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そろそろバレンタインデーの季節ですね。今回はバレンタインデーがいつから始まったのか、なぜ日本でチョコレートが街を飛び交うのか、その理由をお伝えします。
カナダでは(たぶんアメリカも)、クリスマスが終わると、いきなりバレインデーコーナーがお店の一等地にだーっとできます。
買い物にいけば嫌でも、「もうすぐバレンタインデーなんだ」と思い出すことになっています。
ご存知のようにバレンタインデーは愛の日。愛の告白をしたり、すでにカップルになっている人たちが、愛を確かめ合ったりする日です。
プレゼントやカードがものすごくよく売れるので、店や企業にとっては、利潤を最大限に伸ばせる日でもあります。特にアメリカではクリスマスに続いてグリーティングカードがよく売れる日です。
バレンタインデーの起源はかなり古く、あまりはっきりとはわかっていません。
なぜバレンタインデーは2月14日なのか?
昔、ローマ帝国では2月14日はユノという女神さまの日でした。ユノというのは英語のJuno(ジュノー)で、ローマ神話では1番偉い神様であるユピテルのお后さまです。
ユノは女性の結婚生活を守る女神さまです。
ユノの日の翌日2月15日から、豊作をお祝いする「ルペルカリアの祭り」というのが行われていました。前日の2月14日には、くじ引きで若い男女のペアを作り、そのペアは祭りの間中、一緒に過ごすことになっていたそうです。
5世紀になって、ローマ教皇、ゲラシウス1世が、殉教した修道士、ヴァレンティヌス(後述)の記念日として、2月14日を「バレンタインデー」にしました。もともとあった土着の祭りとキリスト教の記念日を合体させたのです。
教会としては土着の祭りは禁止したいけれど、完全に禁止すると反発されるので、祭りは温存し、皆が集まってお祝いするその理由をキリスト教がらみに変えました。
そうやって、異教徒(キリスト教側から見た)をキリスト教の信者にしようとしたのです。これはキリスト教がしばしば使っていた作戦です。
聖バレンタインって誰?
バレンタインデーは英語の St. Valentine’s day から来ています。St. Valentine は 聖バレンタイン。「バレンタインという名前の聖人の日」という意味です。
カソリック教会の記録によると、バレンタイン(ラテン語ではヴァレンチヌス)という名の修道士は当時、少なくとも3人いて、皆、ローマの皇帝に処刑されています。キリスト教側から見ると殉教です。3人のうちの誰かが今のバレンタインデーのバレンタインです。
なぜバレンタインは死刑になったのか?
テルニという街の主教聖ヴァレンチヌスが、バレンタインである、というのが通説です。この人は、270年頃死刑になっています。
ローマ帝国の皇帝、クラウディウス帝が、ローマ軍の若い兵士の結婚を禁止していたのに、ヴァレンチヌスがこっそりと結婚式をしていたからです。
皇帝は、兵士が家庭を持つと、戦場で家族のことを思い浮かべ、思い切って戦えない、兵士は独身であるべきだ、と考えました。
これに対して、ヴァレンチヌスは、「いやいや、愛し合っている2人は結婚するべきだ」と、神の前で結婚させていたのです。これが発覚して、ヴァレンチヌスは殺されました。
後になって、カソリック教会が、この聖人を記念して、ルペルカリアの祭りの前日をバレンタインデーにしたのは先に書いたとおりです。
これには異説もあります。1つは、ヴァレンチヌスは、ローマの牢獄で暴力を受けていたキリスト教徒の囚人が逃げるのを助けようとしたから殺されたという説。
もう1つは、ヴァレンチヌス自身が牢獄に入っていて、看守の娘に恋をして、死刑になる前に、「愛をこめて、ヴァレンチヌスより」と書いた手紙を娘に残した、という説です。
このように由来が定かでなく、ヴァレンチヌスという聖人が本当にいたかどうかも怪しいので、後になってカソリック教会はバレンタインデーを正式な記念日からはずしています。
なぜバレンタインデーは愛の日なのか?
現在、バレンタインデーは愛とロマンスの日ですが、教会がバレンタインデーを作ったときは、単にヴァレンチヌスの日、というだけでした。ヴァレンチヌスは愛情深い人だ、ということは強調したと思いますが。
13世紀になって、この日がロマンスの日となりました。中世ヨーロッパでは、2月14日は鳥が交尾を始める日と思われていたそうです。
初めてのバレンタインデーの愛の手紙は15世紀に書かれ現存しています。1415年、アジャンクールの戦いで捕虜になりロンドン塔にとらわれていたオルレアンの公爵が妻に書いたもので、今は大英図書館にあります。
その後17世紀になってイギリスでバレンタインデーに愛の手紙やカードを交換する伝統が根付きました。
この習慣がアメリカにも伝わり、19世紀半ばに、バレンタインカードが初めて大量生産されました。その後、カードや贈り物の交換がどんどん派手になり、今に至ります
外国では男性が女性にプレゼントをする
バレンタインデーは信仰には全然関係ないものの、キリスト教由来なので、キリスト教圏の国々では広くカードやプレゼントの交換が行われています。
しかし、贈り物はどちらかというと男性から女性にします。もちろん好きな女性にしか贈りません。
典型的なプレゼントはチョコレートやハートの形をしたキャンディなど甘いお菓子。それからバラの花束。そしてちょっと値段があがりますがジュエリーです。すべて女性が好きなものです。
特に女性はチョコレートが好きですよね?
チョコレートの話⇒チョコレートは健康にいいのか悪いのか?その歴史から考察してみた
プレゼントにはみなメッセージカードをつけます。カップルで食事に行く人も多いです。この日婚約する人もわりといます。
北米の小学校では、子供たちが「バレンタイン」と呼ばれる小さなカードを交換します。人気のキャラクターがついたカードがたくさん市販されています。これにチョコレートやハート型のキャンディーなどちょっとしたお菓子をつける人もいます。
初めて日本にバレンタインデーを伝えたのはモロゾフ
周知のように、日本ではバレンタインデーをやりたい人は、女性が一方的に男性にチョコレートを贈ります。それに対して男性がお返しをするホワイトデーというのもありますね。
どうしてこうなってしまったのか、はっきりとは突き止められませんでしたが、チョコレート会社やデパートなどの小売店がバレンタインデーをうまく販促に利用した、と考えて差し支えないと思います。
クリスマスプレゼントも、販売する側が、イベントを利用して、市場を拡大しています。
日本にバレンタインデーを伝えたのはモロゾフと言われています。
モロゾフは昭和7年(1932年)にバレンタインデーの贈り物としてチョコレートを販売したからです。モロゾフの創業者はアメリカに友だちがいて、その人からこの風習のことを知ったのです。
「モロゾフはこの風習を広めようと努力した」とモロゾフのホームページに書いてありますが、そうとも言えないでしょう。
なぜなら、モロゾフは1936年に英字新聞に広告を掲載しているからです。これが日本初のバレンタインチョコレートの広告です。しかし、英字新聞なので対象は日本人ではありません。
1936年は昭和11年、2・26事件が起こった年です。第2次世界対戦が始まったのは昭和14年なので、バレンタインにチョコレートをあげるとか、そんなことしている場合じゃなかったでしょう。
なぜ日本では女性が男性にチョコレートを贈るのか?
戦後しばらくして、1958年(昭和33年)、今度はメリーチョコレートがバレンタインデー用に2月12日~14日、都内のデパートでチョコレートを販売しました。メリーの人は、パリの知人からこの風習を知ったそうです。
しかしほとんど売れず、50円の板チョコが3枚と20円のメッセージカードが1枚売れただけだそうです(メリーのホームページより)。
誰もバレンタインデーなんて知らなかったのですね。
メリーは、翌年、今度はハート型のチョコレートを販売。チョコレートの上に”TO”と”FROM”と刻印してあり、自分と相手の名前を入れることができるサインチョコレートという商品です。
当時としてはユニークなアイデアだったので少し注目されました。
2月14日を「女性が男性に年に1度だけ愛の告白をできる日」としたのは、メリーのアイデアなのだとか。
もともとのバレンタインデーは男性が女性に、女性の好きなチョコレートをプレゼントしているのを、日本では、チョコレートはそのままに、贈る方向を変えたのですね。
当時の日本男性は女性に花やチョコレートを贈る感じではなかったと思うので、「女性から贈るもの」にしないと売れないと思ったのかもしれません。実際、このアイデアが当たったから、バレンタインデーはこんなに一般的になったのでしょう。
それでも1960年代はまだまだバレンタインデーは知名度がありませんでした。私は1959年生まれですが、小学生のときは、バレンタインのチョコレートなんて見たことないです。
今のように、バレンタインデーにチョコレートがたくさん贈られるようになったのはオイルショック(1973年)以後だそうです。
オイルショックで不況になったので、小売業界が販促に力を入れたこと、そして、この時期、高度成長時代が終わり、日本は安定した消費社会になったことから販売が拡大しました。
確かに私が高校生のころは、もうバレンタインデーは広まっていました。その後、義理チョコ、ホワイトデー、友チョコが生まれました。
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私は1996年にカナダに来たので、最近の日本のバレンタインデーの様子はよくわかりません。友だちによれば、「ずっと不況だから義理チョコのようなものはもうあまりない」とのことですが。
現在、バレンタインデーを環境型セクハラとみる専門家もいます。職場で女子だけが一方的に男子社員にチョコレートをあげなければならない、という気持ちにさせられてしまうイベントですからね。
男性だって、たくさんもらえる人はホワイトデーのお返しが大変だろうし、もらえなければ、もらえないでがっかりするだろうし。
恋人や夫婦で楽しく過ごすのはかまいませんが、無理にチョコレートを買うこともないでしょう。
私自身、子供が小さいときはチョコレートケーキやブラウニー、クッキーなどをハート型に作ったこともありますが、今は特に何もしません。