ページに広告が含まれることがあります。
心の境界線について質問をいただいたのでこの記事で回答します。まずメールをシェアしますね。やっこさんからいただきました。
心の境界線がピンと来ない
たびたびメールをお送りしている、やっこと申します。
今日は「心の境界線」についてご意見を伺いたく、ご連絡いたしました。
私は毒親のもとで育ち、書籍やYouTube、そして筆子ジャーナルを通じて学び続けています。
その中で「心の境界線」という言葉がたびたび登場するのですが、いまひとつピンとこないのです。
筆子さんのブログに時折登場する「白い部屋」は、これと同じような概念なのでしょうか?
ご教示いただけますと幸いです。
これからもブログを楽しみにしております。
やっこさん、お便りありがとうございます。
そしていつもブログを読んでくださって感謝します。
心の境界線という言葉は、心理学や自己啓発の本で登場しますが、言葉だけではよくわからないかもしれません。
心の境界線とは何か、そしてなぜそれが大切なのかについて、私の経験も交えながらお話ししていきますね。
心の境界線とは?
心の境界線は、一言でいえば自分と他人のあいだに引く見えない線のことです。
この線は、物理的な距離ではなく、精神的な距離、自分の内側にある領域を守るために引きます。
自分の感情、思考、価値観、時間、エネルギー、責任などは自分のものです。一方で、他人の感情、思考、要求、態度、反応はその人のものです。
この2つをしっかり区別して、ほかの人の領域にむやみに入り込んだり、ほかの人の問題の責任を取ったりする必要はない、という考え方を反映したのが心の境界線です。
たとえば、あなたの親やパートナーが不機嫌だったとします。
そのとき、「私が何か悪いことをしたのかしら?」「機嫌をとらなきゃ」と、無意識に自分を責めたり、相手に合わせようとすることってありますよね?
または、頼まれてもいないのに、相手の問題をどうにか解決しようと一生懸命になってしまうこともあります。やさしい人や世話好きな人ほど、こうした状況に無意識に入り込んでしまいます。このとき、心の境界線が曖昧になっています。
心の境界線が曖昧だと、以下のように自分をすり減らしてしまいます。
・他人の感情や機嫌に振り回され、疲れる
・ノーと言えず、無理な頼みを引き受ける
・「どうせ私が悪いんだ」と自分を責める
・相手の人生の責任まで背負い込む
・自分の気持ちがわからなくなる
とくに、子どものころから親の機嫌を取ることに神経を使っていたり、親にコントロールされて育った人は、自分と他人の境界線がもともと引けていないことが多いです。
そうでなくても、人の問題を自分の問題として抱え込むことはよくあります。
やっこさんがメールでふれてくださった「白い部屋」は、私にとっての心の避難所のようなもので、誰にも邪魔されず、自分だけで静かに過ごせる心のスペースです。
嫌なことがあって、外界は嵐が吹き荒れていても、この部屋に入れば安心です。
私の元夫はふだんは大人しいのですが、怒ると切れて、何分間も大声で怒鳴ることがありました。
こんなときは、この白い部屋をイメージして、「何を言われても、私は私。私はこれで大丈夫」と自分に言い聞かせていました。
ある意味、白い部屋は心の境界線がしっかり引かれている状態を象徴する場所と言えるかもしれません。
人に合わせない私にも必要だった境界線
私はもともと、人に合わせすぎるタイプではありません。
私の母親は過保護で口うるさいタイプだとは思いますが、基本的に子どもをすごく大事にしてくれる愛情深い親です。
だから、親の顔色をうかがうことなく、内弁慶な子どもとして育ちました。
自分の考えや感じ方を大切にしてきましたし、周囲の空気に無理やり合わせることも少なかったと思います。
正直、親の問題でこんなに悩んでいる人がいるなんて知ったのは、大人になってからです。
それでも、心の境界線というコンセプトを知る前は、線をしっかり引いていないがために、嫌な気分になることがありました。
たとえば、家族が不機嫌なとき。私は表面上は平静を保っていましたが、内心では「なぜこんな態度をとるのだろう?」「こっちは何もしていないのに」とイライラしていました。
言い返さなくても、距離を取ったつもりでも、心の中ではしっかりと巻き込まれていたのです。
仕事で誰かに何かを頼み事をしたとき、「ちゃんと期日までにやってくれるかな?」と、心配してもどうにもならないことを心配することもよくありました。
自分では「放っておいている」つもりでも、実はあまりしっかり境界線を引いておらず、そのせいで苦しくなっていたわけです。
このことに気づいてからは、「これはあの人の問題。私は関係ない」と意識的に切り分けるようにしました。すると、心がだいぶ楽になりました。
他人の行動に対して、「それは違う」と思っても、無理に変えようとしないことも境界線を引くことです。
以前は「どうしてそんなふうにするの?」とイライラしていたことも、今では「その人のやり方なんだな」と思うようにしています。
心の境界線は、自分を守るだけでなく、相手を尊重するためにも必要なものだと思います。
心の境界線を作るには?
心の境界線を引くといっても、実際にどうすればいいのか、分からないかもしれません。
私も最初は、ただ「距離を取ればいいのかな?」と思っていましたが、それだけでは根本的な解決にはなりませんでした。
心の境界線は、まず「これは私の問題? それとも相手の問題?」と、頭の中で区別することから始まります。
人間関係でモヤモヤしたら、すぐに反応せず、まず「これは私の課題なのか?」と自問してください。
誰かが不機嫌だったり、こちらに冷たい態度をとったときに、「私のせいかもしれない」と思ってしまう人は多いと思います。けれども、本当にそうでしょうか? 実際は、自分は関係ない方が多いですよね。
人の思考や行動はコントロールできないので、相手の感情の責任まで引き受ける必要はありません。
誰かが困っているとき、「助けなきゃ」と思うのは自然な反応です。
でも、助けることで相手の力を奪ってしまうこともあります。
何でも手を出すのではなく、「この人が自分で考える時間を取るのも大事」と一歩引く視点を持つのも、相手をサポートすることだと思います。
また、「ノー」と言うことも大切な線引きのひとつです。
私たちは「断ったら悪い」「冷たい人だと思われる」と感じてしまいがちですが、境界線を引くことは、決して冷たいことではありません。
自分を大切にしているからこそ、相手にも誠実に向き合えると私は考えています。
無理して何かを引き受けると、あとから後悔するし、「なんで、私の状況をわかってくれないの?」と、頼み事をした相手を恨むこともあります。
最初から「それはできません」と伝えたほうが、相手と良好な関係を続けることができますよね。
さらに、物理的な距離を取ることも有効です。
苦手な相手と毎日会う必要があるなら、接触時間をできるだけ短くする、会話の内容を最小限にするというのも境界線を引くことです。
言葉で伝えるのが難しいときは、態度や行動で示せば大丈夫です。
たとえば、いつも朝早くや夜遅くこちらの都合などお構いなしに電話してくる人がいるなら、出ない、折り返さない、という行動をすれば、自分の意思表示になります。
心の境界線は、自分勝手に振る舞うことではなく、自分と他人をきちんと区別することです。
そのほうが、結果的に人間関係がスムーズになります。
どこまで関わるか決めておくと、相手に振り回されることが減りますし、相手をコントロールしようとする気持ちも手放せるようになります。
最初は罪悪感を感じるかもしれません。でも、それは「今までやりすぎていた」というサインかもしれません。
境界線に関する過去記事
人との間に境界線を引くからこそ、素晴らしい人生になる(TED)
毎日疲れているあなたに。心の境界線を引いてストレスを減らし、自由になる(TED)
人の言いなり(ピープルプリーザー)になるのをやめる方法(TED)
終わりに:境界線は自分も相手も守るもの
心の境界線は、目に見えないので、どこにどう引けばいいか分かりにくいです。
でも、意識や行動を少し変えれば、少しずつ自分の内側を守れるようになっていきます。
私たちは、自分の心の責任を持つことはできますが、他人の気持ちや行動を完全にコントロールすることはできません。
線を引くことは、相手との関係をこわすことではなく、よりよくするための手段だと思います。
境界線を引くことは、やっこさんのように親との関係に悩んでいる方だけでなく、誰にとっても大切なことはないでしょうか?
やっこさんお便りありがとうございました。これからもお元気でお過ごしください。