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連休中に少し、クローゼットの中の整理をしたい、という人の参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、Mindless to Mindful: The Wardrobe Revolution(マインドレスからマインドフルへ:ワードローブ革命)。プレゼンターは、ファッション・スタイリストの Elim Chu(エリム・チュウ)さんです。
エリムさんは、とてもおしゃれな方です。
もともと服が大好きで、好きがこうじて、ファッション関係の仕事につきました。
服好きなエリムさんでしたが、ある時、衣類を大々的に断捨離します。なぜ、そうしたのか?
おしゃれが大好きな人、いつもおしゃれでいたい人に気づきを与えてくれるでしょう。
マインドレスからマインドフルへ:TEDの説明
Getting dressed is a habitual part of our days but, have you ever stopped to consider the consequences of such a mindless action?
The negative effect of the clothing industry on the environment is innumerable.
It’s time we hold ourselves accountable for the impact our actions have.
Elim Chu is a fashion stylist and consultant who advocates for mindful decisions.
In her TEDxSFU talk, she discusses how we can shift the way we shop and dress and how these changes can make a positive impact in our lives and for the environment.
服を着るのは、日々のごく習慣的な行動です。でも、無意識に服を着ることがどんな結果をもたらしているのか考えたことがありますか?
衣料産業が環境に与える悪影響は、数えきれないほどあります。自身の行動が与える影響について、責任をとる時期が来ています。
ファッション・スタイリスト兼コンサルタントのエリム・チュウは、意識的な決断をすべきだと主張しています。
TEDXSFUの講演で、彼女は、買い物の仕方や装い方を変えれば、自身の生活や環境によい影響を与えることができると話します。
SFUは、Simon Fraser University (サイモン・フレーザー・大学)のことです。カナダのブリティッシュコロンビア州にある学校です。
無意識から意識を持つことへ:ワードローブ革命
収録は2017年の12月。長さは13分35秒です。また新しい動画なので字幕はありません。動画のあとに、抄訳を書きます。
100足以上靴を持っていた私
数年前、一軒家から、500平方フィート(46.45平方メートル)のアパートに引っ越しました。一緒に暮らす夫に迷惑をかけたくなかったので、初日に、クローゼットをダウンサイジングしました。
恥ずかしい話ですが、3つの洋服ダンスを断捨離していたら、100足以上の靴が出てきました。
この時、自分の無意識な消費の習慣を、振り返ることになったのです。消費主義のインパクトや、自分の買い物が将来の世代にどんな影響を与えるのか。
それ以後の発見のきっかけになった、この瞬間の気づきが、私のファッションスタイリストとしての役割に目的を与えてくれました。
子供の時から服が大好きだった
どうして私は、100足以上も靴を持っていたのでしょう?
始まりは子供のときです。人形で遊んだり、母の服を着て遊んだりしているときに、自分は服が大好きだと気づきました。服を着ると、変わることができるからです。
卒業したら、すぐ、小売業界で働きたいと思っていました。服のそばにいたかったのです。
小売で働いているときに、洋服で自分のクリエイティビティを表現することを学び、スタイリングに目覚めました。
自分の得意なことを3つ発見しました。
その人に最適な服を見つけること、流行を見極めること、そして買い物です。さまざまな仕事をしながら、このスキルを磨いていきました。
服のセールスから、ファッション・ブロガーへ。今は、ファッション・スタイリストです。
服の小売業界にいるのだから、服や靴をたくさん持っているのは当然だと思っていました。けれども、心の奥底では、居心地の悪さも感じていましたね。
服を整理して新しい世界を知る
クローゼットを断捨離中、自分の服を、キープ、売る、寄付する、の3つの山にし、その量について改めて考えました。
服を片付けながら、ワードローブを整理することを学び、考えを同じにする人たちとつながりました。その結果、ファッションコミュニティに関して、違った視点をもつようになったのです。
ミニマリズムを提唱している人々やブランド、節約すること、地元で買うこと、誰が作っているのかわかり、持続可能で、倫理的な製造。
このような考え方にふれることで、消費しすぎている自分について、深く、掘り下げて考えるようになりました。
ファッションが環境に与える悪影響
衣料が人や環境に与える影響はとても大きいのです。
ここでは、そのごく一部をお話しますが、Googleで検索してみれば、すぐにわかることです。
私が学んだのはこんなことです。
ファッション産業は、世界で、2番めに環境を汚染する産業だということ。1番目は、石油産業です。
みんなが大好きなジーンズを例にあげましょう。私もジーンズが大好きです。
デニムは、製造過程でもっとも環境を汚染してしまうと知ったときの私のショックや失望といったら。デニムを作るには、とてもたくさんの水がいるのです。
1足のジーンズを作るのに、1万リットル使うこともあります。綿花畑から、店の棚にいくまでに、1万リットル使ってしまうのです。
しかも、染料や発がん物質が含まれた汚水を出します。工場によっては、水をきれいにせず、そのまま、川や海に流します。
誰もがジーンズを愛用しています。2016年に世界で販売されたジーンズは、10億本以上です。一人平均、6~7本持っています。
着なくなったジーンズや服は、どこへ行くのでしょうか?
Tシャツや下着、パンツをひっぱると伸びますよね? 1959年に開発された、スパンデックスという化学繊維のおかげです。
スパンデックスが完全に生分解するまでに、200年かかると言われています。
ファッション産業は人の命まで奪っている
私たちは、製品のコンセプトが生まれてから、販売されるまで、数週間しかかからない時代に生きています。
このサイクルは、人の健康や環境に負荷をかけているだけでなく、人の命まで奪っています。
Eco-Age(エコ・エイジ)を創設し、トゥルー・コスト(ドキュメンタリー映画)をプロデュースしたリヴィア・ファースは、2016年の5月、こう書いています。
・バングラデシュの工場が倒壊して、衣類を作っていた人が1334人亡くなったのに、大企業は、いまだに危険な環境で衣類を製造させている。
・こうした工場は、たくさんの従業員を支えきれず、労働環境は、国連の定めた「持続可能な開発目標」の基準に違反し、すべての従業員の人権を侵害している。
とても深刻で、納得しにくい問題です。ですが、こうした事実は、私が、消費しすぎる人間から、意識的な消費をする人間に変わるきっかけになった、数々の事実のほんの一部なのです。
私は、意識的な消費者としての自分の行動をSNSでシェアし始めました。私の考えを支持してくれる他の人の意見を聞きながら、私なりに解決法を考えました。
それぞれの消費者のお金の使い方を変えれば、この産業をマインドレスなものから、マインドフルなものへ変えることができる、と。
私にも役割があります。自分の選択が世界に影響を与えます。
服装は人の意識や行動に影響を与える
私は、服を着ることで、よい気分になるべきだとも考えています。これこそが、大きな変化をもたらします。皆さん、自分の服を着ていて、どんな気分ですか?
何を着るかは、その人の気持ちを大きく左右します。自分もそうだし、ほかの人もそうだということを目撃しました。
試着室、写真を取られる場、会議室。服が、それを着ている人の意識や行動に影響を与えるのをずっと見てきたのです。
科学者は、これを enclothed cognition(エンクローズド・コグニション)と呼んでいます。医者の白衣を着て作業にあたった人は、絵かきの上っ張りを着ていた人や、何も着ていなかった人より、集中力が長く続いた、という実験があります。
何を着るかは、私たちがどんなふうに感じたり、行動するかに影響を与えるのです。私は、自信や個性、心地よさや安全を感じられる服を着たいと考えています。
よい感情を与えてくれる服を選ぶという考え方は別に新しくはありません。祖父母は、それを「常識」と呼ぶでしょう。
よい気分でいられる服の選び方
ファストファッションの時代に、どうやって意識的に服を選んだらいいのでしょうか?
まず、私はスローダウンします。自分やほかの人に、たくさん質問する時間を取ります。
自分の欲しいもの(ウォンツ)と必要なもの(ニーズ)について自問自答し、もし必要だと思ったら、その理由を考えます。
次に、それはどこで誰が作っているのか考えます。地元で買うのか、古着を買うのか、借りることはできないだろうか。
もし新品を買うなら、メーカーについていろいろ調べます。サイトを見ただけではわからないことも多いので、メールで問い合わせたり、SNSで聞いたりして、自分の声を届けます。
何かが欲しいと思ったら、べつの質問を自分にします。
クローゼットを見て、「これが欲しいのは、単に退屈だからじゃないの?」と聞きます。そんなときは、違う服を着てみたり、コーディネートを変えてみたりします。
どうしたら、服が長持ちするかも考えましょう。大事に着ているか、修理して着ているか。服の修理をするのは、ごく簡単なスキルで、誰でもできます。
もう着なくなった服のことを考える必要もありますね。
どこに持っていくか、しっかり考えるべきです。どこに寄付するのか。シェルターかチャリティショップか。
こんなふうにいろいろ考えた末、それでも、新しい服を試着している自分に気づいたら、「自分がどんなふうに見えるのか」という質問より先に、「自分はどんな気持ちでいるのか」自分に聞きます。
こうしたことは、みんなインパクトがあります。
消費者のお金の使い方が世界を変える
どこでどんなふうにお金を使うの選択するのは、私たちのパワーです。このパワーでファッション産業を変えることができます。
自分の感情に意識を向ければ、単に習慣から買うのではなく、もっと意識的な買い物ができるようになるのです。一人ひとりの買い物は、ドミノエフェクトを生み、世界を変えます。
意識的な選び方がわかったところで、それをいつ始めるか、ですよね。
未来の人々は、私たちにどんなことをしてもらいたいと思っているのでしょうか。
去年の今頃、私は未来と出会いました。私のめいであり、夫の親族のはじめてのひひ孫と。生後24時間のめいを抱きました。
腕に感じた赤ちゃんの重さは、自分が選択をして果たす責任の重さだと感じました。
めいの世代にどんな影響を与えるべきなのか。どんな世界を授けるのか。
毎日服を着るのは、とても簡単なことです。私たちは、もっと意識的に服を選ぶチャンスがあります。そうすれば、ファッション業界も、もっと意識的になり、発展します。
私たちは変える力を持っています。自分の暮しだけでなく、未来をも変える力です。
単語の意味など
detached home デタッチド・ホーム/ハウス
ほかの家と屋根や壁などを共有していない家。一軒家。
私が住んでいるフォアプレックスや、デュプレックスは、デタッチではなく、attached home/house (アアタッチド・ホーム/ハウス)と呼びます。
dress-up 子供がいろいろな服を着て遊ぶこと。女の子の典型的な遊びの1つ。コスプレみたいなものです。
consign 商品を委託して売る
like-minded 考えや意見が同じである
traceable ト レーサブル、追跡できる、誰が作っているのかわかる
billion 10億
Sustainable Development Goals (SDGs) 持続可能な開発目標
take in 理解する、把握する、飲み込む、気づく
catalyst 触媒、促進するもの、大変化を引き起こす人・こと
enclothed cognition エンクローズド・コグニション
ある種の服装がその人の気持ちやパフォーマンスに影響を与えるという心理学の理論。
実験するまでもなく、これは誰にでもあるでしょう。パジャマを着ていると、お休み・ダラダラモードになるし、スーツを切れば、仕事モードになります。
ファッションに関係のあるほかの動画
「真の代償」The True Costはファストファッションの真実を暴く映画 ~これでもあなたは安い服を買い続けますか?
『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』11月日本で公開。服を買い過ぎる人は必見です
死ぬほど素敵なファッション(TED)おしゃれで安い服の大きな代償。
服を使い捨ててはいけない。着ているものがあなたの生き方を表している(TED)
きょうのプレゼンに関連する動画
フリーランスのファッション・スタイリスト、エリム・チュウさんのプロモーションビデオです。
1分9秒。
いろいろな人に服を選んであげたり、ファッションの相談にのるお仕事のようです。
ジーンズ1本できるまでに、どんなふうに環境を汚染するのか、アニメで説明している動画。3分37秒。
あなたは本当におしゃれが好きなのか?
筆子さんは、もう50代だから/ずっと家にいるから/カナダに住んでいるから、べつに服はたくさんいらないでしょう。
でも、私は、若いし会社員だし、おしゃれな人が多い日本に住んでいるから、服の断捨離ができないんですよ、というメールをもらうことがあります。
確かに、私は来年はもう60歳だし、いまさらおしゃれしたいとも思わないし、もともと、そこまで服のことで頭がいっぱいになるタイプでもありません(ほかに楽しいこと、考えたいことがあります)。
そういう人はそうでない人より簡単に服を断捨離できるでしょう。
そこで、今回は、真正おしゃれ好きだけど、やたらと服を買わず、意識的なおしゃれをしているエリム・チュウさんのプレゼンを紹介しました。
服が大好きだ・おしゃれが大好きだ、という人ほど、自分の服がどこから来て、どこに行くのか、知っておくべきではないでしょうか?
服やおしゃれが自分の人生に大きな意味をもたらしているのですから。
「おしゃれが大好き」と言いながら、よくよく考えてみると、単に「服を買うこと」「集めること」「お金を使うこと」「買った服を見せびらかすこと」が好きな人もいるのではないでしょうか?
着ない服が家の中にたくさんあるのは、「着ること」は二の次だからなのかもしれません。
シンプルライフにしたいと思うのに、服が好きすぎて、クローゼットに服があふれている、服を捨てられない、と思うなら、自分と服との関係を、一度、真剣に考えてみるとよいでしょう。
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リップドジーンズ(ripped jeans)は、流行っているらしくて、私の娘もたまにはいています。
張り裂け具合が、だんだんエスカレートしてきており、膝がまるまるないようなジーンズをはいています。しかも、けっこう高いです。
新品をわざとボロボロにしたジーンズがクールで、若い女性に人気だなんて、ファッションっておもしろいですね。人間の心理は本当に不思議です。