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かたよったものの見方をしない方法を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、Are you biased? I am (あなたはバイアスがありますか? 私にはあります)
講演者は、女性がリーダーになることを擁護していて、自身も女性リーダーであるKristen Pressner (クリステン・プレスナー)さんです。
偏見がありますか? TEDの説明
What do you do when you realize you have a bias, even against yourself? Kristen Pressner is the Global Head of Human Resources at a multinational firm, and a tireless advocate for, and promoter of, women in the workplace. In this enlightening talk, Kristen explores how we can recognize our own hidden, irrational biases — and keep them from limiting us.
自分には偏見があるし、自分に対してすら偏見をもっていると気づいたらどうしますか?
クリステン・プレスナーは、多国籍企業の全域の人事課のトップで、職場で女性が活躍することを強く支持し奨励しています。
この啓発的なトークで、クリステンは自分の中にある隠された不合理な偏見を見つけ、その偏見が行動を制限しない方法をさぐります。
2016年の5月にスイスで行われたTEDXのトーク。動画の長さは8分49秒。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
こんな人が上司だと働きやすそうですね。
女性リーダーに偏見をもっている
私は女性リーダーに偏見をもっています。
この事実に私以上に驚いている人はいないでしょう。私は女性リーダーですから。
しかも、人事部にいます。つまり、偏見をもたないことが私の仕事のようなものです。
実際、私は、女性がリーダーになることを強く奨励しています。
女性はすばらしいリーダーになれると固く信じているにもかかわらず、私はその信念にそって行動していないと気づいたのです。
昇給の依頼に対する異なる反応
少し前、チームの2人のメンバーが、同じ時期に給料をあげてほしいと言ってきました。
男性の要望に対する私の最初の反応は、「そうね、考えてみましょう」で、女性の要望に対しては、「あなたはこれでいいと思うわ」でした。
数日後、自分が同じ要望に対して、違う反応をしたことに気づき、知らないうちに自分が偏見をもっているのではないかと思いました。
でも、今は2016年。女性リーダーなんてどこにでもいます。私も、それに皆さんも女性リーダーをたくさん雇い、昇進させているでしょう。
それでも、私は、無意識のうちに偏見を持っているのではないか? と思ったのです。
近道をとる脳
私たちの脳は、大量の情報を処理しています。うまく処理できるよう、パターンを見つけ、自動的にフィルターをかけます。近道を行くのです。
近道を行かないと、何もかも一から考えなければなりません。ドアを開けることから握手すること、誕生日の歌を歌うことまで。
しかし、脳が近道をとることには悪い面もあります。これまで体験したことすべてをベースにしたパターンを見ることです。
フィルタリングは心の奥のほうで起こっていて、自分ではそれが起きていることに気づきません。
その結果、気づかないうちに、自分でそうしたいとは思っていないことや、そうすべきではないと感じていることをやってしまうのです。
無意識の偏見
「無意識の偏見」という言葉の意味をしらべてみました。
無意識(unconscious)の同意語は、昏睡状態の(comatose)、麻痺した(paralyzed)、無分別の(senseless)です。
偏見(bias)の同意語は、頑固(intolerance)、不寛容(intolerance)、不公平(unfairness)。
つまり、私たちは知らないうちに偏見をもっているだけでなく、無分別で不寛容な頑固者というわけです。
私は、そんな人にはなりたくありません。無意識にせよ、意識的にせよ。
怖いのは、多くの人が、偏見をもたないでいられると思っていることです。
「人種はこだわらない」とか、「最適な人を雇う」と言っているとき、自分には偏見はないと思っています。
男性に対する期待と女性に対する期待
2つの給料アップの要望を受けたとき、たまたま私は、「無意識の偏見」について調べていたところでした。
リサーチによると、私たちは、男性に対して、自信をもっていて、強く、やる気があることを期待しています。
女性に対しては、助けになり、繊細で、協力的であることを期待しています。
一言で言ってしまえば、男性には、主導権を握ること(taking charge)、女性には世話をすること(taking care)を期待しているのです。
みんなが女性差別主義者だからこうなるのではありません。単に、ふだんの生活で、男性が主導権をとり、女性が世話している姿をずっと見てきたからです。
脳はそのパターンを認識し、パターンどおりに人を行動させるのです。
男性は稼ぎ手か?
こんな偏見は自分にあるとは思えませんでしたが、ある言葉に気がつきました。
私は男性を「稼ぎ手」(provider)だと思っていたから、彼の昇給の要望をより真剣に考えようとしたのか?
女性を「稼ぎ手」と思っていないから、彼女の要望は却下したのか?
このとき、「確かにそうだ」と気づいたのです。
私は男性を稼ぎ手だと思っていて、女性のことはそう思っていないのです。
自分も稼ぎ手なのに
これはとても興味深い話です。なぜなら、私は、6人家族である我が家の、唯一のお金の稼ぎ手だからです。
私の夫は、家にいて4人の子供の世話をしています(stay-at-home father 専業主夫)。私が実権を握り、夫が世話をしています。
そんな私が女性リーダーに偏見をもつなんて考えられないのですが、それでも、偏見をもっていると気づきました。
自分に対しても偏見をもっているのです。
皆女性リーダーに偏見をもっている
女性リーダーに偏見をもっているのは私だけではありません。リサーチによれば、誰もが、女性リーダーに偏見をもっています。ただ、そのことに気づいていません。
たまたま私は同時に男性と女性から昇給の依頼を受け、それに対して、違う反応をした自分に直面しました。
幸い、すぐに扱いを変えていたことに気づいたのですが、これまで、何度、知らないうちに同じことをしてきたのでしょうか? 皆さんも、無意識に同じことをしてきたのではないでしょうか?
女性リーダーやその他の人に対して、無分別で不寛容な頑固者にならないためにはどうしたらいいのでしょうか?
逆にしてみる
心の中で、相手にしている人たちを逆にすればいいのです。
たとえば、先ほどの写真を逆にしてみました。
逆にしてみると変な感じがしませんか?
もし、奇妙に感じたら、自分の考えを見直すべきです。
逆にすることをやってみればみるほど、私は、それが効果的だとわかりました。
たとえばツイターのアカウントの説明にある性別を逆にしてみると、とても奇妙に感じます。
「ポリスウーマンと呼ばれても気になりません。だって、その言葉は、女性も男性も意味するとわかっているから。アンドリュー、ポリスウーマン、40歳」
私の故郷の野球チームであるクリーブランド・インディアンンズを逆にしてみると、どう感じるでしょうか? 「クリーブランドの白人たち」としたら?
偏見にとらわれない行動をしよう
皆さんは、「私にはそんな偏見はない」と思っているかもしれません。
そうかもしれません。あなたは超人的な人で、脳が近道がとるのを、いいタイミングで止めて、かたよらず、常に自分の価値観や信念にあった一貫性のある行動を取れているのかもしれません。
でも、チェックしてみたって失うものなんて何もありませんよね。
偏見をもっているかどうか調べるために、逆にしてチェックしてみると、何も意識していないときと、どれほど違う行動をするか、驚くんじゃないでしょうか?
違った見方で世界を見るチャンスを失っているかもしれないのですから。
//// 抄訳ここまで ////
偏見に関する他のプレゼン
私たちが幸せを感じる理由~制限がある方が幸せ?ダン・ギルバート(TED)
我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)
あなたはなぜ不幸なのか?期待と現実のギャップが大きすぎると幸せから遠ざかる(TED)
気づかず反応してしまうから
自分自身が女性リーダーで、女性リーダーの能力を高く評価し、偏見をもつべきではないと思っている人でも、無意識のうちに女性リーダーに偏見をもってしまう、ということですね。
自分の信念や価値観は、顕在意識にあるから、無意識の反応とは一致しないのだと思います。
このブログでは、バイアスの話は何度もしているので、昔から読んでいる人は、自分の思考のかたよりには、注意深くなっていると思います。
しかし、無意識のうちに反応してしまうので、かたよったものの見方をしていないか、日常的にチェックするのは大切なことです。逆転テストも時々やってみてください。
逆転させるのに、お金はかかりませんし、思考実験だと思うといいでしょう。
ネットフリックスに『軽い男じゃないのよ』(I Am Not an Easy Man)というドラマ(コメディ)があります。ものすごく男尊女卑の考え方をする鼻持ちならない主人公の男性が、頭を打って意識が戻ると、男女の立場が入れ替わった世界になっています。
プレスナーさんの言う「逆転」が行われているのですが、笑えるだけでなく、考えさせられるドラマです。