オマキザル

TEDの動画

私たちがお金に関して愚かな決断をしてしまう理由(TED)

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豊かな人生を送るのに参考になるTEDのプレゼンを紹介しています。今回は、Laurie Santos(ローリー・サントス)さんのA monkey economy as irrational as ours(サルの経済も、人間と同じくらい不合理だ)という動画を取り上げました。

邦題は「猿の経済界にも見られる不合理性」です。

ローリーさんは、心理学者ですが、特に primate psychology(霊長類の動物の心理学)を研究しています。

人間の行動と先祖のサルの行動を比べることで、人間の行動の謎を解きます。

ローリーさんは、お金に関して、人間がする理屈に合わない決断の原因を調べました。それは環境のせいか、それとも人間は間違えるようにできているのか、サルを使った実験から仮説を導き出したのです。

TEDによる動画の説明

Laurie Santos looks for the roots of human irrationality by watching the way our primate relatives make decisions. A clever series of experiments in “monkeynomics” shows that some of the silly choices we make, monkeys make too.

ローリー・サントスは、人間の不合理性のルーツを見極めるために、霊長類の動物の意思決定を観察しています。「モンキーノミックス(サルの経済)」での巧みな実験から、人がする愚かな決断は、サルもすることがわかります。

monkeynomics というのは、ローリーの作った言葉だと思いますが、moneky+economics (サル+経済)という成り立ちです。

動画は19分45秒。日本語字幕です。字幕なしや英語を出したい方は、プレーヤーで調節可能。動画のあとに要約を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Laurie Santos: A monkey economy as irrational as ours | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

人間は賢いが、反面とても愚かである

人に関してふたつの見解を持つことができます。1つは、他の動物に比べてとても賢い、ということ。もう1つは、人は、ずいぶん愚かな意思決定をする種(しゅ)でもあるということ。

環境資源を得るために作ったシステムが人の生活を脅かしたり、完璧なはずの金融市場が崩壊しました。

失敗そのものより、失敗を引き起こす間違った意思決定が問題です。

社会学者は、大半の人間は特定のミスを何度も繰り返すといいます。つまり、「こんな時は、こんなミスを犯すだろう」と前もってわかるのです。

失敗して、批判されるなどネガティブなフィードバックを得ても、やはり同じ失敗を繰り返します。

なぜこんなに賢い種が、馬鹿げた失敗を繰り返すのか?

私はこの理由を見つけたいと思いました。

人が、間違いをする理由として考えられる2つのこと

人が特定の間違いを繰り返す原因として、2つの可能性があります。

理由1:環境(外的要因)のせいである
人は賢いから、自分でもうまく扱えないほど複雑なシステムを作り上げてしまったのかもしれません。たとえば、複雑な金融市場、住宅ローン用語など。

もし環境が悪いのなら、人間がうまく扱えるシステムに変えれば、ミスは防げます。

理由2:人間の作りそのもののせいである
もう1つの可能性は、環境やシステムのせいではなく、もともと人間はエラーをするようにできている、というものです。

人はデフォルトでミスをするようになっている、というわけです。

どちらが正しいの見つけるために、人間のように賢い意思決定をできる人たちで、かつ、私たちが持っているようなシステムや技術にはアクセスできない人を探して実験することにしました。

そこで選んだのがオマキザル(brown capuchin monkey)です。オマキザルは、新世界ザルとも呼ばれています。

およそ3500万年前にヒトから枝分かれした種族です。人類の遠い先祖です。

サルの経済を作った

オマキザルを人間と同じような環境に置いたらどうなるでしょうか?ヒトと同じ間違いをするでしょうか?

人間はいろいろな間違いをしますが、まずは、経済に関するミスから実験をすることにしました。

もちろん、サルはお金を持っていないので、丸いメタル(トークン)をお金と見立てました。これを使えばぶどうの粒と交換できることをサルに教えました。サルはこの仕組みをすぐに飲み込み、トークンとぶどうの交換を始めました。

[サルがトークンを使ってぶどうをもらっている動画が映しだされます。なんかかわいいです。]

次にサルの市場を作りました。サルも人間のように、互いにお金を交換するのか、一定のお金でどれだけ買うことができるのかということを意識するのか、調べるためです。

サルの市場はこんなふう

サルがふだん住んでいるケージより、もっと大きな場所に移動させました。ここに入ると、たくさんトークンをもらえ、2人のセールスマンにトークンを渡せば、ぶどうと交換をできます。

市場が始まると、サルは喜んでやってきて、どちらかのセールスマンのところに行きます。

1人は1トークンにぶどう1粒、もう1人は1トークンでぶどう2粒。サルは人間と同じように、たくさんぶどうをくれるセールスマンを覚え、そちらと取引します。この点は人間と全く同じです。

サルは決してトークンを貯めようとはしません。使いきってしまいます。この点も人と同じですね。時には、別のサルのトークンを盗むサルもいます。隙があると、人からもトークンを奪います。

人間がする不合理な決断

ここで、人間がする典型的なミスを紹介します。

今、皆さんに1000ドルあげるとします。さらに、2つの選択を与えます。

選択1(ハイリスク):
コインの表が出たら、もう1000ドルもらえます。
しかし、コインの裏が出たら何ももらえません。

選択2(安全):
確実に500ドルもらえます。

ほとんどの人が500ドルもらうほうを選択します。確実に500ドル手に入るほうを選ぶのです。

これはきわめてふつうの選択ですね。ここでは人はリスクを取りません。

もう1つの問題を考えてください。今、皆さんに2000ドルあげるとします。さらに選択を与えます。

選択1(ハイリスク):
コインの表が出たら、1000ドル失います。
裏が出たら、何も失いません。

選択2(安全):
私に500ドル返します。

この実験をすると、みな、ハイリスクの選択をします。安全なほうを選ばないのです。2分の1の確率で2000ドルをキープするか、確実に1500ドルをキープするかの選択なのですが。

この実験から人の2つの傾向がわかります。
1.人は物事を絶対的なものとして比較するのが苦手である(選択はいつも相対的なものになる)。
2.人は損失を嫌う(loss aversion)

損するのがいやで、かえって損をすることがよくあります。

サルの経済的決断はどうか?

サルも人間と同じ傾向があるか調べてみました。あるセールスマンは、1トークンで、いつもぶどう2粒、もう1人はハイリスクのセールスマンで、何もない時もあるし、3粒のときもあります。

サルはどちらを選ぶでしょうか?

結果はサルも人間と同じ。毎回2粒くれる取引を選択しました。

損失に対して、サルがどう対応するのか調べるために別の実験をしました。

ぶどうを3粒持っているセールスマンが2人います。1人は、毎回3つあるぶどうから1つ取って、2つサルにくれます。これはリスクのない安全なタイプ。

もう1人は、3粒のときもあれば、たまに1粒のときもあります。ハイリスクです。

サルはどちらを選んだか?

サルは人間と同じように、ハイリスクの方を選ぶのです。人間と同じ不合理な判断です。サルも物事を相対的に判断していて、損失と利益を別々に扱うのです。

人間はミスをするようにできている

サルの実験からわかったことは、人間には先入観があり、どうしても同じミスをしてしまうということです。つまりこの傾向を直すのはとても大変なのです。3500万年前から続いていたのかもしれません。

他にも同じようなことがあります。

人間は進化する過程で、甘いものや脂肪分の多いものを好きになりました。おいしいと思っているので、デザートを見ると、それは人にとってプラスの物だと思ってしまうのです。

株価が急落したり、不動産の値段が下がったときも、同じ先入観を持ち、損をしたくないがために、損をしてしまうのです。

これは悪いニュースです。でもいいニュースもあります。はじめに言ったように人はとても賢い生き物です。飛行機やコンタクトレンズを作りました。限界を技術で、乗り越えてきたのです。

ですが、人にも限界があることを知らなければなりません。

カミュはこんなふうに言いました。 “Man is the only species who refuses to be what he really is.(人間は本来の姿であることを拒む唯一の種である)。”

限界を知らなければ、限界を越えることはできません。でも、限界を克服できないものとしてとらえるのではなく、リミットを知り、受け入れて、それを活かせる世界を作ればいいのです。

これが、人の可能性を最大限に活かす方法ではないでしょうか?
—-要約ここまで—-
☆損失回避についてはこちらに詳しく書いています⇒物を捨てられないのは恐怖のせい~損失回避と、授かり効果の心理をさぐる

☆食べものがあふれている現代、太りすぎるのに食べてしまう話はこちら⇒結果的に太っている。なぜダイエットは成功しないのか?(TED)

人間の限界を知る大切さ

この動画から私が受け取ったメッセージは、「できないものはできない」ということです。

人は、空を飛べないから飛行機を作って飛び、生まれつき近視でも、メガネやコンタクトレンズという道具を使って物を見ています。最近は臓器をなくしても、移植することができます。

確かに、人間はすごく賢い種です。

ですが、人間は万能ではありません。3500万年前からずっと、損をすることを嫌がって、かえって損をし続けているのです。

この傾向はちょっとやそっとでは変えられません。人は、ある局面では、不合理な決断をしてしまうようにできているのです。

そこでローリーさんの言うように、心理的な限界を知って、ミスをしても、ダメージの少ないシステムを自分でつくり上げるべきです。

たとえば、シンプルライフ追求や、断捨離で言えば、こんなシステムが考えられます。

人間のデフォルトの先入観:自分がすでに持っている物の価値を、持っていない物の価値より、高く感じる。

これに合わせて、次のようなルールを決めれば、物が増えません。

●いったん手にしてしまうと、捨てることがとても困難だから、最初から買わない、もらわない、家に入れない。

●捨てるとき「いつか使えるかも」「もったいない」と思う裏には、損をしたくない強い気持ちが動いているのだから、そういうときこそ捨てる。

こうすれば、たとえ、自動的に損を嫌ったとしても、持たない暮らしになっていきます。

ちなみに、サルは、価格が高いからといって、即それがいい物だと思わないそうです。つまり、人が、値段が物の価値を決めていると判断するようになったのは、わりと最近の傾向である、というわけです。

ということは、「高いワインだからおいしい」といった錯覚は、努力すれば克服することができるかもしれません。
~~~~~~
確かに、できないことを「できない」と受け入れてしまうと、人類の進歩はないですね。ですが、できないものを無理やりできるようにするために、道具に頼りすぎて、かえってひどい惨状になる、ということは、よくあります。

大きなスケールで言えば、原発事故。個人レベルで言えば、便利なキッチンツールばかり買いすぎてかえって暮らしが不便になり、ストレスをかかえるといったことです。

「人間は万能ではない」ことを受け入れ、謙虚になることが、より豊かな暮らしにつながるのではないでしょうか?

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