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失敗して落ち込んでいる人を勇気づけてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、Success, failure and the drive to keep creating (成功、失敗、そして創り続ける力)
講演者は作家の Elizabeth Gilbert(エリザベス・ギルバート)さん。
邦題は、成功と失敗と創り続ける力について。
ギルバートさんは、『食べて、祈って、恋をして』(Eat, Pray, Love)という大ベストセラーを書いた人です。この小説は映画にもなっています。
創り続ける力:TEDの説明
Elizabeth Gilbert was once an “unpublished diner waitress,” devastated by rejection letters. And yet, in the wake of the success of ‘Eat, Pray, Love,’ she found herself identifying strongly with her former self. With beautiful insight, Gilbert reflects on why success can be as disorienting as failure and offers a simple — though hard — way to carry on, regardless of outcomes.
エリザベス・ギルバートは、昔、「本を出していないダイナーのウエイトレス」で、たくさんの拒絶の手紙に打ちのめされていました。
彼女は、『食べて、祈って、恋をして』が成功したあと、昔の自分になったような気がしたのです。
すばらしい洞察とともに、ギルバートは、なぜ成功が、失敗と同じように、人を道に迷わせるのか考え、結果にこだわらず、前に進み続けるための、シンプルだけど、簡単ではない方法を伝えます。
drive は、原動力、推進力、内的な衝動、やる気です。
収録は2014年の3月、長さは7分。日本語字幕もあります。
☆トランスクリプションはこちら⇒Elizabeth Gilbert: Success, failure and the drive to keep creating | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
とても有名なプレゼンです。メッセージそのものは、シンプルですが、言葉の選び方が上手ですね。
『食べて、祈って、恋をして』の成功
数年前、JFK空港で、2人の女性に会いました。イタリア系の、小柄で押しの強そうな人たちでした。
背の高いほうが、私のところにやってきて、こう言いました。
「ねえ、聞きたいんだけど、あなた、最近話題になっている『食べて、祈って、恋をして』の人よね?」
「そうです」と答えたら、その人は、「ほら、言ったとおりでしょ。この子よ。映画をもとに本を書いたのは」と友人に言いました。
私が、その人です。
そして、当人であることにすごく感謝しています。『食べて、祈って、恋をして』は、私にとって、大きな幸運でしたから。
次回作のプレッシャーと打開
同時に、作家として前に進むことに困難を感じました。
どうしたら、『食べて、祈って、恋をして』のような本を書けるんだろう、と思ってしまって。
この本を好きな人は、私が何を書いたところで、がっかりするだろうし、この本を嫌いな人は、私が、まだ生きていることを知って、やはりがっかりするでしょう。
どっちにしても、うまくいかないのだから、もうこんなことはやめて、田舎に引っ越し、犬でも育てようかと本気で考えました。
でも書くことをやめたら、大好きな天職を失ってしまいます。だから、どんな結果になろうとも、インスピレーションを得て、次の本を書くべきなのです。
言い換えれば、成功に負けず、生きながらえる創造性を見つけなければなりません。
結局、私は、そうできました。意外なところから、インスピレーションを得たのです。
若いころ、失敗したとき、どんなふうに創造性を持ち続けたか、思い出したのです。
昔は失敗の連続だった
私はずっと作家になりたいと思っていました。
子供の頃からずっと書いていました。ティーンエイジャーになると、ひどい作品を、ニューヨーカー(雑誌)に送り、採用されることを願っていました。
大学卒業後は、ダイナーのウエイトレスをしながら、書き続けました。出版にこぎつけようと、必死でがんばりましたが、叶いませんでした。
6年ほど、何も出版できなかったのです。
6年間、毎日、郵便受けに、断りの手紙が届きました。
断られるたびに、打ちのめされ、そのたびに、自問しました。
もう書くのはやめて、負ける苦しみから逃れるべきではないのか、と。
失敗を乗り越えてきた
それでも、いつも、「やめないわ。家に戻るのよ(I’m going home)」と言いながら、決意を新たにしたのです。
「家に戻る」とは、家族が住む農場に帰ることではありません。
私にとって、「家に戻る」ことは、書く仕事に戻ることを意味します。
だって、それが私の家ですから。私は、失敗するつらさにたえることより、書くことを愛していました。
自分のエゴより、書くことが大事でした。つまり、自分を愛すること以上に書くことを愛していたのです。
そうやって、私は失敗を乗り越えました。
大成功してまた道に迷う
不思議なことに、20年後、『食べて、祈って、恋をして』による大騒ぎの中にいる自分が、ウエイトレス時代の自分と重なりました。
昔とは、生活が全然違っていたのに。
昔の私はいつも失敗していました。今は、想像以上に成功していて、共通点などありません。
なぜ、突然、昔の自分に戻ったような気になったのでしょう?
そう考えたとき、わかり始めたのです。大きな失敗と、大きな成功には、奇妙でありそうにもない、心理的なつながりがあるのだと。
いつもの自分でなくなる
人生の大半は、いつもと変わらないふつうの暮らしです。ところが、失敗すると、突然、絶望の闇の中に、投げ出されます。
成功しても、名声や評価、称賛のせいで、何も見えない世界へ、突然、投げ出されます。
片方は、よくないことで、もう片方はいいことだと思われますが、当人の潜在意識のレベルでは、いいとか悪いとか区別できず、どちらも同じなのです。
唯一、感じることができるのは、感情の方程式での絶対値、つまり、「今、自分は、自分自身から、遠く隔たったところにいる」ということだけです。
どちらの場合も、心の奥底で、自分を見失う危険があります。
ですが、両方とも、同じやり方で、自分を取り戻すことができるのです。
それは、できるだけ早く、スムーズに、家に戻る道を見つけること。
自分の家とは?
この世界で、自分自身よりも、大事なものが、あなたの家です。
それは、何かを創り出すことかもしれないし、家族かもしれません。発明、冒険、信仰、奉仕かもしれません。
コーギーを育てることかもしれませんね。
全エネルギーを注ぎ込める場所で、結果などはどうでもいい、と思えるものが、あなたの家です。
私の家は、いつも書くことでした。
『食べて、祈って、恋をして』で、目がくらむような成功を収めてからわかりました。
私に必要なのは、かつて、自分を見失いそうな失敗をしたときに、私がしなければならなかったことと同じことなのだと。
それは、また書き始めること。
もう何があっても大丈夫
そうやって、2010年に、『食べて、祈って、恋をして』の続編を出版することができました。
この本は、失敗でしたが、私は大丈夫でした。
というより、もう何が起きても耐えられると思ったのです。呪縛を解いて、家に戻る方法を見つけたから。戻ってまた書けばいいのです。
その後も、自分の居場所で書き続け、昨年、べつの本を出しました。こちらは、評判がよくて、うれしいのですが、重要なのはそこではありません。
重要なのは、今もべつの本を書いているし、これからも、本を書き続けるということです。
そのうち何冊かは失敗し、何冊かは成功するでしょう。
でも、私は、いつも安全です。自分自身の居場所を忘れなければ、結果はどうあれ、ふりまわされることはありません。
何とかして家に戻れ!
あなたの居場所がどこにあるのかはわかりませんが、誰でも、自分より愛しているものがあります。
価値のあるものが。
中毒や耽溺みたいなものではありませんよ。そんなところにいたら、危険ですから。
たった1つのコツは、自分が一番愛している、最良でもっとも価値のあるものを見つけることです。
そして、そこにあなた自身の家を建てて、決して動かないこと。
もし、ある時突然、失敗や成功のせいで、その家から閉め出されたら、なんとかしてそこに戻ってください。
謙虚になって、自分が愛しているそのことを、勤勉に敬意と熱意をもってやりとげることによって。
ただそうするだけです。何度も、何度も何度もやり続けます。
そうすれば、私の長年の経験から断言できますが、あなたは絶対に大丈夫なのです。
//// 抄訳ここまで /////
単語の意味など
gin up ~を活気づける
behind ~に負けて
unthread 迷路を抜け出す、ことを解決する、解く
hinterland 奥地
bombed 失敗する
feel bulletproof 防弾を感じる⇒何にでも耐えられる気がする
エリザベス・ギルバートさんの本の紹介。
こちらは、講演の内容と同じ趣旨のもの。
こちらは、『食べて、祈って、恋をして』(翻訳版)
小説ではなくメモワール(自伝、回想記)です。
ジュリア・ロバーツ主演で映画にもなっていますが、私は見たことはありません。
創造性に関するほかのプレゼン
誰にでも創造性はある。自分はクリエイティブだと自信を持つ方法(TED)
物が少ないメリット:足りないからこそクリエイティブになれる(TED)
制限があるからこそ素晴らしい物が生まれる:震えを受け入れる(TED)
人は何度でも再出発できる。はみ出し者であることの美しさ(TED)
よりどころを忘れない
このプレゼンは、創造的な仕事をしている人に向けたメッセージですが、「生きる」とは、結局、自分自身の生活をクリエイトしていくことだから、どんな人にも得る内容があります。
ギルバートさんの言う、「私の家(マイホーム)」は、自分自身のよりどころですね。
自分が自分でいるための、もっとも重要なポイント。
これがわかっていたら、大きな失敗、大きな成功、その他、気持ちを大きく動揺させる事件のせいで、衝撃を受け、一瞬、自分を見失っても、がんばって再びそこに戻れば、自分を取り戻すことができます。
ホームに戻る道は、自分が大事だと思うことを、えんえんとやり続けること。
こう書くと簡単ですが、やり続けることって難しいですよね。
やり始めたことがあるのに、中断していて、半ばあきらめぎみなら、自分のホームをもう一度確認してください。
それが、本当にあなたにとって大事なことなら、やり続けることで望みのものを手に入れられるでしょう。
「大丈夫よ」と、ギルバートさんも言っています。