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最終更新日: 2022.02.21

自分にやさしくして、脳の神経回路を書き換える(TED)

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セルフコンパッションに関するTEDトークを紹介します。

セルフコンパッションは自分にやさしくすること。その反対は、自分にダメ出しをすることです。

タイトルは、Dare to Rewire Your Brain for Self-Compassion (あえて神経回路を換え、自分にやさしくする)。

心理学者の Weiyang Xie(ウエイヤン・シエ)さんのスピーチです。



神経回路を書き換える・TEDの説明

When Weiyang Xie first came to the United States as an international student, she was excited to pursue her dreams, yet filled with overwhelming insecurity and anxiety.

In this talk, she will share her ingredients of self-compassion that can help audience members overcome shame in their own lives, empower them to take risks, and lead them to self-empowerment and authentic living.

留学生としてアメリカに来たとき、ウエイヤン・シエは、夢を叶えようとわくわくしていましたが、同時に、不安と恐怖に圧倒されていました。

このトークで、彼女はセルフコンパッションをもつコツをシェアします。聴衆が、人生における羞恥心を克服して、チャレンジし、自分を力づけ、本当の自分を生きることを助けます。

収録は2018年の4月、動画の長さは16分。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Weiyang Xie: Dare to rewire your brain for self-compassion | Weiyang Xie | TEDxUND | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

シエさんはとても誠実そうな方ですね。





いつも不安だった

私は大学でカウンセリングの仕事をしている心理学者で、メンタルヘルスの専門家と言えます。

ですが、10年前、留学生として初めてアメリカに来た時、私自身、不安がいっぱいあり、自信をなくしていました。

不安な気持ちとたたかっていたんです。

仕事を始めてからも変わらず、頭の中は、ネガティブな言葉でいっぱいでした。

– あなたは無能よ。

– 失敗するに決まってる。

– 患者はあなたのことが大嫌いよ。

– 今すぐ、やめたほうがいいわ。

はじめて、心の問題をかかえる患者をカウンセリングしたとき、セラピストの椅子に座っていた私自身が、とても不安だったのです。

顔はトマトのように赤くなり、心臓はドキドキし、手には汗をかきました。

その場から逃げ出したいと思いました。

そうしなかった唯一の理由は、そんなことをしたら、隣の部屋で様子を見ている指導官に、すごく怒られると思ったからです。

自分を恥じる気持ちが不安をもたらす

不安に囚われたままでは、自分の能力を発揮できないと感じた私は、どうしてこんなことが起きるのか調べました。

それでわかったことは、誰にでもある羞恥心(shame)のせいで、不安になるということです。

それは、自分自身に対するネガティブな見方と批判です。

– 私は十分ではない

– 私にはそんな資格はない

– 私は劣っている

– 私は皆に嫌われている

– 一人で死ぬんだ

– 私は馬鹿で無能だ

恥ずかしく感じることは、単なる自己批判以上のものです。

この気持ちがあるから、自分で自分を非難します。

この気持ちは恐怖、悲しみ、不満、怒り、嫉妬など、私たちが感じるさまざまな感情のもとです。

多くの感情の問題や、問題行動の原因でもあります。低い自己評価、不安、うつ、自殺願望、依存、暴力、人種差別など。

羞恥心と罪悪感の違い

羞恥心は、罪悪感とは違います。

罪悪感は、自分がしたことに対する気持ちです。たとえば、「よくないことをしてしまった」と思うこと。

羞恥心は、自分自身に対する気持ちです。「私は、バカだ、つまらない人間だ」。

罪悪感は、ときに、私たちによい行動をさせますが、自分を恥ずかしいと思うことは、いついかなる時も、自分を傷つけ、おとしめるだけです。

羞恥心は、今や、私たちの生活にはびこっている病気です。

多くの人の頭の中に、「私は十分ではない」という言葉があるのではないでしょうか?

私たちは、いつも、自分を責めています。

十分賢くない、十分やっていない、友人やチーム、コミュニティに、十分貢献していない、と。

実際、そうできるようになったとしても、自分自身を十分ケアしていないと思います。

身近な人や、家族に対して、十分なことをしていないと。

どこまでやっても、私たちは、「自分は十分じゃない」という言葉から逃れられません。それはずっとついてまわり、私たちはその言葉を聞き続けます。

いつも、「もっと、もっと、もっとうまくやらなきゃ」と思うのです。

終わりがありません。

恥じることは諸悪の根源

このサイクルの中で、私たちは、ストレスに圧倒されます。

心理学者の研究によれば、羞恥心や自己批判は、前頭前野で、意識を向ける能力を低下させる可能性があり、衝動的な行動を抑制できなくなります。

睡眠も奪います。

睡眠不足のときは最悪の気分ですよね。

自分を恥ずかしいと思う気持ちがあると、この世界が絶望と不安に満ちていると感じてしまうので、さまざまなメンタルヘルスの問題が生じるのです。

自分に対してひどいことをしていたと気づいてから、私は、自分を恥じる気持ちから抜け出す旅に出ました。

過去10年、羞恥心をぬぐい去ろうといろいろなことをしました。

恥ずかしいと思っていることを、隠そうとしたり、自分は存在していないふりをしましたが、何の効果もありませんでした。

恥ずかしく思うのをやめようと、自分を責めていましたが、まさしくそれは、自分を責め、恥ずかしめるサイクルでした。

自分を恥じる気持ちは、どうしてこんなにしつこくて、さまざまな問題を起こすのでしょうか?

セルフトークが神経回路を作る

脳の構造を見るとその理由がわかります。

問題は、セルフトーク(自分で自分に言う言葉)にあります。

どんな思考も脳内で神経回路を作ります。

思考するたびに、ニューロンが発火し、結びつき、たくさんの電気回路を作ります。

次に同じ思考をすると、その回路が発火します。

その思考を繰り返せば繰り返すほど、回路が強化され、次第にそれは習慣的な思考になります。

その思考が理性的であるとか、ないとかは関係ありません。

「私は馬鹿だ」と思えば、その神経回路が発火し、自分を恥じる気持ちが強化されるのです。

次に、同じことを考えた時もそうなります。

そうしている間に、「また失敗した。私って本当に馬鹿だ」という、自分を恥じる言葉を、雄弁に語ることができるようになり、しかも、その言葉は、自動的に出るようになるのです。

心理学書の言う、自動思考(automatic thoughts)です。

そして、恥ずかしさでいっぱいの世界で、ストレスや悲観的な考えを抱えながら生きることになります。

うつうつとしますね。

では、どうしたら、こんな運命から抜け出すことができるでしょうか?

神経回路は変えることができる

幸い、人の脳には、可塑性(かそせい、plasticity 変形すること)があります。

ニューロンはべつの回路を作ることができるので、神経回路の書き換えが可能です。

自分に対して、「私は馬鹿だ、上司は私を嫌っている。私は負け犬だ」と言ってしまうなら、自分が自分に語りかけている言葉に意識を向けてください。

そして、恥ずかしく思ってしまうパターンに対抗しましょう。

もっとやさしいセルフトークをしてください。すると、新しい神経回路を作ることができます。

「ああ、いろいろと難しい。人に理解されないのはつらいことだ。自分に価値がないように感じる。私は傷ついた」。

こんなふうに。

新しい思考をすればするほど、少しずつ、その回路が強化され、古い神経回路は消えていきます。すると、自分を元気づけるセルフトークをするようになります。

自分に思いやりをもつメリット

リサーチによると、自分自身に対して思いやりをもてば、レジリアンス(立ち直る力)が大きくなり、より気分よく暮らせます。

自分に思いやりをもっている人たちは、悲観的な感情にうまく対処でき、ネガティブな思考を繰り返すことが減ります。

だから、うつや不安になりにくいのです。

自分にやさしくすると、ストレスホルモンであるコルチゾールが減り、心拍数が安定します。すると、よりリラックスできるし、落ち着いて、安心した気分になれます。

心を開くことが増え、変化に対して柔軟に対応できます。

では、どうやったら自分にやさしい言葉をかけられるのでしょう?

その方法をお伝えします。

自分にやさしい言葉をかける

まず、古い文法を忘れましょう。

– 私はネガティブだ

– 私は十分ではない

– 私にはそんなことには値しない

– 自分がなりたいものには、足りていない

– 私は馬鹿で無能だ

どれだけ、自分がこういう言葉を使っているか考えてみると、びっくりすると思います。

この自動的な思考を変えましょう。

– こうした思考が本当だと、私は100%確信しているのか? それとも、単に習慣から言っているだけなのか?

もし100%確信できないなら、たとえ1%でも疑いがあるなら、その考えが、本当のことなのか、自問してください。そのままやり過ごしてはいけません。

自分にきびしくするのをやめましょう。

– 私にはできない、私はそうすべきではない

こう自分に言うとき、悪気はなく、自分を奮い立たせようとしているだけなのかもしれません。

しかし、こうした言い方は、セルフエスティームを下げるだけです。

こんな言い方をしてみましょう。

– 私は~する、私は~したい、私はそう希望する、私はそうしたい

こういう言い方をすれば、やはり自分を奮い立たせることができますが、言ったあとの気持ちは、ずいぶん違います。

不完全であることを受け入れる

不完全であることや人間であることを、思いやりをもって受け入れる練習をしてみましょう。

人間だから間違えるのはあたりまえだし、限界を感じるのもふつうのことです。

欠点があるのは、ふつうの人である証拠。

実はこのスピーチの準備をしているとき、大きなストレスを感じて不安なときがありました。

「こんなことが起きたらどうしよう」「うまくできなかったらどうしよう」。こんな声が頭の中でしていました。

話すことを忘れたら? トークが長すぎて、ステージから引きずり降ろされたら?

だから、何度も練習したんです。より完璧なトークになるように。

でも、気づきました。

「ちょっと待って。不完全であることを受け入れるスピーチをしようとしているのに、なぜ、完璧をめざそうとしているの? 変じゃない? ストレスでいっぱいになるのも無理ないわよ」と。

そして自分に言いました。

「そうよね。今からでも遅くない。今言ったことを取り消そう」。

このとき、古い神経回路が解かれ、新しい神経回路ができました。

思いやりのある脳は、私に何を言うか、考えてみました。

「別にいいのよ。失敗は避けられない。失敗してもいいのよ。感情的になるのは、人間だから。ロボットじゃないんだもの」。

こう考えたら、ずっと気がラクになりました。

少しはナーバスになっていましたが、前よりずっと安心できたし、パニックアタックも防げました。

何度も練習する

閉じられた、批判の目で見るマインドセットではなく、開かれた、好奇心のあるマインドセットを持ちましょう。

「こんなことができないなんて、私はどうかしている」と言うのではなく、「どうして、難しく感じるのかしら。面白いパズルだな」と。

やさしいセルフトークが出てこない人に、コツを1つお伝えします。

自分ではなく、家族や友人、大切な人だったら、どんな言葉をかけるか考えてください。

他人と自分とで扱いを変えるべきではないですよね?

こうやって、思いやりのあるセルフトークをする神経回路を作っていきます。

何度も繰り返し練習しなければなりません。

それは、新しい言語を学ぶようなもの。

「その言語がある」と知っているだけでは、その言葉は話せません。

何度も練習が必要です。

自分が自分に言っている言葉に意識を向けることから始めましょう。

自分に言う言葉のすべてを、あなたは聞いていますよ。

//// 抄訳ここまで ////

セルフコンパッションに関連するプレゼン

自分自身の親友になる技術(TED)

批判や心配に負けず、レジリアンス(立ち直る力)を高める方法(TED)

完璧であろうとする危険なこだわりがどんどん増えている(TED)

緊張するとなぜ失敗するのか、どうしたら、実力を発揮できるのか?(TED)

ネガティブなセルフトークを変えて、前向きに行動しよう(TED)

不安な心(ヴァルネラビリティ)に秘められたパワー:ブレネー・ブラウン(TED)

セルフコンパッション(自分にやさしくする)の実践で人生を変える(TED)

この他にもあります。

セルフトークに注意してみて

先日、「自分をダメ人間だと思ってつらい。このつらさから抜け出す方法を知りたい」という質問をいただいたので、今回、関連するテーマのTEDトークを紹介しました。

自分を責めるのをやめる方法~自分を「ダメ人間」と思っても誰のためにもなりません。

上でたくさんリンクしているように、自分にやさしくすることに関しては、これまでも何度も記事を書いていますので、過去記事を読んでみてください。

自分を責める人は、幼いときから、その思考を何度もしているため、がっちり神経回路ができており、うまくいかないことがあるたびに、「私ってだめだ~」と自動的に思います。

際限なく服を買ったり、いらない物をどんどんためこんだりするのも、そういう行動を促す神経回路(思考と行動のくせ)ができているからです。

ですが、脳は、新しい神経回路を作ることができます。ものすごく抵抗があるかもしれませんが、新しい考え方や、これまではしてこなかった言葉遣いをしてみてください。

それを何度も何度も繰り返します。

私が同じ内容を、角度を変えて繰り返し書くのは、何度も思い出して、しつこくやらないと、すぐに元のパターンに戻ってしまうからです。

記事を読んでいるだけではだめです。

読んでいるときは、「ふむふむ、なるほど~」と思っても、翌日には忘れます。

ふだんから、望ましくない自動的思考に対抗する努力をするべきです。そうすれば、同じ記事を読んでも、響き方が違います。

自分にダメ出しをして落ち込む負のサイクルから抜け出すために、セルフトークを変えることから試してください。

****

脳に可塑性がある話は、ほかのプレゼンでもでてきます。

脳は、成長しきった段階で終わり、あとは老化するだけ、ではないんです。

自分で変えることができます。

「私はこんな人だから」「私はこういう性格だから」と決め込むのは早計ですよ。





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