クリエイティブ・シンキング

TEDの動画

創造性:目まぐるしい変化に対応するにはスローな思考が必要(TED)

よりクリエイティブになる方法を教えてくれるTEDトークを紹介します。

タイトルは、Creativity: Fast Changes require Slow Thinking! (創造性:素早い変化にはスローな思考が求められる)

創造性の専門家で大学教授のGiovanni Corazza(ジョヴァンニ・コラッツァ)さんのプレゼンです。

クリエイティブなアイデアを生み出すためには、ゆっくり考える必要がある、という内容です。

スローな思考は、思い込みをもとに直感的にする思考と逆の思考です。



スローシンキング

収録は2019年の5月、長さは13分。字幕はないので抄訳を参照してください。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

とても興味深いプレゼンです。





クリエイティビティの重要性

スローシンキングについてお話しします。

素早い変化についていくためには、クリエイティブでなければなりません。そして、クリエイティブであるためには、思考の流れをスローダウンしなければならないのです。

今、社会のペースがとても速いのはなぜか?

技術のおかげです。とくに、情報とコミュニケーションの技術です。

私たちは、即時に情報にアクセスし、情報を発信することもできます。

世界中の知識に、すぐにアクセスできるのです。

情報社会において情報は日用品です。誰もが情報をもっています。

でも、そうだとしたら、私たちの人間としての価値は何でしょうか? お互いの違いは何でしょう?

違いは、それぞれがもっている情報から何を生み出すかで決まります。

未来を想像する能力、進化のコースを変える能力には、クリエイティビティが必要なのです。

もし、私の講演を最後まで聞くつもりがないなら、次のメッセージだけを持ち帰ってください。

「クリエイティビティは、サバイバルに必要なものである」。

創造性は、もはや贅沢品ではなく、生き残るための必需品なのです。

こう聞くと、「私はクリエイティブじゃないから」、と言う人がいるかもしれません。

もちろんそれは違います。

少なくとも、皆、一度は子供でしたからね。子供のときは、何もなくても想像力を使って、何時間も遊ぶことができました。

だから、私たちはとてもクリエイティブなんです。子供から大人に成長するとき、何かが起きたわけです。

どんな神経回路が残っていくか?

ここで簡単に、体の組織について話します。

生まれたとき、すべての組織は、揃っていて、ちゃんと機能しますが、1つだけできあがっていない組織があります。

脳です。

生まれたとき、脳の中には、たくさんニューロンがありますが、神経回路はほとんどありません。

2歳になるまでに、神経回路がどんどん増えていきます。

いろいろな神経回路ができては、試されます。

2歳で、回路のつながりは最大となり、これらのつながりのおかげで、いろいろなことを結びつけて考えられるのです。

回路が作られるとき、思考(thinking)はゆっくり作られ、それは、厳密なものではありません。

外部からの情報が脳にインプットされると、脳内のさまざまな場所でたくさんの活動(回路がつながること)が起きます。

その中で、役立つもので、外的状況や両親、友人、自身の経験によって、「これがいいよ」と裏付けられた回路だけが残ります。

その回路はどんどん太くなっていきます。使わない回路はどんどんなくなっていきます。

神経伝達回路のでき方の例

私のめい、レニアの体験を例にして、回路の作られ方を見ていきましょう。

レニアは1歳半で、数週間前、クローゼットの中を見て、我が家の犬がいると思って、バウバウ(犬の鳴き声)と言いました。

実際は、レニアはダスター(ほこりを払うもの)を見ていたのです。ダスターは犬ではありませんが、ダスターと犬のしっぽにつながりを見出すことができます。

レニアはすぐにダスターを犬と結びつけて、バウバウと言ったのです。

お互いにずいぶん違うものを結びつける能力は、クリエイティビティに欠かせないものです。

しかし、成長過程で、さまざまなことが起きて、私たちは速い思考(ファストシンキング)をするようになります。

ニューロンを結びつけている神経細胞の突起が、より速く、厳密につながるようになるのです。

これは認知上、すばらしい機能ですが、私たちは、ファストシンキングをして、結論に飛びつくようになります。

速い思考の例

いかに私たちのパフォーマンスがすばらしいか、1つ実験をしてみましょう。

ここにある文章を一緒に読みましょう。

[スペルが違う文字列が映し出される。スペルが間違っていても、それが何を意味するのか私たちには想像がつくので普通に読むことができる。]

スペルミスの多い文章

「疑いなく、脳はとても速く効率的に、スペルミスがある文章を読む。この能力は、自分の知識に照らし合わせて意味をつかみ、不必要な細部の情報に時間をかけないこと事実によっている」。

これはいつも私たちがしていることです。

外部から、特定の情報を取り入れ、すでに知っていることに照らし合わせて、いつも同じ結論にたどり着くことができます。

脳は文脈から判断する

ただ、ときにはあいまいなものもあります。

たとえば、nwe agnel という言葉があったら、それは何を意味するのか判定しにくいですね。

こんなとき、私たちは状況(context コンテクスト、文脈)から判断します。

天国の話をしているなら、new angel (新しい天使)と読むでしょう。

近代建築の話をしているなら、new angle (新しい角度)と読むでしょう。

いずれにしろ、どちらかの判断をしたあと、私たちはそれが正しいと思ってしまいます。

それが何なのか決めることも、偏見をもつことも、すばやく行われるのです。

これはいいことです。サバイバルするための基本です。

水は、峡谷の底で、スムーズに流れていなければなりません。できるだけエネルギーを使うことなく。

速い思考はクリエイティビティの邪魔になる

でも、もしクリエイティブでいたいなら、峡谷の一番上までもどって、新しい割れ目を掘り起こす必要があります。

こうすることには、ずっとたくさんのエネルギーがいるし、時間もずっとかかるのです。

要するに、クリエイティブになりたいなら、メインアイデア(主題)の流れを止めなければなりません。すると、あらゆる可能性が見えてきます。

フランスの著名な心理学者、ビネーは、「知能とは、直感的な回答を阻止する能力だ」と言いました。

私は、創造性は、「知的な回答と直感的な回答を阻止する能力だ」と言います。

代替案をすべて考え出さなければならないのです。

これができれば、外側から入ってくる情報を、すでに自分が知っている情報の中心にすぐに置くことを避けられます。

スローな思考の例

たとえば、スペルが違っている変な語句として、ニューロッジと聞こえる言葉を取り出してみましょう。

このままでは何のことかわかりません。

new は新しさを示す言葉ですが、know の過去形(knew)もニューです。ロッジは山小屋のように聞こえます。

この2つのアイデアを合わせると、新しいサービスを考えることができます。

B&B(ベッド&ブレックファースト)です。

new lodge は、宿泊施設であると同時に、過去から伝わる文化的な知識を体験できる施設です。

あるものは、ルネっセンス、別のものは、第一次世界大戦と第二次世界大戦など。

ニューロッジというB&Bをチェーン化してもいいですね。

すべてのB&Bを回れば、歴史全体を巡ることができます。

SNSで、シーツの清潔さだけでなく、文化的な体験についても、レビューできます。

メタファーを使う

スローシンキングで、新しいアイデアを作り出す方法をもう1つお伝えします。

文字通りの意味を超える能力、それは比喩(メタファー)です。

今年(2019年)は、レオナルド・ダ・ヴィンチの死から500年ですが、彼は、メタファーの名人でした。

彼は自然からヒントを得て、何世紀もあとの人の生活の進化を予期して、さまざまな道具や機械を発明しました。

さらに、絵画作品に、意味を隠しました。もっとも有名なフレスコ画の『最後の晩餐』では、キリスト、使徒、パンのかけらの場所に、音符が隠されていて、それを楽譜にすると旋律になります。

ダ・ヴィンチが絵画に隠しこんだ意味の1つです。

このメソッドを使って、どんなことについても、新しいアイデアを思いつくことができます。

サーキュラーエコノミーとウサギ

例として、circular economy (サーキュラー・エコノミー、循環型経済)に関して、自然からインスピレーションを得ることにしましょう。

たとえば、ウサギです。

これまで誰もしたことがなかったメタファーを考えます。

「サーキュラーエコノミーはウサギだ」とします。

これは何の意味もなしません。通念の外側にあります。既存の枠の外側(out of box)です。

この場所は、アイデアを作り出すのに最適です。これまでの経験にもとづいて(アポステオリ)、意味を探そうしても、何の意味も見つかりませんからね。

ウサギの特徴は何でしょう? 子だくさん? 跳びはねる?

跳ぶことをサーキュラーエコノミーにあてはめても、何も出てきません。

サーキュラーエコノミーには何があるでしょうか? たとえばリサイクルがあります。

リサイクルは、数々のプロセスを経ます。原材料に戻したり。

そこで、跳ぶことを、これらのプロセスの短縮と考えてはどうでしょう?

短縮して効率化します。

たとえば、原材料に戻すプロセスをジャンプするのはどうか? こんなふうにアイデアがゆっくりと形作られていきます。

パッケージ(容器)をリサイクルのプロセスに投げ込むのではなく、それをリユースするのはどうか?

問題はパッケージをどうやって製造者に戻すかです。

考えられるビジネスモデルは、消費者が食品をオンラインで注文し、スーパーが食品を配達したとき、配達人がパッケージを回収します。

一方通行ではなく、双方向の通行です。

配達人が、パッケージを製造者のところまで持っていくのです。

以上は、これまで考えたことのなかった場所に思考を持っていってみる1つの例です。そこからゆっくり、新しいアイデアを考えていきます。

皆さん、もし誰かに、「きみは、考えるのが遅いね(slow thinker)」と言われたら、「ありがとう」とお礼を言ってください。

//// 抄訳ここまで ////

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おすすめはクリエイティブな暮らし

私はよく創造性に関する動画を紹介していますが、ミニマルライフやシンプルライフをするには、クリエティビティが必要だと思っているからです。

シンプルライフは、自分らしい暮らしです。

コラッツアさんは、みなが同じ情報を持っていて、その情報から何を生み出すかで、差異が生まれると言っていますが、創造性があれば、他の誰でもない、自分が楽しめる暮らしを見つけることができます。

しかも、少ない物を駆使して、創意工夫しながら生活するので、成長できます。

今の社会で、他の人と同じようにしようとすると、通常、物が増えます。

この点でも、人とは違う創造性を発揮することが、シンプルライフにつながるのです。

というわけで、シンプルに暮らしたい人は、クリエイティブでいることを忘れないでください。

*****

動画に出てきた、速い思考、つまり、即、神経回路がつながって、毎回、確実に同じ答えを出す思考は、別の言葉で言うと「思い込み」や「思考の癖」です。

速い思考は、これまで何度もしてきた思考で、とても回路が太くなっているので、抵抗するのはなかなか難しいです。

不用品を捨てるときに、無条件にもったいないと思うのも、無料品、おまけ、セール品に「お得だ!」と飛びつくのも、速い思考です。

すぐにそういう結論になるからと言って、その思考が導き出した答えが正しい(望ましい)とは限りません。立ち止まって、「本当にそうかなあ?」と考え直すことは、現代を生き抜くのに必要なスキルだと思います。

「もったいない」「お得だ」と思ったときは、いったん立ち止まって、振り返ってください。

そうすれば、心身ともに消耗する大々的な断捨離を繰り返す生活から脱出できますよ。





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