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環境によい行動でかつ自分も幸せになれる方法を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、How to Feng Shui Your Fridge — and Other Happy Climate Hacks(どうやって冷蔵庫を風水するか? そしてほかの環境にいい行動のヒント)。
邦題は、「冷蔵庫の風水だけじゃない! 幸せになる気候変動対策」
行動経済学者のJiaying Zhao(ジャーイン・ジャオ)さんのトークです。
幸せになれる気候変動対策
収録は2023年2月、動画の長さは12分、日本語の字幕もあります。
■トランスクリプトはこちら⇒Jiaying Zhao: How to feng shui your fridge — and other happy climate hacks | TED Talk
■TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ユーモアがあり、わかりやすいスピーチです。今日から何かやってみようと思えますね。
犠牲を強いられる行動は続かない
こんにちは、私はJZです。
ラッパーではなく、行動を変えて地球を冷やすことを考えている教授です。
先日、学生たちにこんな課題を出しました。
「温室効果ガスの排出を減らし、なおかつ自分をより幸せにしてくれる。その両方を果たす個人の行動を考えなさい」
生徒は、排出削減のための行動はたくさん出しましたが、「幸福」の部分で手こずっていました。
これは、学生たちだけではありません。
気候変動対策と聞くと、多くの人は、地球のために自分が何かをあきらめなければならないと考えます。
地球にいい行動をするためには、犠牲が必要だという話になることが多いからです。
車を減らす、肉を減らす、買い物を減らす。減らす、減らす、減らす。
こうした考え方は、気分のいいものではありません。むしろ恥ずかしさや罪悪感を生みます。
そのような否定的な感情は長期的な行動変容には向きません。
やる気を失わせてしまいます。
もし地球の未来が、個人的に犠牲を払ってもいいと考える少数の人たちにかかっているなら、何もうまくいかないのです。
代わりに何をすればいいのでしょうか?
環境にもよく自分も幸せになるアクション
あるミーティングでいいアイデアを思いつきました。
同僚のエリザベス・ダンが、「気候にいい行動を、惨めなものではなく、幸せを感じられるものにできないかしら?」と聞きました。
私は「もちろんできます」と答えました。
このときに気づいたんです。幸福と気候にいい行動を結びつけた人なんて、これまでいなかったんじゃないかと。
リズと私は、まさにこれをしようと動き始めました。
リズは、幸福の科学者です。人を幸せにするものが何なのか知っています。
私は行動科学者です。人が行動を変える要因を知っています。
さらに私は「人間カーボン計算機」でもあります。ある行動がどれだけ二酸化炭素を排出するか正しく計算するのが好きなんです。
そこでまず、私が温室効果ガスを大幅に減らせる行動のリストを作りました。
次にリズが、その中で幸福になる効果が最も大きい行動を特定しました。
こうして生まれたのが、私たちが「ハッピー・気候・アプローチ」と呼んでいるものです。
二酸化炭素の排出を減らしつつ、自分もより幸せになれる、そんなスイートスポット(複数のメリットが同時に得られる場所)にある行動です。
個人が行動を変える意義
みなさんの中には「制度を大きく変えない限り、個人の行動は役に立たない」と思う方もいるでしょう。
その考え方は理解できます。
ですが、行動変容の専門家として、私はこう考えています。
私たち一人ひとりの行動には意味があります。
なぜなら、私たちの行動は、他の人に、自分の価値観や地球への思いやりを見せるものだから。
1人の行動は波紋のように広がり、集団行動を引き起こします。
企業に「消費者はこういう商品やサービスを求めている」という合図を送り、会社の方針や商品づくりが変わるきっかけになります。
確かに、制度を変えることは必要ですが、個人が行動を変えることも同じように必要なんです。
では、ここから私のお気に入りの幸せになる気候変動対策、ハッピー気候ハックを、駆け足で紹介します。
もっと果物や野菜を食べる
今年はウサギ年なので、まずは私のペットのウサギの話から始めましょう。
数年前、パートナーと私はグリニッジ(ウサギの名前)を迎えました。とても可愛い子です。彼女はヴィーガンでもあります。
グリニッジのおかげで、我が家にはたくさんの植物、野菜、果物があります。
おかげで私自身も以前よりはるかに多くの野菜を食べるようになりました。さらに冗談抜きで、以前よりずっと幸せを感じています。
植物性食品を多く食べれば、農業由来の排出を最大80%まで減らすことができます。
このことはすでにご存じかもしれません。
でも、植物中心の食事が、幸福度を上げることもご存じでしたか?
数十年にわたる医学の研究によれば、植物性の食事は心身の健康にいいのです。
最近、こんな実験がありました。ほとんど野菜を食べていないノースダコタ州の人々を集め、2か月間、植物中心の食事をとってもらったのです。
被験者は、実験開始前と比べて、2か月後にははるかに幸福を感じていました。
研究者たちは、その理由をこう考えています。
果物や野菜などの植物には、脳と身体に抗酸化・抗炎症の両方の効果をもたらすビタミンやフィトケミカルが豊富に含まれているからだ、と。
でも、肉を一切食べてはいけないという意味ではありません。
我慢しすぎると、かえって幸せから遠ざかってしまいます。
肉と植物性食品を取るとき、自分が最も幸せになれるバランスを目指しましょう。
このとき知っておいてほしいのは、すべての肉が同じではないということです。
牛肉1キロは、およそ100キロの温室効果ガスを排出します。これは約250マイル(約400km)運転するのと同じ量です。
一方、魚・豚肉・鶏肉などは、排出量がはるかに少ないです。
それでも牛肉を食べたい場合は、ハッピー気候ハックがあります。
牛肉をごほうびにしましょう。
ある研究によれば、好きなものを一時的に断つと、久しぶりに食べたときに前よりおいしく感じ、より幸福を感じられます。
質のいい服を買う
食べ物以外でも、買い物を、ごほうびにすることができます。
ファストファッションは気候に大きな影響を与えます。
そこで、頻繁に買い物をするのではなく、買い物そのものを「特別なもの」にしましょう。
ジャケット、ジーンズ、靴は温室効果ガスの排出量がとても多い。
だから、すぐにダメになってしまうものではなく、質の高い長持ちする製品をごほうびとして買いましょう。それが、地球にとてもやさしい行動になります。
一方で、下着は排出量がかなり低いので、必要なときに、気にせず買ってください。
冷蔵庫をきれいにして食品ロスを減らす
次は廃棄物について話しましょう。
周囲の環境をきれいに整理し、ゴミを減らすと、より幸せを感じられます。
そこで、家の中でもっとも散らかりやすい場所を片付けましょう。冷蔵庫です。
環境専門家の中には、生鮮食品はメインの引き出し、調味料はドアポケットに入れることを勧めています。
私はこの意見に反対です。
冷蔵庫は人間の行動パターンを考えて設計されているとは思えません。
人は引き出しに入れたものを忘れがちです。目に見えないからです。
これが、大量の食品ロスと二酸化炭素の排出につながります。
この場合、どうするか?
冷蔵庫に風水を応用しましょう。
私は、腐りやすい食品をドアポケットへ移し、調味料を引き出しに入れました。

こうすれば、傷む前に発見できます。
さらに、先入れ先出しをするようにしました。
古いものを手前に出して、忘れないようにします。
こうすれば、ゼロウェイストで清潔な冷蔵庫になり、みなさんもより幸せを感じられるかもしれません。
カープールを増やす
次は移動の話です。
ここでのハッピー気候ハックは、「運転を減らそう」ではなく、「もっと人を乗せて運転しよう」です。
研究によれば、友人や家族と過ごす時間が長いほど、私たちはより幸せを感じます。自分ひとりで車を運転するのではなく、友達を乗せて運転しましょう。
カープール(相乗り)は、つまらない運転時間を、楽しい社交の時間へと変えてくれます。
もしくは、車を完全にやめて自転車に乗ることもできます。
ウサギを連れて自転車に乗るのは最高です。
自転車はほぼ炭素ゼロの移動手段だし、適度に運動できます。運動すると体の中で気分をよくする物質が出て、気持ちが明るくなります。
これは、「サイクリスト・ハイ」と呼ばれるもので、心の健康にもいい影響があります。
飛行機の旅はまとめる
飛行機は炭素を大量に排出します。
バンクーバーとニューヨークの往復で、約0.5トンの温室効果ガスが排出されます。これはチキンバーガー400個分に相当します。かなりの量ですよね。
ここでも、ハッピー気候ハックが2つあります。
一つ目は、旅をまとめる(バンドルする)ことです。
友人や家族と会う予定を組み合わせたり、行った先で少し観光したりして、複数の用事を一つの旅にまとめます。
社会的つながりは幸福度を高めるので、そのメリットも得られます。
私自身も、この会議のためにバンクーバーからニューヨークへ飛んできましたが、ニューヨークにいる友人たちに会って、もっと幸せになる予定です。
二つ目は、不要なフライトを減らして、時間の豊かさ(time affluence)を感じることです。
時間の豊かさは、「自分のやりたいことをするのに十分な時間がある」と感じる感覚のことです。
研究では、時間の豊かさを感じる人は、マインドフルネス、自分で選んで行動している気持ち、他者とつながっている感覚が高まり、より幸せであることがわかっています。
ものを買うよりも、時間を生み出す買い物をしたときのほうが、人々はより幸せを感じたという最近の研究もあります。
自分の時間が増えれば、ストレスが減るからです。
フライトを予約する前に、将来したい旅をすべて思い浮かべ、それらをまとめて、未来の自分の時間を節約できないか考えてみてください。
政府にハッピー気候変動政策を求める
ハッピー気候ハックのいちばんいいところは、個人レベルにとどまらないというところです。
政府にも、同様の気候変動対策を求めれば、誰もが実践できるようになります。
たとえば、
・自転車レーンのような気候に優しいインフラにもっと投資する⇒より多くの人が自転車に乗れるようになる
・緑地など自然を活用した気候変動対策に投資する⇒散歩をしたり、近所の人に会ったり、ウサギを連れて歩いたり、幸せを感じたりするための空間になる
実際、いくつかの研究では、自然の中を歩くほうが、市街地の通りを歩くよりも人々を幸せにすることが示されています。
みなさん自身も、生活の中で、炭素の排出を減らしつつ幸せにもしてくれる行動を探してみてください。
きっとたくさんあると思います。
気候変動につながる行動に関する語り方を変えなければなりません。
その行動を気分のいいことにすべきです。そうすれば、未来は本当に幸せなものになるでしょう。
環境に関するほかのプレゼン
食品の無駄を出さない取り組みは、節約のレシピである(TED)
ファストファッションが地球に与える影響とシンプルな解決策(TED)
なぜ私はゼロ・ウェイストな暮らしをしているのか:ローレン・シンガー(TED)
がまんをせず楽しい行動をする
地球にやさしい行動はがまんを強いるものではなく、私たちを幸せにしてくれる習慣にすべきだと教えてくれるトークを紹介しました。
このトークでは、地球温暖化を防ぐ楽しい行動がいくつか紹介されましたが、「楽しいものにする」という工夫は、地球温暖化対策だけでなく、勉強・運動・片付けなど あらゆる行動変容にあてはまる普遍的な原則です。
楽しい行動にすれば:
・ドーパミンが分泌され、その行動を繰り返したくなる。
・苦しくないので続く
・周囲に広がりやすい(影響を与えることもできるし、協力も得られる)
こんな利点があります。
逆に楽しくないことが続かないのは、多くの人が経験していることです。
身につけたい習慣があるのに苦労しているときは、自分にとってラクで楽しいものにするのを心がけてください。
がまんするよりうまくいきますよ。














































