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今年も下半期に入りました。改めて、今年の目標を見直したい方に、確実にゴールに到達する方法を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは How to set goals you’ll actually accomplish(実際に達成できる目標の立て方)
エグゼクティブ・コーチの Chuck Wachendorfer(チャック・ワケンドルファー)さんのトークです。
ゴールそのものよりも、それを支える具体的な行動を積み重ねると目標を達成できるという内容です
トークに出てくる酸性試験(acid test)は、酸を使って物質の性質を調べる試験ですが、比喩的に、その人やものの真価を問う試練という意味でも使われます。
ちゃんと達成できる目標の立て方
収録は2024年の11月。長さは11分。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
★TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
シンプルなメッセージだし、10分と短いのでわかりやすいトークです。
マラソンという目標があったけど
どんなに努力しても手が届かないように思える目標を立てたことはありますか?
私にはありました。マラソンを走ることです。
一生に一度はやってみたいことのひとつでした。「いつか挑戦できたらいいな」と思いながらも、心のどこかで「その前に寿命が尽きるかもしれない」と考えていました。
どんなに一生懸命練習しても、友人や家族に宣言しても、手が届きそうにありませんでした。
「マラソン」という言葉を紙に書いて財布に入れ、お守り代わりにしたことさえあります。
でもまったく効果はありませんでした。結局、8マイル(約13キロ)以上走れることはなく、「自分にはマラソンなんて無理だ」と言い聞かせていたんです。
それが一変したのは、ある夏のことです。
マイペースでマラソンをしていた友人
友人たちと庭でバーベキューをしていたとき、仲のいい友人のビルがさりげなく「今、マラソンの練習をしてるんだ」と言いました。思わずハンバーガーを喉に詰まらせそうになりました。
「えっ、きみが?」と聞き返すと、ビルは「そうだよ」と平然と答えます。
正直な話、ビルはフィットネスの広告に出てきそうなタイプでは全然ありません。マラソンを走るような人には全然見えないんです。
でもそのビルが、大したことないかのように「マラソンの練習中なんだ」と言ったんです。
「本当だよ。今朝も11マイル(約18キロ)走ってきたばかりさ」と彼は言いました。その言葉に私は衝撃を受けると同時に、ちょっと恥ずかしくなりました。
私は彼に言いました。
「僕なんか8マイル以上は絶対に走れない」。
するとビルは肩をすくめて、こう答えたんです。
「僕はただ、止まっても息が切れないくらいゆっくり走っただけさ。1マイル(1キロ600メートル)12分くらいのペースだよ。」
彼の言葉で私は自分の間違いに気づきました、それまで私は、1マイル8分というタイムにこだわっていて、自分を追い込み、その結果8マイル以上走れなくなっていたんです。
ビルとの会話は私に重要な問いを突きつけました。「目標は、特定のタイムでマラソンを走ることなのか? それとも、ただゴールすることなのか?」と。
目標を立てたら行動を考えるべき
皆さんも目標を達成できなかったことがありませんか?
そういうことが何度もあると、「目標なんて立てるだけ無駄だ」と思い込み、目標を立てることすらやめてしまいます。
私がお勧めしたいのは、ただ目標を立てるだけではなく、それを達成するためにどんなふうに行動を変えればいいか考えることです。
目標達成に必要で具体的な行動を理解し、それにコミットすることこそが、成功するための土台になります。
実は、約70%の人が目標を立てていますが、ちゃんと達成できるのはたったの8%にすぎません。
たった8%です。
この差は、目標を達成に関する根本的な誤解から生じています。
人は「目標を立てること」と「目標を達成すること」を混同しがちです。そして、達成するために行動を変えることがどれほど重要か見落としているのです。
ビジネス現場にある誤解
ビジネスの現場でもよくあることです。
リーダーたちは完璧なミッションステートメントを練り上げ、組織の全員にゴールをきちんと伝えようとします。
でも、ゴールにたどり着くためにチームメンバーがどんな行動を取るべきか、そこには目を向けないんです。
その結果、モチベーションの低下やいら立ちが起き、最終的には失敗します。
まるでケーキを作ってほしいと頼むのに、レシピを教えないようなものです。それではケーキができるわけがないし、お祝いもできません。
SMARTゴールだけでは達成できない
同じことが、私たちの普段の生活においても、想像以上に頻繁に起きています。
体重を減らしたいと思っても、カロリーを減らすことには目を向けたくない。
本を書きたいと夢見ても、毎日机に向かうことはできない。
老後に備えたいと言いながら、日々の支出に向き合おうとしない。
どの場合も、ゴールに意識が向いていても、それに向かうために必要な行動に目が向いていないんです。
誤解しないでほしいのですが、目標設定そのものは素晴らしいことです。それは最初の一歩です。
SMARTゴールを立てること、つまり具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Attainable)、成果志向(Results-based)、期限つき(Time-bound)にすることは、目標が単なる夢物語に終わらないためのしっかりした方法です。
でも、現実はどうでしょう?
どんなに賢く目標を立てても、行動を変えなければ成功にはつながりません。
どんなに優れたゴールを設定しても、行動が伴わないなら、それはスイッチを入れていないGPSを持っているようなものです。どこへもたどり着けません。
僕のマラソントレーニングに対するアプローチがまさにそれでした。
マラソンを走るというゴールばかりに目を向け、そこに向かうために行動を変えるべきだと気づいていなかったんです。
そのせいで私は走るスピードが速すぎて、すぐに燃え尽き、結局いつまでも前に進めませんでした。
酸性試験=本気度チェック
目標を達成したいとき、その目標について、酸性試験をしてみてください。酸という言葉から厳しそうな印象を受けるかもしれませんが、まったく安全なテストです。どこでもできますし、特別な装備もいりません。
酸性試験は、次の2つの質問をすることです。
1)それを手に入れるために必要なことが、自分にできるか?
2)それを手に入れるために必要なことを、自分はやるつもりがあるか?
きわめて単純な2つの問いに答えれば、自分の能力と覚悟を見極められます。
両方に自信を持って「イエス」と答えられるとき、そのゴールは単に魅力的なだけでなく、現実的に達成できるものとなります。
このテストは、非現実的な願望をふるい落とし、自分の力量と意志に見合った目標にエネルギーを注ぐ助けになります。
酸性試験をしてみると、単なる憧れではなく、自らが取り組みたいと心から思える具体的な目標に絞り込めるのです。
どんな行動をどのぐらいするべきか?
もうひとつ覚えておいてほしいことがあります。
自分にとって重要な行動が何か、それをどれくらいの頻度でやるべきかをしっかり把握することです。
ここはほとんどの人が見落としがちですが、それは私たちが自らやるべき行動です。行動することは、他人には代わってもらえません。その覚悟が持てないときは、目標そのものを見直すタイミングと言えます。
バーベキューの集りでの気づきから2か月後、私はついにシカゴマラソンを走りました。
実はビルと一緒に走ったんです。私たちはお互いにペースを合わせ、ゴールラインを一緒に越えました。タイムは4時間10分。
目標のタイムには届きませんでしたが、私は完走できました。以前は考えられなかったことです。
考え方をちょっと切り替えただけで、こんなにも大きな違いが生まれるなんて、すごいことだと思いませんか?
ゴールを切ったときのあの感覚は、数か月前には不可能に思えたことを成し遂げたんだ、という思いでいっぱいでした。
その気づきはとてもシンプルで大切なものでした。
遅くてもいいから、一歩一歩を着実に積み重ねたから。一つ一つの行動にきちんと向き合ったからこそです。
目標そのものにとらわれるのではなく、それに向かうための正しい行動に注目することが、どれほど大きな力を持つか、おわかりいただけますか?
夢で終わらせないために
最後に、私と一緒にちょっとしたワークをしてみましょう。
皆さんには今、どんな目標がありますか?
マラソンみたいに大きな目標でなくてもいいし、一生かけて取り組むようなものでなくてもいいです。
たとえば、50ポンドではなく5ポンド体重を落とすことかもしれないし、たまたま今思いついたことや、何年も先延ばしにしてきたことでもかまいません。
その目標を考えるとワクワクしますか? それとも、落ち着かない気分になりますか? もし不安になるようなら、行動を見直すサインです。
目標達成に必要で具体的な行動は何ですか?
それをどれくらいの頻度でやる必要がありますか?
行動することにコミットする気持ちがないのなら、取り組める現実的な形に目標を調整しましょう。
大切なのは前進することです。自分に正直になり、時間をかけて目標と必要な行動を考えてください。
健康のことでも、お金のことでも、人間関係でも、ゴールそのものではなく、それに向かう行動に目を向けることが成功のカギです。
一つだけゴールを選び、達成するために何が必要かを見極めてください。
行動する覚悟がないなら、継続できる目標に変えましょう。
「SMARTな目標」を立てるだけで終わらせないでください。
その目標を、酸性試験(acid test)で調べ、たどり着くにはどんな行動がいるか、しっかり理解すること。それこそが、目標にたどり着き、ゴールラインを越える道なんです。
//// 抄訳ここまで ////
目標達成に関するほかのプレゼン
先送りをしない人生を生きるために、目標ではなく恐怖を明確にすべき理由:ティム・フェリス(TED)
6%の人たちの秘密:仕事や人生でゴールを達成する方法(TED)
片付けという目標も酸性試験で調べてみる
正直なところ、今回紹介したトークは、特別目新しい内容ではないかもしれません。
でも、酸性試験をするというのは、はじめて聞きました。
ワケンドルファーさんは、目標を設定する際に、次の2つの質問をするよう勧めています。
・目標を達成するために必要なことを自分ができるか?
・その必要なことを、自分はやる気があるか?
この質問、断捨離という目標があるときの、リアリティチェックに使えます。
「家をスッキリさせたい」「断捨離したい」という目標を立てる人は多いですが、いざ始めてみると途中で止まってしまうことがあります。
たぶん、そのゴールに到達するためにすべきことを、実際にやるつもりがあるかどうかを確認せず、理想だけで目標を立ててしまうからです。
たとえば、今年中に家の中を片付けるという目標を立てたとして、
・実際に片付ける時間や体力はあるのか?
・仮にあっても、それをやる覚悟が本当にあるのか?
という質問に対して、イエス!と言えないなら、目標を見直すべきなのです。
目標を見直したあとは、そのゴールに到達するための小さなタスクを考えて実践していきます。
年初に立てた「断捨離をする」という目標がうまくいっていないなら、目標を調整し、達成するために自分がすべきことを考えてみてください。