自分は正しいと思い込んでいる人

TEDの動画

間違っているのに、自分が正しいと感じてしまうのはなぜなのか?(TED)

人々はいろいろな思い込みを持っています。

髪の毛はシャンプーで洗うに決まってる、お風呂上がりにバスタオルを使わないなんてありえない。砂糖が身体に悪いわけないでしょ、だってみんな食べてるし。

この程度の思い込みなら、そこまで害はないかもしれません(砂糖は気をつけたほうがいいと思いますが)。しかし、時に、強い思い込みのせいで、自分が苦しんだり、他人を傷つけてしまうこともあります。

そんな強力な思い込みを手放すヒントになるTEDの動画を紹介します。

タイトルは Why you think you’re right — even if you’re wrong(なぜ自分が正しいと思ってしまうのか? そうでないときですら)。邦題は「間違っているのに正しいと感じるのはなぜなのか」

プレゼンターは、道理(rationality)について研究しているジュリア・ゲーレフさんです。



間違っているのに正しいと感じるのはなぜなのか:TEDの説明

Perspective is everything, especially when it comes to examining your beliefs.

Are you a soldier, prone to defending your viewpoint at all costs — or a scout, spurred by curiosity?

Julia Galef examines the motivations behind these two mindsets and how they shape the way we interpret information, interweaved with a compelling history lesson from 19th-century France.

When your steadfast opinions are tested, Galef asks: “What do you most yearn for? Do you yearn to defend your own beliefs or do you yearn to see the world as clearly as you possibly can?”

ものの見方は大切です。とくに自分の信じていることを検証するときには。

あなたは、どんなことをしてでも自分の考え方を変えようとしない戦士でしょうか? それとも好奇心で動く偵察兵でしょうか?

ジュリア・ゲーレフはこの2つの考え方の背後にある動機や、人がどうやって情報を解釈するのか説明します。19世紀のフランスで起きた、とても説得力のある歴史的教訓を引き合いに出しながら。

ゲーレフはこう問いかけます。

自分が強く信じていることが試されるとき、あなたがもっとも求めているのは何でしょうか? 自分の考えを守ることですか? それともこの世界をできるだけはっきりと見ることでしょうか?

動画は11分38秒。日本語字幕がありますのでお時間がある方はごらんください。字幕なし、英語その他の言語はプレイヤーで選択できます。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちらです⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

戦士と偵察兵(ソルジャーとスカウト)

ご自身が戦場にいる戦士(soldier)だと想像してみてください。どんな戦争でもかまいません。

戦っている戦士は、アドレナリンのレベルがあがります。その行動は私たちの直感的な反応によるものです。自分自身や味方を守り、敵を倒すための反応です。

次に、偵察兵(ていさつへい scout)になったと考えてみてください。

偵察兵の役割は攻撃や防御ではありません。理解することです。

外に出て地理を調べ、橋や川、障害のある場所など、そこにあるものについてできるだけ正しい情報を集めるのが仕事です。

軍隊では、戦士も偵察兵も必要です。この2つの役割をマインドセット(考え方)として考えることができます。

日常生活で私たちが情報や考えを取り入れ解釈するときに、戦士としてそうするのか、あるいは偵察兵として行うのか、ということです。

正しい判断や予測、意思決定ができるかどうかは、どちらのマインドセットを持っているかで変わります。

ドレフュス事件

この2つのものの見方を説明するために、19世紀のフランスで起きた事件を紹介します。歴史上とても大きなスキャンダルになった事件です。

1894年、フランスの将校が、あるメモを発見しました。誰かがフランスの情報をドイツに流していることを示す紙です。

捜査が始まり、ほどなくアルフレッド・ドレフュスが逮捕されました。ドレフュスはとても優秀な軍人で犯罪歴もなければ動機もありませんでした。

しかし、彼は当時フランス軍の中で、唯一のユダヤ人だったのです。このときのフランス軍は、ユダヤ人を憎悪していました。

当局はドレフュスの筆跡とメモの筆跡が同じだという理由で彼を逮捕しました。専門家は、筆跡が同じとはいえない、という意見だったのですが。

軍部は家宅捜索を行ったものの、スパイ行為の証拠は何もでませんでした。しかしこの件は、「ドレフュスは証拠を隠滅している巧妙なやつだ」ということになりました。

次に当局は、ドレフュスのバックグラウンドチェックを行いました。

学生時代、彼が外国語を学んでいたと聞くと、それなら外国の政府と陰謀を働くことにつながると考え、彼がとても記憶力のいい生徒だったと聞くと、それはスパイに向いている特性だと決めつけました。

裁判でドレフュスは有罪になり、公衆の面前で勲章をはぎとられ、剣を2つに折られてから、デヴィルズ島(ディアブル島)の牢屋に送られました。終身刑を受けたのです。

彼はこの島で毎日フランス政府に、無罪を訴え、再審を求める手紙を書き続けました。しかし政府は、この件はもう終わった、と考えていました。





戦士のマインドセット(ソルジャーマインドセット)とは?

この事件で私が興味深いと思うのは、なぜ軍部がドレフュスの有罪を確信したのか、ということです。彼らは、誰かがドレフュスを落とし入れたとすら考えなかったのです。

軍部はドレフュスが有罪だと強く信じていたのです。メモの筆跡が似ているというだけで、人を有罪にしてしまう人間の考え方が興味深いのです。

こうした心理を科学者は「動機づけられた認識(motivated reasoning モチベイテッドリーズニング)と呼んでいます。

人の無意識のモチベーションや欲望、恐怖が情報の解釈の仕方に影響を与えるのです。

ある情報や考え方は自分の味方に思えるので、こうした情報は大事にします。べつの情報や思考は敵であり、こうした情報は切り捨てます。

私は動機づけられた認識をすることを「戦士のマインドセット」と呼んでいます。

みなさんはドレフュスのような体験とは無縁でしょうが、スポーツや政治には興味がありますよね。自分のひいきのチームの選手が、審判に反則を言い渡されると、いったい何が悪かったのか、調べようとするでしょう。

一方で、敵の選手が反則と言われたときは、「審判、よくやった」と思って、そのままにします。

死刑制度のような、論争の余地のあるトピックに関するリサーチが発表され、それが自分の信じていることに有利ならそのまま流し、逆なら、「いったいどうしてそうなるのか」ともっと調べようという気になると思います。

私たちの判断は無意識のうちに、どちらに勝ってほしいと思っているかによって、強く影響されるのです。この心理はあらゆるところで見られます。

健康に関する考え、人間関係、選挙の投票、何が正しくて、何が道徳にかなっているのかなど、すべてについて言えることです。

動機づけられた認識、つまり戦士のマインドセットのもっとも恐ろしいところは、それが無意識である、という点です。自分では公平に客観的に見ている、と思っている人が、無実の人間の人生を破滅させる可能性があるのです。

偵察兵のマインドセット(スカウトマインドセット)とは?

ドレフュスの話に戻ると、彼にとって幸運なことに、ピカール中佐という人物がいました。

ピカールもフランス軍のえらい軍人で、ほかの人と同じようにドレフュスが有罪だと思っていたし、ユダヤ人が嫌いでした。

しかし、彼はある時点で「もしかしたらドレフュスは無罪で、我々が間違っているのかもしれない」と思ったのです。

ピカールは、ドレフュスが牢屋にいるのに、ドイツへ情報を流す行為が続いている証拠を発見し、例のメモの筆跡と同じ筆跡をもつ別の軍人の存在にも気づきました。

そこで軍の上層部に知らせましたが相手にされませんでした。「ドレフュスの筆跡を真似た別のスパイが、彼の跡を継いでやっていることだから、ドレフュスの有罪は変わらない」と軍は言ったのです。

結局、ピカールはドレフュスの無罪を証明できましたが、そうするまでに10年かかっています。しかも、その過程で彼自身が逮捕され牢屋に入れられたこともありました。

ピカール自身、ユダヤ人を憎悪していたので、彼がこの話のヒーローだと考える人は少ないです。確かにユダヤ人を憎むことをよくありません。

ですが、そうした憎しみや偏見があったにもかかわらず、真実を突き止めようとしたピカール大佐は素晴らしいと思います。

ピカールは「偵察兵のマインドセット」の持ち主です。

「偵察兵のマインドセット」はある考えを一方的に支持するのではなく、たとえそれが自分に都合の悪いことでも、居心地悪く感じることでも、できるだけ正直に正しく、状況を見る態度です。

偵察兵のマインドセットを持つ方法

私はこのマインドセットについていろいろ調べています。どうしたらこういう考え方ができるのか? なぜある人たちは、一時的にせよ、自分の偏見や動機を超えて、事実や証拠をできるだけ客観的に見ることができるのか?

その答えは「感情」です。

戦士のマインドセットが守りたい気持ちや集団への忠誠心といった感情に根ざしているのと同じように、偵察兵のマインドセットも、感情から生まれるのです。

ただし、別の感情です。

偵察兵は、好奇心が強いのです。新しい情報を得ることに喜びを感じたり、謎を解きたいという気持ちがあります。自分自身の予想とは違うことに出会うと、興味をそそられるのです。

偵察兵は戦士とは違う価値観を持っています。自分の信念が正しいかどうか調べるのはよいことだと考えているし、考え方を変える人間は弱虫だとも言いません。

もっとも大事なことは、偵察兵は地に足がついている、という点です。

自分がある件について、正しかろうが、間違っていようが、自分の人間としての価値は変わらないと考えています。

ですから、死刑は効果的だと思っているところに、それとは逆の結果を示す研究が発表されたら、「私は間違っていたみたい。でも、だからといって自分が悪いとかバカだ、ということにはならないよね」と考えます。

専門家は以上のような特性のある人が、よい判断をする傾向にあることを発見していますし、個人的にも、そう思います。

偵察兵になるために、感じ方を変える

きょう、皆さんにもっともお伝えしたいことは、こうした特性は頭のよさとか、勉強量なんかには関係がない、ということです。IQも関係ありません。

それは皆さんがどんなふうに感じるかにかかっています。

「星の王子さま」を書いたサン=テグジュペリの言葉が、この感情をうまく言い表しています。

“If you want to build a ship, don’t drum up your men to collect wood and give orders and distribute the work. Instead, teach them to yearn for the vast and endless sea.”

船を作りたいのなら、部下のおしりを叩いて、木を集めさせたり、命令したり仕事を割りふったりしなくてもいい。その代わりに、彼らに、広大で無限の海にあこがれる気持ちを教えてあげればいいのだ。

つまり、個人としても社会としても、よりよい判断をしたいのなら、理屈やレトリック、確率や経済に関する指示は必要ないのです。もちろん、そうしたものも価値あるものではありますが。

こうした原理をうまく使うためには、偵察兵のマインドセットが必要なのです。

感じ方を変える必要があります。自分が間違っていたかもしれないと気づいたとき、恥ずかしいと感じるのではなく、誇らしいと思うことを学ぶべきなのです。

自分の信じていたこととは逆の情報に出会ったとき、自分の考えを守ろうとするのではなく、そういう見方もあるのかと、興味を感じることを学ぶべきです。

最後に皆さんにお聞きしたいことがあります。

あなたがもっとも求めているのは何ですか? 自分の考え方を守ることですか? それともこの世界をできるだけはっきり見ることですか?

//// 抄訳ここまで ////

単語の説明

scout 軍隊における斥候(せっこう)。斥候とは敵の状況や地形などを探るために部隊から派遣される兵士です。

しかしこの言葉は難しいので、抄訳では偵察兵としました。言いにくいですけどね。英語をそのままカタカナにして、ソルジャーマインドセット・スカウトマインドセットと呼んだほうがいいかもしれません。

poster child ポスターに起用されるイメージキャラクター、典型、代表選手

takeaway 持ち去るべきもの⇒学び、収穫、わかったこと

サン=テグジュペリの言葉のオリジナルはフランス語です。

«Quand tu veux construire un bateau, ne commence pas par rassembler du bois, couper des planches et distribuer du travail, mais reveille au sein des hommes le désir de la mer grande et large».

自分の直感や反応を疑うことで思い込みを手放せる

もったいなくて捨てられない、というメールがよく届くので、この動画を紹介しました。

先日も書きましたが、断捨離をしていて「捨てるのはもったいない」と思うときは、たいてい捨てたほうが、状況がよくなります。持ち続けているほうがもったいないことになります。

先日の記事⇒クリーニング代が惜しくて服を捨てられない人へ。もったいない病を克服する考え方。

「捨てるのもったいない」と考えるのは、直感的な反応で、きのうまでの自分を守ろうとしているのではないでしょうか?

つまり、戦士のマインドセットです。

このマインドセットになっているときは、自分の信念(捨てないほうがいいという無意識の思い込み)に合う情報や考え方だけを取り入れます。

たとえば、「ずっと使わずに持っていた雑貨を、10年後に使うことがあった」とか「友だちが、持ってればそのうち使うことがあるかもしれないよと言ったし」とか、雑誌で見つけた「物が多くてもスッキリできる収納法」という記事の情報は大事にします。

一方で、私のブログにある「もったいないと言いながら捨てないほうがもったいない」「まとめ買いは損だ」といった記事は自分の信念とは相容れないので、「なるほどね~」と読みながらも、無意識のうちにバサッと切り捨て、結局捨てないほうを選ぶのです。

そのためいつまでたっても片付きません。

偵察兵のマインドセットになって、状況をつぶさに調べてみると、2度と着ることもない服を持っていたり、全然使わない調理家電を収納していたり、収納雑貨を買い込むことは、解決にはつながらない、ということに気づくのではないでしょうか?

ドレフュスは無罪だったのに、なかなか軍がそれを認めなかったのは、今さら前言を撤回するような恥ずかしいことはできない、そんなことすると軍の権威が失墜する、と思っていたからです。

軍としてのセルフエスティームが相当低かったのですね。

当時の社会状況のせいもあったでしょう。まあ、軍はメンツにこだわる人がたくさんいる組織です。

自分が「何でもためこむ人」から、「不用なものを捨てる人」になるのは、ごく個人的なことですから、軍事裁判をすることに比べたらずっと簡単です。

サン=テグジュペリの言うように、不用品を捨てたあとにひろがる世界を思い浮かべながら、一度、偵察兵のマインドセットを取り入れてみてください。

********

偵察兵のマインドセットは、断捨離にかぎらず、いろいろなところで使えます。

ノーと言えない、もらい物を捨てるのに抵抗がある、思い出品が捨てられない、次々とやらねばならないことが出てくるといった状況も、自分の思い込みが原因のことが多いのです。

自分の信念をガチガチに守ろうとしてはいないか、客観的に考えてみると、もっとラクになると思います。





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