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少しお金を出せば、月定額でバッグや車を借りられるサービスは、私の考える断捨離の精神に反します。筆子さんは、どう思いますか? というメールを読者からいただきました。
私自身は、シェアリングエコノミーは、シンプルライフをめざす人に恩恵をもたらすと考えています。
その理由を説明するために、今回はシェアリングエコノミーのメリットとデメリットを紹介しますね。
シェアリングエコノミーのメリット
1)環境によい
資源を有効に使うこと。これが、シェアリングエコノミーの背景にある考え方です。
家や地域の中で遊んでいて使われていない資源を、その資源が必要な人に使ってもらう、というシステムなので、貸し借りがうまく回れば、ゴミの総量は減るはずです。
シェアリングエコノミーの種類については前回の記事をどうぞ⇒シェアリングエコノミーがシンプルライフにもたらすもの(前編)
ラクサス(Laxus)で、月額6800円を出してブランドバッグを借りる人の中には、いろいろなバッグを月替りで楽しみたいという人もいるでしょうが、高価なブランドバッグに投資する前に、いくつか試してみて、自分にぴったりあったバッグを探そう、と考えている人もいます。
もし、すべてを自腹でお試ししていたら、お金もかかりますが、気に入らなかったバッグがゴミになる可能性も増えますよね?
気に入ったものを見つけるまえに、いろいろお試しする、ということは、どんな物を消費するときもあるものです。
以前、私は紅茶をよく飲んでいましたが、紅茶を飲み始めたころは、自分の好きなお茶をもとめて、フレイバーティーや産地茶をいろいろ飲み比べました。
結局、産地茶のディンブラが好きだとわかるまで、どれだけお茶を飲んだことか。
紅茶の場合は、飲みカスの茶葉が出るだけですが、すでにシンプルライフ志向が強かった私は、「いろいろ買わずに、最初からディンブラだけ飲んどけばよかった」と思ったものです。
去年塗り絵を始めたときも、最初は自分の好きな色鉛筆を探して、いくつかお試ししました。そのせいで画材が増えました。
いま、物があふれているので、試しに買って物が増えがちです。借りてお試しできるなら、ずいぶんゴミが減るでしょう。
2)お金が残る
以前なら、買わなければならなかった商品を、安いお金を出して必要なときだけ借りられるのだからお金が残ります。
前回も書きましたが、自由になるお金があまりない人には、ありがたいシステムです。
ラクサスのメインターゲットは、ブランド物バッグを持つのが好きだけど、気楽に買うことができない人たち、だそうです。
なぜブランド物のバッグを持ちたいかというと、バッグそのものの機能がすばらしいから、というよりも、人に承認されたい、おしゃれな人と思ってほしい、という気持ちがあるからでしょう。
エアクローゼットを利用して、洋服をあれこれ着替えるのだって、「人に〇〇だと思われたい」という気持ちがあります。
それは、買って使うときも、借りて使うときも変わらないと思います。安く自分のニーズを果たせるなら、買うより借りるほうがいいです。
あまったお金は貯金などほかのことに使えますから。
3)仕事の機会が増える
専門的なライセンスがなくても、空き時間に取り組める仕事が多いですから、仕事をするチャンスが増えます。
副業の機会も増えますね。
私の娘も去年の夏休みに、SkipTheDishes(スキップザディッシュズ)でドライバーのアルバイトをして小遣い稼ぎをしました。SkipTheDishesは、ふつうなら出前をやっていないレストランに、アプリで注文を入れ、誰かほかの人(ドライバー)にとってきてもらうシステムです(ドアトゥドア・デリバリー)。
テクノロジーを利用してシェアリングを提供するビジネスを考える人も日々、増えています。
4)所有しなくてすむ⇒管理しなくてすむ
借りて済ませることができれば所有しなくてすむので、いろいろ好都合です。
物を持たないと、管理が楽になると、常々書いています。車や不動産を買えば、ときどき手入れをして、税金を支払わなければなりません。
実家の断捨離をしたり、実家が空き家になったら、その始末を考えなければなりません。
所有するものが減ると、心配ごとが減る、という利点もあります。
株を買うと、上がるか下がるか心配で、毎日のようにチェックしなければなりません。まあ、株をやる人はそれが楽しいのでしょうが。
物を所有すると、それを失うリスクと、失いたくない気持ちを合わせて引き受けることになるのです。
次にデメリットを書きます。
シェアリングエコノミーのデメリット
1)専門職の人をおびやかす・プロが減る
ふつうの人が空き時間に、安い値段でタクシー業をやれば、プロのタクシーの運転手の市場が荒らされます。
これは、どんな仕事にも言えることです。
手軽に副業できるから、専門的なスキルを身につけプロになろう、と思う人が減る可能性もあります。
2)安全面での問題・トラブル
シェアリングエコノミーは、新しいシステムなので、法整備が間に合わず、トラブルが起きることがあります。
民泊を利用して、宿泊場所を探していて、うその情報にだまされ、とんでもないところで寝るはめになった、ということもあるでしょう。
ラクサスのバッグにしても、自分が本当に借りたいバッグはいつも貸出中でなかなか借りられないから、結局は買ったほうが早い、という不満を持つユーザーもいます。
トラブルが起きたとき、法的にどこに責任があるのか、不透明な場合も多いです。
3)安くこきつかわれて終わる可能性あり
シェアリングサービスを提供する会社(サイト)がいいかげんだと、労働に対して適正な対価が払われない恐れがあります。
Uber(ウーバー)のドライバーはすごく稼げる、という言葉にひかれ、実際にやってみたら、労働の割にはそうでもないし、福利厚生など、労働者の権利を守る法律も適用されないから、骨折り損のくたびれもうけであった、という人がいます。
娘は4ヶ月、SkipTheDishesの仕事をして、3500~4000ドルぐらい稼いだのですが、車も相当傷んだので、プラスマイナスゼロではないか、と思います。
夏に配達のアルバイトをして、晩秋に車の点検のためにスバルに持っていったら、いろいろと悪いところが見つかり、すでに3066ドル支払いました。もう一箇所、直したい部分があるそうです。
大きな出費だったので、修理代金は私が払いましたから、娘の預金残高は減りませんでしたが、車が傷んだのは確かです。
娘は大学生だから、配達という仕事を通して、いろいろ学べたので、それはプラスかもしれません。
幸い、事故はありませんでしたが、配達中に事故があったら、全部自分の責任なんだろうな、と思っていました。
シェアリングエコノミーは人を怠け者にするか?
メールをくださったKさんは、「月額で物を借りるシステムは物を大切にしない人や、怠け者を増やすのではないか」と書かれていました。
私はそうは思いません。
物を大事にできない問題
理想は、ちゃんと使うものだけを持って、よけいなゴミを出さない暮らしです。たまに使う物を、借りてすますことができれば、ゴミは減ります。
そもそも、買ったものだって、みんな大事にしていません。
買いすぎて数が増え、大事にせず、ガラクタにしてしまい、断捨離するはめになっています。
それに、人は、自分の物より、借りた物のほうを大事に扱うものです。
私は、本は買う派です。図書館で借りた本は、お風呂で読めないからです。自分の本なら、浴槽に落としても、「あ、また、落としちゃった」ですみます。
借りた物は自分の物ではなく、他の人と共有している物。ありがたく使わせてもらう、次の人が気持ちよく使えるように大事に扱う、こんなふうに考える人のほうが多いでしょう。
なお、私は、月額で何かをするのをすすめていないわけではありません。フェリシモのような頒布会は、中身を確認できない物が毎月届くから、不用品を増やす恐れがある、と書いているだけです。
怠け者を増やす問題
確かに、オンデマンドで、なんでも手に入れることができると、人間の怠惰度合いに拍車がかかるかもしれません。
SkipTheDishesでバイトをしていたとき、娘は、「怠け者って大好き(I love lazy people)」と言っていました。レイジーな人がいるからこそ、自分の仕事(収入)が増えるからです。
けれども、人間はみな、楽なほうに流れる性向を持っており、それがあるからこそ、文明が発達してきました。
北米では太っている人が多いのですが、太る暮らしをしているからです。
ハイカロリーで栄養はたいしてないジャンクフード(マクドナルドのフレンチフライとか)をよく食べ、どこに行くにも車で移動し、家では、ソファの上に横になって、スナックを食べながら、Netflixを見る生活です。
昔は、レンタルビデオショップに行くために、自宅や店の駐車場で多少は歩きましたが、いまはオンデマンドサービスがあるので、その運動もなくなりました。
便利なファーストフード、車、ソファ、オンデマンドの動画配信サービスのせいで寿命を縮めています。
ですが、その一方で、生活をより便利に、楽にしてくれるものを求めた結果、医療も進歩しました。
より便利なもの、より楽なサービスを求めるのは人間の習性なので、この習性を抑えることはできません。
「便利さは両刃の剣なのだ」と知り、長期的に見て、自分のためになる便利さだけを生活に取り入れればいい、と私は考えています。
シェアリングをすると、捨てる物の数が減るから、断捨離、特に片付けの需要は減るでしょう。
そういう意味では断捨離を邪魔するもの、と言えなくもないですが、本来は、ゴミは少ないほうがいいのだから、シェアリングは歓迎すべきことです。
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2週に渡ってKさんの質問に回答しました。参考になれば幸いです。