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自分で物ごとを決められない人の参考になるTEDの動画を紹介します。
Benedikt Ahelfeld (ベネディクト・アールフェルド)さんの、The Power of Decision Making (決断の力)です。
「決断する力」の内容を一言でいうと
彼はオーストリアの人のようです。アールフェルドだと思いますが、私はドイツ語はわからないので間違っていたら教えてください。
アールフェルドさんは16歳で起業家になり、ビジネスをしながら、意思決定に関して、学んできました。
この動画では、なぜ決められないのか、決断を阻む3つの理由とそれを回避する方法が語られています。
捨てる、捨てないでいちいち迷ったり、捨てたあとも、いつまでも後悔して断捨離が進まない人は、ぜひ参考にしてください。
収録は2016年11月、オーストラリアのグラーツ(Graz)にて。日本語字幕はないので、動画のあとに抄訳を書きます。
人生を決めるのは決断する力
人がもっているもっともパワフルなものって何でしょう、と聞かれたら、私は「決断する力」だと答えます。
自分で物ごとを決めることができるのは、この世に生まれたことの次に、私たちに与えられた、すばらしい贈り物です。
あなたは、あなたがこれまで決断してきた結果でできています。
とはいえ正しい決断をするのは難しい
私たちは決断する力を持っていますが、適切な決断をするのは難しいです。
まずい決断をすることもよくあります。
エルンスト・ポペルによれば、私たちは1日に2万回、意思決定をしており、その多くが、無意識のとっさの判断です。
大きな決断をするとき、先延ばしする傾向があります。
決断の大小にかかわらず、先延ばししてしまいますね。行動を後回しにするのは、これからお話する、意思決定を邪魔する3つのワナのひとつのせいかもしれません。
このプレゼンでは、いかにその意思決定のワナを回避するかお伝えします。
脳を活かしきれていない私たち
まず、脳の話からしましょう。
脳はツールボックスですが、多くの人がうまく使いこなしていません。400万年の進化の過程で、いまのような脳を手に入れることができました。
ところが多くの人たちはテレビ番組で判事が決めているのを見て時間をつぶしています。
私たちは自分の脳を使うべきです。過ちをおかしてはなりません。
決断しないということも、1つの決断です。自分で決めないということは、誰か別の人に自分のことを決めさせることです。
最終决定者の決め方とは?
過去10年、私は、トップディシジョンメーカー(最終決定者)たちと仕事をする機会に恵まれました。
私が彼らから学んだことをシェアしますね。トップディシジョンメーカーはやり方が違います。
1.自分なりのスタンダードを持っている
彼らは自分が何者で、何を求めていて、どうしたらそれが手に入るのか知っています。
自分の価値観をもとに、物ごとを決めています。
2.自己管理にたけている
彼らは自己管理をちゃんとしています。とくに感情面の管理です。
ロボットのように冷たいという話ではありません、感情の波に飲まれないのです。
3.決めたことをちゃんと実行にうつす
日常生活においても、ビジネスにおいても、決めたことをちゃんと実践します。
なぜ決められないのか?
現代社会では選択肢があふれています。
イケアに行って、予定外のものを買ってしまう人は多いのではないでしょうか?
この現象は irrational buying decisions (ばかげた購入の決断)と呼ばれます。
選択肢が多すぎて、意思決定をするプロセスで、脳がまひしてしまうのです。
私はこの現象を、モンスター・チョイス・ジレンマ(monster choice dilenma)と呼んでいます。
いま、大勢の若者たちが、何を勉強したいのか、何をやりたいのか、自分でわからなくなっています。
よく考えてみれば、何だってできるというのに。
選択肢が多すぎるので、自分の求めているものがわからないのです。
これは意思決定を妨げる1番目のワナです。
外的刺激が多すぎ、あまりに多い選択肢を前にして、脳がフリーズしてしまうのです。
2番めの意思決定を疎外してしまうワナは、常にストレスにさらされていることです。
家庭や学校、職場で、人は、よりよい業績をあげろと、常にプレッシャーを受けています。
子供でも燃え尽きてしまうことがあります。
3つめのワナは完璧主義です。
「7つの習慣」の著者であるスティーブン・R・コヴィーは、Perfection prevents action (完璧は行動を阻む)と書いています。
トップディシジョンメーカーは完璧主義に陥りません。
彼らは決断するのに必要な情報の80パーセントを得た段階で決めます。
最後の20パーセントが埋まるまで、何日も何ヶ月も何年も待ったりはしません。
ストレスが意思決定を阻む理由
人はストレスを感じると古い生活習慣に戻ってしまいます。
たとえその習慣が現在の状況にふさわしくなくても。
意思決定の習慣は条件づけされています。
トリガー(引き金)があり、決断をし、その結果を得ます。
この行動を何度も何度もしているうちに、それは無意識の習慣になります。自動的に決めるようになるのです。
これは別に悪いことではありませんが、環境が新しくなっているのに、古いパターンで意思決定してしまうのは問題です。
ストレスがかかっていなければ、その場にふさわしい意思決定ができますが、ストレスがあると古いパターンに逆戻りします。
習慣を変えようとすると脳に大きな負荷がかかる
両手を組んでみてください。どちらの親指が上に来ていますか?
左ですよね?
これを右手の親指がくるように組み直してください。
すごく違和感を感じますよね?
最初の組み方がすっかり習慣になっているからです。コンフォートゾーンなのです。
手の組み方を変えるのはコンフォートゾーンを出る行為です。
行動経済学によると、習慣を変えるには、それなりの時間がかかります。2ヶ月、66日かかると言われますね。
朝起きて、すぐに水を飲む習慣をつけるのは別に難しくありません。ですが、起きてすぐ50回腹筋をする習慣をつけるのは、時間がかかります。
意思決定も同じです。
簡単なことを決めるのはそんなにストレスがかかりませんが、難しい決定はストレスが多いものです。
頭脳の働きとしては、この2つはそんなに変わらないのですが、感情面で大きな違いがあります。
ストレスがかかったら脳はどうなるか?
リラックスして、コンフォートゾーンにいるとします。
このとき、新しい情報が入ってくると、脳の視床(ししょう)という部分が、その情報を前頭皮質に伝えます。この場合、人は、理性的な意思決定をくだすことができます。
一方、ストレスにさらされているときは、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌され、視床の機能が衰えます。
すると扁桃体(へんとうたい)が活発になります。扁桃体は人を危険から守ります。
森の中を散歩していたとします。リラックスしているときは、虎を見ても、冷静でいられますが、それだと命を落としかねません。
危険な目にあえば、人はストレスを感じ、それが扁桃体を活発にさせ、「おい! すぐに逃げろ」と反応させるのです。
すると命が助かります。
扁桃体は人を危険から救う大事な役目を果たしています。
しかし、現代は、虎にあってストレスを感じているわけではありません。職場で、急ぎの仕事を命じられても、同じような反応をしてしまいます。
ストレスがあっても賢い意思決定をするには?
ストレスの多い中で、トップディシジョンメーカーはどうやって決断しているのでしょうか?
彼らは脳がストレスに強くなるように鍛えています。
常日頃からコンフォートゾーンを出ることを心がけているのです。
常に新しいことや新しい可能性をさぐり、居心地の悪い場所に出ようとしています。その結果、パフォーマンスがあがるのです。
小さなことでもいいので、常に新しいことに挑戦すると、ストレスに強い脳になります。
新しい趣味を始めてみてください。そうすれば、コルチゾールがたくさん出ていても、よりよい意思決定をできるようになります。
意思決定のワナとその対策
きょうのプレゼンをまとめましょう。
意思決定を阻む3つのワナと対策です。
1.選択肢が多すぎること⇒選択肢を減らす
視床が一度に対応できるのは7つの選択肢までです。
優先順位を決めて、重要な7つに絞ってください。
2.ストレスが多すぎる⇒ストレスに強い脳にする
常にコンフォートゾーンを出ることを心がけ、脳を鍛えます
3.完璧主義⇒意思決定に必要な情報が80パーセント集まったところで決断する
決断し、動き出してみて、必要があれば、修正をします。
人は自分で決めてこの世に生まれたわけではありません。けれども、よりよい人生にするために、決断することができます。
だから、自分自身で決めてください。
//// 抄訳ここまで ////
動画をより理解するための補足
Ernst Pöppel エルンスト・ポペル
ドイツの心理学者で神経科学者
thalamus 視床;嗅覚意外の刺激を大脳皮質に中継します。痛み、運動機能の調節、感情の働きなどにも関係します。
Amygdala 扁桃体(へんとうたい);「好き・嫌い」「快・不快」を判断し、生命の維持に必要な感情を記憶します。
その代表は恐怖です。
扁桃体は原始的な脳なので、虎と職場の上司の区別はしません。
決断力アップに役立つほかの動画
バリー・シュワルツに学ぶ『選択のパラドックス』(TED)~所持品をミニマムにすると生きやすくなる理由とは?
我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)
よりよい決断をするには?シーナ・アイエンガーの選択術(TED)
選択をしやすくするには~シーナ・アイエンガー(TED)。選択肢の海の中で生きる技術。
決断に悩むときこそ大きなチャンス。重要な選択をする方法(TED)
捨てる・捨てないの判断に迷ったら
アールフェルドさんが話す、決断のワナとその回避策は、あらゆる決断をする状況で使えます。
この記事では、断捨離における決断への応用法を書きます。
1.選択肢を減らす
物を捨てるか捨てないか2つに1つにしたほうが、決めやすいです。
これを、たとえば、
●捨てる
●寄付する
●親戚にあげる
●ヤフオクに出す
●しばらく箱に入れておく
●捨てない
などと、選択肢を広げると、捨てにくいです。
そこで、決めるときは、まず
●捨てる
●捨てない
の二者択一でやり、別の機会に、捨てるものを
●ゴミ箱行き
●それ以外
の2つにわけ、また別の機会に、それ意外のものを
●寄付
●フリマ
というように振り分けてはどうでしょうか? 1度にする決断は捨てるか捨てないかの1つだけにするのです。
私は迷ったときは、捨てることにしています。
2.ストレスの軽減+新しいことに挑戦する
ふだんの生活において、余計なストレスを感じないようにします。
そのために、否定的な考えや、ネガティブ思考はできるだけ手放したほうがいいです。
ネガティブであることにもメリットはあります。楽観的な人より、ネガティブな人のほうが、現実をより客観的に見ていると言われます。
楽観的な人は、危険な要素を無視して、自分に都合よく解釈しているのです。
ただネガティブ思考が自分にとって利益になるのは、危険な状況においてです。
不用品の断捨離に失敗しても、べつに命の危険などありません。経済的に大きなダメージをこうむることもないです。
むしろ、思い切って捨てないと、暮らしの質は変わりません。
前向きな態度を保つことがうまく捨てるコツの1つではないでしょうか?
また、コンフォートゾーンにぬくぬくとおさまっていないで、常に新しいことにチャレンジします。
チャレンジ精神を持つことは、アンチエイジングにも効果があります⇒小さな工夫が違いを生みます。長生きできる15の生活習慣
3.完璧主義を手放す
この点については、すでに過去記事にも何度か書いています。
「捨てちゃいけないものを捨てないように」とか「絶対後悔したくない」と思いながら捨てるのは、そもそも非現実的です。
捨てて困るものってそんなにないですし、パスポートなど捨てるべきでないものは、最初から捨てようとは思いません。
「これ、もういらないかもね」と思うなら、その時点で、その物は「いらない物」の判定が下っています。
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不用品を捨てることもスキルの1つなので、いろいろ言い訳しながら捨てないでいると、いつまでたっても捨てられる人になりません。