吉本由美の本

シンプルライフな人たち

最終更新日: 2019.06.30

吉本由美の「一人暮し」術が、シンプルライフの参考書として威力を発揮した事情

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元雑貨スタイリスト、現作家の吉本由美さんの『「一人暮し」術・ネコはいいなア』という本をご紹介します。

といっても、この本、古くて、とっくの昔に絶版になっていますが。

モノ好き、買い物好きの私が、初めて断捨離のような、物の大量捨てをしたのは、27歳のとき。

1986年のことです。昭和61年ですね。

筆子に物をガンガン捨てさせる気持ちにした1つが、この本なのです。

1986年の初秋に出版された時、すぐに買いました。



吉本由美さんとは?

20代のころ、マガジンハウスの雑誌をよく見ていました。

吉本さんは、当時、雑誌『クロワッサン』で連載記事を持っており、人気でした。「オリーブ」にもよく登場していて、吉本さんのセンスはいいな、と思っていたものです。

それもそのはず、吉本さんてすごく映画が好きなんですね。特にフランス映画が。筆子も、昔からフランス映画が好きでよく見ていたので、なんとなく波長があったのかもしれません。

彼女は映画や、フランスの雑誌(ELLEなど)で見て、いいなと思ったものを、自分の足で探しまわっていました。時には海外まで足をのばして。

1度、「クロワッサン」で、吉本さんの1日を追う特集記事を読みました。吉本さんが、小柄なからだで、東京都内をかけずりまわり、雑誌に使う雑貨をさがしている様子をリポートした記事です。

だんだん荷物が増えて吉本さんの両手はふさがります。タクシーを使わず、下北沢のあたりを大荷物を持って足で回っていたと思います。

とても忙しくて、ランチは、マクドナルドのハンバーガーを立って食べていました(うろ覚えです)。

私は、「自分の好きなもの」を探すこだわりとパワーがすごいな、と感心しました。「だから吉本さんの紹介するグッズって素敵なんだな」って。

今のスタイリストは、メーカーとのタイアップが多いと思うのです(実情は知りません。想像です)。

私は、「持たない暮し」「買わない生活」を心がけているので、商品カタログに毛の生えたような雑誌はもう読まないことにしています(読みたくても近所に売っていませんが)。

天然生活」は喜んで買っていましたが、あるとき興味を失いました。

天然生活をやめた話⇒『天然生活』にあこがれながらも、捨てる道を選んだ理由とは?ミニマリストへの道(11)

雑誌に登場する「おしゃれな人」たちの着ている服や、持っている持ち物は私物ではなく、スタイリストが用意していることが多いです。

しかもそれは、そのスタイリストのセンスで選んでいる物とは限らず、メーカーとタイアップして、何らかのビジネス上の談合の上で、あつらえられた物が大半なのではないか、という気がするのです。

たとえば、最近、北欧のメーカーや北欧風の雑貨(アラビアとか)が人気です。雑誌に登場する人は、なんだか、皆さんこれを持ってるような気がします。

数年前に、突然日本全国の有名無名のちょっと「おしゃれな人」「暮しにこだわる人」がいっせいに、北欧の食器を使い始めたように見えるのです。

もちろん、スタイリスト自身が選んでいるものもあるとは思いますけどね。





「一人暮し」術・ネコはいいなア」の内容は?

この本のコンセプトは「シングル・イズ・シンプル」。独身の吉本さんの暮らしぶりをつづったエッセイです。

モノクロの写真がたくさんのっています。

前半は、「職業柄、たくさん物を持っていたけれど、これからは減らしていく」、という内容で、シンプルライフのすすめとなっています。

後半はスタイリストになるまでの話や、スタイリスト時代のエピソード、自分の好きなもの、嫌いなもの、生きていく上でのポリシーなどが語られています。

この本を読んで、吉本さんが故郷熊本から出てきて出会った最初のメンターというか、先生が大橋歩さんだと知りました。

吉本さんは、物が好きで、本当にたくさん持っていました。自分には必要なくても、職業がら、「撮影に使うかもしれない」という考えからとっておいた物もたくさん。

ですが、「そんな暮しはもうやめる」、と書かれています。そして、火事になっても身一つで逃げ出せる猫のようになりたいと。

吉本さんはネコ好きで、何匹か飼っているのですが(この本の執筆時)、いつかは、その猫さえも手放したいという考えでした。

この本で印象に残っているのは、「素食のススメ」の章で紹介されていた、応量器(おうりょうき)という、大小6つの塗り物のおわんのセットです。

これは禅僧が使うもので、すべて入れ子にしてすっきりしまえる器です。

応量器

吉本さんは、1番大きい器に煮物、2番めのに汁物、3番目のにごはん。あとの3つに焼き魚、チリメンジャコ、梅干1個をのせて、「毎日これで行きたい」、と書いていました。

筆子はこの器を一時期、本気で買おうと思っていました。しかし、どこに売っているのかわからなかったので、買いませんでした。当時は、インターネットなんてありませんでしたからね。

今となっては買わなくてよかったです。現在の筆子には、おかずの量が多くてかなりのごちそうですし、こんなに食器があったら洗うのが大変です。

私の食器⇒ミニマリストの食器の数は?~50代節約系かつ粗食系の主婦の場合

この本、5年前に処分するまで24年も持っていました。自分でも物持ちがいいなとあきれています。

古い本ですが、今読んでもおもしろいと思います。ただ、通信機器に関する話は、やはり古さを感じさせます。なんといっても、29年前の出版ですから。

吉本さんは、嫌いなものとして、留守番電話、ワープロをあげていました。手書きが好きだったみたいなんですが、さすがに今は、パソコンで執筆していると思うし、スマホも使っているのではないでしょうか?

実は、その嫌いなものの中に、「だんなさんの庇護のもとにいる主婦、つまり専業主婦」もありました。吉本さんは、独身で1人で生きるということにこだわっていたのです。

吉本さんの今は?

田舎がいやで東京に出てきた吉本さんですが、60歳過ぎてから、熊本に戻って、今はそちらで生活しています。東京には44年住んでいたそうです。それもなんだかすごいです。

ブログもあります⇒吉本由美のこちら熊本! 最近更新されていないけど、相変わらず猫と暮しておられるようです。

物や暮しに対する考え方もだいぶ変わってきたみたいです。

「一人暮し」術のあとがきには、「最近体力がおちてきた、これが年とるってことなんだろうか」と書いてあったのですが、このときはまだ38歳ですからね。若い、若い。今はまた全然違う心境ではないでしょうか?

吉本由美「一人暮し」術、アマゾンで中古品を入手できます。

私も、若いころとは考え方も生活もずいぶん変わりました。

「クロワッサン」みたいな雑誌は全く読まなくなったし、物もほしくなくなりましたから。

ですが、吉本さんの記事を毎回楽しみにして読んでいたのはいい思い出です。

あまり「物」について考えることをせず、ほどほどに買い物して、ほどほどに暮していたら、ミニマリストになろうなんて思わなかったかもしれません。





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