寝ている人

TEDの動画

最終更新日: 2019.03.26

しっかり眠ることが大切なもう一つの理由(TED)

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睡眠をしっかりとることは、ひじょうにシンプルですが、究極の健康法です。

ところが、この事実を無視して、睡眠不足で突っ走ろうとする人が、まだまだ多いですね。

そんな、睡眠を大事にしない人に見てほしい、TEDの動画を紹介します。

タイトルは、One more reason to get a good night’s sleep(よりしっかり眠るべきもうひとつの理由)。プレゼンターは神経科学者のジェフ・イリフ(Jeff Iliff)さんです。

脳は人が眠っているときだけ、老廃物を除去している、つまり、掃除をしている、という話です。



夜ちゃんと寝るべきもうひとつの理由:TEDの説明

The brain uses a quarter of the body’s entire energy supply, yet only accounts for about two percent of the body’s mass. So how does this unique organ receive and, perhaps more importantly, rid itself of vital nutrients? New research suggests it has to do with sleep.

脳は、全身が使うエネルギーのうちの4分の1を消費していますが、その重さは、全身の2%です。

このユニークな臓器は、どうやって栄養を受け取り、さらに、もっと重要なことですが、老廃物を捨てているのでしょうか?

新しいリサーチによって、それは睡眠と関係しているとわかりました。

収録は2014年の9月。動画の長さは11分半です。日本語字幕があるので、抄訳は簡単に書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Jeff Iliff: One more reason to get a good night's sleep | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

寝ると気分がスッキリするのは誰でも知っているけれど

人は一生のうち1/3を睡眠に費やします。睡眠がなんであるのか、本当に理解している人はいるでしょうか?

2000年前、古代の著名な医学者であったガレン(ガレノス、Galen)は、こんな説をとなえました。

起きているあいだ、脳のパワーのもとになる液体が全身に流れこみ、脳は干からびる。しかし、夜になると、その液体がまた脳に流れてきて、また脳は元気になる。

現代の私たちにとっては、完全にばがけた考え方ですが、ガレンは、毎日の睡眠について説明したかったのです。

誰もが、寝れば気分がスッキリするとわかっています。寝ないと、頭がぼんやりしてしまうことも。

ガレンの時代に比べれば、睡眠についてずいぶんたくさんのことがわかっているのに、睡眠が、こうした精神の回復機能をになっているその理由はわかっていません。

きょうは最近研究でわかったことをお伝えします。

睡眠は、脳という、ほかの臓器とはずいぶん違う臓器の基本的なニーズを満たしている、という話です。





栄養は血管を使って運ばれる

どんな臓器もいくつかの問題を解決しなければなりません。

第一の問題は、栄養分を受け取ることです。複雑な電気交換をしている脳は、供給されたエネルギーの1/4を使っています。

その重量は全身の2%だけなのに。

栄養の供給は、全身をめぐる血管によって行われています。

これは、生きたネズミの脳内の血管です。脳の表面から、その下まで、血管がひろがっているのが見てとれます。

この血管をとおって栄養分と酸素が脳細胞に届きます。

ふつうの臓器のゴミはリンパシステムを使って集める

細胞は栄養分を必要とするだけでなく、老廃物を捨てる必要もあります。

老廃物を捨てることは、臓器が解決すべき2つめの問題です。

この図は人のからだのリンパシステムを描いたものです。

血管と並んで、リンパ管が全身をめぐっています。このリンパ管が老廃物を集め、血液中に捨てます。

しかし、よく見てみると、理解できない部分が見つかります。脳内には、リンパ管がないのです。

不思議ですよね? 脳はひじょうに活発に働いているから、老廃物もたくさん出ます。

何らかの形で老廃物を捨てているはずです。

脳にはリンパ管がないので、体内のほかの臓器とは違う方法で、老廃物を除去していると考えられます。

ではどうやって脳は、老廃物を捨てているのでしょうか?

脳はCSFを使ってゴミを捨てる

私たちのチームが研究したところによると、脳内にあるニューロンと血管には思ってもみないやり方で老廃物を捨てていたのです。

脳には、脳脊髄液と呼ばれる無色透明の液体があります。この液体をCSFと呼んでいます。

CSFは脳の周囲を満たしていて、脳内の老廃物は、CSFにしみこみ、ほかの老廃物と一緒に血管にゴミとして捨てられます。

つまり、CSFはリンパシステムと似た働きをしているのです。

興味深いのは、脳の中のゴミがCSFにランダムにしみこむわけではないことです。特別なシステムがあります。

ネズミの脳内のビデオを見ていると、脳の周囲にあるCSFは血管の外壁に沿って脳内を流れ、その外壁から、脳内にしみこんでいきます。

脳は頭蓋で囲まれ、中は細胞がびっしり詰まっていて余分なスペースはありません。

脳内に広がっている血管にそって、CSFが脳内に流れ込むのは、うまいやり方です。

必要に応じて、血管をリンパ管のように使っているから、脳内にはリンパ管がないのです。これは脳特有の老廃物の処理方法です。

老廃物は睡眠中に除去される

さらに驚くべきことは、これまでお話しした、老廃物の除去は、睡眠中にのみ起きるということです。

このビデオを見ると、ネズミが起きているあいだに、どのぐらいCSFが脳内を流れているかわかりますが、ほとんど動いていません。

しかし寝ている間は、CSFが脳内をかけめぐっています。

寝ている間は、脳の細胞そのものもいくらか縮小し、CSFが流れるスペースを作っていることも見てとれます。そうやって、脳内の老廃物を掃除しているのです。

寝ている間に、脳に液体が注ぎ込むと考えたガレンは、いい線をいっていた、と言えます。

彼の時代から2000年たって、私たちが発見したのは、人が起きているときは、脳がもっとも忙しい時間なので、掃除を後回しにしているということです。

寝ているときは、起きているときほど忙しくないので、クリーニングモードになり、日中、細胞の間にたまったゴミを捨てているのです。

私たちが、平日は忙しく、家事をする時間がないため、週末にまとめて家事をするのに似ています。

老廃物のほとんどはアミロイドβ

このように、脳は老廃物を出していますが、健康でいるために、どんな老廃物を出しているかは、まだお話ししていませんでした。

最近の研究では、脳が捨てている老廃物の大半は、アミロイドβ(ベータ)だとされており、この物質に注目が集まっています。

アミロイドβは脳内で常に生成されているタンパク質です。

いま、私の脳も皆さんの脳も、アミロイドβを出しています。

アルツハイマー病の患者の脳内では、細胞の間にアミロイドβがたまっています。

本来なら、掃除されるべきであったアミロイドβが残っているのです。

アミロイドβがたまることが、この病気を引き起こす要因の一つではないか、と考えられています。

そこで、どのぐらいの速度でアミロイドβが掃除されるのか、起きているときと寝ているときを比べてみました。

すると、寝ているときの脳のほうが、ずっと早く、アミロイドβを掃除しているとわかったのです。

老廃物を捨てないと身体によくない

もし睡眠が、脳の老廃物除去を可能にするものだとしたら、この発見は、睡眠や、アミロイドβ、アルツハイマー病に対する見方を劇的に変えます。

最近の臨床試験によれば、まだアルツハイマー病を発症していない人の睡眠の質や長さが低下すると、アミロイドβがたまっていくことがわかっています。

これだけでは、睡眠不足や、質の悪い睡眠のせいで、アルツハイマー病になる、とは言い切れません。

ですが、脳がアミロイドβのような老廃物を除去しないと、アルツハイマー病のような状態になるかもしれない、とは言えます。

この新しい研究からわかることは、みなさんがよく知っている睡眠のメリット、つまり、気分をリフレッシュさせ、スッキリさせてくれるということは、睡眠の基本的かつ重要な働きではないのか、ということです。

私たちは毎晩寝ますが、脳は、決して休むことはないのです。

身体は動かず、心は夢見ているときも、脳という精巧な機械は、人知れず掃除やメンテナンスをがんばっているのです。

それは家事のように、汚くて、誰からも感謝されない仕事ですが、とても重要なことなのです。

もしキッチンを1ヶ月掃除しないと、その家には住めたものではありません。脳内で、掃除をためることは、台所のカウンターが汚れて恥ずかしい、なんでいうことよりもっと重大な結果を生みます。

脳の掃除は、心と身体の健康や機能に大きくかかわっています。

いま、この脳の基本的な働きについて理解することは、後で発症するかもしれない、ころの病気を予防し、治療することに不可欠なのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味と関連記事

Cerebrospinal Fluid 脳脊髄液(のうせきずいえき)、CSF

睡眠に関する別のTEDの記事⇒なぜ人は眠るのか?睡眠の大切さを忘れていませんか?(TED)

睡眠に関する記事をまとめています⇒睡眠不足や不眠に悩むなら読んでほしい眠りに関する記事のまとめ。

アルツハイマー病について⇒アルツハイマー病を予防するためにできること(TED)

睡眠より大事なことってどんなこと?

脳は人が寝ている間に、自分自身を掃除しているから、夜はちゃんと寝ないとだめだよ、というプレゼンを紹介しました。

起きているときは、常に外界から刺激が入ってくるから、脳はその処理に忙しく、掃除している余裕なんてないんでしょうね。

睡眠について研究が進めば進むほど、睡眠をないがしろにしてはいけない、という結論が強固になっていると思います。

けれども、人間は、自分が見たいものしか見ないため、それこそ自分が倒れるとか、決定的な証拠を突きつけられないと、睡眠をしっかりとる生活にシフトしませんね。

「寝落ち」という言葉がありますが、そんなに眠くなるまで、みんないったい何をしているのでしょう?

日本は、豊かな社会になったから、寝ずに働かないと生きていけない、という人はそんなにいないと思います。

生きるのにどうしても必要なことをするために、睡眠時間を削っているのではなく、そこまで重要ではないことをするために、とても大事な睡眠をおろそかにしているのです。

以前、こんな記事を書いていますが⇒なぜみんないつも睡眠不足なの?人が夜しっかり寝ない6つの理由。

睡眠を重要視しない人は、寝るその時間がもったいない、と思っているのでしょう。

もったいない、と思うその背後には、「もっと、もっと、お金がほしい」「もっと、もっと、あれも、これもしたい」という拡大をよしとする思考(モア・イズ・ベター)があるんじゃないでしょうか?

その底には、「足りないマインド」があります⇒足りないもの探しをやめればそれだけで豊かになる

あるいは、「もっとこれをがんばって、すごい人と思われたい」という承認欲求があるのかもしれません。

その「もっと、もっと!」という気持ちが、自分の身体を痛めつけていることに気づいてほしいと思います。

****

家の中も、脳内も、ゴミや老廃物をさっさと捨てないと機能不全に陥ります。

いらないものを捨てることは、必要なものを入れることと、同じぐらい重要ですね。入れっぱなしはよくありません。





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