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ブラックフライデーをご存知でしょうか?英語で書くと Black Friday で、 「黒い金曜日」という意味です。今回はなぜこの日が「黒い金曜日」なのか、どうして人々はこの日に狂ったように買い物をするのかお伝えします。
ブラックフライデーは毎年11月の第4金曜日です。アメリカで大々的にセールが行われます。
最近は日本でも、アメリカ資本の小売店がセールをすることもあるようです。また、海外通販を利用している人は馴染みがあることでしょう。
いずれにしても「持たない暮し」をめざす人にとっては要注意の日です。
ブラックフライデーはいつ?
ブラックフライデーはアメリカの感謝祭(サンクスギビングデー)の翌日です。感謝祭は、アメリカの開拓者が、初めて収穫を得た日を記念して、神やネイティブインディアンに感謝したことを由来とする祝日。毎年、11月の第4木曜日です。
この日は、家族や親戚で集まって、七面鳥(ターキー)の丸焼きをメインにしたごちそうを食べ、楽しくお祝いする、わりと重要な日です。
アメリカの感謝祭は今は11月の第4木曜日ですが、大昔は11月の最後の木曜日でした。
南北戦争時代(1861-1865)に、アブラハム・リンカーンが、11月の最後の木曜日を感謝祭として国民の休日に制定したのです。これは70年続きました。
昔から、感謝祭が終わると、人々は、次の大きなイベントであるクリスマスの準備のため買い物を始めました。
たまたま1939年の感謝祭は、11月30日でした。すると、12月1日からクリスマスショッピングが始まることになります。
これだと、売る側にとっては、クリスマスセールの期間が短かすぎて、売上を伸ばせません。そこで小売店の代表が当時の大統領、フランクリン・ルーズベルトに、感謝祭の日付を変えるように頼みました。
その頃のアメリカは大恐慌から10年たったころ。まだ景気はよくありませんでした。ルーズベルトは、消費者にたくさん買い物をしてもらって経済を上向きにしたかったので、日付を変えることに同意。結局1941年に感謝祭は11月の第4木曜日になりました。
ブラックフライデーはその翌日で、小売店で大々的なセールが行われます。今年、2015年は11月26日が感謝祭、翌27日がブラックフライデーです。
感謝祭は祝日ですが、金曜日は普通の日。ですが、ほかの祝日の振替として休みにする企業や学校が多く、続く土日とあわせて4連休になる人が多いです。
ブラックフライデーにはセールが行われる
この日はクリスマスに向けたショッピングが始まる日。ウォルマートなど、大きな小売店はこの日はいつもより早く店を開けセールをします。
ちょっと前までは、朝6時の開店でした。ところが、だんだんその時間が5時、4時と早くなって来ました。
店は少しでもたくさん売りたいし、消費者は少しでもセールで物を買いたいからです。21世紀になってからは、ブラックフライデーになった時間、つまり真夜中に開店する店が多くなりました。
ブラックフライデーはアメリカでもっとも長く店が開いていて、もっとも物が売れる日だと言われています。
1番目玉商品が用意されるのはセール初日の金曜日ですが、この週末は一応セール期間が続きます。
しかも週末の次の月曜日は、サイバーマンデー(Cyber Monday)です。この日はオンラインショップでセールが行われる日。
サイバーマンデーは感謝祭に関係ないのですが、2005年にアメリカのマーケティングの会社が、ネットでの買い物促進のために、始めた日です。インターネットが普及し、スマホやタブレットの保有率が増えるとともに、サイバーマンデーの売れ行きもだんだん大きくなってきました。
サイバーマンデーは、現在、1年のうち、オンラインでもっとも物が売れる日の1つです。
アメリカ人の買い物好きにはあきれるばかりですが、売り手が必死に売ろうとしているので、そうなってしまうのも無理はないかもしれません。
カナダでもアメリカに便乗してブラックフライデーにセールが行われます。カナダの感謝祭は10月の第2月曜日で、ブラックフライデーには全く関係ありません。
しかし、アメリカと陸続きであるため、国境のそばの州の人は、よくアメリカに買い物に行っていることもあり、そのうちカナダ全土でセールが行われるようになりました。
イギリスやメキシコ、インドでもブラックフライデーセールがあります。きっとインターナショナルに展開しているアメリカ資本の小売店がセールをするからだと思います。
なぜブラックフライデーはブラックな金曜日なのか?
初めはネガティブな意味だったブラックフライデー
感謝祭の翌日の金曜日をブラックフライデーと呼び始めたのは、フィラデルフィアの警察です。1960年代のことです。
この日は、消費者が大挙して店に押しかけるため、道路はすごく渋滞しますし、歩道は人だかり。交通事故が増えたり、混雑のため、店の前や店内でちょっとした事故が起きます。そこで「仕事が増えて困った日だね」という意味で「ブラックフライデー」と呼び始めたのです。
そのうちポジティブな意味のブラックへ
小売店の人たちは、この日を「ブラックフライデー」と呼ばれるのを嫌いました。
「ブラック」はたいてい悪い意味だからです。
たとえば、ブラックマンデー(Black Monday 黒い月曜日)というのがありました。これは1987年10月19日、ニューヨーク株式市場で株価が大暴落した日です。日本語では「暗黒の月曜日」と呼ばれます。この日、株価が株式市場最大の下げ幅である、22%も落ちて世界恐慌の引き金となりました。
またブラックサーズデー(Black Thursday )というのもあります。1929年10月24日のウォール街の大暴落です。この日から大恐慌が始まりました。株価が下がったのはこの日だけではなく、ブラックフライデー、ブラックーマンデー、ブラックチューズデーと4日連続で暴落しています。
このように「ブラックな日」は株価の大暴落をイメージさせるので、小売業界の人たちは、実は、ブラックフライデーのブラックは「黒字」のブラックなんですよ、と言うようになりました。
つまり「ものすごくもうかる日」ということです。そこで今は、ブラックフライデーは、小売店が絶対損をしない、たいそう売上の多い日、ということになっています。
たぶんこれは嘘ではないでしょう。本当にたくさんの人が買い物に押しかけ、ばんばんクレジットカードで物を買いまくっていますから。
ブラックフライデーに命がけで売り買いする人々。特に危険なのはウォルマート
今世紀に入って、ブラックフライデーはだんだん加熱してきました。1990年代は、ブラックフライデーはそれほど人が買い物する日でもなかったのです。
そのころアメリカでもっとも物が売れる日はクリスマスの前日でした。
ところが2002年からブラックフライデーは人々が買い物に殺到する日になりました。売り手側がさまざまな手を使って、「ものすごい値引きがあるけど、すぐに買わないと売り切れちゃうよ」と希少性(きしょうせい)をアピールし始めたからです。
「希少」とは少なくて珍しいことです。量的にも時間的にも限定されているので、手に入れるのが難しいということ。
このように言われると、人は「手に入れたい」「ほしい」「買わなきゃ」と思ってしまうのです。冷静に考えると、商品そのものにそんなに価値があるわけではなく、単に、限定的に販売されているだけなのですが、手に入れにくいがために、買い手にとって、その物の価値が大幅にあがってしまうのです。
☆小売店の買わせる戦略はこちらにも書いています⇒その買い物は本当にお得?節約したいなら知っておきたい3つの販売戦略
ブラックフライデーでは、いろいろな物が割引で買えますが、たとえば80%引きといった目玉商品は、数量限定です。
セールが始まってすぐに行かないと売り切れてしまいます。そこで、みんな真夜中に買い物に行き、店の前で行列を作り、開店するやいなや、売り場に殺到して買おうとするのです。
ザ・トゥルーコストというファストファッションがテーマの映画には、ブラックフライデーに、ウォルマートに殺到する買い物客の映像が入っています。
こちらで紹介している予告編で見ることができます⇒「真の代償」The True Costはファストファッションの真実を暴く映画 ~これでもあなたは安い服を買い続けますか?
2008年には、ニューヨークのウォルマートでは、身長が190センチ以上あり、体重も120キロあった、とても体格のいい男性販売員が、殺到するお客さんの下敷きになって窒息死しました。
2009年にはカリフォルニアのとあるウォルマートの家電売場で、あまりにお客さんが押し寄せたので、セキュリティを担当していた会社が警察に助けを求めました。
2011年には、ロスアンジェルスのウォルマートで、6割引のWii(ウィー)を買うために、ある女性客が、ほかのお客さんにペッパースプレーをスプレーしました。ペッパースプレーは護身用の催涙スプレーです。
2012年にはフロリダのウォルマートで、お客さんが駐車スペースの奪い合いからはひどいケンカになり、2人が銃で打たれました。
2013年にはシカゴで、警察官が万引き客を銃で打っています。この客は、車で逃げようとしているところを、警察官に押さえられ、警察官が窓から半分からだを入れてるのを振り切ろうと、びゅーんと車を走らせたからです。
こういうのはかなり極端な事件ですが、未明に売り場で、客同士が押し合いへし合いし、こぜりあいをしたり、ケンカをしたり、もめるのはしょっちゅうです。
毎年、ブラックフライデーでは、ツイターで、#Walmart fights (ウォルマートでの争い、けんか)というハッシュタグがついたツイートが乱れ飛びます。
ウォルマートの家電売り場は、ブラックフライデーの夜中から朝にかけて、この世でもっとも危険な場所の1つと言えましょう。
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夫は「「ブラックフライデーはアメリカ人が狂ったように買い物をする日だよ。彼らはとにかく買い物や消費が大好きだからね」と言います。
しかしそうやって手に入れた戦利品をはたして、人々はちゃんと普段の暮しで使っているのでしょうか?
たぶんクローゼットやキッチンの物入れに押し込んでガラクタになっているだけです。買い物のための買い物を命がけで楽しみ、あとはガラクタにしてしまうのです。
売る方も買う方も、もう少し頭を冷やして、のんびり生きることはできないのでしょうか?
この季節が来るたびにそう思います。