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新しい年になりました。去年とは違う何かをしたい、新しい仕事につきたい、人生に変化を起こしたい、そんな人の参考になるTEDの動画を紹介します。
Lisa Bodell(リサ・ボデル)さんの How simplification is the key to change(シンプルにすることがいかに変化の鍵なのか)です。
違いを作りだすには?
リサさんは futurethinkという会社を持ち、物ごとをシンプルにすれば、企業に変化やイノベーションをもたらし、よりパワフルなビジネスが可能になる、と主張しています。
イノベーション(innovation)は「革新」と訳されますが、「新しい何か」です。
今や、人々は必要な物はすべて持っているので、ふつうの物やサービスを提供しようとしても売れません。
誰も思いつかなかったような、でも聞いてみると、「ああ、その手があったか」と思うような、ありそうでなかった商品やサービスを生み出さないと企業は生き残れない時代なのです。
このプレゼンのテーマは「どうやったらイノベーションを起こせるのか」です。聴衆は会社員や企業のリーダーのようです。
ですが、リサさんの考え方は、会社のみならず日常生活にも応用できます。英語に抵抗のない方はぜひごらんください。
動画は14分19秒。日本語字幕はないので動画のあとに抄訳を書きます。英語としては難しい単語も出てこないし、わかりやすいほうです。
変わることは難しい
今日の私のゴールはシンプルです。
皆さんの職場にもっと変化や革新的なことが起きるように余白を作ることです。
変化やイノベーションは皆さんにはおなじみの話題でしょう。いつも話していますよね。
私がお話したいのは、では、なぜ実際に変化を起こさないのか、ということです。
実は変わることは、多くの人にとってとても難しいことなのです。
みんなが会社でやっていることは?
私は世界中を回って、変化を起こすことについて講演しています。
なぜ変わることがこんなに難しいのか知りたいと思いました。そこで、人々にとてもシンプルな質問をしています。
「毎日何をすることに時間を使っていますか?」と。
驚くのは、人々の答えがあまりにも似通っていることです。
どの国に行っても、どんな文化のどんな企業の人に聞いても、どんな役職の人にたずねても同じ答えが返ってくるのです。
毎日、何をしていますか?
みんな、こう答えます。
「会議とメールチェックです」。
みんな何か意味のあることをやりたいと思って朝起きています。
朝、「ああ、きょうの会議が待ち遠しい」なんていう人を知りません。「メールチェックが楽しみだ」なんていう人も。
私たちはつまらない仕事ではなく、何か意味のある仕事をしたいのです。変化をおこし、問題を解決し、前に進みたいと思っています。
メールチェックと会議に時間を使いながら、どうやって前に進むことができるのでしょうか?
日常のタスクに忙殺されていては変化は起きない
企業のほとんどは、変化を起こそうとして間違ったことをしています。
会議、報告、プロジェクトチーム…。こうしたことは皆大切です。しかし、こんなことばかりしていても、変化はうまれないのです。
こうしたタスクでどんどん忙しくなり、それが当たり前のことになると、変化が起きる余地など生まれません。
ではこうした状況をどうやって変えたらいいのでしょうか?
変化を起こすために、新しいアプローチを取るべきだと思います。もっとたくさんやろうとするのではなく。
みんな、「もっとがんばろう」という反応をしてしまいますが、これをやめるべきです。
一番最初に私たちがやるべきことをは、捨てること、減らすことです。ありすぎるものを減らしてスペースを作り、変化を起こすのです。
マインドセットを変える
まず、マインドセット(考え方)を変える必要があります。
職場において私たちが大事だと思っていることに問題があります。
人を管理せず導け
最初の問題はリーダーをしっかり育てていないことです。
みんなすごく優秀ですが、私が何か新しいアイデアを提示すると、こんな問題やあんな障害がたくさんあるからそんなことはできないと、長々と雄弁に話します。
疑問を持つのはよいことですが、それだけに終始するべきではありません。
大事なのは業務のプロセス
2番めの問題は、仕事のプロセスより文化を重要視していることです。
皆、企業風土についてよく話していますが、ポイントがずれています。
壁の色やホワイトボードがどうとか、フーズボールテーブルのような器具やビーンズチェアー、素晴らしいミーティングルームについて話します。
そんなことはどうでもいいのです。
会社の内装より、どんなふうに仕事をしているかが問題です。その会社独自の構造です。私たちは人の行動に関する話をしたがりません。
ですが革新をもたらすにはここを見なければなりません。
もっと考えろ
3番目の問題は、思考よりも行動が大事だと思っているところです。ほとんどの会社で、思考することは、かなり勇気のいることです。
誰かのオフィスに行ったとします。相手はただ座って窓の外を見ながら考えごとをしています。
「何しているの?」と聞いたら「ああ、ただ考えごとをしてるだけ」と相手が答えたら、みんな何と思うでしょう。
「仕事しろよ」
まっさきにこう反応します。「私だってあなたみたいにのんびりしたい」と。
会社で考えごとをするのは難しいのです。
この考えをいろいろな人に話しています。カクテルパーティで脳神経学者にも話しました。
「考えるって思い切った行動ですよね?」
「リサ、私もそう思います。脳は人の持つもっともすばらしい臓器です。起きてからすぐに動きだします。ところがオフィスに入ったとたんに止まってしまうのです」。
会社で思考することは難しいのです。
では、どうやったら変化を起こすことができるのでしょうか。3つの簡単な方法をお伝えします。
1.挑戦的なキラークエスチョンをする
2.ばかげたルールを廃止する
3.習慣をシンプルにする
順番に説明しますね。
キラークエスチョンをしろ
リーダーになる人は、答えを探すことに懸命ですが、よりよい質問をするほうが大切です。
この先、答えを見つけることより適切な質問をするほうがずっと価値のあることになります。
AIや機械を使えば答えは得られます。Googleが答えてくれます。ただし、正しい質問をしなければなりません。
次のミーティングでは、人が考えずにはいられない質問をしてください。
・今、自社が扱っている商品やサービスを無料で提供するとしたら、ほかに何を売れば利益を得ることができるか?
・顧客や従業員、友だちに聞きたくてたまらないのに、恐ろしすぎたり、恥ずかしすぎて聞けない質問は何か?
・自分の会社の暴露本にどんな秘密を書くか?
みんなの気持ちをかきみだすような、答えにくい質問を会議でしてみてください。
もし、効果的な質問ができれば、みんな現状維持から抜け出します。
意味のないルールは廃止する
何が変化を起こすのを邪魔しているのか聞いたとき、ドイツの原発工場のエンジニアが教えてくれた話をします。
ある科学者がサルを檻に10匹入れ、バナナを檻の一番上に置きました。
サルはみんなやってきて、一番最初にバナナを取ったサルは誇らしそうにバナナを食べました。その後、科学者はほかのサルに水をかけました。サルはすごく怒りました。
翌日も同じことをしました。
バナナを置き、一番最初に取りに来たサルがそれを食べ、ほかのサルは水をかけられて怒ります。
1週間後には、バナナを取りに行こうとするサルは、ほかのサルに邪魔されるようになりました。
次に科学者は毎週、サルを1匹ずつ入れ替えることにし、これを10週間続けました。
新しいサルはバナナを取りに行こうとするたびに古いサルに邪魔されます。
10週間後には、檻の中のサルはみんな新しいサルに入れ替わりましたが、バナナを取りに行くサルはいません。その理由を知っているサルは1匹もいないのです。
同じことが人間の会社でも起きています。
なぜ物ごとをそのようにやるのか、疑問に感じる人は誰もいません。
最初は何か理由があったのかもしれません。しかし、今はどうでしょうか?
ばかげたルールは廃止しなければなりません。
今から15分あげるから、イノベーションを起こすために、やりたいと思っているのに、それができないルールを2つ、理由とともに考えてください、と聞くことがあります。
ルールだと思っていることは、実は自分が思い込んでいるだけなのです。
習慣をシンプルにする
私たちは、シンプル化を1回だけのことだと考えています。12月は売れ行きが悪いから、こんなふうにしよう、とか。
実は物ごとをシンプルにすることは、だれでもできることなのに、このスキルを使う人はいません。
みんな、物ごとを複雑にすることに熱心です。
企業のリーダーは、仕事上の新しい原則を作るために、物ごとのシンプル化を強く意識するべきです。
目の前に仕事がやってきたとき、自分自身や同僚、部下にこう聞いてください。
「これは必要なことなのか?」
「最小限の力でゴールを達成しているだろうか?」
「人が理解できる明確な言葉を使っているだろうか?」
「本当に意味のあることをやっているだろうか?」
「任せられる仕事を人に任せているだろうか?」
シンプルにすることで、イノベーションを起こすスペースができます。
変化を起こすのは自分の選択
何かを変えることは、自分の選択です。別にやらなくてもいいのです。
ですが、それは正しいことであり、ごく簡単な方法で実現します。
・キラークエスチョンをする
・意味のないルールをなくす
・物ごとをシンプルにする
そうすれば、人々はありふれたタスクから逃れ、もっと大事な仕事をできるようになります。
それこそがイノベーションを起こす方法なのです。
補足
foosball table フーズボールテーブル
テーブル上でサッカー(フットボール)をやる器具。テーブルフットボールとも呼ばれます。
IT系の新しい会社などでは、オフィスにフーズボールテーブルとかビリヤードを置いて、従業員に革新的なアイデアを出してもらおうとしていると思われます。
こちらも仕事に関するTEDのプレゼンです:
⇒なぜ職場で仕事ができないのか?(TED)邪魔な物を排除するとうまくいく
⇒ウォーキング・ミーティングのススメ。健康にいいし仕事もはかどる(TED)
◆汚部屋からきれい部屋に変化を起こすには?
リサさんが提唱する3つの方法を汚部屋改善に使うにはどうしたらいいのか考えてみました。
なぜ片付けられないのか?と自分に問いてみる
まずキラークエスチョンを使います。
キラークエスチョンとは、挑発的な質問です。ただ挑発的なだけでなく、相手に本質的なことを考えさせるパワーを持っています。
ふだん相手が考えてもみなかったことや、考えたくないので考えないようにしていたことを、ずばっとえぐるような質問とも言えます。
これまで当たり前だと思っていたことが、実は全然そうではない、と本人が気づき、新しい何かに向かって行動を起こせるような質問でもあります。
しかし、こんな質問がさっと思いつくぐらいなら、部屋は片付いているでしょう。
そこで、まずは、自分に質問をするクセをつけてはどうでしょうか?
「ああ、またきょうも部屋がぐしゃぐしゃだ」「また片付けられなかったよ」と思ったら、すかさず、「なぜなんだ?」と自分に聞いてみるのです。
答えが思いつかなかったら、その日自分がいったい何に時間を使っていたのか自分に正直になって考えてみてください。
会社では会議とeメール、自宅ではテレビとSNS、その他やっていたことを書き出してみて、「片付け」がどこにも書いていないのなら、片付くはずはありません。
これまでやっていた行動を1つだけでいいので片付けと交換してください。
思い込みを捨てる
動画で言っていたルールは、どこの会社でもあるでしょう。
多くの会社員は、上司や先輩に言われたとおりにしなければならないと思っています。
私が、一番最初に勤めた会社で、経理の処理について総務の人(同期でした)に質問したことがあります。
その質問がなんだったのか、どんな状況だったのか、もはや思い出せませんが、「どうしてこんなことするの。こうしたほうがいいんじゃないですか?」というたぐいの質問です。
そのとき総務の人は、「でも私はそういうふうに教えてもらってないから」と答えました。
この回答がすごく衝撃的だったので37年たった今も覚えています。自分で考えてはいけないのでしょうか?
こういう発想をしていたら、変化もイノベーションも起きないのです。
会社にある「当たり前」を一つひとつこわしていくのは相当手強いと思います。しかし、プライベートならできます。
日常生活で自分のやっている当たり前なことを疑うクセをつけてみてはどうでしょうか?
洋服を持ちすぎている人は、「毎日洋服のコーディネートを変えるのは当たり前」というルールに縛られているのかもしれません。
化粧品を持ちすぎている人は、「化粧するのは当たり前」という思い込みのせいでよけいな物が増えているだけかもしれないのです。
何もかもシンプルにする
なかなか汚部屋を解消できない人は、そもそも毎日忙しすぎて、片付けに手が回らないのかもしれませんね。
実際、去年、汚部屋解消の相談をしてきた人は、シングルマザーが多かったです。
シングルペアレントというのは、何もかも自分でやらなければなりません。
特に女性の場合は、生活に余裕のない人が多いです。男性より賃金が安いので、仕事をたくさんやるしかなく、時間も体力も片付けに回せないようです。
自分でも意識しないうちにがんばってしまうのがシングルマザーです。
1人の人間にやれることには物理的な限界があるので、やらなくてもいいことをやってはいないか、点検してみるといいと思います。
前回の記事にも書きましたが、効率より有効性を追求してください。
この記事です⇒シンプルライフの始め方。物を捨てるだけが能じゃない。 「2.効率を求めない、有効性を求める」の箇所です。
「もっと、もっとがんばろう」と思うのではなく、「できるだけやりすぎないようにしよう」と意識するのです。
どうでもいいことをたくさんやるより、大事なことを1つだけやったほうがいいのです。
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私も今年は「やることを減らす」「欲張らない」を目標にしています。
やってみると、これはなかなか勇気のいることです。
人は「もっともっとがんばってたくさんやろう」と突っ走ったほうが心理的には楽かもしれません。何も考えなくていいですから。
ただそれだとやはり体力的に疲れて、ある日ぼきっと折れます。考えながらゆっくり歩くほうが人間らしい暮らしになります。