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TEDの動画

人は何度でも再出発できる。はみ出し者であることの美しさ(TED)

自分が嫌いな人、すぐに人と自分を比較して落ちこむ人、卑屈になって買い物や物集めに逃げる人。そんな人たちが自分を認めるきっかけになるTED動画を紹介します。

作家のリディア・ユクナヴィッチ(Lidia Yuknavitch)さんの、The beauty of being a misfit(場違いな人であることの美しさ)。邦題は「はみ出し者であるということの美しさ」です。



はみ出し者であるということの美しさ:TEDの説明

To those who feel like they don’t belong: there is beauty in being a misfit.

Author Lidia Yuknavitch shares her own wayward journey in an intimate recollection of patchwork stories about loss, shame and the slow process of self-acceptance.

“Even at the moment of your failure, you are beautiful,” she says. “You don’t know it yet, but you have the ability to reinvent yourself endlessly. That’s your beauty.”

居場所がないと感じる人へ。はみ出し者でいることは美しいのです。

作家のリディア・ユクナヴィッチは、彼女自身の波乱にとんだ旅路を親しげに語ります。それは喪失や恥を体験し、ゆっくりと自分を受け入れていく物語です。

彼女はこう語ります。「たとえ、失敗のただ中にいても、あなたは美しいのです。自分ではまだわかっていないだけ。あなたには何度でも自分自身を再生させる力があります。それこそがあなたの美しさなのです」。

misfit(ミスフィット)とは フィットしていない人。環境にうまく順応できない人、社会にうまく適応できない人、不適格者、異分子、場違いな人。black sheep(黒い羊)という言い方もあります。

動画は12分50秒。このプレゼン自体が、美しいストーリーのようです。日本語字幕もあるので、ぜひごらんください。収録は2016年の2月です。

動画のあとに抄訳をつけます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Lidia Yuknavitch: The beauty of being a misfit | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

TEDでは、大きなアイデアが語られることが多いのですが、私がお話しするのはごくささいなことです。

それはたった1つの言葉について。

misfit

私の好きな言葉の1つです。うまく言い表していますよね。フィットすることができない人。仲間に入れない人や、なんとなくなじめない人。

新しい状況や環境になじむのが苦手な人もそうですね。

そういう人たちのために、いま私はここにいます。そういう人、私だけじゃありませんよね。

作家になるチャンスが訪れた

30代のはじめ、作家になる夢をつかむチャンスがありました。

私の書いた短編が、ある賞をとったという手紙を受け取ったのです。

競泳選手としての自分の人生を書いたものです。悲惨な子供時代のことや、悲しみや喪失が少女の正気を失わせてしまったことも書きました。

賞のごほうびは、ニューヨーク行き。大手の編集者やエージェント、著名な作家に会えるというものでした。

作家志望には夢のようなできごとですよね?

私はその手紙を台所のテーブルに置いたまま、ジンをグラスになみなみとついで、1日中、下着姿で、じーっと見ていました。

これまで、失敗ばかりしてきた自分が、どんな顔をしてニューヨークに行けばいいの? 作家のふりなんてできるわけ?

こんなことを考えていました。

私のミスフィットな人生

はっきりいいましょう。私は、はみ出し者(misfit)でした。

多くのはみ出し者の子供たちと同じように、子供のころは虐待にあい、命からがら逃げ出しました。

すでに2回、大々的に離婚していて、大学も2回、落第。3度落第したとも言えるけど。

麻薬中毒になって更生施設に入ったこともあるし、刑務所暮らしも2度体験しています。

でも、私がミスフィットである本当の理由は、生んだその日に、自分の娘が死んでしまったから。その事実をどうやって受け止めていいのかわからなかった。

娘が亡くなってから、長らくホームレスでした。悲しみと喪失感でいっぱいでした。

ホームレスの人って、ミスフィットのヒーローです。元は普通の人だったのですから。

私はどんなことにもうまく適合できなませんでした。娘としても、妻としても、母親としても、学者としても。

作家になる夢も、喉につかえた小さくて悲しい石のようでした。

ニューヨークでのできごと

すごく自分らしくなかったのですが、飛行機にのってニューヨークに向かいました。最初は楽しかったのです。

自分が選んだ3人の有名作家に会わせてもらえるのです。グラマシーパークホテルで、とってもおしゃれで優秀で、いきな人たちとスコッチを飲んで、自分もおしゃれで優秀でいきなふりができました。

たくさんの編集者や作家、エージェントと、ゴージャスなランチや夕食をともにしました。

3つの違うレストランからテーブルナプキンを失敬しました。ズボンの中にメニューを隠して持ち帰ったし。

記念の品が欲しかったんです。家に帰ったときも、本当にこんなことが起きたんだと覚えておきたくて。

私が会うことにした3人の作家は、キャロル・メイソ、リン・ティルマン、ペギー・フィーランです。

3人とも有名なベストセラー作家ではないけれど、私にとっては女性作家の巨匠です。

キャロル・メイソは私が芸術のバイブルにしている本を買いたし、リン・ティルマンの作品は、私の書いたものが、世に出てもいいんだと教えてくれました。

ペギー・フィーランは、自分のおっぱいより頭脳のほうが大事なんだって思い出させてくれました。

皆、メインストリームの作家ではなかったけれど、体をはった物語で、メインストリームへの道を切り開いていった人たちです。

水がグランドキャニオンを削っていくように。

3人の50歳を超えた女性作家に会えて、すごくうれしかった。もう死んでもいいと思ったぐらい。

それまでこんなうれしいことはなかったのです。母は高卒だし、自分のライターとしてのキャリアも、まだまだ小さなものだったから。

こんなふうに最初の晩は夢うつつでした。この先のことは、想像つく人も多いでしょう。



名門出版社でのできごと

まず、ファラー・ストラウス&ジルーに行きました。夢の出版社です。T.S.エリオットやフラナリー・オコナーの本を出していたところです。

ここの編集者は、私に、水泳選手としての話をもっと長い物語にできると説得しようとしました。回想記を書けると。

彼が話しているあいだ中、私はただバカみたいにだまって微笑み、一言も話せませんでした。

最後に彼は、私の肩をたたき、「がんばってね」と言い、たくさん本をくれて、出口まで送ってくれました。

次は、W.W.ノートンのオフィスです。この出版社にいるときは、星でいっぱいの夜空に浮かぶ月をさわっているような気分でした。

女性のチーフ・エディターが、私のほうに前かがみになって、丸い目を輝かせながら、「今すぐ何か書いて送ってきなさい」と言いました。

ふつうの人、とくにTEDの人なら、すぐに郵便ポストに走りますよね。ところが私が、封筒に何かを入れて、切手を貼って送ろうという気になるまで、10年かかったんです。

最後の晩、ナショナリーポエトリークラブの朗読会で、朗読しました。

朗読のあと、有名文芸エージェントのキャサリン・キディーがやってきて、握手の手をさしのべ、私のエージェントになると申し出てくれました。

私は一瞬ポカンとして、泣きそうになりました。まわりの人が、みんなすごくきれいな服を着ていたから。

私が言えたのは、「わかりません。考えさせてください」だけでした。

彼女は、「そうですか、では」と言って立ち去りました。みんな私の喉につまった小さくて悲しい石に、手を差し伸べてくれたのに。

ミスフィットな人たちは欲しいものをつかまない

私がお伝えしたいのは、私のようなミスフィットのことなんです。

希望をもったり、素晴らしいものが目の前にあるのに、それに対してイエスといったり、それを選ぶことができない人たちです。

はみ出し者は恥の気持ちを持っているのです。何かよいものを欲しがったり、よい気分になるのはよくないと思っています。

自分が尊敬している人たちといっしょの部屋にいる価値なんて自分にはないと思っているのです。

あの頃の私に向かって、はっぱをかけてやりたいです。欲しいものを手に入れて、立ち上がる方法を教えてあげたい。

「あなたもこの部屋にいていい人間なのよ、誰でも輝くことができる。不要な人間なんて1人もいない」と。

現実には、私はオレゴンに戻る飛行機の中で、惨めな気分になっていました。本の出版の契約も、エージェントも手に入れないまま、素晴らしい人たちと同席した思い出だけを持ち帰ったのです。

私が自分に許したのは思い出だけだったのです。

自宅で、下着姿に戻ったとき、ニューヨークであった人たちの言葉を思い出していました。

「小説の筋書きを変えさせようとする人たちの言いなりになってはだめだよ」「自分だけにしか書けない小説を書きなさい」。「物語を語ることは、ときには自分の人生を救うこともあるんだ」。

誰でも自分だけの物語を語ることができる

いまはごらんの通り私も50歳を超えました。作家になり、母親でもあり、教師にもなりました。

賞をとったと知らせる手紙が届いたときにはできませんでしたが、後に、「水の年代記(The Chronology of Water)」という自叙伝を書きました。

自分の間違った選択の残骸から自分自身を何度も再生してきた物語であり、失敗だと思えたことが実は、なにか美しいものが姿を変えていたにすぎなかったという話です。

物語に自分の声を与えるだけでよかったのです。

夢を追い求めることに関する神話が、どんな文化にもあります。「英雄の旅」(hero’s journey ヒーローズ・ジャーニー)と呼ばれていますね。

でも、私は、別の神話が好きなんです。少しだけ横道や下のほうにずれている旅。「はみ出し者の神話」(misfit’s myth ミスフィッツ・ミス)です。

それはこんな物語です。

たとえ失敗の真っ只中にいても、あなたは美しい。自分で気づいていないけれど、あなたには、自分を何度でも再生させる力がある。それこそがあなたの美しさ。

酔っぱらいでも、虐待のサバイバーでも、前科者でもホームレスでもいい。一文無しになろうと、仕事を失おうと、夫や妻をなくそうと、最悪の場合、子供をなくしてもいい。

正気をなくしてもいい。挫折のどん底にいても、あなたはとても美しい。

あなたの物語は人が聞く価値があるもの。なぜなら、あなたは、希少で、並外れたミスフィット、新しい種であり、この部屋の中で、あなたにしか語れない物語を語る人なのだから。

私は喜んでその物語を聞きます。

//// 抄訳ここまで ////

単語メモ

staycation ステイケーション stay (家にいる)+ vacation (バケーション)からできたことば。休みにどこにもいかず、家にいることです。

portal  門、入り口:発端

marbles  知恵、正気

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等身大の自分を受け入れることで強くなれる

子供のころに、お母さんにひどく心を傷つけられたので、いまも、そのまますごくつらい気持ちで生きている、というメールをもらうことがあります。

その人たちは、自分の話を聞いてもらえなかったし、何か言っても、お母さんに高圧的に押さえつけられたり、嘲笑われたり、無視されるだけだったから、言いたいことも言えず生きてきました。

だから、大人になった今も、自分に自信が持てません。

そのせいで、買い物が止まらなかったり、汚部屋から抜けられなかったり、ある種の強迫的な行動が止まりません。

今週もそういうメールを1通いただきました。

メールを読んでみると、確かにお母さんはひどい人で、のほほんと育った私には想像もできないほど、つらく悲しいことがあったのだろうと想像します。

また、同居しているお母さんが、病的に物を捨てないので、居間やキッチンがとんでもない汚部屋で困っている、というメールももらいました。

こういう不幸な状況にあるとき、結局、自分が強くなるしかない、と思うわけです。

過去にあったことや他人の行動は変えられないのですから。

人は、たとえどうしようもないほどだめだめな状況でも、自分で自分を再生することができるのです。

というか、自分でやるしかありません。

そこで、今回はリディアさんの美しいプレゼンを紹介しました。

********

文芸エージェントは出版社と作家の間をとりもつ代理店のようなものです。

日本で作家になる一般的な道はなにかの新人賞をとることだと思いますが、アメリカはそうではありません。

まずどこかの文芸エージェントと契約します。たくさん代理店がありますが、Kidde Hoyt & Picard Literaryというのはたぶん有名なエージェンシーだと思います。

ここの申し出を断ってしまうなんて、「あなた、作家になりたくないの?」という反応を引き起こしてしまう、バカな行為だったでしょうね。

このニューヨークへの旅はほかにも作家になるチャンスが満載でした。

しかし、自分はここにいる人間じゃない、と思っていたリディアさんは、レストランのナプキンやらの記念品や思い出だけを持ち帰ってオレゴンに戻ったのです。

リディアさんは、1963年生まれなので、ニューヨークに招待されたときは、90年代の半ばぐらいとなります。

チャンスをふいにしてしまったリディアさんですが、2011年、48歳のときに、The Chronology of Water(水の年代記)を出して、カルト的な人気を得ています。

翻訳は出ていませんが、日本のアマゾンにもペーパーバックが出ています。

私は読んだことがないのですが、本箱チャレンジが終わったら、読んでみたい本のリストにのせました。





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