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不安や心配、その他のネガティブな感情にさいなまれることが多い人に参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、A New Plan for Anxious Feelings – Escape the Custard!(不安な気持ちに対する新しい計画、カスタードから脱出しろ!)。
講演者は、ニール・ヒューズ(Neil Hughes)さんです。
不安はカスタードみたいなもの
ヒューズさんは、自分の中にある不安は、どんどん固くなるカスタードみたいなものだと語ります。
カスタードは、卵、牛乳、砂糖に小麦粉やコーンスターチをまぜてクリーム状にした黄色い物体です。そのままデザートとして食べたり、ほかのお菓子に使ったりします。
不安な気持ちへの新しいプラン:TEDの説明
Comedian, author, and physicist Neil Hughes lived with anxiety for years before he had a strange realisation: anxiety is just like custard! This surprising pudding-based insight led to a new approach to his mental health.
コメディアン、作家、物理学者であるニール・ヒューズは、何年も不安の中で生きてきました。
心配ごとはカスタードみたいなものだと気づくまで。
カスタードだと気づいたことが、彼のメンタルヘルスに新しいアプローチをもたらしました。
動画は14分。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ヒューズさんは、ドライユーモアの持ち主です。
表情を変えずに、おもしろいことをいっぱい言っていますが、抄訳には全部は書きません。
いつも不安でいっぱいだった私
恐怖。恐怖はいいものではありません。でも、これで終わっちゃうとTEDトークとしてはまずいですね。
もう少し何か言わないと。
恐怖は、何か恐ろしいことをやっているときに感じるものです。飛行機から飛び降りるとか、牛から逃げるとか、洋服を買いにいくとか。
ときに恐怖が手に負えなくなり、異常なまでに何かを恐れてすごすことがあります。
私たちは、これを不安症(anxiety)と呼んでいます。
言葉には限界がありますね。仕事の面接前に感じる、ごくあたりまえの不安も、恐ろしくて家から出られない恐怖も、「不安」で表していますから。
不安といっても、いろいろなレベルがありますが、私は、いつも、極端なまでの不安をかかえていました。
子供ときは、なぜか住宅ローンの心配をしていました。大人になったら、心配することが、外界との関わり方になりました。
不安であることを誰にも言わなかった
私は、何をするにも心配していました。
一つの心配が終わっても、また別の心配、そしてまた別の心配。
終わりのないベルトコンベアのように、心配が積もり積もって、ひどい不安症になりました。
眠ることもリラックスすることも、人生を楽しむこともできませんでした。
ひどいときは、自殺するしかない、と思ったほどです。
以前は、自分の不安を人に話すことはありませんでした。でも、これは自分のためにはよくなかったと思います。
ほかの人のためにもならなかったでしょう。本当のことを隠していたのだから。
自分の不安な気持ちを正直に話していれば、やはり不安にさいなまれている人たちが、「自分だけじゃないんだ」と思ってくれます。
そこで、自分のかかえている不安をもっとオープンにするようにしました。
だから、いま、ここで話しているわけです。
心配はカスタードに似ている
どうやったら、そんなに心配しないで暮らせるのか?
この答えは、流体力学にあります。
難しい話は抜きにします。液体を2つに分けるだけです。
ニュートン流体と非ニュートン流体です。
この2つの違いは、外的な力を加えたときの反応です。
つまり、もしそれをたたいたらどうなるか?
ニュートン流体、たとえば水をたたいたら、飛び散ります。
非ニュートン流体、たとえば、カスタードは違う反応をします。
飛び散るのではなく、固まります。一時的に。時間がたてば、またやわらかくなりますが。
そのカスタードの質にもよりますが、プールをカスタードで埋めて、歩くことだってできなくはないのです。
問題は、カスタードの上を歩くことを考えれば考えるほど、とても疲れる、ということです。
いったん歩き始めたら止まりません。
足がカスタードの表面に当たるたびに、それは自分の下で固くなる。でも、止まって、その状況を楽しむことはできません。
止まると、カスタードの中に沈みます。
カスタードの上を歩き続ける自分
カスタードが不安に似ていると気づいてから数年後、私は、すごく不安な時期にいました。その時、自分がカスタードの上を歩いているところを思い浮かべたのです。
その場で、走って、走って、走って、疲れ切っていました。でも止まることはできない。
自分の人生の中に沈んで、おぼれて死んでしまう。こんなふうに思っていました。
いろいろな人にこの話をしたら、同じように、疲れ切っている人、止まって休むことができない人、囚われてどこにも行けない気分の人がたくさんいるとわかりました。
まるでみんな、カスタードの上を歩いているようなものです。
どうしたら止まることができるのか考えました。カスタードの上で止まるんじゃありません。そんなことすると沈みます。
そうではなく、もっとしっかりした大地の上で、です。
心配や不安でもがき苦しまずに、心安らかでいられる場所はどこにあるのか?
自分のカスタードの正体を知ること、そして、しっかりした大地を見つける方法を探すことが、私の再優先事項になりました。
カスタードのワナ
きょうお話しするのは、カスタードのワナ(custard traps)の扱い方です。
カスタードのワナとは、自分を不安にさせ、さらにその不安を大きくしてしまう、自分のためにならない、心の習慣(mental habit)です。
私はこれをワナだと考えています。
幸せな気分でいるのに、突然、パニックアタックに襲われるのは、カスタードのワナに落ちた状態です。
ときには、カスタードの巨大な海にいるような気持ちになります。何ヶ月もその上を歩き続けて、ようやく休める場所に行き着きます。
こういう感じ、自分にもあるけれど、自分のカスタードは、不安ではない。恥の気持ちや、うつうつとした感情、もっと違う感情だ、という人たちもいました。
それがどんなものであるにしろ、一時的なカスタードの落とし穴にしろ、巨大なカスタードの海にしろ、こういう考え方の習慣には、いくつか特徴があります。
特徴1:自分ではわからない
まず、それらに気づけません。私たちがやることは何でもふつうになってしまいます。
脳はどんなことでもノーマルなことにする、すばらしい機能を持っています。
ジョージ・ストラットン(George Stratton)という人がいました。
彼は、視界が逆さに見えるメガネをかけましたが、数日たったら、それが普通の向きに感じられるようになりました。
数日後、メガネをはずしたら、今度は、すべてが逆さまに見えたのです。
彼の脳は、メガネをかけたとき、新しい情報に適応したのです。
同様のことを、私たちはいつもしています。
家の中にある物をちょっと変えたり、色を塗ったり、動かしたりしても、数日後、それは当たり前になって、気になりません。
すべては、ふつうのことになるのです。
考え方の習慣についても同じことが言えます。
私が自分の不安について、長年、何もしなかったのは、心の中でそういうことを習慣的にしていると全く気づいていなかったからです。
解決策:自己観察をする
この問題の解決法は、自分を観察することです(self-observation)。
「自分を知らなければなりません」と何度も言われるたびに、うんざりしていましたが、残念ながらこれは本当なのです。
自分を知るのはそんなに簡単ではありません。
しかし、自分の心の中でどんなことが起きているのか知るのは、自分にしかできないことです。
例をあげましょう。
友達グループから離れたあと、ふとこんな考えが頭をよぎります。
「ニール、さよならの言い方がちょっと変だったんじゃない? きっと友達全員、きみのことを嫌ってるよ」
このとき、この思いに意識を向けないと、感情的な反応をしてしまいます。
「やっぱり変なこと言っちゃったな。これまでクールな奴と思ってくれていたのに、いまは、みんなそう思っていないのかも。
何もかもこれで終わりだ。自分は一人ぼっちで死ぬんだ…」
こんなふうに嫌な気分になってカスタードの上に身を置きます。なんでもないことを悩んでしまうのです。
もし、頭に思い浮かんだ考えに意識をむければ、その後の反応を選ぶことができます。
感情的な反応をすることもできるし、もっと理性的な反応をすることもできます。
カスタードのワナに気づくために、自分を観察することは欠かせません。
特徴2:不安はどんどん強化される
カスタードのワナの2つめの特徴は、不安が勝手に増大することです(self-reinforcing)。
いったんカスタードにはまると、なかなか抜け出せません。
不安を感じるだけで、人は疲れます。
エネルギーを奪われてしまうため、問題の根っこにあるものを対処するエネルギーが残らないのです。
不安は、自らを強化してしまいます。それはしばしば、サイクルになります。
不安になると、気分が悪くなり、こんどはその気分について不安になります。するとますます不安になる、という具合です。
こんなふうにして不安はより大きくなっていきます。
完璧主義という問題もあります。
私は、完璧主義的傾向があるので、何かミスをするたびに、自分を責めてしまいます。
すると今度は、自分を責めている行為に対して、自分を責めるのです。だって、完璧な人は、自分を責めたりしないでしょうから。
こんなふうにして不安のサイクルは続きます。
解決策:別のことをする
こうしたループから抜けるためにいいのは、何か違うことすることです。
私の直感的な反応は、このループの次のステップをしてしまうこと、つまり、不安になることです。そうしていては、ここから抜けられません。
だから、もし、「よし、どこかに座って、これから起こりそうな何か大変なことについて考えよう」と思ったら、あえて立ち上がり、デンマークの国歌を歌うのです。
デンマークの国歌を知らないので、実際はできないんですけど。でも、そうしようとすることで、ループから抜け出せます。
何か違うことをすれば、そのサイクルを壊すことができるのです。
特徴3:すっかり習慣になっている
カスタードのワナの3つ目の特徴は、それが習慣になっている、ということです。
習慣だから、つい、いつものように考えて不安になるのです。
脳はつねに、新しい脳回路を形成し、習慣を生み出しています。
だから、「あ、左足がちょっと痛いな」という認識から、「これは血の固まりのせいだ。死ぬかもしれない」という発想をすると、2つの考えをつなげる回路が脳内で強化されます。
解決策:時間をかけて習慣を変える
習慣なので、時間をかけて解決しなければなりません。
不安になる習慣を何か別の習慣に置き換える必要があります。
カスタードにつま先をつけたり、カスタードのワナにはまる、その時、どんなことが起きるのか、調べてください。
私の場合、物理的な刺激を感じます。胸の中がちくっとしたり、脳内で何かがシュッとしたり。
状況が引き金になることもあります。私は健康上のできごとのせいで、不安のループにはまってしまうことがあります。
人によっては、それは社会的な状況かもしれません。
きっかけとなるものはほかにもいくらでもあります。
もし、カスタードのワナにはまるきっかけがわかったり、不安のループにはまりそうなとき、どんな気持ちになるのかわかれば、そのタイミングで、もっと前向きになるように変えられます。
自分がカスタードのワナに落ちたと感じたら、それは何か前向きなアクションを取れ、というサインです。
その場ですぐにできる簡単なことをします。
水を飲んだり、友人に電話したり、10秒だけ瞑想したり、スポーツで勝ったところを想像したり。
以前の自分なら、ネガティブなことをしそうなタイミングで、ポジティブなことをするようにすれば、時間がたつにつれて、習慣が置き換わります。
それはあたかも、カスタードの上に土台をおいて、しっかりした大地に変えるようなものです。
自分の心を管理することを意識する
そんなに簡単にはいかないと思いますか?
そう疑うのは、無理もありません。不安になることは根深い問題です。
きょうは、心を管理する方法の一部を紹介しているだけですが、これ以外にも、対処すべきことはたくさんあります。
化学的な要素、社会的要素、状況に関することなど。
けれども、自分の心を管理するのに集中するのは、とてもいいことです。自分の考えていることなら、より自分でコントロールできますから。
もちろん難しいことではあります。
特に最初は。しばらくは、状況がよけい悪くなるものです。
なぜなら、これまでは、ただカスタードに身をまかせていただけだったのに、いまは、しっかりした大地を求めて、よけいなエネルギーを使うことになるからです。
難しいけれど、やる価値はあります。
自分のことをより理解し、習慣を置き換え、不安のループをこわしていこうとするうちに、結果がついてきます。
そのうち、しっかりした大地に足をつけている時間が増え、カスタードの上でもがく時間が減ります。
心おだやかに時間を過ごせるようになります。
自分でやるしかないが、その旅はほかの人とできる
みなさんの不安が少しでもなくなる方法を、それぞれに教えてあげらたいとは思いますが、不安は人それぞれです。
それぞれが、何年もかけて、考え方のクセを身につけてきました。皆が自分だけのカスタードのワナを持っています。
そこから抜け出せるかどうかは、本人の努力しだいです。
ただ、みんなが、自分のつらい胸の内をもっとオープンに正直に話したらいいな、と考えています。
そうすれば、カスタードから大地に向かう孤独な旅が、みんなで一緒に進む旅になりますから。
単語の意味など
carnage 大虐殺、死体の山
●流体力学について
物理の知識はろくにありませんが、ちょっと調べてみました。
ニュートン流体
ずり速度(ひずみを与える速度、押し流す力に対抗する粘性)によって粘土が変わらない液体。例:水、シリコンオイル
非ニュートン流体
ずり速度によって粘土が異なる液体。例:マヨネーズ、生クリーム、マーガリン、ドロッとしてるもの。
厳密に言うと、間違っている可能性もありますが、物理の話をしているわけではないので、この程度の理解でいいと思います。
●George Stratton(ジョージ・ストラットン、1865-1957)
19世紀の心理学者。
「正立した外界を知覚するためには、網膜像の逆転は必要か?」という疑問を検証するために、ものが逆さに見えるメガネを自分でかけて実験しました(逆さメガネの実験)。
めがねをつけ始めたころは、混乱していたのが、次第にその混乱がおさまり順応していったそうです。
●ニール・ヒューズさんの著書
翻訳はありませんが、この本、今のところ、Kindle Unlimitedを利用している人には無料でダウンロードできます。
心配性の人向けのほかのTED
心配性は自分で克服できる。恐怖と向き合うことを学ぶ(TED)
不安な心(ヴァルネラビリティ)に秘められたパワー:ブレネー・ブラウン(TED)
「恐怖」が教えてくれること:カレン・トンプソン・ウォーカー(TED)
自分の気持ちにラベルをつける
カスタードプディングは日本語にするとカスタードプリン、いわゆるプリンです。
日本のプリンは、つるっとしていてどろっとしているカスタードとは違います。
だから、不安な気持ちでいることは、カスタードの上を歩いているようなもの、と言われても、ピンと来ない人も多いかもしれません。
別にそれはカスタードである必要はなく、自分の不安を、うどん粉の固まりやドロの固まり、暗い森みたいに、何か、ビジュアルを想像できるものとしてとらえると、客観視できるのでいいと思います。
ときどき起こる、自殺願望に「ボブ」という名前をつけた人もいました⇒本当はすごいのに、なぜ私たちは「だめだ」と思ってしまうのか?(TED)
客観視できれば、「こんな考え方をしているけれど、それは私のすべてではないんだ。私は、この考えにすっぽりはまる必要はない。もっとべつの考え方だってできる」と考えることができます。
ネガティブな気持ちを引きずるときは、その思考に飲み込まれるのではなく、それはいったいどんな気持ちなのか、一つひとつの感情に、心の中でビジュアルな目印(アイコンとか)や名前をつけ、ラベリングするといいかもしれません。
すると、「あ、またこんな考え方しているな」と自分で自分の思考パターンに気づきます。
感情にふりまわされがちな人は試してください。
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最近、いろいろと心配している方からの相談メールが多いので、今回は、心配とうまく付き合う方法を教えてくれる動画を選びました。
結局は、時間をかけて、自分で自分の思考のクセを修正していくしかありません。
しつこいですけど、モーニングページなどを利用して、気持ちを書き表していくと、うまく整理できるのでおすすめです。
心を整理できると、部屋もきれいになっていきます。