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認知行動療法(にんちこうどうりょうほう CBT)の考え方を応用して、片付けられない人から片付ける人になるヒントをお伝えします。
CBTは汚部屋脱却だけでなく、ストレスが多い、どうしてもネガティブな考えに走ってしまう、どうしても買い物が止まらない、こんな悩みがある人にも役立ちます。
まず認知行動療法とは何なのか、ごく簡単に説明します。
認知行動療法とは?
認知行動療法は情緒障害や気分障害の心理療法の1つです。英語でCognitive behavioral therapy と言うので頭文字をとってCBTと呼ばれることもあります。
CBTはほかの心理療法に比べて、うつ病、パニック障害、不安障害、摂食障害、不眠症などさまざまな精神疾患の治療に短時間で効果があるとされています。
認知と書くと難しいのですが、要するにその人の「事実の受け取り方」のことです。
認知療法ではその人の考え方を変えていきます(これについてはあとで詳しく書きます)。
行動療法は、行動することで治療します。
たとえば大勢の人の中にいると不安になり吐き気がするなら、状況を少し変え、段階的に行動することで治します。
まずは庭を歩く、つぎに近所を歩く、そのつぎは隣町まで自転車で行くなど、次第に行動範囲を広げていきます。
認知行動療法はこの2つの療法を合わせたものです。
治療は精神科医、認知行動療法士、心理学者などがします。ですが、ふつうの人でも基本的な考え方を学べば、自分で自分の考え方の癖を修正することができます。
CBTは精神疾患の治療だけでなく、日々のストレスの軽減や、自己啓発にも応用可能です。
たとえ専門家に治療を受けたとしても、自分はずっと自分の認知(考え方)に支配されているので、結局は自分で気づくしかないような気もします。
薬を使う精神疾患の治療は、脳内の神経伝達物質を物理的に変えるやり方です。
認知行動療法は薬を使わず、患者の考え方の癖を掘り下げて修正します。
そもそも認知とは?
認知とは、わかりやすく書けば、その人の物の見方です。認知は「感情」とは違います。
コップの中に水が半分まで入っていると、楽観的な人はまだ半分あると思うし、悲観的な人はもう半分しかないと思います。
これを認知と感情にばらして書くと、
状況:コップの中に水が半分入っている
認知:まだ半分ある。もう半分しかない。ただ単に水がコップに半分ある。
感情:悲しい。うれしい。何の感情もわかない。
行動:落ち込んで何も手につかない。うれしいから新しいことにどんどん挑戦。いつも通りに暮らす。
こんな感じになります。
これはとてもシンプルに書いています。認知、感情、行動とももっといろいろなパターンがあります。
とくに感情はさまざまです。状況によっては、時には相反する感情が生まれます。
ポイントは、人が悲しい、うれしい、悔しい、うんざりする、と思うのは(これは感情です)できごとのせいではなく、自分の認知がそうさせている、ということです。
だから同じようなできごとが起きてもやたらとポジティブな人もいれば、ネガティブな人もいるのです。
認知は考え方ともいえます。「7つの習慣」という本では「パラダイム(paradigm)」という言葉で説明されています。
パラダイムというのも、日本人にはなじみにくい言葉ですが、もともとは哲学用語です。
人は誰しも、物ごとをあるがままに見ていると思い込んでいるけれど、実はその人なりの「考え方」を適用して見ています。
この「考え方」がパラダイムです。
パラダイムはものの見方を根本的に決めている概念の枠組みです。
無意識にかけている色眼鏡とも呼べます。
このメガネの色を専門家のサポートを受けながら変えて、さらに行動も変え、望ましい感情の状態を得るのが、認知行動療法のゴールです。
認知行動療法のキーワード
CBTの概念で重要なキーワードが3つあります。
認知のゆがみ
認知のゆがみとは、物ごとを受けとめるときの癖です。
ネガティブな人は、無意識のうちにゆがんだ物の見方をしています。
うつや不安障害の人に多い認知のゆがみにはこんなものがあります。
1.根拠なく決めつける
2.一部だけ見る
3.悲観的、破局的に見る
4.過小評価、過大評価
5.白黒思考(全か無か)
6.「べき」思考
7.自分に関連づける
8.人の思考を読む
9.自分を責める
※以上は「マンガで見る認知行動療法 Kindle版」より引用しました。
「物を捨てられない人」の思考にありそうな、それぞれのゆがみの例をあげてみます。
1.根拠のない決めつけ
「使っていないタオルがたくさんあるけれど、きっといつか必要になる」。「誰も使っていない古い布団があるけれど、将来使うときが必ずくる」。
こういうのは全く根拠がありません。
2.一部だけ見る
たくさんあって邪魔になっている古いぬいぐるみを捨てることには、メリットもデメリットもあります。しかし認知のゆがみがひどい人はデメリットしかみません。
◆ぬいぐるみを捨てるメリット
・スペースがあく。
・見るたびにうんざりすることから解放される。
・もう洗濯しなくてもすむ。
・ほこりが減るので、アレルギー症状が緩和される。
◆デメリット
・もしかして将来孫が使うかもしれない。
・全部捨てちゃうと寂しくなるかもしれない。
・売ればいいお金になるのにもったいない。
・ぬいぐるみを買ってくれたお母さんに怒られるかもしれない。
・寝る時抱きしめるものがなくて夜、眠れなくなりそう。
どんな物ごとにも良いことと悪いことがあります。認知がゆがんでいると、悪いことばかり考えてしまいます。
3.悲観的に見る
何でも悪いほうに考えます。「タオルを捨てると後悔するに決まってるわ」とか。
4.過小評価、過大評価
・物を捨てても何もいいことない(過小評価)。
・洋服を捨てていつも同じ服を着てたらダサい人って思われて最悪な人生になる(過大評価)。
5.白黒思考
これはオールオアナッシングの考え方です。
「これを捨てちゃって、もし将来必要なときがきて、これがなかったら、それは私の人生の終わりである」といった考え方です。
6.「べき」思考
贈り物は全部とっておくべきだ。お見合いにはスカートをはいていくべきだ。大人の女なら白いシャツを持っているべきだ。
7.自分に関連づける
なんでも自分に関係のあること、自分個人にかかわることとして受けとめることです。
「同僚がよそよそしいのは、私が汚部屋に住んでいることを誰かから聞いたからだわ」。
8.人の思考を読む
自分勝手に相手の考えていることを作ってしまうことです。
「上司は汚部屋に住んでいる私のことを軽蔑しているんだわ。だからなかなか稟議書にはんこを押してくれないんだ」。
9.自分を責める
「みんな私が悪いんだ。私のせいで汚部屋になってしまって、結婚もできないし、両親も不幸なんだわ。私なんてこの世にいないほうがいい人間なんだ」。
スキーマ
スキーマはその人の認知の核となるものです。
なぜそんな考え方をしてしまうのか、根本となる決定的な考え方です。強い思い込みです。信念と呼ばれることもあります。
自分はなぜそう思うのか、どんどん深掘りしていくと核にぶちあたります。
片付けられない人の核は人によって違うでしょうが、セルフエスティームが低すぎることが核であることが多いかもしれません。
セルフエスティームとは?⇒セルフエスティーム(自分を愛する気持ち)が高い人の12の特徴
スキーマは心の奥底にあるので、深掘りしないと出てきません。
子供のころの体験から始まり、長い時間をかけてできるものもあれば、わりと最近のできごとが原因でできることもあるそうです。
自動思考
いろいろなできごとに対して、ごく自然に無意識に出る思考です。
捨てられない人にとっては、「まだ使えるものは捨てちゃだめ」というのが自動思考になるでしょうか。
スキーマがあるから、そういうふうに自動的に反応しているのです。
スキーマを修正することで、「捨てることもありだな」と考えられるようになります。
汚部屋を片付けられない認知を修正する簡単な方法
認知行動療法にはいろいろなメソッドがありますが、「マンガで見る認知行動療法 Kindle版」にのっていた認知のコラム表を書く方法を紹介します。
汚部屋を片付けられない人になるためのやり方です。AからEまで順番に紙に書いてください。
A.状況、できごと
まず外的状況を書きます。
私の部屋はひどい汚部屋である、ができごとです。
B.認知
汚部屋に対する自分の見方を書きます。ここは自動思考の部分です。
・私は片付けられない女なんだ。
・もう一生汚部屋なんだ。
・誰も私を助けてくれない。
C.感情
認知によってわきあがった自分の感情を書きます。
たとえば、怒り80%、ゆううつ70%、不安70%。パーセンテージは自分で感情の程度を0から100で表します。どんな感情であるのかも自分で考えます。
これは先日紹介した、感情にラベルをつけるのと似ています。
感情にラベルをつける話⇒『すごい開運おそうじBOOK』(宝島社)に筆子監修記事が掲載されています。 下のほうにある「美しいココロの作り方」をごらんください。
D.反論
Bの自動思考に対して、自分で反論します。別の見方、もっと客観的な見方を書いてみます。
たとえば
・若いときはきれいな部屋に住んでいた。だから片付けられないってことはないと思う。
・今、たまたま残業が多い時期だから、掃除をする時間がないだけだ。
・片付けられないんじゃなくて物が多すぎるのかも。
・誰にも相談していないのに、誰も助けてくれないなんて決めつけるのはおかしい。
E.現実的、適応的な見方
BとDを見て、自動思考ではなく、もっと現実的な見方を書きます。
たとえば、
・自分が片付けられないんじゃなくて、物が多すぎるのと、時間がないのが問題なのかもしれない。
その後、もしEのように受け止めていたら、その後の感情の程度はどのぐらいだったのか考えます。
こういう練習を何度もして、できるだけ理性的に考えられるように自分を変えていきます。
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認知のゆがみというと、なんだかひどい病気のように聞こえますが、要するに脳の機能がちょっと弱っているだけです。
こういう時は、周囲のできごとに感情的に反応してしまいます。
できごと⇒認知⇒感情という流れを意識して、自分の行動を掘り下げていくと、もっと主体的に考えられるようになり、悩みやストレスも減っていくのです。
ネガティブ思考改善のためにスピリチャルな方向にいく人も多いです。
私は認知行動療法を参考にし、自分の気持ちを客観的にみることで主体性を取り戻すほうがいいと思います。
そのほうがお金もかかりません。