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セールやポイントの誘惑に負けて、気づけば予算オーバー。そんな経験はありませんか?
「買いすぎをなくしたい」と思うとき、意志の力だけに頼るのは禁物。
一番効果的なのは、買いすぎなくなる仕組みを作ることです。
ポイントは、「痛み」。買い物が少しでも面倒だったり、負担になったりすれば、私たちは、ごく自然に消費に慎重になります。
そんな「支払いの痛み」を自分で作って、お金を使いすぎないようにする5つの方法を紹介します。
なぜ痛みを作るのが効果的か?
行動経済学には、「支払いの痛み(payment pain)」という概念があります。これは、実際にお金を払うときに感じる心理的な不快感のことで、この痛みが強ければ強いほど、人は出費を控えます。
たとえば、8万円を振り込むとき、銀行に出向いて窓口で財布からお札を取り出し、1枚ずつ数えて行員に渡せば、視覚・触覚・使った時間のすべてで「支払った」という実感があります。これは、痛みの強い支払いです。
一方で、同じ8万円をスマホの銀行アプリで指先ひとつで送金するとどうでしょう? 紙幣を見ることも、触れることもなく、数秒で終わってしまいます。
このようなデジタル決済やクレジットカード払いでは、支払いのプロセスが簡単な分、痛みを感じにくく、結果としてお金を使いすぎてしまうのです。
行動経済学者のリチャード・セイラーは、人は合理的に支出をコントロールせず、感じ方によって行動が左右されると指摘しています。
つまり、節約したいなら、あえてちょっと面倒で、ちょっとつらい方法を自分で用意しておけばいいのです。
以下に買い物を痛くする方法を5つ紹介します。
1. 記録をつける
買い物をしたら記録をつけましょう。
買ったものや金額を記録することは、支払いの痛みを追体験する行為です。
出費をノートに書き出す、家計簿アプリに入力する、レシートをじっくり読む。好みの方法で、お金を使った事実を再確認してください。
ポイントは、記録しながら、どんな買い物をしたかしっかり振り返ることです。
私がやってみた方法であまり効果がなかったのは、ただ、機械的にレシートを家計簿に貼ることでした。
中もろくに見ず貼っていたので、何も感じませんでした。あとに残ったのは、巨大な卵焼きのように分厚くなった家計簿でした。
記録を見返す習慣がつけば「また似たようなものを買っている」「これ、まだ使ってないな」と、いろいろな気づきが得られ、今後の買い方が変わります。
あまり負担にならない形で、記録してみてください。
2.現金決済をする
可能な限り、現金で支払うようにします。
今はキャッシュレスが主流で、スマホひとつでなんでも買える便利な時代です。
実際にお札を出して支払うと、財布からお金が減っていくので、買いすぎの抑止になります。
これまでキャッシュレスだった人が、すべての支払いを現金に戻す必要はありません。
たとえば、朝のコーヒー(スターバックスとか)、日々のランチ、コンビニでの買い物、文房具。こうしたものだけ現金で支払うことにし、限定的に取り入れるだけでも効果があります。
現金決済は、時代に逆行しているように見えますが、無駄遣い防止には、とても効果的な方法です。
3. 都度払いにする(サブスクはあえて月払い)
何かを一括で買うのではなく、必要なときに都度払いするようにします。
人は損失を過度に嫌う傾向があります。都度払いでは支払いのたびに「お金が減る」という感覚を感じるので、一括で払うより、お金を払うことに慎重になります。
私自身は、使うことがわかっているサービスならば、年払いするほうが好きですが、動画配信のサブスクでこれをすると、お金を払ったわりには、そのサービスを使わないということがよく起きました。
今は、節約のため、すべて月払いにしていますが、毎月の支払いのたびに「まだ使ってる?」「今月は見たいものがある?」と自問しています。
ジムも、月額会員制ではなく、1回ごとに料金を払う施設にしたほうが、支払う痛みが増えます。
いつも食べているおやつも、大袋で買うのではなく、食べたいときにひとつずつ買ったほうがいいかもしれません。
めんどうですし、割高になるときもあるかもしれませんが、長期的に見ると、まとめ買いするより消費を抑えられると思います。
物を捨てられないのは恐怖のせい~損失回避と、授かり効果の心理をさぐる
4. 封筒やポーチで予算を管理する
月々使うお金はざっくり予算を決めて、封筒やポーチ、クリアファイルなど別に入れておきましょう。
この方法は現金でしか使えないので、現金を使うことが条件ですが。
封筒などで管理すると、使った分は確実に減るので、支払いの痛みを増やせます。また、あといくら使えるかもよくわかります。
さらに、あるカテゴリの現金が足りないとき、「別の封筒から回すか」「今回はあきらめるか」など、選択を迫られる場面が増えます。ここで、さらにお金を使う痛みが加わるので、支出にブレーキがかかります。
この方法のいいところは、誰でもすぐに始められること。特別な家計簿アプリや知識は不要。「外食用」「おやつ費用」など、カテゴリごとに分けてお金を入れるだけです。特に無駄遣いしてしまうことが多いものについて予算を作って、それだけ封筒で管理するのもいいかもしれません。
私も、予算管理を始めたばかりの頃、生活費を週20ドルにして、1ヶ月分80ドル(20ドル札を4枚)を封筒に入れていたことがあります。
使いすぎればすぐにわかったので、無駄遣い防止に役立ちました。今はとてもこんな金額では生活できませんが。
5. 買い物をわざと不便にする
買い物のプロセスをわざとめんどくさくしましょう。
便利すぎる環境は、お金を使う感覚を麻痺させます。あえて買いにくい仕組みをつくると、その手間が痛みを感じさせ、浪費を抑えます。
たとえば、
・通販サイトのアプリを削除して、毎回ログインが必要なブラウザでアクセスする
・クレジットカード情報を登録せず、都度入力するようにする
・よく買う店舗までの道のりを少し面倒にする(わざと遠回りする、車で行かず、バスや徒歩で行くなど)
・クレジットカードを財布に入れない/すぐに使えない場所に保管する
・ECサイトのブックマークを削除する
こうした工夫は、心理的にも物理的にもストッパーになります。人間は、面倒なことを嫌うので、たった数秒の入力や、数メートル歩くことがおっくうで、「今はやめておこうかな」と買い物を思いとどまります。
あえて不便にすることで、お金が出ていくのを防げます。
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おわりに:ちょっとした「めんどくささ」が節約のカギ
私も以前はどんぶり勘定で、欲しいものをすぐにカートに入れたり、使ってもいないサブスクに毎月課金していたりして、お金の使い方にかなり無頓着でした。
でも、行動経済学を知ってからは、痛みを味方にするという考え方を取り入れ、日々、お金の使い方を見直しています。
買い物をわざと不便にする、支払いに手間がかかるようにする。このような工夫をすると、支払うときに「ちょっとイヤな感じ」があるので、「これは本当に必要なの?」「今、買わなきゃだめなの?」と立ち止まれるようになります。
買いすぎを防ぐには、気合いや根性ではなく、日々の仕組みの見直しが効果的です。
便利さを手放すことには少し勇気がいりますが、いったん節約体質になれば、こんな工夫をしなくても、買わないのが普通になります。