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思い出の品をとりわけ大事だと思いこんでしまう理由を7つ紹介します。
箱の中にしまいっぱなしの古い手紙、学生時代によく読んだ本、旅先で買った小さなお土産など、思い出の品は手放しにくいものです。
実際には使っていないし、存在すら忘れているのに、いざ手放そうとすると胸が締めつけられるような気持ちになることがありますよね。
なぜ私たちは、思い出の品を特別なものだと感じてしまうのでしょうか?
この記事では、思い出の品の価値を過大評価してしまう理由を、心理的な側面から整理します。
「思い出の品だから大事なものに決まっている」という思い込みを手放すヒントにしてください。
1. 保有効果
最初の理由は、保有効果(エンダウメントエフェクト、授かり効果)です。
人は、何かをいったん自分のものにすると、実際以上に価値があると感じる傾向があります。
この心理は、所有していた時間が長いほど強くなります。
ふだんは見向きもしない古い書類やグッズでも、長く自分の手元にあったというだけで、なんとなく特別に感じられてしまうのです。
手元にあるから大切に思えるだけで、それが今の自分にとって本当に必要なものとは限りません。
それが人のものだったら?
保有効果が働いているときは、自分の持ち物でなければどう感じるか考えてみましょう。
「もしこれが他人の家にあったら、どう感じるだろう?」
「もし友人の持ち物だったら、いくら出して買うだろう?」
こんな質問をしてみましょう。
第三者の視点を取り入れると、持っていた事実によって水増しされていた価値に気づきやすくなります。
授かり効果のせいで捨てられない物を捨てられるようになる考え方
2. 記憶の美化
人は記憶を美化する傾向があり、これが思い出の品を特別なものにします。
過去を振り返るとき、実際よりも少しいいものとして思い出します。ネガティブなことばかり覚えていると生きづらくなるので、脳がポジティブ寄りに記憶を再構成するのです。
楽しかった場面だけが強調され、つらかったことや退屈だった時間は後ろに追いやられます。
そのため、古いものはなんでも「美しい思い出を象徴するもの」となりがちです。実際は、普通のノートやプリント、ペンだったとしても、「あの素晴らしかったとき」を思い出させてくれる大事なものになります。
記憶を信頼しすぎない
すべてが美しい思い出の品に見えるときは、まず、その記憶を疑ってください。
記憶は、過去のできごとをそのままビデオで撮影したものではなく、物語として再構成したものです。
しかも思い出すたびに、そのときの気持ちや状況によって、記憶の再構成は続きます。
必要以上に過去のできごとを美化しなければ、思い出の品の価値を冷静に見極めることができるでしょう。
3. サンクコスト効果
過去にかけた時間、お金、労力、気持ちがもったいなくて、品物の価値が上がることがあります。
人は、すでに支払ってしまったコストを回収しようとしますが、これはサンクコスト効果と呼ばれます。
学生時代に一生懸命作った作品、手間をかけて整理したアルバム、時間をかけて集めたコレクションなどは、もう必要ではなくても、「せっかく作ったのだから」「あんなにがんばったのだから」と捨てにくくなります。
今の自分の基準で見直す
「がんばった過去」と「今の暮らしへの必要性」を分けて考えましょう。
過去に投じたものを今さら取り返すことはできません。
過去ではなく今と未来に目を向けてください。
今の生活にどれだけ役立っているか考えると、そのアイテムを持ち続けているせいで、かえってスペースや心の余裕を失っていることに気づくものです。
4. 自分と同一視する
思い出の品は自分の一部だと感じやすいので、とても大事に感じられます。
たとえば、賞状やトロフィー、昔の作品、学生時代に熱中していたクラブ活動のグッズなど。
「これは私の歴史そのものだ」「これを捨てたら自分まで否定することになる」。こんなふうに感じると、ふだんはしまってあるだけなのに、手放すことができません。
ものと自分を切り離す
ものは自分そのものではなく、過去の自分を映し出す鏡のような存在です。鏡を手放しても自分は消えません。
ものと自分を同一視してしまうのは、過去の経験が今の自分を作ってきた実感があるからです。
たしかに、経験は大切な財産です。
でも、どんな経験も自分の中に蓄積されていて、ものにあるわけではありません。ものがなくなっても、自分は消えないし、自分の価値が下がることもないのです。
箱の中に何年もしまいっぱなしの思い出の品は、もう役割を終えているかもしれません。
5. 現状維持バイアス
現状維持バイアスは「今ある状態を変えたくない」という心理的傾向のことです。
この心理が働くと、思い出の品を「捨てるより持ち続ける方が安心」と感じ、その価値を過大評価することにつながります。
思い出の品の片付けは、判断したり、気持ちと向き合ったりと、ふつうのものを捨てるより、心理的な負担が大きいので、そのままにしておくほうがラクです。
思い出の品はたいていしまい込まれており、見直す機会がほとんどないし、ものが多ければ取り出すのも大変です。
すると、「わざわざ捨てなくてもいいか」という流れになりやすいのです。
変えないほうがラク、は違う
思い出の品をずっと持ち続けるとき、「このままでいるほうが安心」「何も変えないほうがラク」「これが一番いい選択」と思っているかもしれません。
でも「変えないことがベストだ」という考え方は本当ではありません。
捨てないのは、安心するためというより、状況を変えるのが面倒なので、捨てる選択を避けている状態です。
そこで、変えること(=捨てること)に抵抗を感じにくい方法で片付けてみましょう。
大々的に変えようとするのではなく、小さく変える方法がおすすめです。
6. 罪悪感(人との関わりが色濃い品)
ほかの人との関わりが強く感じられる思い出の品は、罪悪感のせいで捨てにくいことがあります。
贈り物はもちろんのこと、家族旅行で一緒に買ったもの、友人との写真、年賀状など、他の人と共有した時間を象徴する思い出の品があります。
こうしたものを捨てるのは、人との関係を大事にしていない気がします。
この罪悪感は、相手が大切な人ほど強くなるでしょう。
ものは関係そのものではない
ものを捨てることは関係を終わらせることではないと考えてください。
品物は、関係性を象徴しているだけで、絆や思い出はこころの中にあります。
ものを手放しても共有した時間は消えないし、関係も変わりません。
つながりを保つのに役立つのは、ものより、今の交流です。
もっと親しくなりたいと思うなら、古いものを持っておくより、その人に連絡を取って、話したりするほうが効果的です。
7. 捨てると記憶が失われるという気持ち
思い出の品を手放すと、思い出までなくしてしまうような気がしますが、これは錯覚です。
こう思ってしまうと、思い出の品が、記憶を守るために欠かせない存在のように感じられ、実際以上に大事なものに感じます。
たしかに、写真や記念品を見れば、当時のことを思い出します。
しかし、思い出そのものは自分の中にあり、ものが記憶を保存しているわけではありません。ものはあくまで、思い出すきっかけにすぎないのです。
ものがなくても記憶は残る
ものが思い出そのものだと考えず、思い出すための入り口だと捉えましょう。
捨てると記憶がなくなるように感じるなら、思い出すきっかけを別の形で残しておくと安心です。
たとえば、写真に撮っておく、当時の印象を短く書き留めるなど、記憶を呼び起こすものはたくさん用意できます。
体験の記憶は自分の中に残っています。
ものがなくても記憶は失われないと理解できれば、「思い出を守るために持っていなきゃいけない」という義務感が薄れ、必要以上にものを抱え込まないでしょう。
■思い出の品の片付け・関連記事もどうぞ
⇒思い出の品を捨てにくい理由と、それを乗り越えてうまく捨てるコツ~夏休みは思い出の品を見直そう。
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思い出の品の価値を高く感じてしまう理由を紹介しました。
思い出の品がとても大事に感じられるとしたら、それはたいてい人に特有の心理のせいです。
思い出の品を整理するときは、こうした思い込みがあることを知っておいてください。
思い出を大切にすることと、思い出の品をたくさん持つことは違います。
一つひとつの思い出の品の価値を冷静に見極めて、本当に大事なものだけを残しましょう。














































