シニア目前、主婦でミニマリストなブロガー筆子が、断捨離と節約をして「老い支度」に励む日々をつづっています。

問題があるから、人はクリエイティブになれる(TED)

2017.05.08


ちょっとしたことに「問題」を感じて、イライラしてしまうあなたに、実はその「問題」はありがたいことなんだ、と教えてくれるTED動画を紹介します。

タイトルは How frustration can make us more creative(いかにフラストレーションが私たちをよりクリエイティブにさせるか)。邦題は「障害こそが人をクリエイティブにさせる」です。

プレゼンターはロンドン在住の経済学者でありコラムニスト、本も書いているTim Harford(ティム・ハーファード)さんです。

障害こそが人をクリエイティブにさせる:TEDの説明

Challenges and problems can derail your creative process … or they can make you more creative than ever. In the surprising story behind the best-selling solo piano album of all time, Tim Harford may just convince you of the advantages of having to work with a little mess.

困難なことや問題があると、物ごとを作り出す邪魔になります。一方で、問題のおかげで、より創造性を発揮できるときもあります。

史上もっとも売れたソロピアノのアルバムができた背景を語りながら、ティム・ハーフォードは、問題のメリットを紹介します。

収録は2015年9月。長さは15分32秒。日本語字幕もあります。

☆英語の勉強をしたい人は、こちらにトランスクリプションがあります⇒Tim Harford: How frustration can make us more creative | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

キース・ジャレットのザ・ケルン・コンサートの秘密

1975年1月、ドイツの17歳の女性プロモーター。ベラ・ブランダースが、キース・ジャレットをコンサートに呼びました。場所は、ケルンのオペラ・ハウスです。

ところが用意されたピアノに問題がありました。

高音域はフェルトが擦り切れて耳障りな音がし、黒鍵はくっつくし、白鍵は音程がずれています。ペダルも動きません。

何より、ピアノそのものが小さすぎて、とてもオペラハウス全体に響かせるのは無理です。

試し弾きをしたジャレットは、「ピアノを替えなきゃコンサートはやらない」と意志表示。車に戻りました。

しかし、ブランダースは新しいピアノを手配することができませんでした。

雨の中、彼女は車の中にいるジャレットに向かって、「頼むからコンサートをやってください」とお願いしました。

ずぶ濡れになって必死に頼んでいる彼女を見て、ジャレットはかわいそうに思い、「あなたのためにやりましょう」と引き受けました。

数時間後、ジャレットは半分壊れたピアノでコンサートを開始。

驚くべきことがおきました。高音域を避けて、中音域中心に演奏するその音がとても心やすらぐ音色だったのです。

同時に、ジャレットは、音量の少なさをカバーするために、低音域のリフ(反復演奏)を、立ち上がって、鍵盤に叩きつけるように演奏をしました。

とても静かな音と、力強い音が絶妙にからみ、すばらしいパフォーマンスになりました。

この演奏は「ザ・ケルン・コンサート」というライブアルバムとして発売され、ピアノのアルバムとしても、ジャズのアルバムとしても史上最高の売上を誇っています。

キース・ジャレットは問題を受け入れ、チャンスに変えたのです。

とは言え、彼も最初は、演奏するのはいやだったのです。誰だってそうでしょう。

誰でも、まずい道具を使いたくないし、よけいなハードルを越えたくないと直感的に思います。

けれども、この直感は間違っています。ちょっとした問題に遭遇することは、思いがけないメリットがあるんです。

いくつか例をあげますね。認知心理学、複合科学、社会心理学、そしてロックンロールの世界の例です。

読みにくいフォントのプリントで勉強すると?

まず認知心理学の例です。

ある種の困難や障害があったほうが、パフォーマンスがあがるということがわかっています。

心理学者のダニエル・オッペンハイマーが高校の先生とやった実験を紹介しましょう。

先生は、クラスの半分の生徒には、読みやすいふつうのフォントを使ったプリントを、もう半分には読みにくいフォントを使ったプリントを用意し、授業を行いました。

学期末試験では、読みにくいフォントのプリントを使っていた生徒のほうが成績がよかったのです。

文字が読みにくいので、読むスピードを落とし、理解しようとより注意深く勉強したからです。だからよりよく学べたのです。

周囲の雑音が創造性を刺激する

心理学者のシェリー・カーソンは、ハーバード大学の学生の、アテンショナルフィルター(attentional filter)の質を調べました。

アテンショナルフィルターは、レストランなどでさまざまな会話が流れる中、情報をフィルターリングして、大事なことにフォーカスする力です。

うまく集中できる人は、より強力なアテンショナルフィルターを持っています。

この実験では、弱いフィルターや穴だらけのフィルターを持っている学生のほうが、クリエイティブな成果をあげていることがわかりました。

彼らは小説やアルバムを発表していたのです。周囲からの雑音が、創造性を刺激したと考えられます。

複雑な問題解決プロセスにでたらめな要素を入れる

複合科学の話に行きましょう。

ものすごく複雑な問題はどうやって解きますか?

たとえば、ジェット・エンジンの開発です。

ジェット・エンジンを作るさい、たくさんの不確定要素があります。動作温度、素材、形など。

一度に何もかも解決できないので、ステップバイステップでクリアしていきます。

試作モデルを作って、テストを重ね、改良します。これはよくあるやり方で、問題解決に効果的ですが、このプロセスをより効果的に行う方法があります。

初期のプロセスでわざとランダムな要素、考えられない動きを加味するのです。すると、その後の問題解決がスムーズになります。

ステップバイステップで少しずつよくしていくだけでは、袋小路にはまってしまうことがあるのです。


グループダイナミクスが問題解決の結果を変える

社会心理学の例をあげます。心理学者、キャサリン・フィリップスが、生徒に殺人事件を解決する問題を出しました。

生徒は4人でグループを組みます。

あるグループは4人とも友達同士。もう1つのグループは3人は知り合いで、1人は全くの他人という構成です。

どちらのグループも事件に関して同じ情報を与えられました。

他人が混ざっているグループのほうが事件をうまく解決したのはもうおわかりでしょう。

友達同士のグループは50%、他人がまざっているグループは75%の正解率でした。

おもしろいのは、友達同士のグループは「楽しかったし、うまくできた」と感じていたことです。

他人の入っていたグループのメンバーは、「楽しくなかった、難しかった、気まずかったし、不信感を感じていた。うまくやったとは思えない」という感想を述べました。

1人だけの他人は、読みにくいフォントや、ランダムな要素と同じです。こうした邪魔が、問題解決に役立ち、創造性を生むのです。

ところが、私たちは、こうした邪魔者のおかげでクリエイティブになれたとは感じないものです。邪魔者はあくまで邪魔者。だから私たちは抵抗します。

ブライアン・イーノのプロデュースの秘密

最後はロックンロール業界の例です。

ブライアン・イーノをご存知ですね。彼はすばらしい作曲家ですが、たくさんのミュージシャンのアルバムをプロデュースしています。

デヴィッド・ボウイ、U2、DEVO、コールドプレイなど。

こうした素晴らしいミュージシャンの音楽を、さらによくするために、イーノは、わざと問題を起こします。音作りのプロセスの邪魔をするのです。

イーノのテクニックの1つに「オブリーク・ストラテジーズ(The Oblique Strategies)」というカードがあります。

彼はカードの山から1枚適当にひいて、そこに書いてあることを、ミュージシャンに命じます。

たとえば、「楽器の役割を変えろ」。するとみんな楽器を交換します。

「もっとも変な部分を見つけて、そこを強調しろ」「突然の、破壊的で、予想できないアクションを混ぜろ」。

このカードは効果がありましたが、ミュージシャンは嫌っていました。

イーノと仕事をしていたフィル・コリンズは、頭に来て、ビールの缶を投げつけました。

カルロス・アルマーは、デヴィッド・ボウイの「ロジャー」の収録中、「ブライアン、こんな実験はバカバカしすぎる」とイーノに言いました。

ですが、「ロジャー」は素晴らしいアルバムになりました。

35年後、アルマー自身、オブリーク・ストラテジーズを使っており、生徒にも勧めています。

自分がそれを嫌いだからといって、それが自分のためにならないとは限らないのです。

問題に対して忍耐強く取り組むべし

イーノの戦略(ストラテジーズ)は、以前はスタジオの壁にリストアップされていました。行き詰ったときのチェックリストだったのです。

しかし、リストではうまく行きませんでした。みんなリストの中から、一番抵抗のないものを選んでしまうからです。

馬鹿げた実験や気まずい他人、読みにくいフォントは、問題解決を助け、人をよりクリエイティブにします。

この時、問題に対して、忍耐強く取り組む必要があります。きっかけは何であれ、私たちは、ときには使い物にならないピアノの前に座って、弾いてみるべきなのです。

///// 抄訳ここまで ////

oblique は、斜めの、遠回しの、間接的な、という意味です。つまり、ストレート(straight)ではない、ということです。

クリエイティビティがトピックの別のTEDの動画です⇒誰にでも創造性はある。自分はクリエイティブだと自信を持つ方法(TED)

ピンチはチャンス

学生

忘れ物がきっかけで仲良くなることもある。

キース・ジャレットは1972年夏から、リハーサルもせず、楽譜も使わない、事前準備なしの完全に即興のソロ・コンサートを行っていました。

ケルンでのコンサートもその一環です。

彼は、出たとこ勝負にこだわっていたから、問題のあるピアノを演奏することは格好の挑戦だと思ったのかもしれません。

もちろん、すでに何千、何万回とピアノを弾いて、ピアノを知り尽くしていた彼だから、素晴らしいパフォーマンスになったのでしょう。

ハプニングや失敗が、よりよい物を生み出すきっかけになるのはよくありますね。

このプレゼンの内容は勉強や仕事に応用できますが、私はこんなメッセージを受け取りました。

●問題や障害は成功に必要な要素。

●問題を問題と感じてストレスをためすぎるのはやめ、チャレンジと捉えよう。

●どのみち問題は起こるのだから、準備に時間をかけすぎないほうがいい(完璧主義は手放す)。

この考えを片付けや断捨離にどんなふうに応用できるでしょうか?

一つ言えるのは、捨てる前から、「これを捨てるとあとで困るかもしれない」と考えるのは、取越し苦労である、ということです。

すでに有名だったキース・ジャレットのケルン・コンサートに集まった人々は1400人。みんな期待していたはずです。

そんな聴取の前で、壊れかけたピアノを演奏する恐怖に比べたら、全然使っていない物を捨てる恐怖なんてささいなものではないでしょうか?

この服を捨てたら、冠婚葬祭で困る、父兄会に着ていく服がない、人からいつも同じ服だと思われるなんて心配も無用です。

問題が起きたその時に、解決策を考えればいいのです。問題のおかげで、人はクリエイティブになるのですから、手持ちの服の思わぬ利用法を思いつくかもしれません。

また、ミニマリストのファッションの必須アイテムって何?トップスは何がいるの、ボトムスは何枚なの、全部で何着持てばいいの?

なんてことを気に病むのもほどほどにしたほうがいいです。

突然の破壊的な断捨離をしなければ、生活は変わらず、自己変革もできないのです。

*****

今回のプレゼンで、特におもしろいと思ったのは、グループで殺人事件を推理した実験の結果です。

友達同士で推理し、結果がよくなかったグループは、「楽しかった、うまくいった」と満足感を感じていました。

自己満足と結果は関係ない、と言えます。まあ、満足なら幸せでしょうから、それでいいのかもしれません。

しかし、自分は居心地が悪くても、結果がいい、ということは多々あるわけです。だから、あえて居心地の悪い状況に飛び込むのは、パフォーマンスをあげるのに効果的です。

学校や職場でも、友達と楽しむことが目的なのか、結果を出すことが目的なのか、目的の違いによって、それぞれのパフォーマンスの評価が変わります。


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