ストップサイン

TEDの動画

立ち止まることが、最短の前進になる(TED)

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忙しく走り続けているけれど、成果がついてこない。仕事や人生で行き詰まりを感じている。そんな方におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは、Why slowing down and stopping is the way forward(スピードを落とし、止まることが前進への道である)。

ウェルネスと自己啓発を専門とするパーソナルコーチのJoe Danis(ジョー・ダニス)さんのトークです。

タイトルどおり、前に進むためにはあえて立ち止まることが重要だという内容です。

パンデミックのさなかにいる私たちへのメッセージですが、日常のあらゆる場面で役立ちます。

あえてスピードを落とす

収録は2021年の9月、動画の長さは14分。英語字幕あり。

◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

シンプルなメッセージなのでわかりやすいと思います。





エルサルバドルでの学び

今日は、なぜ、立ち止まり、スピードを落とすことが前進につながるかお話しします。

これを説明するために、エルサルバドルで体験した出来事を聞いてください。

私は、これまで何度もこの国を訪れており、そこで人々、経験、そして機会が交差する場面に数多く出会いました。

訪れるたびに、素晴らしい人々と時間を過ごしています。彼らは、温かく、もてなし上手で、非常に知的で、そして内面に強さを秘めた人々です。

この国での体験から多くのことを学びました。

エルサルバドルでは、人生を変えるような出来事も経験します。今からお話するのもその一つです。

地域のコミュニティのサポート

旅をするとき、どこに行っても、人、体験、機会が交わる場所を意識的に探しています。

エルサルバドルは中米の小さな国です。

これまで首都サンサルバドルから車で約2時間の山間の小さな農村コミュニティと関わってきました。

訪れるたびに、素晴らしい人々と深い関係を築き、長い時間を共に過ごしてきました。私は彼らをとても尊敬しています。

私たちは、地域の人々のプロジェクトに一緒に取り組み、コミュニティの力を少しでも高められるよう支援しています。

このときは、妻とカナダから来た友人2人と共に、山の斜面にあるこの小さな集落の人々の家に、かまどを作るお手伝いをしていました。現地では非常に重要なことです。

学校でサポートをした帰りのこと

こうした訪問の締めくくりとして、私たちはいつも学校で多くの時間を過ごします。

エルサルバドルの小さな集落にある学校は、世界中の多くの地域と同じように、地域の中心的な存在です。学校は、地域のリーダーや先生方と集まり、プロジェクトを調整する場として使わせてもらいます。

最後に、学校で子どもたちと遊び、一緒に過ごします。純粋な喜びを体験して、旅を締めくくります。

その日、運転をしてくれていた親しい友人のドン・フレディが、空を指さしました。雨季のシーズンでした。彼はこう言いました。

「そろそろ出発しないと、かなり激しい雨になるぞ。学校に泊まりたくないなら、早く行ったほうがいい。」

その場にいたみんなは面白がり、グリンゴ(外国人)が学校で寝る姿を想像して笑っていました。私は早く出たほうがいいと思いました。

ところが、私たちがトラックに乗り込むやいなや、雨粒が落ち始めました。

いつものように、急な山道のカーブを曲がる私たちの車を子どもたちが追いかけてきます。彼らの姿が見えなくなると同時に、雨が激しくなりました。

エルサルバドルでの雨の後の光景を経験したことがある人なら分かるでしょうが、道にはあっという間に大きな溝ができます。

激しい雨でトラックが立ち往生する

その日、山を登っているとき、最後の道のりについて考えていました。非常に急で、砂利と土でできた道で、登るのはかなり大変だろうと思っていたんです。

その最後のカーブを曲がって丘の頂上、平らな部分に出ようとしたとき、ちらっと前方を見てみると、大きな溝が地面にできているのが見えました。

曲がった途端、私たちは立ち往生してしまいました。

土砂降りの中、山腹でトラックが動けなくなりました。全身ずぶ濡れです。

さて、どうするか。

私たちはトラックを降り、山を登れるようにトラックを押すか引くか考え始めました。学校に泊まるのは避けたいですから。

まず、トラックの後ろに回り、押し始めました。

押しても進まないトラック

しかし、足が滑って前後にずるずると動くだけで、ほとんど進みません。実際、この時点では全く前に進めていませんでした。

午後遅かったので、仕事帰りの若い男性たちが通りかかり、一緒にトラックを押してくれました。

人手は増えたけれど、力いっぱい押しても、やはり進まない。

隣にいた若者の苛立ちが伝わってきました。彼はトラックの後部パネルを叩きながら、運転席のドン・フレディにこう叫びました。

「アミーゴ、ネセシタス・イル・マス・ラピード!(もっと速く行かないとダメだよ!)」

その瞬間、ドン・フレディが車をパーキングのギアに入れるのが見えました。彼はゆっくりと落ち着いた動作で車を降り、若者のところまで歩いて行き、肩に腕を回してこう言ったのです。

「速く進もうとしても、必ずしも先に行けるわけじゃない。ただ空回りするだけだ。ときには、前に進むために、スピードを落として立ち止まる必要があるんだ。」

今もその瞬間を鮮明に覚えています。

私たちは山腹で立ち往生していましたが、それはまるで人生の中で立ち止まってしまったようでした。

目の前の山を登る前に、つまり、前進するために、スピードを落として立ち止まる必要がある、という深い知恵の言葉を聞いたのです。

そして立ち止まってみた

土砂降りの中で、その言葉を聞きながら、私たちは一瞬立ち止まり、そして振り返りました。

そのとき、興味深いことがいくつも起こりました。振り返ってみても、あれは偶然ではなく、意図があった行動だったと感じます。

私はこれを「目的をもった一時停止(a pause with a purpose)」と呼んでいます。あの瞬間、私たちは意図的に与えられたタイムアウトを体験したのです。

立ち止まり、スピードを落とすと、驚くようなことがたくさん起こります。

呼吸を整えて回復する

まず、私たちは呼吸を整えることができました。

ペースを落とし、心拍数が下がり、呼吸が正常に戻っていきました。

その後、休息を取り、回復しました。

これは肉体的な作業の最中に大事なことですが、人生のあらゆる場面にも当てはまることです。

ありのままの現実を見る

回復できると、次に訪れるのは明晰さ(clarity)です。

世界を、自分が見たいようにではなく、ありのままに見るための明晰さです。

物事をよりクリアに見て、考え、感じられるようになると、振り返る機会が生まれます。

あの日、山の上で私たちはいくつかのことを振り返りました。

私たちが選んだ計画や進むべき道を変更すべきか? 再調整が必要か?

もっと山の下まで後退すべきか? 焦点を少しずらすべきか? 押すより引くほうがいいのか?

こうしたことすべてが検討の対象になりました。

計画を振り返ることは、実際には準備をすることです。

言い換えれば、下調べや段取りを整えること。そうすると自分自身への信頼感が育まれます。

つまり、準備は自信をもたらします。

自信が生まれる

もう一つ私たちが振り返ったのは、これまでの人生で自分が困難を乗り越えてきた場面でした。

ここに住む人々は、この環境の中でふだんからさまざまな困難に直面しています。

だから、自分の記憶をたどり、かつて山を登らなければならなかったときや、行き詰まりから抜け出さなければならなかった体験を思い返しました。

そしてその瞬間、自信が生まれました。「以前にもこれをやり遂げた。だから、またできる」と思ったのです。

再びつながる

最後に、一時停止するからできることで重要なのは、再びつながる(reconnection)ことです。あの日、山腹で周りを見渡したとき、私たちには強い連帯感がありました。

「この状況を一緒に乗り越えている」「自分は一人ではない」と確信できたのです。

山の斜面で互いに目を合わせ、「自分たちならできる」と実感しました。

必要な人手も、つながりもあります。そして何より、「全員が今この山を登り切りたい」という共通の思いを持っていました。

そうしたことが、確信(conviction)を育てます。

困難な時期を粘り強く乗り越えるための持久力が芽生え、逆境に立ち向かいながら前に進み続ける力を得られるのです。

立ち止まらなければ前進できない

その後の人生で問題にぶつかるたびに、この、回復(recovery)、振り返り(reflection)、再びつながる(reconnection)という方程式を使ってきました。

山での出来事を人生に重ね合わせてみると、今、私たちが生きている時代について考えずにはいられません。

今、私たちは世界規模の問題と、非常に個人的な影響が入り混じった時代に生きています。

パンデミック下で過ごすことは、皆にさまざまな感情をもたらしました。

そのどれもが正当なものであり、認め、受け止めるべきものです。悲しみを感じる人もいれば、怒りや苛立ちを抱く人もいます。大きな喪失感や深い悲嘆に包まれている人もいます。

多くの人が孤立や孤独を感じています。

世界で今起きていること──パンデミック、気候変動、社会的・政治的な混乱──のいずれも、私たち一人ひとりに深刻な影響を与えています。

こうした世界的な課題と個人的な影響があるとき、前に進む道は必ずあります。

ですが、自分が抱いている感情を認めて、立ち止まり、速度を落とすまで、私たちは本当の意味で前進することはできません。

世界規模の一時停止

パンデミックのおかげで、私たちは自分自身に対して非常に重要な問いを投げかける機会を得られました。

将来について、キャリアの選択について、人間関係について、そして自分の健康や幸福、その重要性についての問いです。

さらに、自分の目的や、日々の生活にもっと深い意味を見出したいという欲求についても、多くの問いが生まれました。

私たちは皆、この機会を与えられました。

私はこの世界的パンデミックを、世界規模の一時停止(global pause)と考えています。

スピードを落とし、立ち止まり、回復し、振り返り、再びつながるための機会を与えられたのだと思っています。

これは、別の前進の道を見つけるためのチャンスです。

今こそ、そのための時間を取るべきです。

今こそ考えるとき

立ち止まって自分の感情を認めましょう。そして、自分は何者なのか、今どこにいるのか、本当に求めているものは何なのか。こうした感覚を取り戻すことが大切です。

自分が選んだ道や、これまでの決断を振り返り、人生の計画を見直し、アイデンティティや今の立ち位置、そして心から求めるものに合った決断をしていくのです。

歴史を振り返ることも大切だと思います。

これまで直面してきた困難や、心や体に刻まれた傷跡は、すべて私たちの一部であり、今の私たちを形づくっています。

これまでの成功や達成したことを思い出せば、自分には前に進む力があるという自信が生まれます。

そして、再びつながって確信を得られます。

今、私たちは歴史上でも特別な共有体験をしています。

パンデミックの中で生きることは、地球上のすべての人に影響を与えました。これほどまでに全員が同じ経験をしている時代はありません。

私たちは孤立感など、さまざまなことを感じました。この共有体験を通じてお互いとつながり、「私たちにはできる」という確信を持って前に進む必要があります。

山では皆で問題を解決できた

あの日、エルサルバドルの山で、私たちはいったん止まって、回復し、計画を振り返り、つながりと連帯感に支えられて、再びトラックの後ろに立ちました。

そしてゆっくりと山を登り、丘の頂上にたどり着きました。そして、集まってくれた人たちとハイタッチや抱擁を交わし、土砂降りのエルサルバドルの山中で小さなお祭りが広がりました。

再びトラックに乗り込み、でこぼこ道を下っていくとき、皆、落ち着いていました。

それが安堵感だったのか、静かな祝福の感覚だったのかはわかりませんが、私は「私たちは何かを乗り越えた」という強烈な思いがありました。

困難を克服し、行き詰まりから抜け出し、山を登り切った。これをみんなでやり遂げたのです。

同時に、これからも雨の日は来るだろう、これからも山は現れるだろう、新たな困難に直面するだろう、とも思いました。人生には必ず逆境があります。

それでも、私にはスピードを落として、立ち止まる機会と能力がある。明晰さ(clarity)、自信(confidence)、確信(conviction)を取り戻し、前進し続けられる。

だから立ち止まることが重要なのです。

今この瞬間、私たちが置かれている場所は、まさに私たちがいるべき場所だと考え、受け入れることが大切です。

ときには、とても受け入れがたいこともあります。

自分がいるべき場所にいるという事実を信じるのは難しいこともありますが、これまでの歩みが、今の場所へと私たちを導いてきたのです。

だから、立ち止まりスピードを落とすことこそが、前進の道です。

///// 抄訳ここまで ////

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今は、めまぐるしく変化する時代ですが、そういうときこそ、あえてスピードを落とすことが重要です。

私も、日常のいろいろな場面でゆっくり進むことを意識しています。

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人生は競争に勝つことが目的ではなく、いかに自分らしく生きるかが重要だと思います。

問題にぶつかったら、立ち止まり、これまでの自分の選択を振り返り、これからどう進んでいくか考えなければなりません。

そうしないと、周囲のできごとに反応しながら進んでしまい、自分らしさを失います。

今、焦りや行き詰まり、疲労を感じている方はもちろんのこと、そうでない方も、思い切ってペースを落とし、回復・振り返り・再びつながる時間を取ってください。

立ち止まることは、後退ではなく前進する準備だと考えましょう。





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