはならないでしょう。こだわりの品やお気に入りの品をたくさん持つ生活が人気を集めるかもしれませんね。
私はいまの暮らし方が気に入っているので、ずっとこのままいきます。