服のショッピングをする女性

TEDの動画

ファッション業界のゴミ問題を解決する3つの方法(TED)

もっと環境にやさしい服の製造方法を提案するTEDの動画を紹介します。

タイトルは、3 creative ways to fix fashion’s waste problem(ファッションのゴミの問題を解決する3つの独創的な方法)。

講演者は、オシャレ好きだけど、衣料品の製造と消費が地球を汚すのは嫌いな、Amit Kalra(アミット・カルラ)さんです。

邦題は、ファッション業界のゴミ問題への3つの解決法、です。



ファッションのゴミ問題の解決法、TEDの説明

What happens to the clothes we don’t buy?

You might think that last season’s coats, trousers and turtlenecks end up being put to use, but most of it (nearly 13 million tons each year in the United States alone) ends up in landfills.

Fashion has a waste problem, and Amit Kalra wants to fix it.

He shares some creative ways the industry can evolve to be more conscientious about the environment — and gain a competitive advantage at the same time.

私たちが買わない服はどうなるのでしょう?

昨シーズンのコート、ズボン、タートルネックはどこかで使われると思うでしょうが、そのほとんどが(アメリカ国内だけでも、毎年1300万トン近く)ランドフィル(最終ゴミ処理場)に行き着きます。

ファッションには、ゴミの問題があり、アミット・カルラはそれをなんとかしたいと思っています。

彼は、この業界が、より、環境について配慮できるようになり、同時に、競争力も維持できるクリエイティブな方法をシェアします。





動画の長さは10分35秒。収録は2017年の11月。日本語の字幕もあります。動画のあとに抄訳を書きます。

☆タランスクリプトはこちら⇒Amit Kalra: 3 creative ways to fix fashion's waste problem | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

服は自作しています

数年前、できるだけお金をかけずにおしゃれをする方法を探していました。

当然、行き着いたのは地元のスリフトショップ(古着や古物を売っている店)です。他人の不用品が、私の宝ものになります。

私が探していたのは、ただのヴィンテージのTシャツではなく、もっとスタイリッシュなものです。つまり、デザインと個性の合わさったもの。

そこで、見つけた古着を最大限活かせるように、ミシンを買い、90年代風の服を、現代風にアレンジしました。

以来、自分の服はいちから自分で作っています。

スリフトショップで服を見ているとき、買わない服はどうなるんだろう、という疑問がわきました。

そんなにおしゃれでも、トレンディでもないため、古着屋にずっととどまるような服は、どうなるのか?

私は、ファッション業界の卸売で働いており、うちの商品が、古着屋に行き着くこともあります。だから、私の疑問は、仕事にも関係があります。

環境によくないファッション産業

調べてみたら、とても恐ろしいサプライチェーン(供給網)の問題に気づきました。

私が、スリフトショップであさっていた服は、毎年捨てられる服のほんの一部なのです。

アメリカでは、毎年、製造された服の15%だけが、寄付されたり、リサイクルされたりします。残りの85%の布や衣類はランドフィルに行き着きます。

つまり、アメリカだけでも、毎年、1300万トンほどの衣類や布地がゴミとして捨てられるのです。

1人あたり、平均200枚のTシャツを毎年ゴミにしている計算になります。

カナダでは、私の故郷のトロントにある、6万人収容できる一番大きなスタジアムを、服で3回満たせるほど、捨てられています。

もっと驚いたのは、ファッション業界は、石油・ガス業界に続いて、世界で2番めに、環境を汚染している産業だということです。

石油・ガス産業が1位でもさして驚きません。

この業界は、現状に甘んじていてもかまわないと思っている産業でしょうから。技術はさして変わらず、持続可能な未来を犠牲にしても、利重を追求しようとしている産業です。

ですが、衣料産業が2位であることには本当に驚きました。現状維持は、ファッション業界が表しているものの対極にあります。

製品も資源も無駄にしているファッション産業

業界では、消費されるべき服を無駄にしているだけでなく、製造するとき、大量の資源を使っています。

平均すると、それぞれの世帯で、毎年買う服を作るのに、バスタブ1000杯分の水が必要です。これは相当の量です。

これまでも、これからもデザインの最先端にいて、着心地がよく、トレンディで、表情豊かな製品を作りつづけている業界が、持続可能やリサイクルの可能性を、意識していないようなのです。

ですが、この状況を変えることはできます。

ファッション業界の、変化を求める姿勢こそが、持続可能なビジネスのやり方を生み出せると思います。

提案1.リサイクルしやすいデザインをする

まず、寿命が終わった服をリサイクルできるようにデザインすることから始めます。

もちろん、そうした服のデザインはプロにまかせるべきですが、ミシンをよく使っている古着屋マニアの24歳に言わせてもらえば、服をレゴのようにデザインしてはどうでしょうか?

レゴを組み立てると、強固なものになりますが、簡単に組み替えることができます。レゴは部品なのです。

いまの服のデザインは、部品からなっているとは言えません。

このライダースジャケットをみてください。ボタン、ジッパー、飾りのついた、ごくふつうのジャケットです。

しかし、このジャケットを効率よくリサイクルするには、こうしたパーツを簡単にとりはずして、布地に戻す必要があります。

ただの布になれば、切り刻んで、糸くずにし、それを新しい糸にして、べつの服を作ることができます。

しかし、ボタン、ファスナー、飾りといったパーツがあるため、そう簡単にはリサイクルできません。

事実、こうしたパーツを取り除くのは困難で、ライダースジャケットを分解するのに、ずいぶん時間やお金がかかります。

リサイクルするより、捨ててしまったほうが、費用対効果が高いこともあります。

部品を使うというコンセプトで服をデザインし、分解しやすくすれば、リサイクルしやすくなります。

ジャケットの中に、部品をつなぎあわせたワイヤーフレームを、骨組みとして入れることもできます。

ジャケットの寿命が終わったら、このフレームを布地からとりはずせばいいのです。

提案2.使い終わった服を堆肥に変える

ファッション業界の環境へのダメージを減らすには、使い終わった服を、堆肥にできる(compostable)ようデザインする必要もあります。

私たちのクローゼットにある服の平均的な寿命は3年です。その寿命をたった9ヶ月延ばすだけで、ゴミを減らし、製造に使った水へのインパクトを20~30%減らせます。

とはいえ、ファッショには、はやりすたりがあります。

流行はつねに変わり、3年後(8シーズン後)には、人は、いまとは違うものを着ているでしょう。どんなに、あなたが、環境にやさしくありたいと思っても。

ですが、流行遅れにならない服もあります。

基本的な服です。つまり、靴下、下着、パジャマです。

こうした服をさんざん着つくしたあと、穴があいたものを古着屋に寄付するのは気が引けるから、ゴミとして捨てることになります。

しかし、捨てる代わりにコンポストにできたらいいと思いませんか?

そうすれば、環境への負荷がずいぶん減ります。素材を、100%、オーガニックコットンのような天然素材にすればいいのです。

提案3.環境にいいもので服を染める

現在、服を染める、毒性の強い化学染料のうち、10~20%が発展途上国の工場近くの川に流れ込んでいます。

問題は、こうした有害な化学染料があるからこそ、服の色持ちがいいことです。赤いワンピースがいつまでも赤いのは、化学染料のおかげです。

ですが、ほかの染料を使うのはどうでしょうか?

家の台所にあるスパイスやハーブを使って染めるのは?

染料に使えるものはたくさんありますが、時間がたてば色あせます。化学染料で染めた服とは、ずいぶん違う服になるでしょう。

けれども、自然なもので染めることによって、よりユニークで、環境によい服になります。

現代のファッションは個性がすべてです。

みな、自分らしいユニークさと、かっこよさを追求しています。

SNSで、多くの人が、自分ブランドやスタイルを発信し、自慢しあっています。

そんな時代に、時間がたつにつれて色が変わる服ほど個性的でユニークな服はありません。

洗うたびに、そして、身につけるたびに、オンリーワンの服になっていきます。

もう何年も破れたジーンズが人気です。色あせる服も、私たちが生きるにつれて変化していく服の一つとして、みなすことができます。

いま、私が着ているシャツは自宅でターメリックを使って染めました。このシャツと同じ服の写真をインスタグラムに投稿する友人はいません。

それだけユニークであり、もっと重要なのは、天然の染料で染めたシャツだということです。

ユニークで環境によい服の可能性

みなさんに、「自宅で服を染めろ」と言うつもりはありません。ですが、商業的に、私がやった染め方をすれば、毒性の強い化学染料への依存を減らせます。

2.4兆ドル(およそ200兆円)規模のファッション業界は、競争の激しい世界です。

大規模に生産できて、かつ時間がたつにつれてよりユニークになる製品を提供することができれば、より競争力を高めることができるでしょう。

ネットでの買い物がふつうになり、IncochinoやTinker Tailorなど、オンラインで、カスタムメイドの服を提供するサービスが生まれました。

ナイキやアディダスは、すでに何年も、カスタムメイドの靴の注文を受け付けています。

カスタムメイドの製品を、大きな規模で提供することは、どんな顧客産業にとっても、簡単なことではありません。

ですから、こうしたビジネスを始めて、環境にやさしい製品を作ることができれば、業界を大きくリードできます。

すると、環境によい製品で利益を出すこともできるのです。

すべてを一度に解決する方法はありませんが、その服の寿命が終わったときのことを考えて、デザインすることを始めることはできます。

ファッション業界は、変化を恐れず、いろいろ試みをして、持続可能な将来を実現するのに、もっともふさわしい産業です。

単語の意味など

pluck  引き抜く

rot away  朽ち果てる

patient zero  第一号、最初の患者

aficionado  熱愛者、マニア

posit  ~を置く、すえる

cost-effective  費用対効果の高い、かけた費用に対して、より価値/効果がある

at scale = on a larger scale  大規模に

ファッションやゴミ問題に関するほかのTED

マインドレスからマインドフルへ、ファッションを変えていく(TED)

死ぬほど素敵なファッション(TED)おしゃれで安い服の大きな代償。

服を使い捨ててはいけない。着ているものがあなたの生き方を表している(TED)

あなたの知らない海上輸送の話(TED)

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なぜ私はゼロ・ウェイストな暮らしをしているのか:ローレン・シンガー(TED)

プレゼンから得た2つの気づき

カルラさんは、ファッション業界へ提案していますが、彼のアイデアはほかの業界でも、ふつうの人の日常生活でも使えますね。

私がいいと思ったのは、終わりを意識する、ということと、自然なもので染めると色があせて、そこがユニークだ、というところです。

何ごとにも終わりがある

服をデザインするときに、使い終わったときのことを考えて、リサイクルしやすいようにしよう、という話、あたりまえのことですが、私たちは、意外と、そこまで考えていません。

何かを買ったら、そこで終わりではありませんし、使ったから終わりでもありません。

ものはいつかゴミになるので、ゴミにするときのことを考えて、買ったり、生活に導入したりするべきですね。

食べ物のように、口に入れることができれば、体内で、消化してくれますから、そんな心配はいらないかもしれません(代謝しきれないものは体内にとどまる)。

ですが、同じ食べ物でも、作りすぎて残ったら、廃棄のことを考える必要があります。

使っているあいだにゴミが出るものもあります。これが大規模になると、産業廃棄物ですが、こうしたゴミが、環境を汚すわけです。

いつも、「これは最終的にはどうなるのか?」ということを意識すると、ゴミを減らせるでしょう。

朽ち果てることを受け入れる

服の色があざやかなのは、毒性の強い化学染料のおかげです。

髪染めについても同じことが言えます。

この記事でも書いたのですが、白髪染め(ヘナ)と湯シャンに関する質問に回答します。 短時間でさっと染まって、色持ちがいいのはケミカルで環境に有害な化学染料のなせるわざです。

自然のもので染めれば、色が入りにくいし、色持ちもよくありません。しかし、その分、環境にも人体にもやさしいです。

私は、環境にやさしいほうを選びたいと考えています。

多くの人は、「美しくあることを犠牲にはしたくない」と思うかもしれません。

しかし、カルラさんの言うように、時間の経過とともに色あせていくことを、自分らしさ、ユニークさと捉えると、犠牲とは思わないでしょう。

人間は生体なので、時間がたてば、だんだん老化し、いつかは死ぬのです。

それはごく自然なことです。白髪や薄くなった頭、顔のしみやしわ、肌のたるみ、そういうものを、私だって、格別美しいとは思いません。

しかし、そこまで忌み嫌うこともないでしょう。

自然の摂理に従っているととらえ、そうした変化を自分らしさとして受け入れることができれば、異常なまでに若さにしがみつくこともないです。

若さにしがみつかなければ、コスメや衣料品にお金を使うことも減ります。すると、ゴミも減ります。

コスメも衣料品も、主原料は石油なので、環境によくありません。

あなたは、このプレゼンから何を学んだでしょうか? 感想などありましたら、お寄せください。





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