アルツハイマー病

TEDの動画

アルツハイマー病を予防するためにできること(TED)

60歳をすぎると、アルツハイマー型認知症になる可能性があがります。

アルツハイマーを防ぐ方法を教えてくれるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、What You Can Do to Prevent Alzheimer’s (アルツハイマーを予防するためにできること)。

講演者は、脳科学者であり作家のリサ・ジェノヴァ(Lisa Genova)さんです。

ジェノヴァさんは、Still Alice(邦題:アリスのままで)という、若年性アルツハイマーになったアリスを主人公にした小説を自費出版しました。

小説はベストセラーになり、映画化もされました。



アルツハイマーを予防するためにできること:TEDの説明

Alzheimer’s doesn’t have to be your brain’s destiny, says neuroscientist and author of “Still Alice,” Lisa Genova. She shares the latest science investigating the disease — and some promising research on what each of us can do to build an Alzheimer’s-resistant brain.

あなたの脳の行くつく先が、アルツハイマーである必要はありません。

脳科学者で、”Still Alice”を書いたリサ・ジェノヴァはこういいます。

アルツハイマー病に関する、最新の科学情報を伝えながら、リサは、アルツハイマーになりにくい脳をつくるために、私たちが個人でできることを紹介します。

動画の長さは14分です。日本語字幕があります。動画のあとに抄訳を書きます。

アルツハイマーはみんなの問題

誰もが長生きしたいと思っています。

85歳になった自分を思い浮かべてください。2人のうち1人はアルツハイマーにかかっています。

「自分はそうならない」と思っていますか?

その場合、きっと介護をしているでしょう。

アルツハイマーは、私たち全員に影響を与える病気なのです。





アルツハイマーの治療法はないが

この病気が怖いのは、治療できないからです。何年も研究されていますが、いまだに治療法が見つかっていません。

運よく長生きできても、アルツハイマーにかかる可能性が高いのです。

ですが、そうである必要はありません。治療法や薬に頼らなくても、自分の脳の運命を変えることができます。

現時点でアルツハイマーについて脳科学でわかっていることを見てみましょう。

なぜアルツハイマーになるのか?

これは2つのニューロン(neuron 神経細胞)がつながっている絵です。つながっている場所は、シナプス(synapse、神経細胞の接合部)と呼ばれます。

シナプスでは、神経伝達物質が放出されます。シグナルが伝わり、コミュニケーションが起こります。

考えたり、感じたり、見たり、聞いたり、何かを欲したり、記憶する場所です。

アルツハイマーは、このシナプスに発生します。

シナプスの絵を見てみましょう。情報がやりとりされるとき、神経伝達物質が出るだけでなく、アミロイドβと呼ばれるペプチド(アミノ酸化合物)も出ます。

ふつう、アミロイドβは小膠細胞(しょうこうさいぼう、microglia)によって除去されます。

アルツハイマーの分子レベルの原因については諸説ありますが、脳科学者の多くは、アミロイドβがたまると、アルツハイマー病が始まる、と考えています。

アミロイドβの放出が多すぎるか、しっかり除去されないとアミロイドBがたまっていくのです。

すると、アミロイドプラークという固まりができます。

アミロイドプラークが病気の始まり

40歳をすぎると、すでに脳内に病気の初期段階である、アミロイドプラークが見られます。

PETスキャンをしないとわからないので、アミロイドプラークがあっても気づきません。まだ記憶や言語、認知の障害は出ません。

アミロイドプラークができてから15~20年たつと、もう後戻りできないところ(tipping point、以降、限界ポイントと訳します)に達し、病気の症状が出ます。

限界ポイントに到達する前でも、物忘れすることはあります。

「あれ、何しにこの部屋に来たんだっけ?」

「あの人の名前、何だっけ?」

「鍵、どこに置いたかな?」

こんな物忘れです。

これは異常ではなく、よくあることです。

記憶に関係ないとすら言えます。

というのも、鍵をどこかに置いたとき、人は、そこに意識を向けていないからです。

アミロイドプラークがたまりすぎると

限界ポイントをすぎると、記憶、言語、認知に変化が起きます。

置き忘れた鍵を、冷蔵庫の中で見つけたり、鍵を見つけたあと、「これって、何に使うものなの?」と思うようになります。

アミロイドプラークが限界までたまってしまうと、小膠細胞は、異常に活性化し、炎症を起こしたり、分子を損傷してしまう物質を放出します。

この物質のせいで、シナプスそのものがなくなってしまうと考えられています。

神経の伝達に不可欠なタウと呼ばれるタンパク質が、過剰にリン酸化して、ねじれてしまい、「もつれ(tangles)」を起こし、ニューロンを中からこわします。

アルツハイマー病の中期段階になると、炎症ともつれがかなりすすみ、シナプスを破壊し、細胞を殺します。

手遅れになる前に予防をすることが重要

多くの専門家は、アミロイドプラークが限界までたまらないようにするのが一番だと考え、プラークをためない、除去する、減らす薬の開発にいそしんでいます。

つまり、アルツハイマー病の治療は、予防薬にあると言えるでしょう。

こうした薬が、臨床試験でうまくいかないのも、そこに理由があると言えます。薬を生み出した科学に問題があるのではありません。

それを試す人々に、すでにアルツハイマーの症状が出ているからです。

この段階で、薬を使っても手遅れなのです。

アミロイドプラークを火のついたマッチだと思ってください。

限界ポイントになると、マッチの火が山火事を起こします。いったん山火事になると、マッチの火を消したところで、何も変わりません。

山火事になる前に、マッチの火を消さなければならないのです。

この問題を解決できなくても、アミロイドプラークに関する情報は私たちにとって、いいニュースです。

日常生活で、アミロイドプラークがたまりすぎないようにすればいいのですから。

加齢と遺伝子は変えられない

限界ポイントまでためないために、できることがいくつかあります。

自分がアルツハイマーにかかるリスクをシーソーを使って考えてみましょう。

病気にかかるリスク要因を片方のシーソーにのせ、それが地面に達したら、アルツハイマーと診断される、とします。

あなたは50歳だとしましょう。もう若くはありませんから、アミロイドプラークがあります。

少しシーソーが下がります。

DNAはどうでしょうか? 遺伝によって、病気のリスクがあがったり下がったりします。

もし「アリスのままで」のアリスのように、アミロイドβをためやすい、ごくまれな遺伝子を持っていたら、これだけで、シーソーは地面に落ちます。

しかし、ほとんどの人の遺伝子は、ほんの少し、シーソーを下げる程度です。

APOE4(アポリポタンパクE)という遺伝子は、アミロイドを増やしますがが、両親それぞれからこの遺伝子をもらったとしても、アルツハイマーにはなりません。

ほとんどの人は、DNAのせいだけで、アルツハイマーになることはないのです。

年をとることや、自分が受け継いだ遺伝子をどうにかすることはできません。この2つに関しては、脳の運命を変える手立てはありません。

睡眠不足だとリスクがあがる

睡眠はどうでしょうか? 

深い睡眠(ノンレム睡眠)中は、グリア細胞が、CSF(脳脊髄液 のうせきずいえき)を用いて、脳の中を洗浄しています。起きているとき、シナプスにたまった老廃物を取り除いているのです。

深い睡眠は、脳の強力なクレンザーです。

多くの専門家は、睡眠不足はアルツハイマーにつながる、と考えています。

一晩、眠りが足りなかっただけで、アミロイドβが増えます。アミロイドが増えると、よく眠れなくなるので、ますます、アミロイドがたまります。

睡眠不足だと、シーソーが下がります。

心血管の健康も重要

高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、高コレステロールはみな、アルツハイマーにかかる確率をあげます。

ある検死の研究によると、アルツハイマーにかかっている人の8割が循環器の疾患にもかかっていました。

動物を使った実験では、エアロビクスをすると、アミロイドβが減少します。

心臓の健康にいい地中海式のライフスタイルや食事はスケールを上げるのに役立つでしょう。

こんなふうに、自分でできる予防法はたくさんあります。ですが、何の予防もしていない状態を考えてみましょう。

もし、全く予防していなかったら

あなたは65歳だとします。家族にアルツハイマーの人がいるから、その遺伝子をもらっています。

いつも睡眠不足でベーコンが好き。誰かに追いかけられない限り、走りません。

アミロイドプラークが限界ポイントに達したとしましょう。シーソーは地面に落ちます。

炎症やもつれがおきて、細胞が死にます。

アルツハイマーになり、言葉も鍵も忘れ、何も覚えていられません。

ですが、そうならない可能性もあります。

アルツハイマーになっても発症しない人

脳内がしっかりアルツハイマー病の状態でも、発病させない方法があります。

アルツハイマーとは、シナプスを失うことです。

通常の脳には100兆を超えるシナプスがあります。しかも、シナプスは増えたり減ったりします。この状態を神経可塑性と呼びます。

何か新しいことを学ぶたびに、新しい神経の結合、つまりシナプスが生まれます。

修道女の研究

75歳以上の修道女、678人を20年以上、調査した修道女の研究(Nun Study、ナン・スタディ)があります。

修道女は定期的に健康診断と認知機能のテストを受けました。亡くなったら、脳は、検死に寄付されました。

アミロイドプラークやもつれがあり、脳が収縮し、明らかにアルツハイマーを発症しているのに、その症状が出ていなかった修道女がいました。

どうしてそんなことが起きるのでしょうか?

認知の予備力とは?

高い認知の予備力(cognitive reserve)があったからだと考えられています。

よりたくさんのシナプスが機能していたのです。

正式な教育を長く受けている人や、読み書きの能力が高い人、定期的に、精神に刺激のある活動をしている人は、より多くの認知の予備力を持っています。

シナプスが豊富なのです。

一部のシナプスがアルツハイマーになっても、正常なシナプスがたくさん残っているから、特に問題は出ないのです。

簡単な例をあげますね。

ある事柄について、たった1つだけ知っているとします。

私について知っているとしましょう。

リサ・ジェノヴァは「アリスのままで」を書いたと知っています。私について知っていることがこれだけだと、神経回路のつながりは一つだけです。

アルツハイマーになって、このシナプスがこわれたら、「アリスのままで」を書いた人は誰? と聞かれても、思い出せません。

私のことは永遠に忘れます。

ですが、私に関するほかのことを複数、学んでいたとしたら? 脳神経科学者であることや、TEDで講演したことなど全部で4つ知っていたら?

シナプスが3つこわれても、1つでもつながりが残っていたら、私の名前を思い出せます。

新しいことを学ぶと認知の予備力が増える

認知の予備力は新しいことを学ぶとできます。

理想は、できるだけ意味のあることを学ぶことです。目に見え、耳で聞こえ、何かに関連があり、感情を動かすものです。

クロスワードパズルを解くのは、効果がありません。

すでに学んだ情報を取り出すだけですから。それはすでによく知っている道を歩くだけです。

新しい神経の道を作らなければなりません。

外国語を話すことを学んだり、新しい友だちを作ったり、本を読んだり、すばらしいTEDトークを聞いたりすると、アルツハイマーになりにくい脳を作れます。

アルツハイマーは死ではない

いろいろ努力したにもかかわらず、ある日、アルツハイマーだと診断されても、祖母やたくさんの患者から得た教訓が3つあります。

アルツハイマーだと言われても、明日死ぬわけではありません。生き続けてください。

感情的な記憶を失うことはありません。愛や喜びを感じることはできます。

私が5分前に言ったことを忘れてしまうかもしれませんが、私があなたをどんな気持ちにさせたかは覚えています。

それに、人の価値は、どれだけ物を覚えていられるかでは決まりません。

///// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

tipping point  ここを過ぎたらもう後戻りできない限界地点。tip は先端のことです。

hyperphosphorylated 過剰リン酸化

choke off  窒息させる、絞め殺す

all-out war 全面戦争

clinical trials   臨床試験、治験

glial cell グリア細胞

cerebral spinal fluid 脳脊髄液(のうせきずいえき)、CSF

neural plasticity 神経可塑性

睡眠中に脳が老廃物を掃除している話はこちら⇒しっかり眠ることが大切なもう一つの理由(TED)

リサ・ジェノヴァさんの本、「アリスのままで(Still Alice)」

こちらは、修道女の研究について書かれた本、「100歳の美しい脳」

つねに前向きに、新しいことに挑戦する

アルツハイマーを予防するためには

●睡眠をしっかりとる

●心臓の健康にいいこと、つまり有酸素運動をする

●健康的な食事をとる

●新しいことを学ぶ

この4つをやるといい、とジェノヴァさんは言っています。

どれも心身の若さを保つのに有効だと言われている方法で、特に新しさはないですが、年をとったあとも、そういう生活を続けられるかどうかがポイントです。

年をとるといろいろなことがめんどくさくなる、と言われます。

文字を読むのがめんどうだし、新しいことを始めるなんて、とんでもない。

「もう60/70/80歳だから、そんなことは無理無理」という考えが先にたち、まわりからもそう言われる。

考え方もワンパターン。何かを深く掘り下げて考えることもしないし、新しい価値観なんてものにはまるで興味がない。

こういう生活はシナプスを減らす生き方です。

便利で簡単なことばかり求めて、楽をしていると、神経回路のつながりが切れる一方です。

私もがんばりますので、みなさんもいろいろ新しいことに挑戦してください。

*****

修道女の研究では、若いころの作文の比較もされています。

アルツハイマーになった人は、ごくシンプルな(あまり深く考えていない)作文を書き、ならなかった人は、感情のこもった豊かな文章を書いていました。

何かを考えるとき、あっさり思考停止しないことも、病気の予防に役立つでしょう。





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