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お金の使い方に関するTEDのプレゼンを紹介します。
タイトルは、How I learned to read — and trade stocks — in prison(どうやって私は読み書きと株式の取引を学んだのか、刑務所で?)。プレゼンターは、Curtis “Wall Street” Carroll(カーティス・’ウォール・ストリート’・キャロル)さんです。
ウォール・ストリートというのは彼の名前ではなく、あだ名のようなものです。彼は、お金の管理に長けているので、このように呼ばれるのです。
邦題は「私が刑務所で学んだこと – 読むことと株の取り引き」となっています。確かにそのとおりなのですが、彼が学んだのはそれだけではありません。
カーティスはもっと重要なことを学んでいます。
私が刑務所で学んだこと:TEDの説明
Financial literacy isn’t a skill — it’s a lifestyle. Take it from Curtis “Wall Street” Carroll.
As an incarcerated individual, Carroll knows the power of a dollar. While in prison, he taught himself how to read and trade stocks, and now he shares a simple, powerful message: we all need to be more savvy with our money.
お金をうまく管理できることはスキルではありません。ライフスタイルなのです。カーティス・ウォール・ストリート・キャロルはそう言います。
囚人であったキャロルは、1ドルのパワーを知っています。
刑務所の中で、彼は読み書きと株の取引を独学しました。いまは、「誰もがもっとお金について理解すべきだ」というシンプルで力強いメッセージを伝えています。
TEDxSanQuentinという、刑務所の中で行われたTEDの講演の1つです。収録は2016年の1月、長さは11分。日本語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆英語のトランスクリプトはこちら⇒Curtis “Wall Street” Carroll: How I learned to read — and trade stocks — in prison | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ティーンエイジャーの頃から盗みをしていた
14歳のときボーリング場のゲーム機からお金を盗みました。逃げるときセキュリティガードに腕をつかまれました。
だから、走りました。柵を乗り越えようとジャンプしたけれど、カバンに3000枚の25セント硬貨が入っていたから、重すぎて、地面にころがりました。
セキュリティーガードにつかまり、「今度盗むときは、自分が持てる分だけにするんだな」と言われました。
少年鑑別所で、母が身元を引き受けてくれたとき、おじが言いました。
「どうしてつかまったんだ?」
「かばんが重すぎてさ」
「25セント硬貨を全部取ることなかったのに」
「だって、小さいし。どうすればよかったっての?」
10分後、おじは私を連れて、別のゲーム機からお金を盗みに行きました。家に帰るのにガソリン代が必要だったのです。
これが私の人生でした。
身を立てるただ1つの手段は犯罪?
私はカリフォルニア州、オークランドで育ちました。母とコカイン中毒の親族たちと一緒に。
身近にあったのは家族や友達とホームレスのシェルター。無料の配給所で夕食をとることがしばしばでした。
年かさの仲間が言いました。「お金がこの世界を支配しているんだ。この界隈じゃ、お金が王様さ。お金についていけば、悪い奴かいい奴にぶち当たる」。
その後すぐ、初めての犯罪をおかしました。皆に、「見込みがある」と言われました。誰も私が弁護士や医者、エンジニアになれるなんて言いませんでした。
土台無理です。読み書きできなかったんですから。生きるためには犯罪をするしかないと考えていました。
自分の血を売って食費を得る母
ある日、ある人と盗みをすることになりました。
私は、世界でもっとも金持ちの国、アメリカ合衆国に住んでいるのに、母は血液銀行の前で並んでいました。40ドルで血を売って、子供たちの食べ物を買うんです。
母の腕には今でも注射のあとがたくさんあります。
私は自分の地域社会のことなんて全く考えていませんでした。向こうだって、私の人生なんて気にかけてくれないし。
みんな、欲しいもののために、やりたいことをやっていました。麻薬を売ったり、盗みをしたり、血液銀行で並んだり。
私も売る血を持っていました。みんなお金に関する知識がなさすぎました。そんな環境で、私は、悪い人間と一緒に働かされる子供だったのです。
刑務所で株のことを知る
17歳のとき、強盗と殺人で逮捕されました。刑務所に入ってすぐ、ここは、街中にいるときより、お金がものをいうとわかりました。自分もお金が欲しいと思いました。
ある時、新聞のスポーツ欄を同房者に読んでもらおうとし、間違って、ビジネス欄を開きました。
年をとっていた彼は、「おい、若造、株でもやるのか?」と言いました。
「何、それ?」
「白人がお金を全部入れておくところさ」。
このとき、初めて希望が見えたのです。彼は、株について簡単に説明してくれました。
でも、それは、はかない希望でした。だって、いったいどうやってそんなことをしたらいいのでしょう?
私は、文字を読むことも書くこともできなかったのです。私の唯一のスキルは、読み書きができないことを隠すことだけ。
おまけに、このスキルは、刑務所では通用しませんでした。
20歳のとき独学で読み書きをマスター
私は刑務所に囚われ、弱みにつけこむ人間の中で祈り、決して手にしたことのない自由のために戦っていました。
途方に暮れ、疲れ果て、なすすべがありませんでした。
だから20歳のとき、これまでの人生でもっとも大変だったことをやりました。本を手にしたのです。
文字を読むのを学んでいた時は、人生でもっとも苦しい時でした。家族や友達から仲間はずれになるのです。
とてもつらく、きつかった。けれども、少しずつ、自分が夢見ていた素晴らしい贈り物を受け取っていることに気づきました。
自尊心、知識、自制心です。
夢中になって片っ端から読みました。お菓子の包み紙、服のロゴ、道路標識。
読み書きできるようになってとてもわくわくしました。
素晴らしい気分でしたね。人生で初めて文字を読めるようになったのです。
他の人にお金の使い方を教えることにした
こんなふうにして、22歳のときは、自信を得て、前に部屋の仲間から聞いたことを思い出し、新聞のビジネス欄に目を走らせました。
その後、私は、ほかの人に、お金の管理の仕方や投資の方法を教えることになるのですが、その過程で、自分の行動に対して責任を持つことを学びました。
確かに、私は複雑な環境で育ちました。でも、犯罪を犯したのは自分の選択です。自分の行動に責任をもち、その償いをしなければなりませんでした。
実際そうしました。
私は、在監者に刑務所の仕事で得たお金をどうやって管理するか教えるカリキュラムを作りました。
刑務所でうまくお金を管理する生活習慣を身につければ、社会に出たあとも、お金をしっかり管理できます。犯罪に手を染めない、ほとんどの人と同じように。
お金の管理をできない人が多すぎる
その後、私は、マーケットウォッチで、アメリカの人口の60%は、1000ドル未満しか貯金がないと知りました。
スポーツ・イラストレイテッドによれば、NBAプレイヤーとNFLプレイヤーのうち60%を超える人たちが破産しています。
結婚問題のうち40%は、お金の問題から発生しています。これはいったいどうしたことか?
生涯働いて、車や服、家、その他のたくさんの物を買っている人たちは、ギリギリの生活をしているって?
自分のお金も管理できない人たちが、社会に戻った囚人をどうやってサポートできるというのか。
困りましたね。
金銭知識がない人が多いのは社会の病
もっとよい計画が必要です。そこで、社会復帰をしようとしている人を助けようと思いました。私は、はじめて自分のコミュニティについて考えるようになったのです。
お金に関して無知であることは、弱者や下層階級の人の自由を奪ってきた病気です。何世代にも渡って。この点について、私たちは怒らなければなりません。
経済的繁栄が原動力のアメリカ。ここに住んでいる、その半分の人がまともにお金の管理をできないなんて。
司法や社会的ステータス、生活環境、交通手段、食べ物はお金がないと手に入らないのに、ほとんどの人が、そのお金をしっかり管理できていません。
気違い沙汰です。これは病気であり、ほかのどんな問題よりも、公共の安全をおびやかしています。
カリフォルニア州矯正局によれば、在監者のうち70%を超える人が、お金に関する犯罪のせいで、囚われたり訴えられたりしています。強盗、詐欺、窃盗、恐喝。
典型的な囚人を見てみましょう。カリフォルニアの刑務所に入って、お金に関する教育は受けず、1時間30セントで働き、年に800ドル稼ぎます。
支出は何もないのに、全く貯金できません。
仮出所のとき、200ドルもらい、「がんばってね。やっかいを起こすんじゃないよ。ここに戻ってくるなよ」と言われるだけ。
意味のある準備や長期的な計画がないのです。この人は60歳になったときどうするのでしょう?
仕事につくか、また犯罪を犯して刑務所に戻るのか。納税者のみなさんが選ぶことです。
まあ、彼の行く末は、これまで受けた教育で決まっているかもしれません。
お金の管理方法を学ぶプログラムを作った
では、どうやってこの病気を治すのか?
私は 「金銭的知識の強化及び感情のコントロール(Financial Empowerment Emotional Literacy)」、略してFEELというプログラムを共同で作りました。
このプログラムで、お金に関する決断をするときに、感情的な決断を切り離すことや、お金の使い方に関する4つの普遍的なルールを教えています。
つまり、適切な貯金の仕方、生活費のコントロール、効果的なお金の借り方、収入や投資を分散させる方法。
分散させれば、お金のために働くのではなく、お金があなたのために働いてくれます。
囚人たちは、社会に戻る前にこうしたライフスキルを必要としています。このスキルがなければ、完全な更生とは言えません。
プロだけが、お金を投資したり管理できるという考えは馬鹿げています。
プロとは、自分の専門分野について、他の人よりよく知っている人のことです。自分がどれだけお金を必要とし、どれだけ持っていて、どれだけ欲しいのか一番よく知っているのは自分自身です。
つまり、みなさんがプロなのです。
お金を上手に使うことはライフスタイル
お金の使い方はスキルではありません。これはライフスタイルなのです。
経済的な安定は、適正なライフスタイルの副産物です。
お金の管理がしっかりできる在監者は、納税する市民になれるし、お金を管理できる納税者は、その状態をキープできます。
そうすれば、家族や友達、若い人々とつながることができます。
犯罪とお金を結びつけている若い人たちに影響を与えることができるのです。
だから、難しいファイナンス用語やちまたで話題になっている無意味な話を恐れたり、心配するのはやめましょう。
社会をだめにする問題の核心を知り、自分の責任を果たし、よりうまく人生を生きるようになりましょう。
核心をつく、単純で簡単に使えるカリキュラムを提供しましょう。お金の使い方を学び、感情をコントロールするために、一番大事なことを知るのです。
「ふん、俺には関係ないさ」と思っているなら、私のクラスを受けてください。感情的にお金を使っていたら、どれだけお金を無駄にするか教えてあげます。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
quarter 25セント硬貨
breadline パンや救援食料の配給を受ける人の列
soup kitchen スープ・キッチン、貧しい人のための無料の食堂
homey 仲間
cellie 同房者
ostracize 仲間はずれにする
incarcerated 投獄された
MarketWatch マーケットウォッチ。金融に関するニュースや情報を提供しているウェブサイト。
Sports Illustrated スポーツ・イラストレイテッド、アメリカのスポーツ雑誌。
NBA National Basketball Association アメリカのプロバスケットボール協会
NFL National Football League アメリカのナショナル・フットボール・リーグ。
larceny 窃盗
お金に関するほかのTEDのプレゼン
お金がテーマのプレゼンはたくさんありますが、貯金をしたい人向けのものを5つ選びました。
ガラクタを全て売り払い、借金を返し、旅に出て、自由に生きている男の話(TED)
貯金できない人がうまくお金を貯める秘訣は、行動経済学にあり(TED)
物の買い方を見直すと汚部屋から脱却できる
余計な物を買うから汚部屋になる
汚部屋に悩んでいる人は、片付けと同時進行で、自分のお金の使い方にメスを入れるといいかもしれません。
結局のところ、あまりに余計な物を買っているから、部屋の中に物がたまるのです。
まあ、中には、子供の頃使っていたものを全く捨てないから、部屋が倉庫みたいになっている人もいますけど。
いま必要な物だけ買えば、収納や整理整頓に苦しむことなく、スッキリと暮らせると思います。
そのために、カーディスの言っていた、「お金の使い方を決めるときに、感情的決断は切り離す」というのをやるといいんじゃないでしょうか?
ようするに、感情で物を買ってはいけない、ということです。
感情的にお金を使わないコツ
「これかわいいから」「わ、素敵」「雑誌にのってたやつだ」「テレビで見たやつだ」「好きな芸能人/有名人/ブロガーが使っているやつだ」「あると便利そう」「友達が持ってたし」「私、収集癖があるから仕方ないよね」「なんとなく退屈だから」「安いわ」「セールだわ」「お得だわ」「ランキングにのってるわ」「残りあと1つって書いてある」。
こんな理由で物を買っていると、汚部屋から抜け出せません。
「どうしても、これを買わないと、私の生活が成り立たない」。そんな物を厳選して買ってみてください。
最初から家に入れなければ、あとで捨てるのに苦労しません。これはごくあたりまえの事実です。
ところが、多くの人は、毎日のように買物することがすっかり習慣になっているため、このごく単純な事実を見過ごしているのです。
特にいまは、物の値段が安くて、気軽に買えてしまうので、自分で意識的にブレーキをかけるべきですね。
感情的反応のせいで、物を買ってしまわないように、「あ、ほしい」と思った瞬間から、実際に買う行動を起こすまで、一定の待ち時間をもうけるといいです。
30分でも1週間でも30日でも時間は自由に設定してください。
待っている間に、客観的にその物の必要性を考えてもいいし、何もしないまま、忘却の彼方に送るのもいいでしょう。
物の外観(実物でも写真でも)に刺激されて、「あ、ほしい!」と思うことが多いので、しばらく待ってみると、違う決断をくだせます。
お試しください。
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カーティスが、刑務所で学んだもっとも大切なことは、自分のことは、自分で責任を持つしかない、という事実だと思います。
そう思ったからこそ、彼は、独学で読み書きを学び、投資の勉強もし、ほかの囚人に金銭教育を与えるプログラムを作るまでに至ったのでしょう。
人任せにせず、自分の行動の責任を自分でとろうとすると、人はそれだけ強くなれるし、潜在的なパワーを発揮できます。
汚部屋に甘んじて、「片付けられないんです。だってああで、こうで、そんなわけがあるんですから」と言う人は、まだまだ自分の責任を引き受けていない、と考えることはできないでしょうか?