瞑想

TEDの動画

最終更新日: 2017.09.20

暮らしにマインドフルネスを取り入れてより自由になる(TED)

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ホーム・ニュイエン(Home Nguyen)さんの、 The Power of Mindfulness(マインドフルネスの力)というTED動画を紹介します。



マインドフルネスとは?

マインドフルネスとは、その瞬間、瞬間に、自分がどんなふうに感じているのか、そこに意識を向けることです。日本でも数年前からはやっているようです。ルーツは仏教の座禅ですが、今はふつうの人が、ライフスキルとして瞑想をしてます。目的は、今やっていることに集中することだと思います。

すると、雑念や未来への不安が消えるのです。

スピーカーのニュイエンさんは、リーダー育成のためにコンサルティングなどをしています。彼は過去15年以上、日常的に瞑想をしており、マインドフルネスも教えています。

動画は17分。ゆっくりしゃべっているので、情報量はそんなに多くありません。独立イベントのせいか、日本語字幕がないので、抄訳をつけます。収録は2013年です。

彼はベトナムアクセントがあるので、少々聞き取りにくいかもしれません。ただ、構文や単語は難しくないです。

※TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

大事に見えるものは実は大事ではない

さて、まず呼吸してください。

[ホームさんが札束を宙にばらまきます。]

もし、大事だと思っていたことが、実は全然大事でなかったらどうしますか?

私はこれまの生涯で、お札がゴミのように宙にばらまかれるのを見たことが2度あります。

1度めは1975年のサイゴン陥落の時。アメリカから、最後のアメリカ兵が撤退し、ベトナムのお金の価値がなくなったのを見ました。

2度めは1982年、海の上のボートにいました。海賊に襲われたのです。みんなお金を差し出そうとしましたが、海賊はそんなものには興味がなくお金を宙に放り投げたのです。

船に乗ってベトナムから亡命した

私はベトナムで生まれ、ベトナム戦争のさなかに育ちました。アメリカ人はこの戦争のことを「ベトナム戦争」と呼びますが、ベトナム人にとっては、「ベトナムでやっているアメリカ人の戦争」です。

1975年、共産主義者がベトナム南部を征服したとき、父は再教育キャンプに送られました。

3年後、キャンプから解放された父は、ボートで亡命しました。翌年、母と6人の子供たちも逃げようとしましたが、つかまって牢獄に入れられました。

3度めの逃亡を試みたとき、政府は母を残し、子供たちだけ解放しました。その夜、叔母がやってきて、「家族と逃げる」と言いました。1人分だけ船にスペースがあるとも。

祖母は私に、「ホーム、あんたが行きなさい。あんたは長男だし、双子の1人だ。もし、海で死んでも、あんたのお母さんは、もう1人いるからね。行ってお父さんを見つけなさい。家族のために自由を見つけるんだよ」。

翌日の夕方、私は、漁船の中に身を縮めていました。この舞台の半分ぐらいの大きさの船です。船は南シナ海に向かいました。

エンジンがこわれ漂流する

脱出には成功しましたが、3日目にエンジンが止まりました。直すことができず、私たちは漂流を続けました。

5日目に、食料と水が底を尽きました。飢えた私たちは2つのグループに分かれ、口論し、ののしりあい、殴り合いまでしました。

6日目、海賊がやってきて、金目のものを奪いました。宝石や結婚指輪、金歯。奪うものがなくなると、男たちを殴り、女性を強姦しました。

ところが、海賊は思いがけないことをしたんです。いつも船から去っていくとき、バケツ1杯の米と水を投げてくれました。そのおかげで私たちは生き延びることができたのです。

この時私は、人は同時に残酷にも優しくもなれることを知りました。

デッキの上で海と一体になった

13日目。人々は、船の中で体をくねらせたままじっと横たわっていました。生きているのか死んでいるのかわかりません。

新鮮な空気を吸いたかった私は、人の体の上をはって、デッキの一番上に行きました。

遠くで、20フィート(およそ6メートル)ほどの波がうねっているのが見えました。「なんて自分はちっぽけなんだ」そう思いました。

それから地平線を見ました。とても大きな波がうねっています。

怖くなった私は祈りました。座って神とマリア様に祈り、お釈迦様に祈り、数ヶ月前に亡くなった祖父に祈りました。

カモメが飛んでいました。私はカモメに祈りました。

もう一度地平線を見たら、大きな波がこちらに向かってくるではないですか。「これで終わりだ」。そう思いました。

私は深呼吸をして目をつむりました。両手を広げ、なすがままにまかせました。その瞬間、海が自分の中にあるのを感じたのです。心臓の鼓動と海のリズムが1つになりました。海と自分が一体になったのです。





タイの難民キャンプにたどり着く

20日後、船はタイの港につきました。タイの難民キャンプで私は英語が話せるようになりました。

“Hello, my name is Home. I come from Vietnam. How are you? Thank you very much. I want to come to America to see my father, and have freedom.”

「こんにちは。私の名前はホームです。ベトナムから来ました。ご機嫌いかかですか?ありがとうございます。アメリカに行って父に会い、自由になりたいのです」。

ボートで私が体験したことは、スピリチュアルな目覚めでした。これまで大事だと思っていたことは、べつに大事なんかじゃなかったのです。

たとえばお金。人々はお金を貯めるけど、一瞬で価値がなくなります。

大切な人が傷つけられたら、飢えなんてどうでよくなりました。その日1日を生き抜くためなら暴力ですらどうでもよかったのです。

自然と一体になったときは、生き抜くことすらどうでもよく思えました。

アメリカに来て、父を含めた家族に再会しました。自分の身に起こったことは、心の中に閉じ込め、忘れようとしました。

アメリカのティーンエージャーになり、周囲に溶け込むため、クールに見えるようにしました。クールなしゃべり方も身につけました。

“Hey dude, what’s up man?” “Excellent!” “Whatever!”

(筆子注:この3つとも、単なる声かけであり、あまり意味はありません。あえて訳せば、「おい、なんか新しいことあった?」「すごい!」「どうでもいいけどさ」)。

南カリフォルニアのサンフランシスコで育ちました。

10日間の瞑想コースに参加してみた

20代になって、シアターアーティストとして成功することを目指していました。野望を持つ一方で、不安や恐怖も感じていました。

友達が10日間の瞑想のコースに行くようにすすめてくれました。瞑想のことなんて何一つ知りませんでしたが、座ってるだけみたいなので、バケーションのようなものだと思い、申し込んでみました。

最初の3日は座布団の上で黙って座っているだけ。呼吸と体に意識を向けるように言われました。

私は疲れ果て、退屈で、恐怖や怒りを感じました。

そばにいる人を評価してました。彼は好きだが、彼女は嫌い。そのうち、これまで気になっていたことはどうでもよくなり、ただ目の前に座っている男性のことだけが無性に気になるように。

彼はおくびをもらしたり咳をしていて、すごく不快でした。

おまけに食事はベジタリアンで肉がない。最悪だったのは、顔のまわりをブーンと言いながらハエがいつまでも飛んでいたことです。私はすごく頭に来て、先生とケンカになりました。

真夜中に、「この瞑想センターから脱出する計画をしなければ」なんて考えました。「昔、船で体験したことより最悪だ」と思ったのです。

1つ1つの呼吸に集中したら覚醒できた

ところが、私は1つひとつの呼吸に集中することで、何とか耐えられるようになりました。

ゆっくり息を吸って吐く、次の瞬間、気がそがれて、「うんざりだ!」と思うものの、また息を吸って、吐いて、と続けました。

すると突然、からだにセンセーションを感じたのです。両足や両手の感覚、肌のひりひり、心臓の鼓動、脳のリズムも感じました。

それはとても素晴らしい感覚でした。もちろん、何かの拍子に「もううんざりだ!ここから出してくれ!」となることもありましたが。

9日目にかつて昔体験したのと同じことが起こりました。息を吸って、吐いて、その瞬間だけに意識を向けていたら、昔、船のデッキの上で感じたのと同じ気持ちになったのです。

穏やかで、自分は確かに生きている、という感覚です。その場にいるすべての人とつながっている気がしました。私は覚醒したのです。

外側にあることは、混乱した内側の象徴

ボートで生き残った者や戦争難民としての私の体験は、別に珍しいことではありません。なぜならみんな、サバイバーだからです。

自らの外側にある戦争や対立は、内側で起きていることを表しているだけなんです。私といっしょに呼吸をしてください。

最近、続々と脳神経学のリサーチが行われ、マインドフルネスや、マインドフルになることのメリットが発表されています。とてもうれしいですね。

マインドフルになると、免疫がアップし、心臓の健康にもよく、夜、よく眠れるようになります。脳のサイズも大きくなるんですよ。

瞑想のアプリもあるし、マインドフルネスをテーマにしたこんなTEDXまで行われています。

どのプレゼンもとても刺激的です。ただ、知識を仕入れるだけでは何の違いも生まれません。実践する必要があります。

実際に立ち止まる、呼吸をする、落ち着いて、自分に何が起こっているのか観察する練習をしなければなりません。

練習すれば覚醒できます。マインドフルになるために大切なことは、今、この瞬間に自分がいることだけです。

一瞬、一瞬、今、この瞬間に存在することを練習すると、真の自由や無償の愛、本当の幸せに到達できます。

皆さんが真に自由に幸せになり、無償の愛を得ますことをお祈りしています。

 —-抄訳ここまで—–

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マインドフルネスは1つのスキル

ホームさんが言うように、近年、ニューロサイエンスで、瞑想のメリットがたくさん解明されつつあります。

昔は、瞑想というと、なんか、インドにいって、グルに指導を受けつつ、座禅やヨガをするスピリチュアルなイメージでした。

現在は、ビジネスマンなどがライフスキルとして、瞑想を学ぶことが増えています。

ホームさんみたいに、10日間、毎日毎日瞑想だけをやっていたら、瞑想もうまくなるでしょう。

必ずしも完璧にやらなくても、「瞑想をしよう」と思って練習するだけで、ストレスは軽減されます。気持ちがざわざわしている人は、生活に瞑想を取り入れるとよいかもしれません。私も時々やっていますよ。

「覚醒」などは体験していませんが、心が落ち着くのは確かです。

今この時を生きるすすめ

先日、東日本大震災で被災した方から、「物欲も断捨離もミニマリズムも平和な世の中の証拠」と書かれたメールをいただきました。

確かに、非常時には、「服が多すぎて困っちゃう」なんて悩みません。

ですが、ふだん感じているストレスは、たとえ平和な時でも、人を病気にしてしまうほど強いものです。

「学校や会社ですごく嫌なことがあって行きたくない」とか、「汚部屋が片付けられなくて困っている」と悩んでいる人は、他の人には想像できない底知れない不安や恐怖を感じているのではないでしょうか?

それは本人にしかわからないでしょう。

悩みが多い人は、できるだけ、今、この時を生きるようにするとラクになると思います。

瞑想やマインドフルネスはスキルですから、意識して練習すれば上手になります。

瞑想を取り入れたり、ノートに自分の気持ちを書いてみたりして、自分の気持ちを注意深く観察したりして、今、この瞬間を生きることをおすすめします。





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